GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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少し長いです。おまけに物語も大きく進みません。

先日、今回の話がどれくらいの長さになるかを漠然と考えてみたんですが・・
「ひょっとして・・今までの中の最長クラスじゃね!?」
ということが判明。
これだからオリキャラ、オリ設定は少なめにしてきたのに・・。
ですが・・試験的なお話として頑張って書きたいと思います。

皆さんもよろしければお付き合いください。


紅一点

エノハを代表とするアナグラ選抜部隊と治安維持部隊の鮮やかな速攻が決まる数日前のアナグラ

支部長室にて

「・・お会い出来て嬉しいよ。画面越しとは言えね」

いつものように榊はニコニコと微笑んでいた。彼以外誰もいない支部長室で。

とうとうボケが・・?と、言うわけではない。

ノートPCのカメラに向けて手を組み、いつものように喰えない狸―榊は微笑んでいた。

その理由―狸は今日、ようやく「狐」を探し当てたのだ。

 

そんな彼をモニター越しに眺める一人の女がいた。口のチューブをぎりりと噛みしめる。

残った右腕で頬づえをつき、煮ても焼いても食えそうにない狸のニコニコ顔を見ながら思考を巡らしていた。

 

―・・・。これが極東支部支部長代理、ペイラー榊か・・。

 

女の名前はルー・黄(ファン)。システムエンジニアを生業としている。

裏では「クライアント」の要望に従い、ハッキング行為を行うハッカーである。

此度の教団のアナグラ襲撃テロ事件の際、アナグラのGEの出撃状況などの内部情報、施設内構造、物資搬入トラックの運行ルートなどの情報を入手していたのは彼女である。

「・・こちらこそお会いできて光栄だわ」

「いやぁ!苦労したよ。・・先日の事件で我々の情報管理の脆さを非常に憂いていた部下が必死でコンピュータに残った君の侵入の痕跡を辿ってくれたんだ・・全く頭が下がるばかりだよ」

「・・中々いい部下をお持ちの様ね」

 

アナグラ―

エントランスのソファでうつらうつらと舟を漕ぐ竹田ヒバリに

「お疲れ様・・ヒバリ」

リッカはそんな彼女の隣に座り、肩を貸してやると17歳のオペレータの少女は深い深い眠りに落ちた。

 

再び支部長室

 

「さて・・単刀直入に行こう。こちらとしても余計な手間と時間はかけたくない。君の知っている教団の情報を洗いざらい吐いてもらう。拒否は認めないよ?逃げようとしても無駄だ」

榊にしては珍しく何の譲歩も与えない頑なな姿勢であった。細い目は相変わらずだがいつも小生意気に緩めている口の端がへの字になっている。

 

「・・私としても仕事上の立場があるからね。クライアントに何か契約違反でもない限り裏切るような真似は出来ないわ」

「裏切りたまえ。君に選択の余地はないよ」

「嫌だと言ったら・・?」

「仕方ないね。・・・『伊藤園』」

「・・・!?」

榊の発した言葉にドクンとルー黄の心臓が波打つ。しかしそれを悟られぬように表情は覆い隠す。

しかし榊はルー黄のわずかな逡巡と戸惑いを画面越しでも見逃さなかった。畳みこむように

「教団に『依頼』をしている嫌疑の掛かっている幾人かの貴族連中によって出資を受け、君の口座からも多額のfcがこの孤児院に振り込まれている。ここを完全に閉鎖させてもらうよ。資金繰りが元々苦しい上に君達の様な出資者を失えばいずれ潰れるような孤児院だが」

「・・!」

―そこまで調べてるのか。

「いいのかね?」

「・・こんな職業をしていたらたま~に偽善や慈善活動をしたくなるのよ。要するに気まぐれ。どうぞ好きにしたらいいわ。榊博士?」

「そうか。では次に行こう」

「・・次?」

「・・実名は伏せるが君が懇意にしている『とある』貴族の家宅捜索を行う、罪状は・・『教団との癒着』あたりにしとおこうか。何。安心したまえ。証拠はこっちで用意させてもらう。あ、そうそう裁判の際の陪審員、判事、弁護士、裁判官もこちらで用意させてもらうよ?」

 

「・・・・!!!!!」

ダン!!

平静を保っていたルー・黄が目を大きく見開いて右手を机に壊さんばかりに叩きつける。幾分の震えが混じっている。怒りと恐怖・・そして拭いがたい悲しみがないまぜになった表情で画面を、榊を凝視していた。呪い殺すような視線だ。

しかし榊はどこ吹く風でいつものように眼鏡をくいとあげる。

「言っただろう?君に断る余地はないと。これはお願いではない。命令なんだ」

 

 

数日後

作戦日当日の教団施設内―

儀式が行われた祭壇は既に侵入した治安部隊によって大した労なく制圧していた。

アラガミさえいなければ、所詮碌な訓練も知識も武器も持たない信者など彼らには簡単に制圧が可能だった。

その部隊にアラガミ対策として帯同していたカノンは今は治安維持部隊および信者の怪我人を衛生兵として双方手当てしている。

 

「・・これで大丈夫です!軽傷でよかった」

「ありがとうな!GEの姉ちゃん!」

「はい!」

 

そこに先にアラガミの保管庫を制圧したエノハから無線が入る。

『教団が保存していたアラガミの処分は終了。私以下三名のGEに被害は無しです。残党がいるかもしれないので引き続き警戒態勢をとります』

「了解。こちらも祭壇、聖堂を制圧、確保した。こちらの損害も軽微だ」

カノンに戦術指導を行い、現在も行動を共にしている治安維持軍の副隊長―ヨコヤというマツナガの参謀役を務めている兵士がエノハの通信に応じる。

『良かったです!あ・・こちらの保護対象であるエリナ・デア=フォーゲルヴァイデ嬢は確認されましたか・・?』

「いや。どうやら一足遅かったようだ。捕縛した信者の話によると司教が信者にこの場に待機を命じた際にその取り巻きにその少女だけは連れて行かれたらしい」

『・・そうですか』

「・・あちらとしても有用な交渉材料をそんなに手荒に扱うとは思えない。司教は信者と言うより雇われの役者、詐欺師だからな。おまけにヘリポートは既にマツナガ隊長が制圧済みだ。追っている我々の部隊と先行したマツナガ隊長による挟撃の形になる。必ず少女を安全に確保する」

『・・頼りにしています』

アラガミ掃討終了。信者の捕縛、幹部クラスの拘束。

状況は既に終了―といっても過言ではなかった。しかし・・

 

聖堂に数十人いる信者、狂信者の中には未だ戦意を失っていない者がいた。元々自分の命すら投げ出す覚悟―というより投げやりな連中の集まりなのだ。

貧しさ、苦しさのあまり自らの人生に価値を持てなくなった者がその行き場の無い怒りの矛先を教団によって誘導された人間達なのだ。

 

一人の頬がこけ、骸骨の様な眼窩のなかに光の宿らぬ目をした男がその目をきょろきょろと動かしていた。

教団に属する人間として、虐げられた者として、神々を冒涜した者達に一矢報わねばならない。男は今自分の殉教心を試されていると思い込んでいた。

しかし周りにいる幾人の屈強な軍人―彼らにはどう考えてもまず敵いそうにない。ならば男の目は自然―最も無力そうな者に目が行く。

かいがいしく怪我人を世話し、一見闘争に全く縁のなさそうな人間―

 

「・・動かないで。大丈夫。ゴメンね?私達がいきなり入ってきたから焦って転んじゃったんだね?」

 

カノンに。

 

男は軍人たちの目線と各々の距離を測り、駈け出した。ある信者の子供の膝の怪我に治療を施しているカノンはそれに気付かない。神機とも今は距離を置いており、丸腰だ。

それが男の行動のきっかけとなった。

 

「あっ・・あああああああぁぁあああ・・!!!」

誰よりも自分を鼓舞する為に奇声を発して男は一気にカノンに迫る。力任せに殴りつけるために。

 

「・・え?」

カノンは呆気にとられた声をだした。何故か体は動かない。今まで幾度となく飛びかかってくるアラガミに反射的に行動を起こせたのに。

初めてだった。

初めて見る自分にはっきりとした敵意を向け、捨て身で自分の悪意を伝えようとする「人間」の表情はカノンの足を凍りつかせた。

「ひぁ・・」

恐怖で力無い声がカノンの喉から漏れる。その表情を見て男は自分の行為の成功を確信する。

 

・・しかし、残念ながらここには「それ」に対して「反射的に行動できる」人間が多すぎた。慣れ過ぎている人間が多すぎた。

 

「・・・るあぁっ!!!!」

 

一人の青年兵が一瞬でカノン、男の間に割り込み、右拳を男の顎にめり込ませた。

「ぐげっ」

男は木端のように簡単に吹き飛んでいく。痩せこけた体が吹っ飛ぶ様は明らかにもう立ち上がる事は出来ないだろうことが確信できる死に体だった。

しかし次の瞬間にカノンの目に映る光景はある意味、迫る男の姿よりも彼女を恐怖させた。

 

まだ若い。恐らくこの治安部隊では最年少であろう青年兵が最早気絶し、倒れ伏した男に馬乗りになって執拗に殴打を再開したのである。

 

「こ・・のっ・・!!!!死ね!!」

 

カノンは言葉が出なかった。目の前の行為を咎め、止めることも出来ない。

そんな彼女の横を青年兵の仲間たちが集結していく。ある者は後ろから青年兵を羽交い絞めにし、ある者は最早動かなくなった男の体を引きずって青年兵から出来るだけ引き離す。

「落ち着け!!バカ!」

「もうやめろ!死んじまうぞ!」

「はーっ!ふーっ!!」

体を押さえつけられながらも尚も青年兵の興奮は治まらず、現時点でこの部隊を預かる副隊長が

「・・・落ち着け。深呼吸しろ・・そうだ深く息を吸え」

努めて冷静に話しかけ、ようやく青年兵の動きは止まり、張りつめた空気が弛緩していく。

「・・・大丈夫か?台場くん」

「・・・!は、はい・・」

「その男の治療をした後・・そいつの手にも包帯を巻いてやってくれ・・」

青年兵の手は男の血と拳が破れて噴出した自らの血で汚れていた。

「はい・・!」

カノンは自分の役割と目的を与えられ、平常心を必死に取り戻した。

 

男の治療を終え、青年兵の手の甲の負傷をカノンは診る。汚く傷口が裂けているが骨には異常なさそうだ。

「はい・・終わりました」

「・・ありがとう」

青年兵は甲に巻かれた両手の包帯をさすりながら毒気の抜けた素直な顔でカノンに礼を言う。

大人しそうな物腰はあれほど我を忘れて激昂するような青年には見えなかった。

「いいえ。とんでもないです。・・こちらこそ助けて頂いてありがとうございました」

「・・・」

青年はかぶりをふって頭を下げるカノンから目を逸らす。気まずい沈黙が流れる。

「・・後は俺がコイツを見る。姉ちゃんは他の奴の治療を続けてくれや」

同僚の男がカノンに助け船を出してくれた。

落ち着いたとはいえ最早兵士として体を為さないだろう心の折れた青年兵の早まった行動を防ぐ目付け役でもあるが。

「はい。では・・お、お大事に!」

ぺこりと頭を下げ、カノンはその場を後にし、自分の仕事を探す。

そんな彼女に副隊長―カノンに戦術指導を行ってくれたヨコヤがカノンに近づき、ぺこりと頭を下げた。

「・・見苦しいものを見せてしまって申し訳ない。我々のミスだ」

「いえ・・私も体が竦んで動けませんでした・・情けないです」

「・・・。アイツと同時に入隊した同僚と直属の上司が亡くなっているんだ」

「・・はい?」

「それもアラガミによってではなく二人とも人間の手によってだ。一見無害な避難民に紛れた連中によってね」

ヨコヤはこれだけに言葉を留めた。あまり今のカノンには伝えたくない内容だったからだ。

―青年兵の上司は紛れ込んだテロリストの隠し持った銃で。同期は爆弾による自爆テロに巻き込まれ、死体も碌に回収できなかった。

しかし、それは伝えられずともカノンが青年のあの激昂と過剰な行為に至る経緯を推し測るには充分だった。

カノンも曲がりなりにもGEだ。同僚や上司の死に触れた経験が全くない訳ではない。でもそれでも・・人類共通の敵であるアラガミが跋扈しているこんな時代でも人が人を憎み、妬み、嫉み、殺しあう事実がこれ以上なくカノンの気を重たくする。

悲しくさせる。

同僚や上司を失ったショックと同時に今度は自分が欺かれて命を失うかもしれない恐怖、疑心暗鬼。おまけに自分達では絶対に対処できない理不尽なアラガミの存在までいる―追い詰められた彼らがあのような行為に及ぶ精神状態に陥るのも致し方無い背景があった。

「ヨコヤさん」

「何かね」

「・・皆さんも私と同じですね。仲間が傷つき、悲しむのを見たくない。だから闘ってアラガミを倒すんです。でも・・皆さんは『人』と関わる。一方的に話も聞かず、傷つけるだけではいけない。でも疑わなければいけない。それでも理性を持ち続けなければいけない。そこがGEと私達の大きな違いですね」

「・・・」

「だから私・・!しっかりしないと!頑張ります!」

「・・優しいな。君は。・・でも少し休んでくれ。その手の震えが止まらないと衛生兵は務まらないよ。皆を不安にさせる」

「え・・」

カノンの手は再びぶるぶると震えだしていた。

「君には十分休憩を命じる。・・ん?・・おっと俺にその権限は無いな。・・なら一人の仲間として言おう。カノン君。君は少し休みなさい」

 

ヨコヤはカノンに休憩を命じると同時に温かいコーヒーを手渡してくれた。

カノンはそれを口に含む前にコーヒーの表面に出来た波紋を見つめる。

基本甘党なのに塩っ辛くしてどうするのだと自虐的にカノンは恥ずかしそうに笑って泣いた。

 

ピーッ

突如無線が響く。

『・・カノンさん?カノンさん聞こえますか?』

エノハの声だった。

「・・!は、はい!エノハさん聞こえてます!」

『休憩中申し訳ない。休憩終了後、軍の方々と一緒に司教の確保に向かってください。そしてエリナ嬢を保護した際メンタルケアをお願いします。怪我をしている可能性もあり得ますし』

「わ、解りました」

『・・・カノンさん?何かありましたか?』

いけない。涙声を悟られた。

「い、いえ。大丈夫です」

『・・・。そちらにソーマを送ります。エリナ嬢を救うのはアイツが一番気合入ってるんで連れて行ってやってください』

『おい・・聞こえてるぞ』

ソーマの不機嫌そうな返答がすぐ届く。

『聞いてたのか。なら話が早いや。・・・頼むよ』

『・・了解だ』

『よし・・!ブレンダンさん!俺と一度合流しましょう。アラガミの残党の警戒範囲を広げようと思います』

『了解だ』

真面目で厳格そうな低い声のブレンダンが響く。

『カノン』

「は、はい!?」

『無理はするなよ』

言葉少なだが同じ部隊に所属している気遣いをブレンダンは忘れなかった。

―うう・・。全員にバレてる。気を遣ってもらってるぅ・・。

『ヨコヤ副隊長!カノンさんを引き続きお願いします』

「ああ。こちらは大丈夫だ」

 

そんなやりとりにカノンの動揺は和らいだ。

今まで守る対象だった人間に不平、不満を言われた事はあっても、明確に害意、または殺意を持たれた事は無かった。アラガミという敵に四六時中殺意を向けられている彼女がたった一人の人間に向けられた敵意に身がすくんで動けなかった。

怖かった。例えようも無く。

身内から受ける敵意、害意、殺意が。

 

―でも・・それでも。

カノンは飲みかけのコーヒーを置く。そして神機を掴む。これで今出来ることをやるだけだ。

自分は他の三人のGEに比べたら明らかな半人前だ。そして目の前にいる軍人に比べても圧倒的に経験不足だ。

それでも彼らには出来ない事がある。彼女には出来ることがある。

 

聖堂は微妙な雰囲気だった。目の前で信者の一人が過剰な暴行を受けて恐怖を覚え、萎縮しながらも軍人達に対する非難、敵意は明らかに失われていない。

 

そこに一人の。

とても軍属に見えない少女がいた。

 

彼女が治療した患者達の内、一人の信者の子供が彼女と目線を合わす。

 

「・・クスっ」

 

カノンはやや強気に、しかし優しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 




お疲れさまでした。
ジーナやアリサ、サクヤでは「出来ない」んですよね。これ。カノンぐらいしか。
中々GEの女性陣では貴重な存在だと思います。

今回もお付き合いありがとうございました!

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