GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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だらだらと長いのに書き終わった今、なんか未完成感があります・・。また見直します。

よければ今回もお付き合いください。


眠れる鷲に新たな誇りを

―・・効果てきめんと言ったところか。

その「効果」を発揮した小さな試験管を白く、がっしりとした大きな掌から屈強な体格をした青年は取り落とす。

巨漢―ブレンダン・バーデルの足元。

そこに取り落とした試験管の先から鉛色の液体が白い雪に溶け込んでいく。

新型の誘導フェロモン。まだ正式にGEの装備としては採用されていない携行品である。

採用が難色を示されている理由は非常に解りやすい。

 

効果が高すぎるからだ。

 

以前、ソーマがマータ三体との戦闘の際に使用したタイプの効果の三倍以上の誘因効果、効果範囲を誇り、持続時間も伸びている。さらに副次効果として謎の現象―偏食場パルスによってある意味「洗脳状態」だったアラガミが我を取り戻すを通り越し、狂食状態にさせる効果がある。

 

ぐちゃぐちゃ。がりがり。ぴちゃぴちゃ。

 

形容しがたい耳障りな湿った咀嚼の音が静かな、雪景色の美しい廃寺に響いていた。

 

ブレンダンが仕留めた小型種の死体を現在―眼前に現れた中型、大型種のアラガミが貪り喰う壮絶な光景を眺めながら青年は構える。

いずれ向くであろう自分に対する矛先に猛烈な先制攻撃を仕掛ける。

 

死体を作る為に。

死体を作り、その死体を貪るアラガミを呼び、そしてそいつも死体にしてまた次のアラガミを呼ぶ。

 

おぞましく。そして危険すぎる戦闘方法である。

次のアラガミが来るまでにブレンダンが「食事」を「用意」出来なければ次の「皿」には自らをのせる事になる。

それを何よりも、誰よりもブレンダンは理解していた。そして受け入れていた。

それで構わないと。

 

 

ブレンダン・バーデル。

 

彼の故郷―アメリカ。

ある意味歴史上戦争に勝ち続ける事によって。強大な武力を持ち続けることによって成り立っていた国家。

しかし、アラガミによって衰亡した。長年の戦争で積んだ闘争の知識、技術を根底から覆す理不尽な存在によって破壊され、大陸の大半の土地をアラガミに明け渡した。

祖国を喪い、強国として世界を率いていた誇りもくじかれた彼らは失意の中、世界に散り散りになった。

彼はその移民の子息である。

 

その移民が多く住む居住区で彼は生まれ育った。

生まれつき恵まれた屈強な体、そしてそれを弱者を虐げる為に使用しない事を誇りにした青年は昔話で聞かされる自分の喪われた故国を静かに誇りにしていた。

しかし。力や恵まれた体も関係なく、平等にアラガミは全てを蹂躙していく。

歯がゆかった。

自分には恵まれた体や他者を守りたい強い心意気があるのにそれが全く意味の無い相手がこの世にいるのかと。目の前で仲間を、幾人もの人を喪った。見捨てた事もあった。

皮肉にも彼の屈強な体や強い心は「戦う」ではなく、「逃げ延びる」ことに大いに役立ってしまった。

自分のように屈強な体は持たずとも全く違う才能に満ち溢れた存在が何人もいた。が、悲しくもこんな時代、純粋な「力」に関しては弱く生まれ落ちた存在の犠牲を目の当たりにしながら逃げ延びた。

 

彼は生き残ってしまった。大勢の犠牲を背に逃げ延びた先に。

 

だからGEの適性を見出され、その手腕を存分に振るえる場が与えられた事を大変光栄に思い、彼は望んでアナグラに来た。

貪欲に知識を吸収、研鑽し、さらに実戦を積み、彼は短期間で極東支部のGE防衛班の一員として確固たる存在となった。

防衛―これこそ自分の天職と疑わず、多くの人を守り、守ろうとした。守り切れず悔しい思いも何度もしたが、自分の手で直接、祖国を滅ぼした余りにも厄介で理不尽な存在を葬れる渇望していた力を得た事はすぐにブレンダンの誇りとなった。

 

 

しかし。

 

彼はアーク計画に乗った。

今まで守ってきたものをほとんど無意味にする計画を。明らかに矛盾している選択だ。

 

自分に彼はこう言いきかせた。

「今まで多くの犠牲の上に成り立ってきた自分が自ら死を選ぶなど許されるわけがない」と。

 

―綺麗事だ。

 

計画が失敗した今、その時の自分をブレンダンは自虐的に笑う。

怖かったくせに。恐ろしかったくせに。と。

自分が犠牲にしてきた者の「為」になどではなく、何よりも自分が許されたいが「為」に他人を守り続けてきたくせに。と。

 

彼が培ってきた誇りが音をかけて崩れ落ちた。

否、元々そんな誇りなどどこにも存在しなかったのではないか?そう思う様になった。

 

そんな自分を責め、苛み続け、いつしかブレンダンは死に場所を探していた。

禁止されているこの誘導フェロモンをずっと懐に忍ばせながら、アーク計画後、彼は淡々と、しかし異常とも言える任務数をこなし続けた。

生来の生真面目さが、そして屈強で口数の少ない彼の姿が周りを誤魔化すのに役に立った。

 

そしてとうとう「これ」を使う日が来た。

何のためらいも無く音も無く、液体は雪の中に染み込んでいく。人間には無味無臭だがアラガミにとっては強烈な麻薬に等しい効果を発揮する。

 

 

「ふんっ!!」

次々に現れるアラガミを片端からブレンダンは切り捨てる。

小、中、大わけ隔てなく。

次の死体になる者は死体を喰い、次に死体になり、さらに次の死体になる死体に喰われる。

ただひたすら死が積み重なっていくこの光景。これを地獄と言わずしてなんと言おうか。

ブレンダンは戦いながら想う。果たして自分がいつこの輪の中に加わるのか、と。

恐らく遠い未来ではない。恐らくもうすぐそこ。きっと目の前だ。喰われ、原形もとどめない哀れな肉片になり下がる。

「守る事を誇りにしてきた」と騙った自分には似合いの末路だ。

 

「む・・!!」

 

どうやら誘導フェロモンの効果時間が切れてきたらしい。結果、集ったアラガミは息絶えた同族を喰らうよりもまずは敵対者を排しようと方針転換してきたようだ。

複数のアラガミが徐々に一点の対象―ブレンダンに攻撃を集中。ブレンダンは巨大な神機と堅牢なタワーシールドを軸に奮闘するが数が多すぎた。

 

バシン!

「・・・っ!!!」

 

背後から不意打ちの強烈な一撃を喰らった。吹き飛ばされながら背後を見る。

巨大なヴァジュラだった。

 

吹っ飛ばされたブレンダンは寺院の縁石に背中から叩きつけられ、呼吸が一瞬止まる。

「くっ・・・」

神機を杖に立ち上がる。しかしその周りを既にぐるりと正気を取り戻しつつあるアラガミが取り囲んでいた。

どうやら今「皿」に乗っているのは自分だとブレンダンは理解する。

 

―・・・ここまでか。

 

ブレンダンは覚悟し、そして目線を上げる。自分を喰うアラガミにせめて最後に一矢ぐらい報いてやろうとした。

 

「・・・!?」

その視線の先、アラガミの背後の寺院の屋根に一人の人間の黒いシルエットが立っていた。

緑化した月を背にして。

 

「・・渡します」

 

影の言葉と同時にアラガミの合間を縫うように白い光帯を伴って三つの光がブレンダンに着弾した。

「・・・!!!」

直後、そんなに遅くていいのかと言いたくなるほど鈍いヴァジュラの噛みつきがブレンダンに迫る。が、カチンという歯がすれ合う空振りの音の後、ヴァジュラの腰がガクンと落ちた。

 

!?

 

訳が解らず周りを見渡すヴァジュラのその周囲の小型アラガミが次々にまるで爆撃されているみたいに空中から降り注ぐ光弾に爆散、霧散化していく。

その中心でただ一匹取り残されたヴァジュラの背後に人影がいた。

刀身に赤黒いオーラを纏い、大きく振りかぶっている。

ヴァジュラの股下にはその人影が作ったらしき雪の轍が残されていた。

ヴァジュラは現状を理解し、言う事を聞かない下半身を捨て、思いっきり上半身をねじって強引に翻し、影に噛みつこうとするが・・。

既にその頭部に巨大な刀身の先端は刺さっていた。

 

ズドォン!

 

まるで間欠泉が上がるように巨大な雪と土の柱が上がり、ヴァジュラの頭部はクレーターの中に埋もれ、その体はピクリとも動かなくなった。

 

そのヴァジュラの巨体の前でオーラを伴ったブレンダンが立ち、無言で振り返る。表情はいつもの通り仏頂面。だが心なし今はさらにそれに拍車がかかっているように見える。

「・・・」

そこにはまた無言で、しかし少し悪戯そうな笑みを浮かべた少年―エノハが歩いてくる。

そして右手にある物体をふるふると人差し指と親指で振っていた。

 

それは誘導フェロモンの入っていた試験管であった。

失念していた。確実に処分しとくべきだったとブレンダンの表情はさらに曇った。

「・・道理でこっちに来るアラガミが少ない訳です」

 

エノハは始めに一言そう言った。

 

 

 

 

 

 

―そう言えば。レン?

(なんです?エノハさん)

―ブレンダンさんの神機について話してなかったな。この前。

(・・。ええ。そうですね。)

―・・?話しづらい事なのか。

(・・・。と、言うよりも説明しづらいというか・・。)

―・・ふむ。解る範囲、説明できる範囲だけでいいから良かったら聞かせてくれないか?

(・・解りました。)

レンが説明を戸惑っている事をエノハははっきりと感じ取っていた。

 

(同じ神機同士と言っても僕たちは各々性格、性質が人間のようにかなり個人差があることが前回の説明で理解してくれたと思います。しかし、その中でも特殊なんです。ブレンダンさんの神機は。)

―・・特殊。どんなふうに?

(そこが一番説明しづらい所なんですが。その神機達は貴方がた人間で言う『言葉』を持たないんです。だから神機同士と言っても意志をはっきりとした明確、かつ具体的な形でお互いが理解することが難しいんです)

―・・へぇ・・。同じ神機同士の間にもそんなことが。

(そうですね。例えるなら貴方がたと今も共生している犬、猫、鳥や家畜等の動物と貴方がたの関係性に似ていると思います。何となく感情は理解できるが明確には解らない。そして彼らも言葉ほど明確に意志を伝える手段がないから、主張をしてもこちらが理解できない、または知覚すら出来ない事があります。ブレンダンさんの神機はそんな特殊なタイプなんです。)

―成程・・。

(それを踏まえたうえで彼の神機の性格は・・)

 

蒼いジャケットを羽織った屈強そうな雄々しい立ち姿に似合わないうつむき顔で青年―ブレンダンは立ち尽くしていた。そんな自分よりも年上で責任感にあふれた青年をエノハはじっと見ていた。

あの日のレンの言葉がエノハの脳内を反芻する。

 

(誇り高く強い意志を持った不言実行の神機です。そして今、主であるブレンダンさんの心情を誰よりも理解している存在でしょう。同じく誇り高く、『他者を守る』と言う志を共にした大切な主の『今』を案じている神機です)

ブレンダンの神機の「意思」をレンが感じ取り、レンがエノハに具体的な言葉で伝える。そしてブレンダンの現在の境遇、最近の動向を見ているエノハがレンの話をもとに辿り着いた。

ブレンダンの今のありのままを。彼がひた隠しにしてきた彼の今を。

 

自暴自棄に安易に死に場所を探していた主の身を案じた神機の想いがレンを通し、そして最後にエノハに伝わった。

 

「今は多くの事を言えません。・・状況が状況ですから」

「・・・」

「でもこれだけは言わせて下さい。守る人間は・・防衛する人間は死んではならないんです。綺麗事で達成困難な道だとしても。それを諦めないでください」

「・・・」

伏せた眼を上げない後ろめたそうな青年を見てエノハは少し儚そうな微笑みを見せ、尚も語りかける。

「俺やソーマはある意味特攻です。不確定、未知の要素の中でもその中で最善尽くして時には無茶しなければいけない立場です。でもブレンダンさん達は違う。貴方達が死ぬと言う事は貴方が守る命の危機に直結するんです」

エノハはその言葉と同時に部下の違反行為の証拠であるブレンダンが遺棄した試験管を握りつぶした。監督責任怠慢を問われる行為である。

「・・!部隊長・・」

「ブレンダンさん・・無茶をする所を間違えないでください。皆を守ってくれる貴方みたいな存在が背中にいるからこそ俺たちは先に行けるんです。そんな貴方が・・死にに行ってどうするんですか」

「・・・エノハ」

普段はお互いの階級に従い、例え年下の人間に対しても礼儀を失せない厳格な男が珍しく役職名ではなく、名前でエノハを呼んだ。

動揺でゆらゆらと心もとなく揺らいでいたブレンダンの蒼い目がピタリと焦点のあった迷いの無い光でエノハを映す。

 

「・・・と、言うわけで」

「・・・?」

「今から俺は俺なりの無茶を。そしてブレンダンさんにはブレンダンさんなりの無茶をしてもらおうと思います」

心根を立て直したブレンダンから目線を外し、エノハは施設の外側に視線を向けて強いまなざしを光らせる。

「俺は今から敵陣を突破してトレーラーを護衛しつつ連れてきます。ブレンダンさんはここを今から一人で防衛してください。あまり言いたくはない言葉ですが・・ここを死守してください」

―死んでも皆を。死んでも自分を守ってください。

物騒でさっきまでの話と照らし合わせると大いに矛盾を伴う「死守」という言葉の裏にそんなニュアンスをこめたエノハの言葉に

「・・無茶を言う」

ふっと自嘲的に笑ってブレンダンもともにエノハと同じ方向を見据えた。

 

これこそが極東支部アナグラのゴッドイーターたちの自然な形だ。

エノハ、ソーマ達が前線にて無茶をし、その後ろでブレンダン、カノンら防衛班達が無茶をする。

 

自然で、無茶で、しかし的確で明確な布陣だ。役割分担だ。

 

「無茶」は広い範囲の意味で愚行とも言える。が、しかし、理想を、自らの向上を願う者には超えるべき壁とも言えるのだ。

理想を、ベストを底上げする。かつては「無茶」だったものを可能にするには結局は人はある意味「無茶」に常に向かい合わなければいけないのだ。

 

 

「では・・俺は行きます。ブレンダンさん。どうか死なないで」

「・・・待て。エノハ」

「・・?」

「お前は今、防衛班の人間は守る者の為に自分は死んではならないと言ったな・・?」

「はい・・?」

「その守る者の中に『お前達』は入れていいのか?特攻で未知で不確定の中を進まなければならないというお前達を」

「・・・!」

「俺が死なない範囲なら俺はそんなお前達を守っていいのか?盾になってもいいのか」

「・・・。どうぞ。ま。そう簡単に守らせてはあげませんが」

「フン。望む所だ」

珍しく不敵に、少し挑発的にブレンダンは笑い、同時にエノハも微笑んで背を向け、駆けだす。あっと言う間に見えなくなった。

 

力強く大きな掌でブレンダンは蒼い神機を握り直す。呼応するように彼の神機が黒いオーラを伴った。エノハが消えた先で無数の気配が再びブレンダンに迫っていた。

エノハは排除よりも敵陣突破を優先しているのだろう。故にブレンダンの防衛にかかる負担は先程と同等かそれ以上だ。

 

しかし、彼はさっきまでの彼とは違う。

 

自分の役割。

 

そして誇りを思い出した彼がさっきまでの自分に劣るはずも、負けるはずもない。

 

そんな主に神機はさらに呼応した。今までにない強力なオーラを纏う。

そこに力強さ、豪快さを持ち合わせながらも基礎を兼ね備えた無駄のないブレンダンらしいスウィングが組み合わさる。

 

「ハァッ・・・!!!」

 

 

後方で再び上がる巨大な間欠泉の様な一撃の爆音、爆風、余波を背中に受けながら振り返ることなく、敵陣を突破しつつ、ブレンダンの一撃に呆けていたアラガミを掠めるように捕食をし、エノハは解放。

スピードを増した光の筋が何の迷いもなく廃寺の迷路のような通路を駆け抜けていく。

 

後ろを振り返る必要など、ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れさまでした。
う~ん。長くなったなぁ・・すいません。

またよろしければお付き合いください。それでは。

おまけ

―そう言えば。
(はい?」
―ブレンダンさんの神機の好きなものは解らないのか?
(まぁ・・言わなくても大体わかるでしょう?)
―・・まぁ何となくは。

アナグラ
「くしっ!」
「リッカさんダメですよ。いつもこんなカッコしてるのにこんなところで寝てちゃ・・」
「ごべん・・びばり(ヒバリ)・・ぐずっ」
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