GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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どうやらストーリー的に筆の進みにくいとこみたいです。

良かったら今回もお付き合いください。





適性

リンドウの生存が確認された。

 

エノハが榊に手渡した物質―漆黒の翼の解析、それら最近極東支部で各地で確認される残留物からのDNAパターン照合を終えた結果そう結論付けられ、状況がはっきりするまでは混乱を懸念した榊、ツバキの二人からも情報開示のGOサインが出た。

 

思いがけない朗報にアナグラを活況と喜びにあふれた声が響く。この一年足らずの間の度重なる激動の中でもアナグラ最大の衝撃と失意を与えたとも言えるリンドウの損失―

それが解消されるとなればアナグラに喝采と意気の火が灯るのも仕方の無いことだ。

少なくともここにいるメンツで最近来た新人を除けば彼に世話にならなかった者はいないのだから。

 

あの減らず口がまた聞ける―極東の精神的支柱だった男が戻ってくる。

これからの戦いを見据えても、また一個の人間の魅力としても心強い存在を再び向かい入れる為に極東支部は動き出す。

 

「いい年した迷子の愚弟を皆・・!どうかよろしく頼む!」

 

「皆・・お願い力を貸してちょうだい・・」

 

集まった極東支部の隊員、整備職員、オペレーター全員を前にリンドウと最も付き合いの長い彼の姉―ツバキ、そして幼馴染のサクヤが深々と頭を下げ、それに応えるように次々と「言われるまでもない」と言わんばかりに意気の灯った温かい反応がツバキ、サクヤを包み込む。

 

その後その場は散会となり、一人一人が思い思いの雑談を始める。コウタは既に何か作戦を思い付いているらしく、GE女性隊員全員を集め何やら話し合っている。アリサが呆れ顔で聞いているあたり、エノハが「ロクでもなさそう」と、思っていると案の定コウタから後日話を聞くとロクでもない作戦だった。(そして当然の如く失敗した。)

 

「・・エノハさん」

場が夢見心地の様な明るい雰囲気を慮り、その場を冷めさせない様に気を遣ってヒバリはこっそりとエノハに耳打ちする。

「・・第一部隊はリンドウさんの捜索任務ではなく今まで通り主に強力なアラガミ討伐、遊撃を優先した任務を課したいとのことです。榊博士、ツバキ教官からのお達しでして・・」

「・・だろうね。第一部隊のメンツには俺から後で話しておくよ。気を遣ってもらって有難う」

「いえ・・捜索は主に第二、第三班が行います。私も彼らを全力でサポートいたしますので」

「うん。でも・・」

「はい・・?」

「討伐後のちょっとした猶予時間にどう動こうが勝手・・だろ?」

「・・ええ。討伐予定時間を多めにとって捜索に時間を割けるようには調整してみるつもりです。でも決して無理はなさらないでくださいね?」

 

ヒバリの気遣いに改めて礼を言ってエノハはまだ興奮冷めやらない場を後にする。

 

この場に平静を保ったままでいるのは最早

・・・限界だった。

「・・・」

一人この場を去るエノハの背を無言でリッカは見送っていた。

 

誰もいない役員フロア

前支部長ヨハネスの死亡後、支部長の座についた榊がアーク計画で殆どの役員クラスがヨハネスと協力、または共謀関係にあった事が判明した為、殆どの役員が左遷、整理されている。残された一部の者も自ら役員職を退いた事もあり、役員フロアは現在殆ど人がいない状態である。

(それでもある程度アナグラは回っている。「お飾り」の連中が多かったのだろう。)

一人になるのに都合のいい場所だ。

そのフロアの休憩場のソファにどっかりと腰を下ろす。

相も変わらず目の前の自販機には大量在庫を抱えた「初恋ジュース」が席巻しているが何のためらいも無くエノハは一つを購入していた。

 

最近少し味覚が変わった。

 

以前は口に含んだ瞬間に不快感が体を一気に駆け巡ったハズなのに今では大した情動も湧きあがらない。淡々と口に運べる。まるで何も飲んでいないみたいに。

 

煽る様に飲み干し、視界が空けた瞬間だった。

そこには無言でエノハの視界に「侵入」したレンがエノハを見つめていた。

―もう一杯ほしいのか。

そんな戯れの言葉もエノハの今の口からは出ない。

無言で無表情でエノハを見つめるレンの姿に何となく予想がついたからだ。

レンが言わんとしている事を。

 

―解ってる。解っているって。

 

 

 

 

「数も数えられないバカがあれだけ慕われているなんて不思議ですね」

エノハの視覚の中で背後の自販機に寄りかかり、記憶を反芻するようにレンは天井を見上げていた。整った顎の線をさらす。

「・・昔からそうだったのか?リンドウさんは」

「ええ。まぁ・・彼なりのジョークで周りを和ますのと同時にリンドウが自分自身の緊張や本意を誤魔化す為に意識的に行っていた面もあります。基本逃げることや不意打ち、騙し討ちが得意でしたからね」

気持ち良さそうに吐いた煙草の煙に包まれ、軽薄そうに笑うリンドウの姿をエノハ、レン共に思い出す。本心を押し隠し、文字通り周りにいる人間を「煙に巻いた」笑顔を。

「・・」

「でも時々・・どうやら素で間違えているらしいもんだから実は案外深く考えていないんじゃないかと思った時もあります」

レンはそう言って微笑んだ。本当に人間くさい笑顔をする。

「・・・」

「僕はそんな彼に呆れながらも・・正直心地よかった。彼の神機で本当に良かったと思います。彼と共に色んな場所に赴き、色んな人と出会い、敵と闘い、喰らってお腹いっぱいになってる僕の隣で疲れて横になったリンドウと一緒に空を見上げてました。動物の形した雲を探して。子供みたいでしょ?」

レンは危ういほど美しい表情でそう言って笑う。

「・・同時に守るべき物を守り切れた安堵感と喜びも一緒に味わいました。しかしさらにそれと同時に・・守り切れなかった事を嘆き、悲しみ、塞ぐ時もありました。それも全部・・全て共有して。何せいつも僕らはウザイほど一緒だったんですから。神機と適合者は常に一緒、どこに行くにも今のこの時代は神機が必要なんですから」

「レン・・」

「・・エノハさん」

「ん?」

 

 

「やはり僕は貴方がいい。一緒にリンドウを殺すパートナーとして。いや・・貴方しかいないんです。僕には」

 

 

その言葉に反応せず、エノハは無言のままだった。

自分の中で既に結論が出ていた物を答え合わせしているみたいに淡々と聞いている。

 

「榊博士は・・恐らくある程度気を利かせて楽観的にリンドウのアラガミ化の懸念を軽めに見積もって皆さんに話していたんでしょう。でも・・それでも僕等ほどは悲観していないはずです」

「・・・」

「エノハさん・・直接あの翼に触れて解ったでしょう?そして今や僕・・リンドウの神機にある程度適合した今の貴方になら解るはず・・もうリンドウのアラガミ化の侵食が最早手遅れな程侵攻している事を。通常の神機使いならもう・・手の施しようが無いほどに」

金色の目が真っ直ぐと捉えた。ただ一人の目の前の人間を。ただ一人の少年を。

「もはや・・リンドウは殺せない。人体によって培養され、変異したオラクル細胞・・おまけに不死のアラガミ―ハンニバルの因子を立てつづけに取り込んでいたリンドウに対抗できるのは・・かつてのリンドウの神機であった『僕』とそれを扱える・・貴方だけです」

 

 

アポトーシス。

どのような生物にも存在する自己の細胞破壊のメカニズムである。

生物本体の状態を最良に保つ、または進化上選ばれた「形」を形成するため、ダメになった部分、いらない部分を自ら「殺させる」自己形成、保存のプログラムであり、生物を形作る上で不可欠な一端を担っている。

例えば人間が胎児の際に発生当初は平べったいただの皮膚の塊であった頃の「手」の部分の細胞を等間隔で殺し、指を形成して人間の「手」と言う部位を形作るのもこの因子の作用である。

自らの進化を促すために自らの死を強要させる因子だ。

 

全ての神機のコアの内部にある「アーティフィシャルCNS」は人がある意味アラガミである神機を制御する為に開発された機構である。

これによって適合した人間は喰われることもアラガミ化することも無く、ある程度自分に意志に沿って神機を制御できる。

つまりアラガミ化をある程度抑える、暴走するのを防ぐと言うのは神機の異常進化を妨げる―即ち自殺因子―アポトーシスを行使していると言えるのである。

不要な物を死滅させ必要なものだけを残し、継続的に運用するに値する安全な数値に抑え、初めて「神機」という物体は存在しているのである。

 

つまり・・極端な話をすればその因子をもつコアが「全て死ね」と命じれば・・構成するオラクル細胞は死滅するのである。

 

これがアラガミ化を引き起こしたかつての適合者を始末する上で適合した神機を用いることが最良と言われている根拠だ。

神機のオラクル細胞によって変異した適合者をその体の内部で暴走するオラクル細胞ごと葬るのである。

 

しかしアラガミ化した当の適合者にしか扱えないはずの神機を扱い、「死ね」とコアに命じさせる適合者がまた必要になる。

どうやって?・・という疑問は当然のことである。

 

しかし今レンの目の前にはいる。

 

第二の適合者が。エノハが。

 

貴方がいい。貴方しかいない。

貴方は全てを備えている。

 

一番のネックである「適合」と言う壁を超え、おまけに戦闘能力、判断力も高い極東の最強戦力。

 

レンはそれだけでもよかった。充分だった。

かつて主だった者を・・暴走し、このまま全ての物を破壊する哀れな怪物となり果てる主を楽にしてあげられる存在―それだけでよかった。

 

しかしそれだけでは無かった。

このエノハと言う少年の「中」にあるものは。

レンは彼との奇妙な精神の同居生活の中で見出していた。

 

僥倖とも言える彼の新たな「適性」を彼の中に居座ることでレンは理解した。非常にレンにとって都合のいい新たな「適性」を彼の中に見つけた。

それはとある「感情」。

他のアナグラにいる誰にも出来ない、持たない、存在しない感情をこのエノハと言う少年は持っていた。

意外すぎる特性。

 

「エノハさん・・廃教会での・・あの時のリンドウの選択は本当に皆を・・貴方を幸せにしたんでしょうか?あの後リンドウから残された全ての物を背負うことになった貴方を」

 

「・・何が言いたい?」

 

「・・貴方はこの極東で最も・・リンドウに怒りを覚えた人間であるということ。あの日全ての重荷を・・リンドウが背負うべきだったものを居なくなった彼の重荷を全て背負わされた貴方の中にわずかに、でも確実に存在している感情―貴方はこの極東で唯一『リンドウを殺す事』に躊躇が無くなる可能性を秘めた人間だと言うことです」

 

「・・・!!」

エノハは大きく目を見開いた。眼球がぶるぶるぐるぐると揺れる。

 

「ソーマさんは・・ああ見えて優しい人です。見かけはつっけんどんでも仲間が次々に目の前で死んでいく中でいつもと変わらず、軽い調子で接してくるリンドウを心の奥底で慕い、そして頼りにしていました。きっと・・ソーマさんにはリンドウは殺せません。サクヤさんは言わずもがなです。そしてアリサさんも自らのせいでリンドウを窮地に追い込んだ負い目を捨て切れる筈がありません。とても戦えないでしょう。例え目の前にいるのがリンドウの変わり果てた姿でアラガミで攻撃をしてきたとしても・・」

 

「で、きるわけ・・ないだろ・・俺にも」

「いえ・・」

「・・・あ?」

「貴方には出来るはずです。なぜなら貴方は誰よりも。このアナグラにいる誰よりも・・実は非情で冷酷ですから」

「・・・!?」

「確かに貴方は普段は虫も殺さないような人だ。でも・・自らの生死、そして周りにいる大事な人間を脅かそうとする存在を貴方は決して許さない。それが例えかつての仲間であろうと世話になった上司であろうとも」

「・・・!違う・・・」

「違わないです」

「違う・・」

 

 

 

 

「・・・。アーク計画の発動の日・・瀕死のソーマさんの父親に止めを刺したのは誰ですか?」

 

「何故・・今貴方は刀身をロングブレードに変えたのですか?」

 

「『僕』を・・『ロングブレードであるリンドウの神機』を扱う為ではないのですか?」

 

「実は貴方は着々と・・リンドウを殺す為の用意を貴方はしていた。違いますか?」

 

「貴方は多くの別れを経験した。隊長という立場上多くの戦場に駆り出され、成すすべなく失われていく命、特異点の少女を失い、ソーマさんの父親をやむを得ず殺した。・・本来は全てリンドウの役目だったものです。しかし彼は居なくなった。貴方はいきなり理不尽にもそれら全て受け継ぎ、被ることになった。そんな貴方がリンドウに対して・・全く怒り、憤りを覚えていないとはっきりと言いきれますか?」

 

「そして今、あろうことかそのリンドウはアラガミ化し、いずれ・・貴方の大切な仲間を襲い、傷つけ、殺してしまうでしょう。貴方はそんなこと決して許せないはずだ。我慢ならないはずだ」

 

琥珀色の目がエノハを射抜くように光った。

 

 

「貴方はそのアラガミを殺せるのか?答えは・・・YES・・でしょう?」

 

 

「貴方には適性も能力も生まれ持った性格も、そして他の人達では消しきれないリンドウに対する『情』を振り切れる可能性を秘めた人なんです」

 

「もう一度言います。貴方は・・唯一リンドウを楽にすることが出来る。殺す―」

 

 

ガン!!!

 

 

レンの左目周辺をエノハの右拳が貫通する。そレンを貫いたその拳は背後の自販機のガラスを破った。

右腕を・・拳が裂けたのだろう、赤い血が伝っていく。

 

自己嫌悪で。自分に対する憤りで。その右腕は震えていた。

 

左目を貫通したエノハの拳を意に介することなく、レンはただじっと琥珀色の目でエノハを見つめている。

ゆっくりとレンの左目からエノハの拳が抜かれていく。

 

血だらけのエノハの拳の中には・・一片のガラス片が握られていた。

 

「それ以上言うな・・・それ以上言ったら・・こいつで頭を貫く」

 

エノハはそう言って鋭いガラスの切っ先を自らのこめかみに突きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おまけ

「・・ちゃんと右腕を診てもらってくださいね。大事な体なんですから」
レンはそう言って未だガラス片を握ったまま立ち尽くすエノハにそう言い残してふっと消えた。

―いずれ解る日が来ます。貴方がどれだけ逃げようと否定しようとも向かい合わなければならない日が。

エノハにはその最後の言葉を伝えず、レンは彼の「中」で黙りこくった。

レンのその言葉は数日後―現実となる。
タツミを始めとする第二、第三班合同のリンドウ捜索部隊が緊急の通信を最後に消息を断った。
ヒバリが最後に聞いた通信の言葉は

「コイツは・・マジでやばいな」

歴戦を潜り抜けた極東支部で現在最年長GE―タツミの諦めにも感じる呆れたような声だった。
その声を聞いたヒバリはこれ以上ない緊急性を確信。
すぐさま救援要請を出した。

相手は当然―

エノハだった。


読了お疲れさまでした

バケ学は基本よく解らないのでこの「アラガミ化」と「CNS」と「アラガミ化GEの処理方法」のくだりは矛盾点あると思います。データベース開いても正直あまりよく解らない・・。
で、ちょっとオリジナル設定も入れてテキトーにお茶を濁しています。さらっと流して下さい。

正直GE2RBで出てくる新キャラがそれ専門のキャラらしいので、それをある程度知ってからこの手の話を書きたかったんですが、恐らくRBのストーリー上根幹になる部分なので情報が全く出てこない・・。
タイミングが悪かったと諦めよう・・。うん。

今回もお付き合いありがとうございました。






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