GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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ちょっと短いです。
今回も良ければお付き合いください。




降り積もった雪を強引に巻き上げ、大型トレーラーがまるでラリーカーのように躍動する。木々をなぎ倒し、上下左右に波のようにぶれる車体を鮮やかなハンドル捌きで均衡を保つ。

「・・!くっ!」

目の前に複数の小型アラガミがまるで制止を促すかのように立ちはだかり、そして次の瞬間飛びかかってくる。

ハンドルを大きく切り、フロントガラスを目がけ跳躍していたアラガミを躱すと同時に後部の貨物荷台を横殴りに「叩き」つける。

そして吹き飛ばしたアラガミを今度は先程とは逆方向にハンドルを切り、

「こ・・のっ!!つぶれろ!」

グギャ!

押しつぶす。独特の生き物を轢いた時の何とも言えない感触が運転席にも伝わるが男に全く躊躇いは生まれない。

 

この程度で連中が堪える筈もない。

男は連中の事はうんざりするほど知っている。ホントに理不尽な連中だ。まるで幽霊を相手にしている様なものである。

撥ねようが、撃とうが、切ろうが、潰そうが奴等は死なないのだ。

 

しかしダメージは無かろうが一瞬だけでも行動を阻害出来ればそれでいい。体勢を立て直した時には遥か遠くに逃げおおせているはずだ。

轢き逃げは許される行為ではないがアラガミ相手だ。勘弁してほしい。

 

男は尚もアクセルを踏み続ける。平地ではスピードメーターは最高時速90マイル(時速約145km程)にも達した。

 

しかし。

 

それに追いつく奴がいる。

 

ガゴン!!!

「ぬぁっ・・!!!」

強烈な衝撃とともに舌を噛みそうな縦揺れが起こる。

―ぐ・・・くっそっ!?何が!?

男は一瞬動揺しながらも愛車の機嫌を確かめる。計器に異常なく、ハンドルも滑らかだ。パンクをした様子も無い。前方、そしてサイドミラーを確認。アラガミの姿は無い。大丈夫だ。

だが・・・

―・・・・・!???

アクセルを完全に踏み込んでいるのに速度が上がらない。

 

重い。

 

有線誘導ミサイル、重機関銃、戦車、装甲車等のかさばる超重量の重機、重火器等はまるでアラガミ相手には意味は無い。それ故この時代の軍人は大概比較的軽装だ。

装備、積荷を極限まで削り、迅速な行軍を最優先とする。マツナガが指揮するこの治安維持部隊もご多分に漏れない。

現在このトレーラーに積載している積み荷はほぼ空なはずである。

しかし、それでも笑えるほど進まないトレーラーに男は苛立ちを隠せない。

 

―くそ、おい!?・・・どうなって・・。っ・・?

 

「ぅあっ・・!!!」

 

男は唖然とした。

フロントガラスの左右両端をがっしと金色がかった掌が掴み、その握力でみしみしと天井がへこんでいく。

いや、これは侵食されているのか。ぶすぶすとまるで金属が腐食していくようにも見えた。

言葉が出ず、両目を見開いたまま唖然と運転手の男は成すすべなくその光景を眺めていた。

そしてその両手の持ち主が正体を現す。

フロントガラス中央上部、正面からにゅっと二つに割れた奇妙な金剛の顔をのぞかせ、次に獲物を補足した抑えきれない喜びを表情に出す。

仏教の神像を象った意匠に不釣り合いな爬虫類のような裂けた口を開き、鋭い歯をのぞかせる。それが笑ったように運転手の男には見える。

 

まるで旧時代のアクション映画のスタントマンのようにそのアラガミ―ハガンコンゴウは疾走するトレーラーの上部にぴったりと張り付いていた。

 

―くそ・・・ここまでか。皆・・悪い。

男は苦々しげに眉をひそめる。その顔がじりじりと揺らめく青白い光に照らされていた。ハガンコンゴウの頭の上(正確に言うと背中の器官)

から放電現象が起きているのだ。

その光景を見て運転手の男は覚悟した。今、ハガンコンゴウの頭の上で丸い電撃の弾が形成され、放出の時を待っている。成す術なし。

それでも男の右足はアクセルを踏み続ける。

遥か前方で自分を待つ仲間達の元に少しでも近づけなければ、という使命感が表向き諦めた男をそれでも前に進めていた。

 

―・・・ん?

 

その前方で。

この車体上部に張り付いている安っぽい金メッキのような輝きをもつ者とは明らかに異なる金色の光を纏う「何か」が迫っていた。

のたのたと進まないトレーラー。だが今はそれでもこの光に辿り着く為に。

どれだけ滑稽でも、どれだけみっともなくとも進むのだ。

 

例えゆっくりでも。歩みは遅くともひたすら歩き続ければ―光は時に向こうからやってくる。

 

 

「退(の)け」

 

光―エノハは跳躍し、片手で銃形態の神機の銃口をハガンコンゴウの割れた面に突き付け―

 

発砲。

 

ハガンは頭部を零距離射撃によって一瞬で爆砕、破砕され、指令部位を喪った体がふらふらとトレーラーの揺れに合わせて生気なく揺れていた。

 

が、

収束した電撃の弾は既に目標を定めていた。本体は殺しても球体はエネルギーのやり場を求めている。

 

「ブレーキ!!!」

エノハは力の限り声を張り上げる。

「!!!」

反射的に運転手の男は急ブレーキをかける。

 

耳を裂くような急激なブレーキ音があたりに響く。

 

すると張り付く力を失っていたハガンの体が慣性の法則に従ってトレーラーの前へ一回転して吹き飛ぶ。しかし、電撃の弾は未だフロントガラスを捉えていた。

前方にはじき出されたハガンの失われた頭部から電撃の弾が本来の目標の男を見失わず射出された。

 

今度こそ。

終わった。

 

目の前に迫る電撃の球体が迫る光景を見、この短い時間の中で二度目の覚悟を男はする。

 

しかし、光はまた現れる。

今度は目の前に。

 

ガン!

 

フロントガラスの前のバンパーにエノハは中腰で着地。その姿勢のまま神機形態をシールドに替え、構えた。

 

「ぐっ!」

 

シールドに電撃玉が直撃した反動でエノハの体は押され、フロントガラスに背中から叩きつけられる。

 

ビキキッ

 

トレーラーのフロントガラスは叩きつけられたエノハの背中を中心に蜘蛛の巣状のひび割れが全面に走った。

 

 

 

 

 

それから十秒後ほどだろうか。

呼吸を整え、ひび割れで碌に前の見えないフロントガラスを捨て、運転手の男は横の窓から顔を出し、恐る恐るフロントガラスに背中を預け、もたれかかったまま動かない光の収束した少年―エノハを見、

「お。おい!大丈夫か!?」

と、声をかける。

その声に反応し、首がわずかに動いた。

 

「・・・・・どうにか」

少年は足を開いて座りながら、「やれやれ」といった風にパラパラとフロントガラスの破片を落としながら体を窮屈そうにゆすっていた。男は「なんて頑丈さだ」と驚嘆するよりも先に、その所作を見て

「・・はぁ」

安堵のため息をつく。自然と呆れたような笑いも出た。

 

「・・来てくれたんですね」

「・・。まぁ・・な」

色々と葛藤はあった。自分だけ逃げよう、助かろうとも思った。

しかし

今、結局勢いに任せてここに来てしまっていた。

そしてそこまでは良いものの、今のほんの一瞬で二回も命拾いし、助けられた自嘲気味の苦い笑顔を男は浮かべた。

 

―カッコつかねぇなぁ。ほんと。

 

「・・・有難うございます」

そんな男の内心を知ってか知らずか。端的に少年は心からの感謝の意を笑顔とともに男に伝える。金色の光を纏い、戦闘中だった先程の表情に比べるとなんと幼い顔だ。

 

「・・・。お礼は後にしようや。乗れ!!飛ばすぞ!」

 

男は助手席の方向に親指を延ばし、エノハを促した。

「はい!」

エノハは器用に体を滑らし、一瞬で助手席に滑り込む。

「うらぁ!!」

運転手の男は蹴りで使い物にならなくなったフロントガラスを吹き飛ばし、再びアクセルを踏むとトレーラーは再び軽快で快調なエンジン音を出して火を噴いた。

強烈な急発進。エノハと男の体がシートに押しつけられる。その顔に猛烈な外気が吹きつける。

 

「うお!さっみぃ!誰だ!フロントガラス割った奴ぁ!!」

 

その運転手の男の言葉に少年は少しすまなさそうにまた笑った。

 

 

 

 

 

しかし・・ほんの少し経ったときだった。ふと運転手の男は少年の顔を再び覗く。

 

そこには。

 

何とも言えない、儚さ、憂いさを含んだ先程より、より幼く見える澄んだ光を携えた瞳を伏せ、佇む年相応の少年の姿を見た。

―・・・ん?

その視線の先の彼の右掌に何か黒い物体があるように男には見えた。

 

―何だ・・?・・おっと!

 

運転の為、ほんの少し前を確認してもう一度視線を戻す。すると少年の右手には元々何もなかったかのように赤い腕輪だけが光っていた。

また、少年の表情も既に前を見据えたしっかりとした視線に戻っている。

 

―・・・・?気のせいか?

 

男は戸惑いながらも気を取り直し、再びアクセルを強く踏む。

 

 

 

 




おまけ

「あの・・すいません」
助手席のエノハが口を開いた。
「あん?どうしたGEの兄ちゃん。あんま喋ると舌噛むぜ」
「少し・・・・その・・・少しでいいのでスピードを落としてくれませんか?」
「・・・?なんでだよ!?一刻を争う時だってのに」
「その・・・言いにくいんですが・・・う」

「ま、まさか・・・酔ってんのか!?」

手で口を押さえながらこくんとエノハは頷いた。


今回も読了有難うございました。
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