GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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少し短い話ですがコレぐらいが切りがいいかと思い、切ってます。
・・展開遅くて申し訳ないです。

よろしければまたお付き合いください。


急転直下のクライシス 3

炎帝ハンニバルの剛腕が唸る。

ヘリポートの地面全体を揺るがしそうな強烈な一撃を跳躍して回避したソーマは出来る限り背負った少女―エリナに負担がかからぬよう静かに着地、ハンニバルの側面を駆け抜ける。

反応した炎帝の強烈な尾の一撃も小さく屈んで躱し、最小の動きで炎帝から距離を離す。

「オッサン!無事か!」

ハンニバルを見据えたまま、ソーマは痛みをこらえながら立ちあがろうとするマツナガに駆け寄った。痛々しいが骨には異常がなさそうな事が所作から解る。

「・・大丈夫だ。直撃は貰っていない」

「とりあえずアンタは連中を連れて一旦中に戻れ。・・コイツは俺が引き受ける」

「了解だ」

素直にまだ十代の少年の申し出を引き受ける。自分が出来ることの優先順位を大人のプライドで違えるほどマツナガは経験不足ではない。

マツナガは両手を差し出す。

「その子もこちらで・・・。っ・・・!」

「・・・!ちっ」

ソーマ、マツナガは同時に反応し、お互いの体を手で突き飛ばすようにして逆方向に飛んだ。そこを一筋の灼熱の業火が縫っていく。

炎帝の口から火球とは異なる火炎放射状の熱線がソーマと背負われたエリナ、マツナガの三人を境界を隔てるように放たれていた。

「ぐっ・・痛っ!!ん!!!」

ソーマはマツナガを左手で突き飛ばす際、火炎放射の炎が掌を掠めた。

燃え移った左手の炎を苛立たしげに必死で振り払ったが、一瞬で軽度とはいえ強靭な肉体のGEに熱傷を負わせた。物凄い高温だ。

おまけに火球より油分、粘度が高いその火炎放射はヘリポートのコンクリートの上でも轟々と燃え盛る。

「ソーマ君!!大丈夫か!!」

「・・!ああ。くっ!!」

炎の壁によってソーマ、マツナガ達は分断された。ソーマ一人ならこの壁を乗り越えることもあるいは可能かもしれないが・・

―・・ダメだ。コイツが耐えきれない。一瞬で火だるまだ。

ソーマは横目で背負った少女を見、壁の向こうで業火に喘ぎながらもソーマとエリナの身を案じているだろうマツナガに声を上げる。

「あんた等はさっさと行け!!邪魔だ!!!」

「・・!!了解した!ソーマ君・・」

「ああ!?」

「無事でな・・」

「ああ・・」

マツナガが去っていく音は業火の燃え盛る音にかき消された。

 

―・・あんたもあの時こういう気分だったのか?リンドウ・・。

 

廃教会跡で自分たちを逃がしてくれたリンドウの行動が頭をよぎる。

しかし、

だ。

―・・!しっかりしろ!俺にはまだ守りきれてない奴がいる!こんな事考えてる場合か!!バカヤロウが!

自分を叱責、体をゆすってしっかりと背中の少女、エリナを抱え直す。

 

―死んで。

死んでたまるか。

 

「っ・・・!?」

 

その想いが背中の意識の無い少女に伝染したのだろうか。少女は細い両手をしっかりとソーマの首に回し、彼の胸の前でしっかりと手を握ってしがみついていた。

 

支える必要のなくなった少女の替わりに彼を支えてくれる右手の神機が白く光る。彼が守り、また彼を守ろうとする者に今ソーマは支えられていた。

燃え盛る業火の中でソーマは珍しく優しく笑う。そしてすぐに鋭い目つきを取り戻して目の前を見据える。

 

逃げ場を無くした獲物を仕留めるべく炎帝―ハンニバルは鋭い爪を帯びた両手を左右に開いて突進。一気にソーマに迫る。

 

 

一方―

 

教団幹部を引き連れ、屋内に避難していたマツナガは一時的に安全圏に達するや否や、

 

「・・・貴っ様ァ!!」

怪我を負い、仰向けに安置されていたスキンヘッドの男に物凄い形相で胸元に掴みかかる。その表情は自分のまだ半分も生きていない少年、少女を残し、あの場を去ることしかできない自分に対する怒りが多分に含まれていた。

他の教団幹部は男が殺されそうになりながらもマツナガのその迫力に恐れおののいて動く事も出来ない。

しかし、徐々にマツナガは自分の頭を冷やし、息を整え、自分の役目を模索する。

「・・・。おい・・貴様ら一体何をした?」

そのマツナガを冷めた表情でぼんやりと見ながら男は口を開いた。

「・・私も詳しくは知らされていない。私に解るのは『あれ』が周辺にいるアラガミどもを呼びよせるという事だけだ。それだけで十分だったからな。まさか海からもアラガミを呼ぶとは計算外だったがね」

「『あれ』だと・・?なんだ?それは」

「だから良く知らないと言っている。私にとってこのような事態が発生した際、この施設を放棄し、後始末する際に都合がいい『装置』だったというだけだ。ただの芸の無い自爆や自殺ではなく『アラガミによって殺される事』は教団の世間に対する印象上大事でね。そのニーズに応えてくれたのがあの装置だった。私はそれを採用した。その程度だ」

「・・余計なおしゃべりはいい。殺すぞ。聞かれた事だけに答えろ」

「・・・」

聞きたい事は腐るほどある。これ程の状況を引き起こすやばいシロモノだ。

この口ぶりから察するにこの男、またはここにいる他教団幹部が製造したものではない事は間違いない。

 

いつ、どこで、入手した?

個人、ないし企業。誰、何者が製造したのか?

また何者から入手したものなのか?

・・こんなモノがまだ他にも存在するのか?

 

マツナガの頭の中を錯綜するように考えが駆け巡る。

しかし、あまり時間は無い。おまけに恐らく・・

「・・・すまないが君の頭の中をめぐっているいくつかの質問に恐らく殆ど私は答えられない。いや答えることは出来ないと言っておこう。これは黙秘するのではない」

―・・やはりな。

男が全て真実を語っているとは到底思えないし、実際まだこの男から聞き出すことは腐るほどある。しかし、「これ」に関してはただ一辺倒の答えが返ってくる事をマツナガは長年の勘で確信する。

「知らない」

と。

結果、この状況で最も端的に聞く事の出来、尚且つ的確な質問―それは至極単純な台詞。マツナガは口を開く。

 

「どこにある?それは?」

 

「・・。この施設の地下だ」

「・・・」

―聞かされてない。

「ルー・黄は知らなかっただろう?まぁ彼女を責めないでやってくれ。彼女は少々潔癖過ぎてね。教えない方が彼女にとって幸せだろうと判断してのことだ」

「貴様・・そのペラペラしゃべる口で今までよく生き残ってこれたな・・」

「これでも人を見る目はあると自負している。相手は選ぶよ。どれだけ減らず口を叩こうとも君は私を殺さないし、傷つけないと確信している。君は私情よりも任務に、仕事に生きる人間だ。違う形で出会えていたら友達になれたかも知れないな。私達は」

「反吐が出る。同じにするな」

「・・残念だ。・・・地下二階の突き当たりの部屋だ。扉の解除キーは私の右親指の指紋認証、装置停止にも必要だ」

そして男は自分の親指を差し出した。

「『持って行け』。まともに動けない邪魔な怪我人を連れ歩くより余程効率的だろう」

 

 

施設前線にて―

 

エノハ、ブレンダンの二人がアラガミの第一陣と交戦開始。元々廃寺院を教団施設に改造したこの建物の構造上待ち伏せはしやすい。

先行、突出して門に突っ込んできた最初の侵入者オウガテイルの側面から一気に捕食形態の神機が躍り出た。

「・・捕食成功」

ブレンダンはいつもの冷静さを失わず淡々と強靭な足腰を踏みしめてオウガを咀嚼。降り積もった雪で足場が悪い事も頭に入れた上でのしっかりとした足取りで或る。

「・・・フン!」

咀嚼したオウガを豪快にぶんまわして放り投げる。後から迫っていた仲間のオウガ達に味方の死体を投げつけたのだ。

キシャァ!と、ぶつけられた同胞の遺体を前に憤る者、餌を有難うとここぞとばかりにその亡骸を喰いだす連中もいる。

「神機・・解放」

抑揚の無い小さな。しかし力強い声を発し、ブレンダンはオーラに包まれる。その気配に反応し、交戦の意思のある者も味方の死体を貪っていたものも同時にブレンダンに注目するが・・。

大柄だが、敏捷さも兼ね備えた無駄のない肢体を駆使し、ブレンダンは瞬時に接近。棍棒のような巨大なバスターブレードを振り回すと一匹、また一匹とオウガが吹き飛ばされていく。

「・・っはぁあ!!」

強烈な横薙ぎから一匹の顔面を破砕、そのまま体を大きくねじって旋回、両手を神機に添えて豪快にバットスイングし、広範囲を薙ぎ払って複数のアラガミも吹き飛ばす。

豪快ながらも繊細さと研鑽を感じさせるブレンダンらしい戦闘スタイルだ。彼の足元に降り積もった雪に残された華麗な足さばきの証拠である轍が美しい軌跡を描いている。

あっという間に先行してきたオウガの一団をねじ伏せ、ブレンダンは呼吸を整えるようにふうっと息を吐き、インカムに手を延ばす。通信先はエノハだ。

 

『・・どうやら僻地だけあって人間―いや、我々GEという存在に慣れていない個体が多いようだ。我々との戦闘経験が少ない事は救いだな』

『そんな感じですね。こちらも第一陣は退けました』

『まぁこっちがどういう存在か解った以上、次はこう簡単にはいかんだろうがな。それなりに総力を結集してくるだろう』

『願ったりかなったりですね。広範囲に散られて好き勝手にドンパチやられるよりは遥かにいいです』

構造上は奇襲に向いた土地。が、あくまでまともな兵力はたった二人。忍び寄ってちまちま奇襲、暗殺しているだけでは防衛線を突破され、アラガミに抵抗出来ない民間人、軍人たちに被害が及ぶ。

そういう意味ではエノハ、ブレンダンの二人が大々的に姿を現し、アラガミ達の攻撃目標として常に注目を浴びる必要がある。

カノンが護衛しているとはいえ護衛対象が常にそばにいる以上、中型、大型種の侵入は何としても避けたいところである。小型も出来る限り施設内に侵入を許したくない所だが、小柄かつ絶対数からして討ち漏らす、またはそもそも防衛線を敷く二人が気付く事も出来ずに侵入を許す可能性はある。

その時は・・・

 

『・・・』

『・・・』

 

最終防衛線最終決戦兵器カノンに任すしかない。

 

アラガミ倉庫―

「くしっ!」

「おいおい大丈夫かい?姉ちゃん」

 

 

再び前線―

『ヒバリのオペレートがどれだけ有難いか解るな・・』

『・・・。同感です。癒してもくれますし』

『あんまり彼女をからかわないでくれ。タツミがその度五月蝿いんだ』

『ははは』

『ふっ・・。っ・・・!』

『・・そっちも来ましたか』

 

暗闇の中で複数の目が光る。

確かにここの地域周辺のアラガミはゴッドイーターに対しての戦闘経験は浅く、個体としては御しやすい面は多い。

しかし―

『・・・どうやら数はそれなりにいるみたいですね』

『先程の戦闘である程度学習し、我々に対する警戒、敵意が強くなっている。さっきまでのように簡単にスキをさらしてはくれまい』

『計算通りと言えば計算通りなんですが、何とも嬉しくない注目です。注目される相手は選びたいもんですね』

 

 

「・・全くだ」

そう言ってブレンダンは無線を終え、前の開いた彼愛用の蒼いジャケットの懐に手を入れ、無言で前を見据えた。

彼の色素の薄い銀髪が風に揺れ、蒼い目もさっきまで静止した水面が風で波打つように揺れる。

 

「・・・」

ブレンダン・バーデル―彼は基本無口だ。

語らない。が、同時に騙らない。愚直なほど真っ直ぐな男である。

言葉は少なくとも実行力は高い。無言で皆の前に立つ。そんな彼の無言の背中を慕う後輩、同輩も多い。

 

しかし―彼の現在の内面を理解している人間はごくわずかだ。

 

 




今回もお付き合いありがとうございました。

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