GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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前回のハンニバルの襲撃なんですが、先日渓流釣りをしていた際、イモリ(両生類の方)を発見。
その器用に泳ぐ姿を見て・・
―・・ハンニバルって泳ぐの上手そうだよな。
と、思ったのがきっかけです。

・・・またどうでもいい話をしてしまった・・。(カチン←納刀)

今回もよろしければお付き合いお願いします。


急転直下のクライシス 2

何が起きたのか。

 

今の彼らではその「現象」に対しての明確な答えは出せなかった。施設内を覆い尽くすような形容し難いその「何か」を表す言葉が存在しない。

その現象が名称づけられたのはずいぶんと後の事である。

 

その名は後にこう呼ばれるようになる。

 

「偏食場パルス」

 

ヘリポート―

 

突然海より現れた闖入者―炎帝ハンニバルを前にマツナガ、そして教団幹部は成すすべなく立ち尽くしていた。

スキンヘッドの男の額がヘリの爆発の際の飛来物によって切れ、その患部に直接手で止血を施しながらマツナガはそれでもハンニバルから視線を外さなかった。

かといって抵抗など出来るはずもない。何をやっても無駄だ。

小型のアラガミさえ倒す術の無い普通の人間に、アラガミの中でも現時点で最上位種クラスの化け物をどうこう出来るわけがない。

その諦めがマツナガを冷静にさせていた。そして教団幹部の人間も恐怖、諦めから決して過剰に騒ごうとしなかった。

全ての行動が無為である事を一行が悟り、沈黙した結果―

炎帝はまるで品定めをするようにその場にいる一人一人の人間を視線で抉っていく。

観察している。

逃げるでもなく、また闘う素振りも見せないこの人間達を。絶対的な捕食者である自らに対しての極端な獲物の反応の薄さに少々戸惑っているようだった。

しかし「結果」が変わる事は無いだろう。

いずれ―いや、ものの数秒先にそれが訪れても全くおかしくない。

ここにいる全ての人間が例外なく、平等に喰い裂かれる絶対不変の結果が。

 

それがこの中の誰かが逃げたり、騒いだりする事をきっかけに今すぐ起きるか。

炎帝のこの気まぐれの時間が終わって起きるか。

それだけの差だ。

 

それでも・・無為なこの無抵抗を続けるしかない。それがものの数秒、もしくはコンマ何秒程度の自分たちの延命にしか繋がらないとしても。

 

 

「ひっ・・う、ううう・・うきゃぁぁあああああああああ!!!!」

 

炎帝の行動のきっかけになるであろう哀れな悲鳴が寒く、乾いた空気を突然引き裂いた。

 

・・・終わった。

一行はそう思った。誰が堰を切ったのか?一行はお互いに顔を見合わせる。

しかし・・・おかしい。ここにいる誰かが声を上げたわけではなさそうだ。

―なら、誰が・・・。・・!

 

「なっっ・・!!!??」

マツナガは思わず喉元から絞り出すような声を上げずにいられなかった。

ヘリポートの入り口付近―そこには・・太った司教が眼前の光景に恐れおののいて女の様な悲鳴を上げていた。

そしてその傍らには布で目と口を塞がれ、両手を固定された救出対象の少女―エリナ・デア=フォーゲルヴァイデが両膝をついて座っていた。

「んっ・・・!?ん~っ・・・!・・・?」

少女は聞こえてくる司教の悲鳴に表情は覆い隠されながらも動揺が隠せない所作をしていた。

 

―最悪のタイミングだ。

眼前でいきなり、燃えるヘリ、そして巨大かつ強大な化け物を前にしての司教の反応は「順当」と言える。が、「適当」とはとても言えない。

司教は完全にハンニバルの注目を一身に浴びた。

その自らの愚行に気付き、司教はエリナを置いて背を向けた同時だった。

 

すぅっと炎帝は虚空を吸い込む。すると炎帝の鋭い歯の隙間から白い蒸気と煉獄の炎が行き場を探して漏れだしていた。

 

ガァツ!!

 

巨大な火球が炎帝の口より放たれる。直径二メートルはある火球が動揺と太りすぎた体型のせいでふらふらとおぼつかない足取りの司教の背中めがけ、緩やかなホーミング軌道を描いて―直撃した。

 

「・・・・!!!!!!!!」

 

シュッ

 

乾いた音とともに司教は悲鳴ごと蒸発。彼の持っていた教団の「建前」の教示を記した本がエリナの目の前に落ち、燃え移っていた炎と吹きつける風によってエリナの目の前で火の粉を伴いながら巻き上げられていく。

 

少女が目隠しをされていた事は幸いと言えるだろう。眼前で人間が蒸発する光景などあまり見るべきものではない。

そして・・・今の自分の現状を直視しなくて済むのもまたある意味幸いと言える。

「ぐっ・・」

マツナガは奥歯をかみしめるようにしてその「現状」を見ていた。

炎帝―ハンニバルが少女―エリナの目の前に立ち、ゆっくりとその頭部を近づけているのだ。

例え自分が助けに向かって行った所で司教の二の舞になる事は目に見えている。おまけにマツナガが介抱しているスキンヘッドの男も額の出血からショック症状を起こしていた。今すぐには捨て置ける状況ではない。

 

遠目には白目に見えるハンニバルであるが接近するとちゃんと眼球が存在している事が解る。その瞳孔が猫のように収縮しながら少女を舐めるように観察していた。

両手を背中でロープで縛られ、目も口も閉ざされた逃げない少女をハンニバルは尚も吟味する。

 

グルル・・・

 

―あ。あ・・・あ・・・あ。

エリナは感じていた。何かが自分を見ている。

人間ではない。大きい。とてつもなく。

そして何よりも・・・熱い。

 

―・・・こ、わ・・い。

 

妙な・・聞いた事も無い音が発生した後、あのうざったい司教の声は聞こえなくなった。

薄々感づいてはいる。司教は「黙った」のではない。「黙らされた」のだと。

そしてその原因が自分の目の前にいる「何か」なのだということも。

 

体が震える。涙が出でくる。口に布を巻かれていなかったら間違いなく歯の音が噛み合わなくなっているだろう。

目前の光景が見えないのが怖い。

でもかといって絶対に見たくも無い。

・・・どうしようもない。

 

ぐらり

恐怖のあまり、エリナは横向きに倒れ、気を失う。同時に目が覚めることはもう無いとも覚悟した少女が選んだ精一杯の逃避行動だった。

意識がこと切れる瞬間、家族みんなの顔が脳裏にちらつく。

父、母。そして優しい兄の姿が。

 

同時にハンニバルも少女に興味を失った。意図の見えない奇妙な獲物がただの「餌」になり下がった瞬間、自分の警戒は無意味だった事を悟る。

そして他のここにいる人間もこの気を失った少女と大差ない事も同時に悟った。

暴君の気まぐれが終わり、絶対的な現実が今からここにいる全員にふりかかることをマツナガもまた悟ると同時に無言で駈け出す。少女から炎帝の意識を遠ざけ、喰われる順番を出来るだけ前後させようとした。

しかしその所作をハンニバルは五月蝿いと言わんばかりに体より長い尾を鞭のようにしならせ、迫ってきたマツナガの眼前の地面に叩きつける。

「ぐわっ!・・・ぐっ・・!」

その衝撃で七メートルもマツナガは吹き飛び、ヘリポートのコンクリートに叩きつけられ、痛みに呻く。

彼のこの決死の行動も炎帝の時間をわずか十秒ほど狂わせたにすぎなかった。再び炎帝は倒れた少女に目を向ける。

 

 

「十秒」?

短い?いやとても長い。

とても長い時間だ。

 

身体能力の優れたものなら実に百メートル以上も動ける程の時間だ。

そして身体能力が「異常」なものならば―

この場に音も無く現れ、とっておきの攻撃を溜めて敵に打ち出すには十分すぎる時間だ。

 

 

・・・!?

 

ハンニバルは戻した視線の先に新たに現れた者を凝視する。

倒れ、気を失った少女の前に立ち、天使の羽の様な白い神機に赤黒いオーラを充満させ、今まさに撫で切るように振り回さんとしているその姿を。

表情は見えない。視線を落としている上に彼が羽織っている濃紺のジャケットのフードで覆い隠されていた。

次の瞬間竜巻の如く風をまとって巨大な神機が横向きに撫で切られ、炎帝の左頬を捉える。

剣が振りぬかれた方向に彼の顎は大きく跳ね上げられ、炎帝の巨体な上半身が捩じ切れんばかりに弾かれた。

 

マツナガの決死の特攻を意味あるものに変えた存在―

 

ソーマが危機一髪のところで到着。

 

「おい。エノハ・・」

『うん?』

「ヘリポートにて要救出対象を保護」

『・・・。さすがだね』

「おまけに・・榊のオッサンと楠の研究成果が試せるぞ。とっとと援護しに来い・・」

『嬉しい申し出だ・・でも。悪いがこっちも手一杯でね』

 

教団施設内陸側―

「・・・」

エノハは無言で神機を構えていた。再び吹雪きだした視界の悪い暗闇の中、無数の気配が教団施設を覆い尽くすこの「現象」を目指して無音で忍び寄ってきている事が容易に理解できた。

この「現象」に呼ばれた存在がハンニバルなだけのはずがない。

 

ヘリポート―

―・・・フン。そうだろうな。

ソーマは鼻で笑い、無線に反応しなかった。増援の期待を早々と捨て、ソーマは任務に取り掛かる。

背後で気絶した小柄な少女に走り寄り、手を拘束していた紐をナイフで切って口当ても外す。最後に口元に手を当て、呼吸を確認する。

―・・よし。大丈夫だ。

もし意識を取り戻した際に少しでも少女の動揺が和らぐように目隠しはそのままにしてソーマは背負う。

 

―・・重い。

 

ソーマの力からすれば綿の様に軽いはずの少女の体は例えようも無いずしりとした重みを背負っていた。

当然だ。かつてGEとして背中を預けた者が人生をかけて守ろうとした少女をソーマは背負っているのだから。

 

 

ググググッ・・

 

「・・・っ!」

背後の異音にソーマは反射的に振り返る。

捩じ切れんばかりに捻られた炎帝の上半身がゆらりと戻ってきた。不意のソーマの渾身の一撃を喰らいながらもハンニバルはまるで人間のように余裕を感じさせる仕草で口元を拭い、視線をソーマに向けた。

「・・・」

―タフだな。

 

手ごたえはあった。しかし、さすがは現状許可がない限り接触、戦闘を禁じられている危険種なだけはある。

 

先日既に極東支部全員の神機にハンニバルの再生に対抗する因子は練り込み済みだ。

榊、そしてリッカ達整備士によって理論上は「戦える」、「倒せる」相手になったはずとはいえ元々不死を抜きにしても強力なアラガミである。

油断など到底許される相手ではない。

エノハがソーマの返信を待たず無線に語りかけた。

『頼んだぞソーマ。・・・エリナちゃんを』

 

作戦時刻 2018にて

一行は要救出対象エリナ・デア=フォーゲルヴァイデを保護。若干の衰弱、憔悴はあるものの命に別条は無し。

任務は更新。

少女を連れて極東に帰還する。

 

しかし―任務など関係無い。

エリナ・デア=フォーゲルヴァイデは今、ソーマ、そしてエノハにとって「護送対象」であるという前にかつての同僚が「これ以上なく大事にしていた妹」なのだから。

 

少女は背中のぬくもりを感じてうっすらと意識が戻る。

懐かしい。

サッカーを張り切り過ぎて足をくじき、優しい兄に背負われて帰ったあの日を思い出す。

小さな両手を負われた背中に当て、きゅっと握りしめる。

 

―ほら・・やっぱりお兄ちゃん―エリックが死んだなんて嘘っぱち。ここに・・ここにいるもん。

 

 

 

 

 




前話と合わせてコレ・・作中では三分も経ってないんじゃ?
こ、こんなハズでは・・。

読了有難うございました。

おまけ

施設内―
エノハの指示によってカノンを始めとする治安維持軍は教団内へ信者を引き連れ避難。アラガミ防壁によってコーティングされたアラガミの保管庫へ移動した。
アラガミを閉じ込めていたこの倉庫が今アラガミの襲撃から一時的に信者たちを守るシェルターになるとは皮肉な話である。

その中でヨコヤが無線を入れる。連絡先は合同部隊をこの施設周辺まで移送したトレーラーである。
緊急事態をカノンの説得と動揺具合、そして先程施設全体に響いたハンニバルの咆哮、そしてエノハのアラガミ保管庫までの避難指示から察知したヨコヤは即刻即時撤退を判断していた。
『こちら・・トレーラーです・・』
「聞こえるか!?即時撤退だ。車を回せ。信者をつれてここを一刻も早く脱出する。合流ポイントは・・」
『・・無理です』
合流ポイントの指定を行う為手元の端末を操作しようと無線の通話を一度切ったヨコヤの無線に紋切り型の返答が来た。抗命ではなく、その命令の遂行が不可能だという事をありありと感じさせる声色である。明らかに恐怖が交じっていた。
「・・・?どうした!?」
『奴ら・・が周りに・・』

輸送トレーラー
「・・・はっ・・はっ・・・」
運転席に座った隊員は出来る限り小さく、また出来る限り空気が吸えるように最大限の努力をして呼吸をしていた。
その四方八方に・・
小型、中型、そして大型。
ハンニバルによってかなり個体数を減らしていたはずの様々なアラガミ達が全てここに集結しているかのように群れていた。さらに不気味なのが彼らは全て進行方向を同じにしている事だ。
迷いなく教団方向を目指していた。まるで何かに操られるかのように。
それがトレーラーの隊員の命を長らえさせていた。
しかし、もしもエンジンをかけたら、アクセルを踏んだら・・彼らを何らかの形で刺激した場合、間違いなく標的にされる事は明らかだった。
バン!
「ひっ!」
トレーラーの天井に何かが飛び乗ったかと思うとオウガテイルがフロントガラスの前のバンパーに飛び降りてきた。隊員の小さな悲鳴に少し反応したのかきょろきょろと周りを伺っている。
隊員は両手で口を塞ぎ、必死で喉元からこみ上げる悲鳴と闘い、少しの沈黙ののち、オウガテイルは教団施設方向へ歩き出した。
「・・・わかった。とりあえずトレーラーはその場で待機。追って指示する・・」
ヨコヤは苦々しげに無線を切る。そのヨコヤを心配そうにカノンが見ていた。
「・・君の言った通りだ。今この教団施設内はアラガミどもに囲まれている」

攻城戦―
GE、そして治安維持部隊の合同作戦はこれ以上なく成功した。
怪我人は発生したものの作戦行動による死者は敵味方ともに一人も無し、逃亡を謀った敵幹部も捕縛、要救助者も保護、敵軍の危険な大量破壊兵器(アラガミ)も全て破壊と攻城戦としての成果としては完ぺきと言ってもいい。

しかし、その攻め落とした城は今度は皮肉にも逆に自分たちの砦となった。

攻城戦は籠城戦に形を変えた。

しかし攻めてくる敵は亡霊の様なものだ。まともに相手が出来るのはたった四人。
ソーマは既に交戦中。
カノンは信者、維持部隊と合流し彼らの警護に当たる。
そして残る二人・・

『ブレンダンさん』
『なんだ?部隊長』
『あなたの部隊の・・防衛班のタツミさんならこう言うでしょうね』
『・・・そうだな』

『『突破口を切り開く!!』』

『・・だな』
『ですね』
(…行きましょうか。エノハさん!)
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