GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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今回もよろしくお付き合いお願いします。

エノハ躍動。


右手に殺意を 左手に想いを 改

静かな夜がコンマ一秒の後に戦場音楽を奏で始める。

 

しかし、出だしは静かだ。

浸帝の大振りの天からの鉄槌は思いがけないほど静かな着地音を残し、捉えられなかった獲物―エノハに対して無駄な怒りの破壊音を響かせることは無かった。

「・・・!」

軽々と跳躍し、初撃を避けたエノハの目が浸帝に注がれ驚愕で見開かれる。浸帝の拳は地を突き刺す握りこぶしではなく、地を覆うように掌を広げていた。

「浸帝」の名の如く、黒い何かをずぶりとセンタードームの床を浸食させていく。

同時にエノハは辺りを見回す。するとエノハの着地地点周辺の床が広範囲にわたりどす黒く変色していくことが確認できた。

浸帝の初手をエノハは理解した。

ゴウッ!ボウッ!

黒い炎の間欠泉が次々と吹きあがる。

 

常人がまともに食らえば即「影」になりかねない高温を放つ黒い火柱が空中のエノハを襲う。

「ふっ!」

しかしエノハは片手間の如く、右手の神機―エノハの通常の神機より堅牢なリンドウの神機の盾を展開、火柱を捌いて空中で移動、その先にも今にも噴き出しそうな黒い「火口」を目で捉えつつ、

カチャリ・・

右手のリンドウの神機をエノハの神機に持ち替える。

 

一見―

二つの神機を両手に持っているエノハは二刀流に見えなくもないが実際の所、一刀流と殆ど変りない。

右手、つまり腕輪のある側でないとエノハの神機は本来の「アラガミに対する殺傷力」という最低限の性能の発現、そして神機形態の銃、おまけに盾の変形すら出来ない。

 

必要、状況に応じて各々の神機の機能に合わせて持ちかえ、切り替えると言うのがエノハの現在のスタイルになる。

 

つまりエノハ本来の第二世代神機の刀身、盾、銃身。

そしてリンドウの旧世代神機の盾、そして刀身と都合5パターンの性能の異なる神機をシャッフルして使い分けることが可能である。

一方で持ちかえ→神機接続の一瞬のタイムラグが命取りになりかねない危険な戦闘スタイルでもある。

ただし―

 

(炎はボクが防ぎます。エノハさんは銃撃を!!)

―了解!

 

腕をクロスさせ、左手のリンドウの神機の盾で業火を抑えながらエノハは右手に持ち替えた自らの神機を銃形態に切り替え、浸帝の地に這った掌向けて銃撃。

浸帝は右手に突き刺さるエノハの銃撃を躱す為に反射的に手を地から離して、左腕一本でバック転。エノハから距離を離す。

地から吹き出す黒い業火は止み、着地位置を慎重に選んでエノハは着地した。

 

「・・・」

ブン!

無言で左手のリンドウの盾にわずかに残った黒い残り火を払って浸帝を見据える。

そんなエノハをまた浸帝もにらみながら一瞬の思案にふける。

このやり取りで浸帝は挑戦者の特性の大体を理解した。

 

レン側―つまりリンドウの神機はエノハの腕輪の無い左手に持っていたとしてもレンによってオートに盾、刀身の切り替えが可能だ。

正し、あくまで左手で利用できるのは盾形態のみ。左手では剣形態に切り替えることは出来ても「機能」は発揮できない。ただのデカイ重い棒だ。

つまりエノハの神機、リンドウの神機どちらの場合でも攻撃の際には右手に持ち替え、殺意を込めない限り浸帝を殺傷することは出来ない。

「意味のある攻撃は右手に集中する」

浸帝はそう理解する。

 

コツーンコツーン・・

 

ズン・・ズン・・

 

両者は距離を離し、にらみ合ったままで円を描くように反時計回りにゆっくりと歩く。

お互いに遠、中距離攻撃、そして一瞬でお互いの間合いを詰める脚力を持っている。

 

アウトレンジで撃ちあうのか。

それとも

インファイトで殴り合いか。

 

―いや。奇襲だな。

 

エノハが仕掛けた。

浸帝から死角の右腰にぶら下げてあった黒い物体―スタングレネードを固定していた紐をゆっくりとほどき、ピンを抜く。支えを失い、ゆっくりと足元に落ちていくそれを・・

コン!

エノハは器用にヒールキックでお互いの距離の中心地点の空中へ飛ばした。

死角から飛んだ飛来物への浸帝の反応は間に合わない。

 

カッ

 

 

まさしく「ヒール」。

スポーツのルールの範囲内では決して許される行為ではない眼つぶしを平然でやってのける。

何せこれは試合ではない。実戦なのだ。

―しかし

相手はリンドウの記憶や思念の一端を持つ怪物だ。

人間時代にやたら使ってきたこの道具の利便性、有用性は百も承知である。

光と自分の目の間に反射的に籠手を割り込ませ、光による視界の制圧を最低限に防いだ。視力は生きている。

敵の思惑は外れた。外した―

 

―だろうね。

 

エノハもまた知っていた。その便利な道具を重宝した側故にその対策を知っている事も百も承知で或る。

籠手で防ぐ。眼を塞ぐ。

その程度の効果で十分。それ以上期待していなかった。

!?

視力を失っていない浸帝の目に次に映ったのはまたもや黒い物体。

それも今度はそれが三つ。足元に転がってきた。

またスタングレネード。それも三つ。

無駄遣いだ。

が、その形状は本来GEに支給される円柱状のスタングレネードと違い、丸みを帯びた形状であった。

 

それはアラガミ対策としては既に無能な過去の兵器とされたはずの手榴弾であった。

 

ド、ド、ドン!!

ピンの抜かれた順に時間差を伴って手榴弾は浸帝の足元で破裂。破片、砂塵が次々と浸帝を襲うが当然何の意味もなく、頑丈でしなやかな鋼体に弾かれていく。

浸帝は手榴弾そのものの殺傷力ではなく、この巻き上げた砂塵が狙いであることは解っていた。

ヒュン!ヒュン!

案の定、その砂塵を裂き、向こう側から放たれたエノハのオラクル通常弾頭が浸帝に着弾する。

僅かなダメージだが、逆にそれが浸帝の苛立ちをふつふつと増長させた。

この程度の小手先で、チマチマと蚊が刺すような攻撃を繰り返す小物に浸帝のフラストレーションは決壊。結果アラガミ側の意思が色濃く反映され―冷静なリンドウ側の知識、記憶、意志に従って慎重な対応をする傾向を失った。

戦闘本能が理性を完全に上回ったのだ。

 

それから繰り出される手はただひたすらの暴力である。

 

ガァアアアアアァァアアアッ!!!!

 

怒声と共に浸帝、黒炎のオーラを纏って活性化。

スウッ!!!

普通の生物であれば肺気管が破裂しそうなほど勢いよく息を吸う。手榴弾が巻き上げた砂塵が飲み込まれるほどの深い呼吸の後―

ゴオオオオオオオオオオオっ!

今まで見た同種の物とは比較にならないほど極太の黒い火炎放射が残った砂塵ごと全て焼き払う様に前方を薙いでいく。

「くっ・・・!」

同時に蒸発した砂塵の隠れ蓑から追い出され、飛び出したエノハを火炎放射を吐いたまま捕捉。お構いなしに彼を火炎放射で追いかける。

 

タッタッタタッタ、カンカンカンカンカンカン!

 

エノハは火炎放射に追い立てられ、ドームの垂直の壁を走り始める。そんな大道芸に一切の喝采を浴びせることなく、怒りに我を忘れた浸帝は熱線を浴びせ続け、追い立て続ける。

「盾で防いでみろ。盾ごと蒸発させてやる」とでも言わんばかりの熱戦が執拗にエノハの走った軌跡にそってドームの壁をまるでアイスのように溶かし、溶岩のように液状化させていく。

エノハは垂直の壁を走り続けながら現在の彼にとっては上方向、重力の方向に従えば斜め下の方向に神機の銃身を向けた。狙いは当然浸帝である。

ダン!ダン!ダン!

浸帝の頭部、眼球に向けて再び発砲。チクチクと浸帝の神経を逆なでする様に的確に着弾していく。

さらに怒り狂った浸帝は一旦火炎放射をとめた。そして代わりに・・

 

ガァツ!!!

 

ホーミング機能をつけた三つの火球を同時に放射。三方向から逃げ場のない軌道で壁を走るエノハ目がけ飛んできた。

重力を無視した「疾走」からエノハは「落下」に切り替え、エノハは盾を構える。

その盾に一発目が着弾。

「ぐっ!!」

背後の壁―ドーム天井に叩きつけられる。そこに矢継ぎ早に二発目、三発目が着弾。

 

ドッ!!

同時ドーム天井から大爆発が起き、黒い火柱がドームの外部へ風船から空気を抜いたように勢いよく夜空に向け、噴き出す。

着弾した地点からガラガラと黒焦げになった天井の破片が落ちる光景を浸帝は眺め、自分の威光を知らしめる咆哮をあげた。

 

―が。

「地の利」では前回ここで戦闘しているエノハの方にやや分があった。

 

ドゴン!

 

突如ドーム天井中心地点。ドームの最も高い地点から破壊音が響き、そこから一つの物体が高速で落ちてくる。

そして同時に現在、エイジスドームの中心地点に在る浸帝の尾がその物体の落下地点に位置していた。

 

ガスン!

 

キシャアっ!!!!!?

 

全くの死角、思いがけない背後―突然過ぎる尾の衝撃に浸帝は思わず悲痛な叫び声をあげ、反射的に振り返る。

そこには自分の身長より長い尾の先端がまるで鋭い櫛で頭部を貫かれ、固定されて捌かれる直前のウナギやアナゴのように地に張り付けられていた。

 

・・・ぞくり

尾の衝撃とともに浸帝の巨体に走る。言いようもない危機感、嫌悪感、不安感、倦怠感が。

 

まずい。

これは。

この物体は。

 

「接続」はされていない為、痛みは無いが浸帝は本能的に察知する。この物体が唯一無二の自分を葬り去れる可能性を秘めた危険な物体である事を瞬時に理解した。

その恐怖が浸帝の巨体を襲う。恐怖とは無縁のはずの無慈悲な王がまるで駄々っ子のように抜けないその神機を必死で抜こうと、逃げようと足掻いていた。

だが深々と突き刺さったその神機―

血のように赤い神機は決して尾を離してくれない。喰い込んだまま離そうとしない。

 

そしてその神機に遅れ、ドーム中心の天井から真っ逆さまに落ちてくる物体がある。

 

エノハだ。

 

一足先に落下し、浸帝の尾を貫いた神機―リンドウの神機を目がけ、逆さまのままエノハは右手をのばし―その柄を掴む。

 

先程一つだけ言い忘れたことがある。

神機形態の変化についての事だ。

リンドウの神機やエノハの神機がエノハの右手ででないと変形出来ない神機形態がもう一つある。

それが・・

 

 

・・・ぐわっ!!

 

 

捕食形態だ。

 

 

 

ばちん。

 

エノハが柄を握った瞬間、リンドウの神機は変形。黒く禍々しい顎が鋭い牙を携えた大口を開き、浸帝の尾を軽々と噛みちぎった。

 

ギシャアアアアァァアアっ!!

 

浸帝の激痛とそれに対する怒りを含んだ絶叫がやかましくがなるドーム内で淡々とエノハは小さく、しかし力強く呟いた。

 

「・・・捕食成功」

その言葉と同時に―

 

ズオッ!

 

金色のオーラが一陣の風を纏って着地姿勢のエノハの周囲の粉塵を巻き上げる。

 

 

その後ろ姿を浸帝は背を向け、首だけ振り返りながら恐れ慄いた。

 

右手に唯一自分を殺せる武器を持ち、理知的で打算的。冷静で基本冷酷、無慈悲。

そんな存在が今、さらに強力な力を纏って立ちはだかろうとしている事を王―浸帝は理解する。

アラガミという絶対的な捕食者の中でも頂点に立ったはずの自分がたった一人の小さな人間に歯が立たない。

 

そして確信する。

 

このままでは確実に殺される。

 

馬鹿な。

こんな馬鹿な。

 

そして―

そんな浸帝の悪夢をさらに増長させる出来事が目の前で起こる。信じられない光景であった。

 

 

 

―レン。

 

(はい)

 

―「二つ」くれ。

 

(はい)

 

 

 

 

(・・・・受け渡します!!!!!)

 

 

 

 

・・・・!!!

目の前の光景が悪夢ではない現実である事を浸帝は思い知る。厳然たる事実として浸帝の体に突き刺さる。

先程より明らかに増したまるで暴風のような金色のオーラが引き起こした「波」がびりびりと浸帝の巨体に。

 

「殺される」

そう思った直後の相手がさらに別次元の高みへと超越した姿を浸帝は凝視する。

リンドウの記憶にすらデータが無い。ありえない光景。

たった一人の人間がたった一人でこの高みに登ることは本来不可能なはずである。

 

 

エノハ

―解放状態第三段階解放。

 

「前回」の鉄塔の森での戦闘では冷却用水の溜池―つまり水中での「発動」により、その姿、その在りえない事実を確認出来た者は浸帝、そしてタツミ達を含め誰一人いなかった。

 

しかし今―

まさしく極東支部最強戦力の個人の最大戦力が全ての疑問、矛盾を無視し、確固たる姿をして存在していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

研ぎ澄まされた感覚。

異常なほどの高揚感。

全ての事が叶いそうな全能感。

 

・・・正直に言うと第三段階のこの「感覚」がエノハはあまり好きではない。

自分が最も「人間」から遠ざかっている瞬間だと思うからだ。

 

それでも人はそれを持たないと、行使しないといけない時がある。

それが今だ。

 

―いくぞ・・レン。

 

(・・はい!)

 

 

 

エノハはレンにそう問いかけて―

エイジスドームの床に突き刺さった赤い神機から右手を離した。

そして左手に持っていた彼自身の愛機に持ち替える。

 

その所作を見て浸帝は

 

・・・安堵した。

 

浸帝を一気に死の恐怖のどん底に叩き落とした危険な赤い神機をあろうことかこの目の前の人間が手放した事に心底安堵した。

 

 

その弛緩を―

 

エノハは見逃さなかった。

 

 

――――!?????

消えた。

今まで確実に捉えられていた人間の動きを浸帝は今―全く知覚することが出来なかった。

 

その人間は既に浸帝の間合いに入り、愛機を既に突き立てようとしていた。

 

 

 

―アラガミ(おまえ)に用は無い。・・「あの人」を出せ。

 

 

 

 




今回も読了お疲れさまでした。

バースト編に入るにあたり、主人公エノハの戦闘シーン、描写が減ったのはレンを取り込んだことで得たこの能力のせいです。

・・神機シャッフルめんどくさいな~。
二刀流駄目ですからね。原作GEの設定上。

今回もお付き合いありがとうございました!


11月30日 追加

おまけ

浸帝の左眼球の下に強烈な突きが突きささる。
激痛に怯み、亀の首のようにのけぞった浸帝の顔に今度は横殴りの斬撃が加えられ、浸帝の首は大きく弾かれる。
・・・グッ・・・グガッ!!
苦し紛れに鋭い爪を開いた右腕を着地したエノハに振るうが、捉えた感触は無く、変わりに
―!!??
右掌に新しい激痛が走った。のけぞった顔を激痛の方向に向ける。そこには深々と神機の切っ先が突き刺さり、手の甲を貫通。
同時に籠手すらも貫通していた。
そして浸帝の力任せの横殴りの一撃を受けたにも関わらず、全く立ち位置をずらすことなく、足を深く根に張ったように動かないエノハの姿があった。
「・・ふん」
笑顔なく鼻で笑うエノハのその言葉と同時、突き刺さった刀身の真下に在る銃機構がずぶずぶと砲身をあらわにする。そして砲塔が蒼く光ったと同時―
ドン!!
浸帝の掌に強烈な爆破が発生、神機の刀身に貫かれた掌の穴より遥かに巨大な大穴があき、赤黒い血液が噴き出した。
右手の甲に在る籠手は粉砕され、浸帝は激痛の走った右腕を思わず左手で押さえようとするが―

ガスン!

キシャアっ!
今度は右手の甲―籠手の上から神機の切っ先が突き刺さる。まるで釘が刺された様に浸帝はこうべを垂れ、右手を差し出すしかなかった。
傍から見れば最早闘いではなく、まるで拷問の様であった。

下手人は見下ろす。
右手を差し出し、身動きが取れずもがく浸帝を脆く。

浸帝は恐怖にも似た感情から反射的に地に伏している掌から抵抗を図る。黒い炎を這わせ、再び「潜らせよう」とするが・・・

ドン!!
・・・・!!
再び浸帝の甲に強烈な銃撃―インパルスエッジが突き刺さる。
最早悲鳴にならない悶絶が浸帝の喉に木霊する。三度執拗に貫かれた右手からは最早炎を出すことは現時点で不可能であった。
そして激痛に更にこうべをうな垂れ、屈辱的な姿勢の浸帝はパニック状態のまま考えを巡らす。

一つの疑問が生じる。

何故だ。
おかしい。
再生しない。
否。
厳密には少しずつであるが再生している。
しかしそれが・・笑えるほど遅い。

「あそこ」に突き刺さった赤い神機ならともかく何故自分の手の甲を今突き刺している神機にここまで追い詰められるのか?
浸帝には到底答えは出ない。


―・・・手応えアリ。

一方でエノハは確信し、答えを出していた。
「不死のハンニバルとはいえ恐らくただでは済まない」
リッカの言葉が今証明された。

先程までの交戦の最中、オラクルの消費の少ない弾頭を要所要所に浴びせた。顔、額、そして手、甲―浸帝を小突くように着弾させた銃弾。それ一つ一つに神属性因子を含ませた。
まずはほんのわずかな、小さな蚊が刺すような攻撃で効果を確認していたのだ。

神属性の効果は本当なのか。果たしてオラクル細胞の増殖、暴走を抑えるいわば抗がん剤的な役目を果たせるのか。人体に培養され、ハンニバルの因子によって変質化したオラクル細胞にすら効果を発揮するのか。

前回の対戦時、高威力の弾頭で顔半分を吹き飛ばす大怪我を負わせながら一瞬で再生された教訓がある。
どれだけ攻撃してもあのように即座に再生されるのでは話にならない。

賭けだった。可能性は全くない訳ではないが確証は無い。
神属性の希少性、スサノオを見逃したハンニバルという間接的根拠を頼りの推測を基にした「二人」、いや「三人」の賭けは―吉と出た。
浸帝が負ったわずかな各部の小さなかすり傷、裂傷すら再生は著しく遅い。正直予想以上の効果を示している。

そこを目印にエノハは今度はやや強烈な一連の攻撃を仕掛け、現在浸帝を完全に制圧している状態であった。

―この神機でも戦える。
その確信と共に現れた安心と高揚の感情はエノハのオーラをさらに強烈にした。

後は徹底的に叩きのめし、アラガミ側に「寝て」もらうだけだ。



・・このままであればもしや全てこちらの目論見通りに行くのではないか。

そんな楽観的な考えすらよぎる。
事実現在の第三段階解放時のエノハに浸帝は全くついていけていない。
歴然とした力の差があった。



しかし・・
エノハはまだ気付いていない。

屈辱的な姿勢に、生まれ落ちてから既に王であったこの浸帝が初めて味わう辛酸の中で渦巻いている新しい「何か」を。
この黒い暴龍の本当の「真価」、「進化」を。

エノハ、ヒトは甘く見過ぎていた。
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