原作の物語で考えると少しお話が飛んでいます。
面倒くさい所は飛ばす!
手抜きバンザイ!
「・・・」
レンは眺めていた。
金色の瞳を真っ直ぐに優しい眼差しで。無言のまま歩み寄る。
「それ」に。
ここはリンドウの中。精神世界。
先程エノハ、そして自我を取り戻したリンドウによって完全に封殺したアラガミ因子の最奥で眠りについている「それ」にレンは近付いていく。
微笑みを携えたまま。
「それ」の正体は。
リンドウ、そして彼の中でオラクル細胞にハンニバル因子を加えられ、暴走したアラガミ、そしてそれに対峙したエノハとの接触によって偶発的に生まれた存在。
アラガミが人を知り、関わった事によって生まれた存在。
「真帝」
エノハとレンによって完全敗北し、今はその力を極限にまで抑えられている。見た目は黒ハンニバル「幼体」といった感じだ。
彼にレンは近付いていく。
!
その気配に感付いたのか彼は目覚め、四つん這いの警戒の姿勢を取る。チビのくせに相も変わらず好戦的なその仕草にレンはまた微笑む。
低い姿勢で唸る子犬に近づくようにレンは腰を下ろし、彼の目線に近づく。
「君は・・ボクに似ているね」
レンはそう声をかけた。
生まれた経緯、きっかけ。レンと真帝の両者には意外にも共通点が多かった。
元々神機=アラガミのようなものである。自意識、理性より遥かに根源的な欲求である食欲が先行する存在であった。しかし―彼らは神機である以上必然的に関わっていく。多くの人間と。
レンはリンドウ、リッカ、榊は元より任務を兼ね、リンドウと共に様々な所に連れられて行く過程で多くの人々に出会う。
様々な人種、性別、年齢、性格、外見、言語。
結果レンに生まれたのが純粋な人に対する興味、好奇心である。
結構に危うい感情だ。兵器として生まれた存在が自我を持ち、人を知ろうと思うこと自体ハイリスクだ。
人間―この元々矛盾だらけの存在を。
レン―神機の精神体の知的好奇心はとどまる事を知らず、自らに接続されたコンピュータを逆流し、情報の海の中を泳いだ。自分を生み、自分と共に在り続ける人間の事をより知る為に。
結果後悔した。
人の習性、知識、歴史を知るたびに。
当初は人間に対して反抗的な感情を覚えてしまう事も自然だった。
侵略、拒絶、断交、差別、戦乱。
歴史が語る人類の遍歴は如何ともしがたく生物としてあまりに未熟で不純。現在は一見アラガミという共通の天敵に抗する事でまとまっている様に見える。が、その水面下では相も変わらず同種同士の争いの火種、不信を拭いきれていない事がありありと伺える。
そしてその感情が行きつく先が自分達だけではなく、この地球上のすべての概念を完全なる破壊に導く可能性を秘めた厄介な存在でもある。
それが出来る、実現させてしまうだけの積み重ねた知識、知恵、そして強い自我、欲、それによって生まれた同種同士での過去の衝突、軋轢を持つ存在。
なんて危うい存在なのか。
こう考えると地球がアラガミを使って一度この存在を悉く喰らって根絶やしにし、もう一度組み替えるという終末捕食の観点は決して間違ってはいないようにすら思える。
レン自身も人に作られたとはいえオラクル細胞によって構成されたアラガミだ。
人間と比べてアラガミよりの存在であることは間違いない。
まぁ・・そんな感じで。
レンはまるで反抗期の少年の様に「人並み」にグレた時期もある。
それでも
レンは。
自分の世界を構成するこの人間を否定し切ることは出来なかった。
「種」としての人を見てしまえば否定の感情ばかり浮かんでしまう人間も、その「種」を構成する一人ひとりの存在を見ていく度にレンの気持ちは傾いていく。
たまたま彼の身の回りに居る人間がリンドウを始め、お人好しが多かった事もあるだろうがそれでも・・レンは人を直接見るのが好きだった。好きになった。
例え「種」としては未熟、矛盾をはらんでいても彼ら人間の営みはただ殺し、喰らい、この世界の秩序とバランスを保ち、世界を継続させる為―安定して流動させ、循環させる本能だけを持っていたアラガミ―レンを変えていく。
笑い、喜び、支え、生み、育て、慈しむ。
泣き、悲しみ、怒り、憎み、傷つけ、殺す。
正も負も。善と悪も。
拒む。受け入れる。また拒む。受け入れる。
人はそれを繰り返す。意に沿わない物を拒み、抗い、その先に出来た物を受け入れる。例え傷ついても、疲れ果てても、そして己という「個」が果てようともそれを次代に受け継がせ、また繰り返す。
そのサイクルが。時に苦しみと痛み、悲しみをただ繰り返すだけのサイクルだとしてもレンは愛しく思えるようになった。羨ましいと思えるようになった。
同時にヒトが時に生む奇跡的な和解と調和、新たな道を示して前に進む姿―それに傍らで寄り添える自分になりたいと願う様になった。
秩序と安寧をもたらす為生まれた怪物は無秩序と混沌を繰り返す人に憧れたのだ。
そのあまりに鈍化した進化の過程を。全てをリセットし、根本から変えた方が遥かに早いはずなのにそれを受け入れることなく。
一瞬の痛みの先に生まれる安定や秩序より、永い時間続く痛みを経て今の状況を改善していく、己を少しずつ変質させていく、成長させていく非効率な道を選んだ種―
ヒトに。
そしてレンは今向かい合っている。
かつての自分と一緒でまだ少し拒む事を捨て切れていない目の前の真帝を。
アラガミがヒトに憧れた故に生まれた両者は今そっと触れあった。
レンは小さな真帝を抱き寄せる。この先―尚も続くそのヒトの道を見届ける同志となるかもしれない存在を。
抱き寄せたレンの手を引っ掻き、ジタバタ逃れようとする真帝に
「・・良ければボクと一緒に来ないか?君に打ち勝った存在がこの先どうなるのかを一緒に見るんだ。数を数えられないバカだけど僕達の主はフットワークだけは軽いよ?」
リンドウがこの場にいたならポリポリと頭を掻きながら「言ってくれるぜ」と愚痴りそうな言葉を囁いてレンは小さな真帝をさらに強く抱き寄せた。
・・・
レンの腕の中で必死でもがいていた真帝の動きが止まる。まるであの人間―エノハに頬を撫でられた時の様に。
その腕は温かかった。
そして真帝の小さな体はレンの腕の中で風化し、レンの中にすっと溶け込んでいった。
「手を焼きそうな同居人だな・・?」
そのレンの背後から声が聞こえた。エノハだった。振り返りそっと目を細めてレンは幼く笑った。
「いえ。中々頼りになる相棒だと思いますよ」
「そうか」
「・・・ん?何?」
「・・ん?」
「『またいつか戦える日を楽しみにしてる』?・・・ですって。彼が。エノハさん。君にです」
「うわ。それはもう・・勘弁・・」
「気に入られてますねぇ」
そんな他愛もない話もすぐに終わり、沈黙が訪れる。
お互いに解っていた。
もう時間が無い事を。
「ボクは・・リンドウのアラガミ化を抑える右腕の抑制コアと同質化します。これからもリンドウの中で彼を守っていこうと思います」
「・・ああ」
「多分・・新しい『彼』も協力してくれますよ」
「成程・・頼れる相棒が出来てよかったな。レン」
「だから・・・お別れです。恐らくもう話す事も出来ないでしょう」
「・・・リッカとの約束は?」
「守りますよ。ただ君の『中』ではなくリンドウの『中』で彼と一緒に帰るだけの話です。『帰ること』はともかく『誰と帰るか』は指定してなかったですよね?」
「・・屁理屈屋だな。お前は。本当に人間くさい奴・・・」
「・・・ありがとう。君に会えて本当に良かった。ずっとずっと君の神機であれればいいなぁと思ったぐらいに」
「・・・」
「でも・・・行きますね?理屈屋で礼儀正しいように見えて実は結構幅利かせる内弁慶で、おまけに甘えん坊で手のかかる神機はさらに手のかかるこのずぼらで適当なこの主には必要みたいですから・・」
「最後の最後で認めていくんだな。散々隠してたくせに」
「最後くらいは素直になりたいんです。でも・・・ああ・・もう時間だ・・残念だなぁ・・・もう行かなきゃ」
レンの姿が足元から透けるように消えていく。泣き笑うようなレンの声がいつまでもエノハの耳に木霊する。一言一句聞き逃さない様に。
「ありがとう・・」
そうようやく言ったエノハは自分の言葉も既に涙声になっている事に気付く。その言葉に既に体は半透明のレンが微笑んで顔を傾け、最後に口を開いた。
心の底から嬉しそうに、楽しそうに。
―僕はレン。
性格は理屈屋で少しひねくれていて皮肉屋。でも実は甘えん坊で手のかかるリンドウの神機。
嫌いな物は特にないです。趣味は人間観察とハッキング。人間の友達はあんまりいないけど手のかかる主がいます。それで手一杯です。
親友はゴッドイーターの榎葉 山女。・・最高の友達です。
好きな食べ物は初恋ジュース、オウガテイル。
・・好きなものは貴方達―人。
そして―
お疲れさまでした。
基本的にこの小説は殆どリンドウの主観を入れずレンとエノハ主体で物語を展開しています。
原作自体、GEバースト編が全篇リンドウとレンの語りと主観で話が進んでいく(主人公もいるがゲームの都合上喋らない上、感情表現も無いに等しい)為、今更書いてもな~と言う感じだったので意識的にほぼ完全に排除しています。ご了承ください。