GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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今回もよろしくお付き合いお願いします。

やはりこの主人公は書きにくい。


前哨戦 下

「・・・・!」

一体何が起きているのか。

 

目の前の光景は果たして何なのか?コレは最早ゴッドイーターとアラガミの戦いと言えるのか―

そう問いかけたくなるタツミ達を置いてけぼりにその光景は厳然たる現実として彼らの目の前に拡がる。

 

その数秒前―

エノハが発電所跡、発電施設の冷却用水の溜池の中に身を沈め、それによって生じた水面の波紋が消えるまで浸帝はじっと目を離さずに水面を見つめていた。

驚くほど静かな時間であった。

ほんのわずかな・・正に嵐の前の静けさであったが。

 

突如溜池の中央の水面から一つの波紋。

静かな序幕。

しかし次の瞬間には異常なほどの光景に移り変わる。

渦を巻くように水面が盛り上がって嵩を増し、追い出された水が水辺から離れたタツミ達の足元をさらう程まで達した。

その彼らの前に立つ浸帝―ハンニバル浸食種の足元は既に当然ながら水浸しであるが彼の眼は一切の逡巡も無く盛り上がる水面を睨み続けている。

そして一気に体から発せられる黒い炎を迸らせ、迎撃態勢を整えていた。足元にかぶる水が彼の足に触れ、すぐに高温に達し蒸気を上げる。

 

勝負は

 

一瞬。

 

湧きあがっていた水面が一気にしぼんだかと思うと水面が黒く光る。と同時に溜池の水が一瞬にして沸騰、一部蒸発し、まるで津波が来る直前の浜辺のように浸帝の足をさらっていた水が一気に引いた。

そして沸騰し、煙を巻き上げた水面を引き裂いたのは―

 

先程放たれた物とは比較にならない大きさを持ったまるで神話の神が扱う巨大な神槍の如き黒い槍のミサイル―ブラッドレイジ。

 

―――!!!!!

タツミ達は理解する。先程エノハが水中から放ち、彼らの目の前で消滅した白い弾丸は彼からの警告だったのだと。この場を少しでも離れて巻き添えにならない位置まで逃げろという合図だったのだ。

 

「・・!逃げろ!!!」

 

背後でタツミ達が背を向けた事は百も承知で浸帝は振り返らなかった。今はこの目の前の最早厄災クラスの攻撃をどうにかするのが最優先事項だ。

 

浸帝は二本足で立ち、両腕を前にして構える。その仕草は非常に人間くさい。

彼は逃げず、まともに自らの体長にすら匹敵する巨大な黒い槍を両掌で抑えつけるように真正面から受け止めた。

 

猛烈ならせん状の回転を加えられたその切っ先を逸らすのは容易ではない。

浸帝の掌が削られ、煙を上げる。先程までの度重なる強烈な衝撃にもまるで揺らがなかった強靭な浸帝の足腰を以てしても押され、足場を三叉の足の鋭い爪で引き裂きながらじりじりと押されていく。

ピシィッ

浸帝の右手甲が割れた。先程のエノハの神機による捕食により、盾に既に走っていたひび割れがさらに広範囲に拡がる。亀裂が弾けるように形成され、籠手の破片が飛び散る。同時に浸帝は苦痛に呻いた。

左右の腕の力のバランスが崩れた結果、一気に均衡の崩れた方向へ槍の先端は流れ、浸帝の右肩が抜けんばかりに後方に大きくはじかれ、上半身が大きく右側に時計回転でねじられる。高速回転しているミサイルの側面は浸帝の右肩を掠め、大きく抉っていきながらも結果的に体の中心―弱点部位が多く点在する「芯」への直撃は避けた形になる。

浸帝の背後の発電所を覆う灰色の壁を難なく貫いて目標を見失った黒い槍はドンよりとした灰色の虚空へ吸い込まれていく。

 

浸帝は凌ぎ切った。

エノハの

 

「初手」を。

 

ズオッ!

熱湯と化した水面を裂いて今度はオーラを纏ったエノハ本体が躍り出、ミサイルと同じ軌道で浸帝の体の中心を貫くべく神機の切っ先を向けて突進してきた。左手で神機の先を抑えつつ突きの姿勢で突っ込んでくる。

 

浸帝も当然その意図に感付いていた。右側に大きくねじられた上半身の反動を利用し、一気に右拳を躍り出たエノハに向けて振り下ろす。

 

「っ・・・あぁああっ!!!!」

 

・・・・ガァッ!!!!!!

 

両者の腹の底から絞り出した声とともにエノハの最高速力の衝きと浸帝の渾身の右拳が接触する。

 

 

 

 

 

結果は・・あたりさわりの無いものだった。

双方の右肩が接触した各々の攻撃の先端から放たれる強烈な衝撃で大きく弾かれ、浸帝の巨体は数十センチ、少年の体は神機の弾かれた重みで約三メートル程後退した程度である。

これからまだ熾烈な攻防が続く事に疑いの余地ない光景にタツミ達には見えた。

 

しかし―

 

闘いはその時点で終了していた。

 

エノハ

そして浸帝

 

双方共に既に戦意が存在していなかった。

 

奇妙な光景であった。

つい一瞬前まで誰も近づくことすらも許されない殺気を向きだしにして攻防を続けていた両者から全く以てそれが消えた。

ただ両者お互いの距離はそのままに直立したまま動かなくなった。

エノハ、そして対峙している凶暴で強大なアラガミ―ハンニバルさえ両手をだらりと下げ、目の前の己に比べたら遥かに小さい少年を見下ろしていた。

目の前の少年はうつむいている。浸帝から目を逸らして。

そのがらあきの少年の頭部―千載一遇のスキを目の前にしても浸帝は動かない。浸帝の原始的な肉食生物の如き風貌―しかしそこから今は穏やかにすら見える程凶暴さが失せている。

 

そんなやり取りの数秒後、浸帝は視線をエノハから切った。その所作にも何らかの意図や攻撃性は感じられない。

ズン・・

まるで人が道端で意図せず出会いがしらに肩がぶつかって遮ってしまったお互いの進路を片方が修正し、自然にすれ違う様な光景。浸帝はエノハの横をゆっくりと通り過ぎていく。

 

俯いたまま僅かに横目でエノハは浸帝の後ろ姿を見る。

その後ろ姿はこう言っているようだった。

 

―ぶつけた肩は大事ない。気にするな。

 

どうせすぐに

 

元通りだ

 

全く異形の姿にもかかわらずその背中はかつてのあの男の後ろ姿とだぶる。エノハの―いや、エノハだけではなく他の皆の先頭に立って闘い、そして逃げるときは一目散に筆頭で背を向け逃げるあの背中。

必死に追いかけたその背中と。

 

あの時と違うのは・・今の自分では決してこの背中を追うことは出来ない。出来そうもないということだ。

お互いの視線を全く合わせぬまま両者の距離を一方的に浸帝は離していく。

 

ゆっくりと。

しかし確実に。

 

そして浸帝はある程度の距離を歩くと思い出したように走り始めた。ひらりと身軽に舞い、発電所の灰色の塀を悠々と飛び越え、浸帝は去っていく。

「逃げる」と言うには余りにも落ち着き払った動作で。

 

 

「・・・!・・すっげぇ・・追い払ったよ」

シュンは今気がついたかのように感嘆の声を上げる。

「ふぅ・・。っと・・・!お前ら・・けがは?」

タツミも気を取り直したかのようにシュン、そしてカレルの方を見やる。

聞かなくても解るだろう・・とカレルは溜息を吐きつつ頷いた。特に巻き添えを喰らった様子は無い。一度は死を覚悟した程の修羅場の呆気ない幕切れに肩透かしを喰らい、妙な非現実感が未だ抜けないながらもタツミは歩き出す。

「・・・いや~エノハ・・。助かったぜ~・・・」

未だ俯き、無言のエノハに向け、てくてくと歩きながらいつものタツミらしい調子を取り戻しつつ礼を言う。

しかし、エノハにはタツミの礼に対する反応は無かった。

代わりにタツミには声が聞こえた。絞り出すようなかすれた、不明瞭な声。

 

「・・・げるな」

 

「ん・・?なんか言ったか?エノハ?」

 

 

 

 

 

「逃げるなっ!!!!!」

 

 

 

 

灰色の虚空にそう叫んだ。

 

 

 

―・・・それは果たして誰に対して言った言葉なのだろうか?

 

それはきっと去っていく「あの人」に対してではない。

 

未だこの場で彼に背中を向け、目を背け、己の宿命から逃げ続ける自分自身に対してだろう。

 

 

殺すつもりだった。

 

レンの言うとおりだ。

俺はあのアラガミを―かつての上司であり、恩人でもあるリンドウさんと知りながら躊躇い無く切りつけた。まったく手加減もなく。

熱くなって周りが見えなくなるでもなく、比較的淡々と現在出せる自分の最高戦力を発揮した。

 

俺の中にリンドウさんに対して僅かながらでも確実に存在する「憎しみ」、または「確執」と言うには余りにも小さな焔が熱くなるでもなく、かといって戦意喪失するでもない塩梅で言い換えるならば「程良い殺意」を形成したのを自覚する。

それに俺自身が元々持つ「覚悟」が上乗せされた結果があの容赦ない攻撃だ。

 

しかし一方でそれを否定した自分がいる。必死で目を背けた自分がいる。

その証拠が今俺の手に握られている神機だ。散々レンに「これでは殺せない」と言われた自分の神機をレン―リンドウの神機の替わりに持っている何とも間抜けな姿だ。

否定したかったのか?

「俺にそんな気持ちは無い」と。

「かつて世話になった、命をも助けられた上司を殺す理由なんて俺には無い」と。

せめて形だけでも取り繕いたかったのか?

 

デコボコだ。半端だ。やること為すこと。

今この時を逃すことを、彼を見逃すことによる多大なリスクによってこれから引き起こされかねない惨事を一生後悔することになるかもしれないにも拘らず―

現状この足は動いてくれない。

 

現状維持。

 

「リンドウさんは去ったんだ。誰も殺すことなくこの場を去ってくれた。それでいいじゃあないか―」

 

この「現状維持」が実はどれだけ非難されるべき事でも、取り返しのつかない行為とは彼自身百も承知でも。

この足は動かない。

 

 

正直に言うと当然殺したくは無い。

でも、殺さなければならないとなれば殺せる。理由は曖昧な言い方で非常に嫌われる表現だが・・

「無い事もない。」

それも熱すぎること無く、かといって冷め過ぎている事もないある意味非常に都合のいい些細で、冷静で、細く、見えづらい。しかし一方でしなやかで完全に断ち切るのは難しい感情だ。

 

しかしそれを否定したい自分もいる。

こんな自分がいることを認めたくない自分がいる。

こんな幻滅される様な感情を持っている自分がいることを認めたくない。

 

極東の誰しもに慕われ、愛され、皆が帰りを待ち焦がれている男を殺す為に。

否定しながらも一方では冷静に下準備を図っていた自分を・・

 

認めたく無かった。

 

その結果がこの有様だ。

 

畜生―

 

畜生。

 

逃げるな。

 

でも。

 

逃げたい。逃げ出したい。

 

 

切っ先と拳が触れた時―

脳内に響いた声、懐かしい声。

 

 

新 入 り

 

逃 ゲ ロ

 

・・それが簡単に出来れば苦労しない。貴方は既に居ない人で。存在しない人で。

俺に命令を出せる人間はもう居ない。

 

だから戻ってきてくれよ。今目の前に。そして命令してくれ。

 

改めて

 

「逃げろ。俺も逃げるから」って。

 

 

 




読了お疲れさまでした。

今話執筆中…

カタカタ
「まだ熾烈な攻防が・・・」
カタカタカタ
「続くことに疑いの・・」
カタカタカタ・・

ピク・・
「・・ん?」

「熾烈な攻防」
「熾烈な」
「熾烈」

「熾」

「熾」

「熾」。

ズバババ
びゅ~ん
バババババッ!
シャキ~ン
ズオッ!
ザシュッ…
ザン!

が、渋い彼は「熾帝」と・・。

あ、あと一つ・・・。

じ、「迅帝」あたりか・・?
な、なんか「〇ン〇ン」のNルガKルガくさい!!
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