・・大変だ。こんな展開にした事を今凄く後悔している。前話を見直すと何コレ状態だ・・。
この続きを書けと言うのか・・かつての自分よ・・。
よろしければしばらく・・こんな話に付き合って下さい。
アネットがゆく
―・・・完ぺきザマス!
とんがり赤ブチ眼鏡、いつもよりきつめの化粧、そして語尾もおかしくなるほどキャラ崩壊したアネットは見事カフェテラスの「ある席」に陣取った。
いつもターゲット―エノハ、リッカが向かい合わせで座る席の真後ろの席、ほぼ零距離だが観葉植物を隔てている為お互いの姿は見えない。しかし目的はあくまで盗み聞きであるので問題無い。
ここなら思う存分盗み聞きが出来る。
―さぁ・・エノハ先輩!リッカさん!お二人の甘い語らいを聞かせて頂くザンス。・・フフフウフ。
おっといけない!ナフキンも用意しとかないと・・。よっし準備万端です!!
(彼女のこの「ナフキン」の使用法については各自の判断にゆだねる)
しかし―隣から響いてきた第一声は意外なものだった。
「え!!!???リッカ!それ一体どういうことなの・・!?」
任務の際、アネットの前では何時でも冷静沈着なエノハの聞いたこともない焦燥と動揺が隠せない声が聞こえる。
―わっ!!エノハ先輩がこんなに焦っているなんて!!一体何が!?
「ちゃっ、ちゃんと説明してくれ!!じゃないと俺も納得出来ないよ!リッカ!!なぁ!?」
「・・。駄目だよ。私達もう・・おしまいだよ。ホント・・もう・・おしまい」
リッカの声も沈みに沈んでいる。整備士として何時も気丈、そして同時に気さくな彼女のこんな声を聞くのもまたアネットは初めてだった。
―こ、これは!?まさか・・・別れ話という奴では無いですか!?
あわわわわあわ・・・・!
初めての盗み聞きでまさかこんな修羅場に出くわしてしまうとは・・・!
アネットの形の良い耳がぴくぴくさらに大きく開く。
基本各々のパーツが整っており、美人と言える少女なのだが、している行為が行為なだけに本当に残念極まりない。
「どうにもならない・・のは解った。でもやっぱり説明はしてほしい。俺が何かしたって言うんなら遠慮なく言ってほしいんだ・・」
「違うの。エノハは悪くないの・・」
「じゃあなんで・・!?」
「・・・」
―ああ・・些細なすれ違いと言う奴でしょうか・・。
聞き耳立てた下世話少女はほろりと脳内実況中継を続ける。
―まぁこんなに殺伐として忙しい毎日・・すれ違いも出来ますよね・・悲恋ですよね。
くうっ!っと口元を押さえ、喉元からこみ上げる嗚咽をアネットは振り払う。
既に「ザンス、ザマス」キャラはかけらも残っていない。企画倒れもいいとこである。
そうこうしているうちにようやくエノハが完全に落ち着きを取り戻した。まだ俯き加減のリッカに優しく諭すように語りかける。
「ゴメン・・色々とまくし立てて・・どんな理由でも俺・・受け入れるからさ・・だから、リッカ?全て・・話してくれないか?」
「・・・。うん。辛いけど・・言うね?」
「うん・・」
―エノハ先輩・・リッカさん・・。私も辛いけど・・悲しいけどしっかり気を持って聞き届けます!!頑張ってください!!リッカさん!!
そしてお二人の行く末を見届けさせていただきます!!
だって私は・・お二人の後輩ですから!!!
部外者で聞き耳立ててる人間がどの面下げてと各所からの抗議が来そうな少女の暴走、暴想は止まらない。
しかし妄想、暴想の絶頂寸前の中、ヒバリが何故、この二人の会話に聞き耳立てることを薦めたのかを少女は深く考えるべきだった。
少女は叩き落とされることになる。
次のリッカの一言に。
「エノハ・・」
「うん」
「すぅっ・・」
―ごく。
「TMBS―734型は・・ウルハ製作所最新式神機専用ジェットバス購入費用は榊博士の初恋ジュース開発費用で溶けました!!どんなに願っても、泣いても喚いてもTMBSは極東支部には納入されません!!!うわ~ん!!!」
「な、なんだって~!!!???」
(う、う、うそだぁ~!!)←レン
―え?え??え・・・!?
アネットは愕然とした。いきなり今まで聞き耳を立てていた会話にまるで付いていけなくなった。
否、元々アネットはこの二人の会話についていってなどいなかったのだ。彼女は文字通りただ一人暴走していただけなのだ。
「そ、そんな・・」
(そ・そんな・・)
エノハ(そしてレン)の落胆のその声の後、ほぼ涙声のリッカの声が聞こえる。
「ぐす・・・この前さ・・初恋ジュースの開発で停電になった事あったよね・・?その際に私の独立したコンピュータもここのメインコンピュータにデータ保護の為ごっそり持って行かれちゃって・・それでTMBS購入の為に私がコツコツ着服してきたお金を榊博士に見つけられて・・」
―へ?へ???
結構重大な横領の事実をアネットは聞き耳立てているのだが彼女では当然意味が解らない。
停電復旧後の支部長室の榊―
「・・おや?こんな所に使途不明金が・・これは丁度いい。初恋ジュースの開発・・つまりは人類の未来の為に有効活用しよう。いやぁ・・丁度開発資金が尽きて困っていた所だったんだ。日ごろの行いが物を言うね?うん!」
「ティ、TMBSが・・最先端のトリプルサイクロン技術を搭載したウルハ製作所の最高傑作があ、あんな糞不味いジュースに化けたっての!?そ、そんな・・酷過ぎる・・酷過ぎるよ・・・!!」
(初恋ジュースは美味しい・・。けど・・その為にジェットバスが・・僕ら神機の夢が・・アリサさんの神機の機嫌が最悪になるのは・・・!)
「私だって・・私だって信じたくない!私だって楽しみにしてた!!届いたあれをさんざん愛でた後、分解して、改造して、組み直して、また分解して改造して改良して組み直して・・!!そんな悦楽の時間があんな・・初恋ジュースに変えられるなんて・・!!!」
―・・・。
もう。アネットは言葉も無い。
「・・解った。解ったよ。もう・・俺は榊博士を殺して俺も死ぬ・・」
―ええっ!?
流石にそのエノハの言葉の意味はアネットにも解る。
―な、何気に極東支部崩壊の危機!?極東のエースが極東の支部長を殺害して自殺!!!???アナグラが・・極東支部が傾いちゃいます!!!
「まって!早まらないで!!また・・私が溜めるから!コツコツと着服金を・・!だから・・ううっ・・・」
「リッカ・・!ううっ・・」
「TMBSぅ・・・ううっ・・・ぐすっ」
「うう・・」
(ううっ・・・アリサさんの神機になんて言えば・・)
そこまでの会話を聞き、アネットはすっくと立ち上がり、テラスを後にした。
赤ブチ眼鏡、念のため用意していた変装用のカイゼル髭を置いて。
「・・・おかえりなさいです。アネットさん」
エントランスに現れたアネットにヒバリは声をかけ、アネットは振り返る。
その眼は真っ直ぐと、しかしどことなく憂いを含み、少し恥ずかしそうな笑顔をヒバリに向けた。
「・・ヒバリさん」
「・・何でしょうか?」
「私・・子供だったんですね・・?それが今はとっても・・悔しいです」
「・・そうですか」
ほんのわずかな時間で子供は成長するもの。
少し大人になり、背筋を伸ばして歩きだした少女―アネットの背中をヒバリは見送る。
今。
アネットが・・ゆく。
お疲れさまでした。今回も読了有難うございます!
遅まきながらGE2RBのプレイ動画を見る。
・・・。神機が持ち主の事「汝」とか言ってる・・?
「汝」とか言いそうな奴がこの話の神機には居そうに無い・・。
おまけ 10月20日追記
「あら~!?」
べちゃり
アネット再びこける。ヒバリの目にもパンツが見えた。
恥ずかしそうに服を整え、パタパタと払いながらアネットはヒバリに目を向け、
「....柄を...変えた方が良いでしょうか?もっとかわいいのに 」
違う。違う。そうじゃない。