GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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徐々に・・少しずつ終盤に向けて雰囲気を締めていこうと思います。

今回もよろしくお付き合いお願いします。


変化

「フェデリコの様子は?」

「・・・」

「・・アネット?」

「あ・・?は、はい!大丈夫です。落ち着いています。血も止まりました」

アネットは目の前で仰向けで横たわり、愛用の赤いバンダナを少し血がにじむ白い包帯に変えて浅い呼吸をしているフェデリコの額を心配した表情のまま労るように優しく撫でる。

「そうか。良かった」

エノハはその光景を見て少し微笑んだ。

 

 

鉄塔の森―かつて発電施設であったこの場所は今はコンクリートの放棄された建物と鉛色の雲に覆われた全面灰色の重苦しい廃墟と化している。

そこで先程一行は強襲を受けた。

 

報告、討伐依頼されていたアラガミを餌とする為に現れたより強力な予定外のアラガミに遭遇した。

 

ハンニバルとの縄張り争いに敗れてこの地に追いやられ、飢餓状態から凶暴化した一体のスサノオであった。

 

住処を追い出された落ち武者とはいえ腐っても接触禁忌種。当然、新人のアネット、フェデリコの二人に手に負える相手ではない。

しかし、突如現れた強敵に反射的に抗撃したアネットはスサノオのターゲットとなってしまった。神機を好んで食らうスサノオには彼女の巨大なバスターハンマーが喰いでのある獲物に見えた事もあるだろう。

そのスサノオの苛烈な攻撃からアネットをかばったフェデリコは負傷。浅からぬ傷を受け、気絶してしまった。

その結果、責任を感じた怒りと勝ち目の無い強敵を前にした恐怖で半ばパニック状態になったアネットに迫ろうとするスサノオの動きを止めた者がいた。

 

「アネット・・フェデリコを連れていったん離れろ」

 

強力な乱入者を歯牙にかけない全く以て普段と変わらない口調であった。しかしその一声はスサノオを一気にアネットに目もくれない心理状態に追い込んだ。

両手にある神機の捕食形態を象った大口を開いた盾を構え、巨大な剣がついた尾の先を今にも振り出さんと前傾姿勢で声の主を見据え、同時に奇声を発した。

 

捕食状態から戦闘態勢に移行したのである。

 

アネットは気絶したフェデリコを抱えて走った。ひたすら逃げた。

当然スサノオが怖かった。そしてほんの少しだけ―

 

エノハが怖かった。

 

そして数十分後の現在―

 

目の前に何事も無く帰ってきたエノハを見てアネットは改めて思う。

やはりこの人は別格だ。と。

一応同じ新型でありながら、何歩先を行っているのかすら解らない程の差がある。

入隊したての新人、片や一部隊、そして極東戦域を束ねる隊長クラスを比べること自体ナンセンスだ。が、それを差し引いてもやはりこの歴然とした差はどうだと考えてしまう。

年齢もそれほど離れてはいないと言うのに。

 

自分が実力をつければ付けるほどエノハが遠ざかっていくような感覚―それこそが彼女が成長している証とも言える。

今は相手と何かを色々と比べることよりも自分の成長を喜び、それをモチベーションに次の自分の成長につなげた方がいいのだがアネットはそういう意味では負けず嫌いなのだろう。

そんなアネットの心象をエノハは気付いていた。

ぼうっとした憧れと尊敬とちょっぴり呆れと恐怖の混ざったような少女の自分への視線を受け流しながら

 

「・・帰ろう。フェデリコは任せていいかい?」

「は、はい!」

腕力に優れたアネットはフェデリコを軽々と背負い、尚もエノハの遠い背中を眺めつづける。

そしてその手に握られた整備の行き届いた美しく輝く彼の神機も見る。

 

この日の任務はフェデリコ、アネットの研修も兼ねた小型、一部中型が主な討伐任務だった。

よってエノハは「ある事」を試していたのだ。

アネット、フェデリコの二人が研修を兼ねた任務であると同時にエノハもまたとある「試用」をしていたのだ。それほど今回の任務はさほど危険性の高くなるはずの無い任務だった。

その上で今回のイレギュラーな、本来は討伐の際は綿密なブリーフィングや人員、人材確保を必要とする危険アラガミ―スサノオを撃退―

否、恐らく討伐したであろうことがアネットがエノハに対する憧憬の中にほんの少し恐怖を含ませた要因だった。

 

新人二人、研修を兼ねた軽い内容のはずだった任務、そこにイレギュラーなスサノオの急襲、結果新人一人が負傷、一人がパニック状態、おまけに当の自分もある「試用」をしており、完全な状態ではない―と来た。キャリアを積んだベテランGEでも思わず頭を抱えたくなるほどの局面である。にも拘らず易々とこの難局を切り抜けた今のエノハの手には・・

 

ショートブレードよりかなり刀身の長いロングブレードが握られていた。

 

 

数日前―

神機整備室

 

「君の刀身を・・ロングブレードに?」

「ああ」

「別にいいけど・・」

リッカは他に聞きたいことが色々ある表情で現在はまだ、ショートブレードである固定機に鎮座しているエノハの刀身を見る。

「少し神機のバリエーションを増やしたい。いきなりバスターブレードは敷居が高いけどロングならまだある程度今までと同じ感覚で使えると思うんだ。んで・・結構ロング特有のあの『機構』に興味があってさ」

「・・。インパルスエッジだね?」

「当たり。剣形態と銃形態が搭載された新型のロングブレードにしか許されていないレアな機構だけど幸いこの支部には前任者がいる。師事を仰ごうと思ってね。それに・・フェデリコにもこの機構を教えたい。変形が苦手故に異常なほど練習を繰り返し、どんどん速くなっているフェデリコの神機変形の速度を見てると・・逆に強い武器になるかもしれない」

「成程・・。弱点を克服した結果それが逆に大きな武器になる・・痛快だね。そういうことなら協力しましょう!エノハ隊長?」

エノハはリッカが快諾してくれたことに礼を言って微笑み、自分の神機に視線を向けた。

リッカはその横顔を眺める。

 

―・・・。最近・・そんな表情をする事が増えたね?エノハ・・。

 

彼らしい実利と後輩の育成も兼ねた納得できる提案―しかし、今のエノハはほんのすこし何か釈然としない感覚をリッカに残す。

 

 

その数日後

訓練室―

 

「どう?こんな感じか?アリサ」

 

「え、ええ・・。そんな感じでは・・・ない、でっ、しゃろ、かい・・・」

「・・日本語変だぞ?・・珍しいな」

いつもは流暢で綺麗な日本語を話すハズのバイリンガル―才女アリサを怪訝そうな顔で見つめ、砲身からの煙を掃うエノハ。しかし刀身は展開されたままである。

彼の目の前の標的―オウガテイルを模したダミーアラガミは上半身部分を木端微塵に粉砕されていた。おまけにその後ろの堅牢に設計されたハズの壁が黒く焦げた大穴がぽっかり口をあけている。

今目の前でエノハの砲身から爆音と共に放たれた強烈な一撃―アリサ直伝(?)のインパルスエッジ(破砕タイプ)の予想外の威力にアリサのぽっかり開いた口がふさがらない。

 

―ええ~・・。砲身が元々ブラストだから威力は出るだろうなと思ってはいましたけど・・ここまでなんて聞いて無いです・・。自信無くしそう・・。

絶句しているアリサの顔を見てエノハは

「・・・。やっぱりまだ駄目かな。少しオラクルの消費量を上げてみるか・・・」

「い、いえ!なかなかいいんではないでしょうか!!はい!」

―止めてください!!訓練所が当分使用不能になるぐらい破壊されますよ!!ツバキ教官にめっさ怒られます。多分私もとばっちりで!

 

 

数日前―

エノハ直々にインパルスエッジを指南してほしいとの要望を受けたアリサは正直内心嬉しかった。

―やった~!リーダーが私の弟子になるなんて!よ~しっ!ビシバシいきますよ~!覚悟してください!!スパルタで行きますよ!!

意気揚々だった。

 

しかし

その数日後の今日に

 

―これだよ。

 

アリサは内心「ハッ・・・」とでも言う様に大げさに両手を旧時代のアメリカ人のように横に掲げ、呆れたポーズをとる。

 

「アリサ?」

「は、はい何でしょう?」

アリサは気を取り直す。せめてインパルスエッジの先駆者としての威厳を取り戻さなければと。

「インパルスエッジの際の弾頭なんだけど・・アリサはいつもどうしてる?」

「ああ。これも銃形態での弾頭選択と一緒です。考え過ぎる必要はないですよ」

アリサはそう言って背後に用意していたボードに向かって色々書き書き、そしてはきはきとインパルスエッジの説明をしていく。

最近吸収力、学習意欲も高い新人のアネットやフェデリコに色々と彼女も先輩の新型として指導するに当たり、色々と試行錯誤を繰り返すうち、教育の意義を改めて見出したアリサは楽しそうだった。それでいて熱心な指導が今生徒であるエノハにも楽しくないわけがない。

「時と場合、銃身によって当然向き不向きがあります。私はアサルトの銃身なので反動の少ない連射が多いですね。元々インパルスエッジは剣形態の際、無理に銃身を押し出して撃ちだす機構ですから銃形態時のように当然ショックを和らげる機構が十分ではありません。反動だけでスタミナが結構持って行かれます。だから私は負担の少ない連射にして近接攻撃の際のちょっとしたアクセントに使用しています」

「例えば?」

「そうですね・・刀身で交差切りした時に振り返ろうとした敵に眼つぶし感覚でちょっと撃ちだすとか、零距離接近戦でガードが出来ない銃形態のリスクが高い際に剣形態のままオラクル弾を撃てるインパルスエッジは攻守の切り替えが比較的早く出来るので重宝しています」

「成程!参考になるな!」

「あはっ・・そうですか?」

アリサはエノハの正直な関心に心底照れて頬を染めた。尊敬、敬愛に近い感情を持つエノハのその言葉がアリサには嬉しかった。

 

「エノハさんは・・ブラストですからやはり放射タイプか爆破タイプがいいと思います。私より筋力、体力がありますし強烈な反動も裏を返せば敵との距離を少し離してくれるので咄嗟の回避にもいいと思います」

「うん。そうする。少し今度実戦で試してくるよ。本当にありがとう。アリサ。また今度何かおごるよ」

 

「・・いえ。でもその代わり一つ聞いていいですか?・・エノハさん」

「・・何?」

「よろしければ聞かせてくれませんか?この時期にロングブレードを試される本当の訳を」

「・・」

「あ。別にその・・フェデリコの育成とか、戦術としての面での改善をしたいというのを疑っているわけではないんです。でも何かなんとなく・・他の理由もあるのではないかと思って・・。邪推なんですけど」

「・・・アリサ?」

「あ!もし私の勘違いなら気にしないでください」

アリサが慌ててそう言い繕うとエノハは少し笑って

「勘がいいな。アリサは。さすが女の子だ」

「か、からかわないでください!」

「いや。本当に感心してるんだって。・・アリサには話しておくか。いざという時には俺の替わりに出撃してもらうことになるかも知れないし」

「・・・!!そんなに深刻な事なんですか!?」

不安そうな表情を顔一面に目一杯広げる。

「そこまで心配しなくていい。懸念・・まぁ恐らく杞憂で済む程度の話だと思う。この前・・俺の神機が陥った『神機の肥大化』のことは覚えているか?」

「え!?当然です!え、ひょっとしてまさか!?まだ!?」

「慌てないで。一応沈静化したよ。リッカの保証付きだ。でも完全に止まったという保証は無い。んでショートブレードの部品関連は元々神機自体が小さい分、当然コンパクトな物が多いらしいんだ。神機の肥大化に伴う各部品のサイズや種類、柔軟性は元々巨大なバスターブレード、長い刀身のロングブレードに比べると劣る。だからいざという時に部品の代替、換装がしやすく、選択肢も豊富にある大きめの刀身に一旦移行してみようと考えたんだ。完全に沈静化したと確信するまでね」

「成程・・」

「かといって変えた神機で適当こく気は俺には無い。何せ自分の命と飯のタネがかかってるんだからさ。だからこういう風にアリサに教えを請うてるわけ。・・不本意ながら」

「あ。それヒドイです!!!」

「嘘。本当にありがとう」

「・・・もう!!!フフッ・・どういたしまして。そして・・余計な勘繰りを立ててすいませんでした。隊長・・」

「いや。・・心配してくれてありがとう」

「いえ」

「ん・・・やべ・・そろそろ会議の時間だ。また今度何かおごるから!色々とせわしくてごめんな」

「いいえ。さ~て何をおごってもらいましょうかね~?」

「・・・お手柔らかに」

「嫌です」

「・・・そーかい。覚悟しとくわ。・・じゃ、ありがと!アリサ!!」

背を向けたエノハの背に

「はい。お疲れさまでした!」

 

―・・・・。やっぱり勘がいいな。女の子ってのは。

エノハは背に響く真っ直ぐな透き通った声に耳を傾けながらまた微妙な表情をして足早に訓練室を後にした。

 

 

 

 

 

 




読了お疲れさまでした。

少し文字数を稼ごうとしてしまいました。
いつも以上にヘンな文になってると思います。申し訳ないです。
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