GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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やばい・・GE2追加版新作が来た。発売は恐らくまだ先とはいえ小出しされる新情報、新設定に振り回される可能性は大いにあり得る・・。嬉しいやら悲しいやら。

今回もよろしければお付き合いお願いします。


レアモノの女神

施設前方。そして施設後方にてそれぞれソーマ、そしてブレンダンのアラガミとの攻防が続く。

その死闘の余波、破壊音がカノン達の要るアラガミ保存倉庫にも届いていた。

「・・・っっ!」

今すぐにでも飛び出し、彼らの援護に入りたい衝動を必死でカノンは押さえる。

震える両手を抱え込むようにして。奥歯も噛みしめる。

ここで自分が早まった行動をすれば一気にここにいる軍人、信者たちは完全な丸腰になる。そんな所に一匹でもアラガミが侵入すれば間違いなく信者たちは恐慌状態に陥り、押し合い、圧し合い、逃げまどうだけで多数の死傷者が出るだろう。

所詮アラガミを表向きは信奉する信者であっても全員が一律、殉教心と覚悟を持っているはずもない。一部の者が恐慌状態に陥れば後は芋づる式に恐慌者が増えていくのは想像に難くないだろう。

恐怖やパニックは伝染するからこそ恐ろしいのだ。

 

そして獲物の恐慌状態というものは捕食者をこれ以上なく興奮させる。どのような生物でも逃げまどう際の振動、動き、音は健常時に比べると独特の「不整さ」がある。

それが捕食者の感覚を刺激するのだ。アラガミは小魚の群れに襲いかかるように何の躊躇いも無く無抵抗で脆弱な餌を追いかけ、仲間を呼び、追い詰めて喰らうだろう。

そうなればここにいる人間はまず助からない。

 

それをここにいる軍人、そしてカノンは何よりも理解していた。

そしてそんな軍人達やカノンが必死で押し隠そうとしている不安や懸念を感じ取り、既に恐慌状態一歩手前の者が少なからずいる。

そんな者達が声を上げ出すのは必然と言えた。

 

「お、おい・・俺達助かるんだろうな?お、お前らは俺たちを守る義務があるんだよな?だったらとっととアラガミ倒して俺たちを逃がせよ!!」

「そ、そうだ!!!」

「そうよ!!あんた達私達の税金で働いてるんでしょ!?だったら役に立ちなさいよ!!」

 

どの口が言うのかと言いたくなる理不尽で手前勝手な罵倒が始まる。それを淡々と受け流せるほど軍人たちも冷静になれない。信者たちの身勝手な言い分の上に今まで信者達に傷つけられ、時には命をも危険にさらされた経験が彼らにはある。

おまけに自分たちの命も現時点で間違いなく危険なのだ。精神的消耗に双方大差はない。普段なら受け流せる事も過敏に反応するほどのストレスが鬱積しており、余裕がないのだ。

 

「・・んだと・・?」

「都合の悪い時だけ罪の無い民間人の顔をしやがって・・!」

「・・・ほっとけ。バカに構うな」

「バカだと!?貴様何様のつも・・!ひっ・・・!」

「そんなに神様が好きなら今すぐこの銃で神様の元に送ってやろうか?痛みも無く送ってやれるぜ?」

「・・・横暴よ!!武器を持った人間が無抵抗の罪の無い人間を撃つつもり!?」

「は?無抵抗?罪の無い?笑わせんな!教団に属してる分際でお前らに人権なんてあると思ってんのか?本当にバカじゃないのか?お前ら」

 

「や、止めてください・・」

 

カノンの目の前の信者達と軍人両者の間にはすでに先程の青年兵とボコボコにされた信者の男との小競り合いで埋めがたい溝が出来ていた。

そこに現在の危機的状況、そして今までお互いに積み重なった遺恨が加味される。

明確ではっきりした問題―アラガミが目の前にいると言うのに残念ながら実りの無い内輪揉めを人間達は止めることが出来ない。アラガミに加え、人類の衰退を加速度的に促進させた「原因」が今カノンの目の前に顕著に現れている。

 

「・・おい。止せ。銃を納めるんだ」

「副隊長!こんな奴ら守る価値ないですよ!」

「落ち着け。銃をおろすんだ」

「・・・嫌です。こいつらのおかげで今まで俺たちがどんな思いをしてきたか・・副隊長も知っているでしょう!?」

「・・頼む。銃を納めてくれ」

「副隊長は優し過ぎ・・いや甘過ぎるんですよ。もう一人ぐらい見せしめつけないとコイツらどんどん図に乗りやがる!」

「図に乗ってるのはアンタ等の方だろうが!知ってんだぞ。お前ら治安部隊が俺達を過剰に暴行してるって!」

「それはお前らのせいだろうが!!」

「・・もう止せ。さもないと・・俺がお前を撃たなきゃならない。それだけはさせるな」

「・・・!副隊長・・!!」

「言うな。銃を持っている以上、責任を持て。撃つ相手を間違えるな」

「じゃあこれで・・・アラガミを撃てって言うんですか?効きもしないのに!?」

「例え効かなかろうとなんであろうとそれを向ける相手を間違えてはいけないんだ俺たちは。その銃口を向ける相手は少なくとも今お前の前にいる人たちではない」

「・・・」

「・・へ、へへ。大した副隊長さんだな?しつけのいい犬もいたもんだ?なぁ皆!?」

「てめぇ・・副隊長を侮辱しやがったな」

「撃つ気かよ?撃ってみろよ?そしたらお前の大好きな副隊長さんにケツ撃ってもらえるぜ?カマ野郎」

「・・君も口を閉じた方がいい」

「うっ・・・。ちっ・・・」

ヨコヤの冷静かつ落ち着いた口調、しかし鋭さを失わない視線に下品なヤジをしていた男は押し黙る。しかしそのヨコヤに―

「・・っ!」

ヨコヤの顔に飛来してきた握りこぶし大の物体―それは信者に配布されていたアラガミの形を模した小さな像だった。信者から金を徴収する目的で質の悪い合金で作られた出来の悪い像―しかし投げて当たれば打撲かかすり傷を負わせるぐらい造作も無い。

「副隊長!?」

「・・大丈夫だ。落ち着け」

赤く腫れた瞼の下から覗く目で部下を抑え、律する。しかし部下は逆にヨコヤのその姿に怒りをこらえられなくなっていた。上司として立派すぎるのも時に考えものである。

彼を怪我させた下手人を発見すれば容赦なくリンチ、または発砲も辞さない精神状態に部下は追い込まれていた。

 

場はまさに一触即発。一発の銃弾、一つの言葉を口火に確実にこの場は大きな騒ぎになる。その騒ぎを聞きつけてアラガミはやってくるだろう。奮戦している強力なGE相手に比べれば恐慌状態、おまけに頭に血が上って内輪もめしている集団など格好の餌食だ。

どう考えても奴等はこっちを選ぶ。

 

「よせ!!」

 

ヨコヤの制止を振り切り、口火になるであろう発砲が部下の一人の銃口から発される直前―

 

 

「・・いい加減にしなよ?・・ホンっっっっト!!!」

 

 

突如低くどすの利いた余りに異質な声が響いたと同時、銃声と言うには余りにも巨大すぎる音―砲声と同時に巨大な破壊音がアラガミ倉庫に木霊した。

同時に強烈な爆風と破片が飛び散り、天井に真円の大穴があいてそこには満点の星空と寒空が覗いている。はらはらと粉雪も入りこんできた。その冷気が鬱積したすべてのものを火山の溶岩のように今にも噴き出さんとしていた軍人と信者達の頭を凍らせる。

 

・・ガコン。

「黙って聞いてりゃさっきからぐっだぐっだ・・べっらべっらと・・・!何?あんた達死にたいの?なんなら逝く?いますぐに!!送ったゲルよ!?」

 

隙間から入り込む冷気と風を受けながら控えめに切りそろえられたショートの髪をとかし、目のイッたカノンが砲身を構え、仁王立ち。射殺すような瞳でその場にいる全員を凝視した。

その極端な変貌と迫力を前にし、軍人、信者わけ隔てなく冷気で冷えた頭と混乱によって場の空気は完全に凍りついていた。

「・・・わっと!」

軍人の一人がその余りの迫力に尻もちをついてガタガタと彼の背後にあった無線機器を鳴らす音だけが響き、すぐにまた場は奇妙な静寂に包まれる。

(カチッ)

 

「はぁ・・」

脅すように巨大な神機の砲身を無言で誇示していた最終兵器カノンが砲撃の構えを解き、目を閉じて大きく息を吐く。次に目が開いた時、カノンはいつものカノンに戻り、まあるい穏やかな瞳で、しかし悲しそうに眉をひそませて混乱がまだ抜けきらない皆を一望するとぺこりと頭を下げた。

 

「・・・。皆さんは・・私が守ります。頼りないけど・・私バカですけど絶対に逃げたりしないし見捨てたりしません。私はゴッドイーターで防衛班ですから」

顔を上げて上気した顔で必死に皆を見据える。だがもう彼女は泣いてはいない。強いまなざしを持っていた。

 

「だからお願いです!皆さんも自暴自棄にならないで・・命を粗末にしないでください!私ホントに・・ホンっっっト~に他のゴッドイーターの皆さんやここにいる軍人さん達に比べたらバカで頼りなくですね?誤射もするし、携行品は忘れるし、闘ってる時、時々意識なくして気が付いたら神機壊しててリッカさんに怒られるし・・」

言わなくていい事もあけっぴろげにカノン大放出、大公開。

しかし―それが何よりもカノンの人柄と心根を正直に映しだしていた。その証拠にその話を聞こうともしない人間はこの場には皆無だった。

 

「一人じゃ私なんにも出来ないんです!だから皆さんに協力して貰わないと・・皆さんを助ける事も出来ない・・・だから・・その、なんていうか、その・・・」

言葉のネタが尽きたらしく、あたふたと虚空を目線がぐるぐる彷徨いながら最後にカノンはもう一度大きく頭を下げた。

 

「・・お、お願いします!!!」

 

 

何度も何度も彼女は思っていた。なんでこんな私なんかにGEの適性があったのかなぁ?と。

もっと賢くて強くて勇敢な人たちにこの力が与えられていたらなぁと何度も思っていた。

 

そんなことは無い。

彼女の様な人間にこの力が与えられた事、そして他でもない彼女がここにいる事実はこの場に置いて僥倖以外何物でもない。この場に彼女がいなければ・・間違いなくこの場は間抜けな修羅場と化していただろうから。

 

優しく、甘く、弱く、ドジで。しかしこの場で唯一アラガミという脅威に対抗できる最終決戦兵器―

カノンは間違いなく彼女にしか出来ない役目を今果たしている。

彼女の弱さと強さ、コインの表裏、絶対にひきはがせない彼女の「在り方」がこの場にいる全員を救ったのだ。

 

それは一見場違いでとても軍属には見えない少女。

 

レアモノの女神。

 

誰ももう言葉を発しない。

頭を下げたままのカノンの肩にヨコヤがぽんと手を置く。カノンが少し目線を上げるとヨコヤは痛々しそうに腫れた瞼の下の眼を細めて微笑んだ。

 

「・・ヨコヤさん」

またカノンは泣きそうになった。

 

「・・・。とりあえずもう一つ近い方のアラガミ倉庫に移動しようか。少しここは寒過ぎるからね」

「へっ?」

カノンは見上げた。天井に空いた大穴から猛烈な寒波来襲中。

 

「す、すすすっすすすすいませ~~~~~ん!!!」

 

 

 

 

この緊急の移動もまた僥倖だった。

 

「・・・!!!隊長!?」

「・・!良かった。お前達も無事だったか・・」

 

彼らは移動の途中、件の装置を止める為に施設内を移動していたマツナガと合流。

 

無線を失っていたマツナガは状況、情報を簡潔に交換する。

「そうか・・ブレンダン君が一人で前線防衛、エノハ君がトレーラーを迎えに行ったのか・・」

「エノハ君の方は・・彼の持っている無線の範囲を超えたのでしょう。連絡がとれません」

「・・・」

「・・・」

お互い最悪の状況を予測して一瞬言葉に詰まる。彼らは軍人である以上常に最悪の状況も考えて身の振り方を考えなければいけない。しかし―

 

「大丈夫です」

 

軍属にお世辞にも見えない少女が口を開いた。一見楽観的だが自分の事を語る時とは違って妙に自信満々な声色である。

「・・カノン君」

「私なんかよりずっとエノハさんもブレンダンさんもソーマさんも強いんです!だから・・大丈夫です」

 

幸運―そしてレアモノの女神はまた微笑み、そして強い目線で自分の次の行動を見据え、前を向いていた。

 

 




前話のブレンダンの話と合わせて「防衛班の二人のお話」として一話にまとめるつもりだったのですが・・またダメでした。

今回もお付き合いありがとうございました。

九月四日ほんのすこし追記修正
....間違えた。スキル名。

おまけ

カチッ

トレーラーの運転手の男は無線から響く音声に耳を傾ける。
「・・・こちらトレーラー」
声色を最大限に抑え、ぼそりと呟く。アラガミの姿は見えないが気配は消えていない。
しかし応答がない。
「・・・?」
しかし声が聞こえてきた。その声はまだ少女だったあの子の声だ。
とても軍属とは思えないGEの少女。他の三人は間違いなく只者ではなかったが唯一あの子だけはどう考えても軍属に向いていないことは運転手の男は確信していた。
無線から響くのは聞くに堪えない拙い、単純で幼い演説だ。
それでも。
今の脅えて何も出来ない自分に比べると遥かに彼女は立派だ。
教団施設に比べれば遥かに安全圏のここでほとぼりが冷めるまで待てば自分だけは助かるかも・・心にそんな魔が差し込み始めていた運転手の男にその声は響いた。
突き刺さった。
何をやっているんだ俺は、と。

「・・・!」

心のどこかで「止めろ」と言うのに男の手は延びていく。突き刺さったエンジンキーに。
いけ。
止めろ。
行け!
止せ!

行くんだ!!

ガッと右手でエンジンキーを握り、一気に回す。その勢いに呼応するように寒空で暖気を取っていないにも拘らず、エンジンは簡単に火を噴いた。

――――!!!!!!

エンジンの熱と音を感知したのだろう。一気に周りの気配の注目が男に感じられる。それを振り切るように男はアクセルをべた踏み。鮮やかにシフトを一気に入れ替え、急加速。
ほんの少しの空回りをした巨大なタイヤは大きな轍を残し、轟音を立て、巨大なトレーラーは雪が降りしきる悪路を駆け抜け始める。
その周囲を無数の気配が取り囲むように並走していく。
気配、視線、粘つくような殺気。
それを全身に浴び、恐怖でうずくまりたい自分をひたすら拳で胸を叩き、鼓舞しながら鮮やかなハンドル捌きで悪路を男は駆け抜ける。
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