GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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とりあえずエノハには「ケジメ」つけてもらいます。

よろしければ見守ってやってください。


いつもよりほんの少し近い場所で

自分の人生で縁の無いと思われた言葉が。初めて謂われた言葉を聞く状態がこのいわゆる「のび」の状態とは。

私らしいと言えば私らしい。

 

ただ信じない。

信じないぞ。

 

私の耳。

 

「・・・え?」

伸びをしたまま私は固まる。解散を促そうと立ちあがったリッカと対照的にどっしりと立ち上がる素振りを見せないエノハのテーブルの上で組んだ両手を目を見開いてただ眺めた。

「幻聴」の内容を頭の中で吟味し、噛み砕くと同時に動悸が上がる。しかし必死で言い聞かせる。

 

ない。

無いって。

都市伝説だって。

 

無いさ。嘘さ。寝ぼけた私が聞き間違えたのさ。

だけどちょっと、だけどちょっと。

 

・・・怖い。すっごく怖い。

 

 

「・・リッカ」

 

お願い。

今は優しくそんな声で私の名前を呼ばないで。

 

 

あ。あ。・・・何だ!そんなに私とまだ喋りたいんだ。しょうがないなぁ。でも今はよそうよ。お互い・・・その・・ホラ。こんなカッコだしさ?

見慣れない正装のエノハ、着なれないドレス羽織ってヒバリやアリサに無茶苦茶に塗ったくられた私。

いつもとなんか違うこのカッコの勢いに流されてこんなヘンな「幻聴」聞いちゃうくらい、こんなありえない言葉をエノハが言っていると思っちゃうぐらい舞い上がってるんだって。

だから・・・よそ?

とりあえず今日はお開きにして明日からいつもの様に。私はいつものラフな作業着を着て、君もいつもの服を着てここでバカ話しようよ。

 

それが私達にはお似合い。日常。

 

だから今日は帰ろ?ね?

 

エノ―

 

 

「本気だよ。リッカ」

 

「・・・ハ・・?」

 

「嘘でも冗談でもない。『一緒になってほしい』って言うのは・・・そういう意味」

 

「・・・!」

「幻聴」なんかじゃない。

伸びで僅かに浮いていたリッカの体が席にすとんと落ちる。畳みかけるエノハの現実味の無い言葉の厳然たる実在にリッカの意識は現実に舞い戻る。

 

―なんで

 

なんでそんなこと言うの?

 

 

 

言い切ったエノハはその後、少しバツが悪そうに頭を掻いた。

 

 

「・・まぁ。今日色々あったこのタイミングで『これ』じゃ勢いに任せてどうこうじゃないのかって言われても仕方ないけど・・実際乗じた事は間違いないしな」

少し雰囲気を和らげ、いつもの様に困ったように微笑む。

しかしそのままいつもの様に笑って「下げる」。「誤魔化す」エノハではなかった。

 

「でも・・リッカ。俺は君の事が好きだし一緒に居たいと思ってた、それを伝えたいと思ってたのは紛れもない事実だから・・」

 

「・・・!」

―・・・!こ、この男わ~!?結構流れの中でさらっと重要な単語を並べくさりおって~!?

 

あ~逃げたい!・・逃げ出したい。

 

あ。そだ・・・。

「考えさせて」で、いいじゃん。そうだ。とりあえず。これで。行こう。うん。

ダメだ。今の私。

 

頭。

 

回んない。

 

「あ。・・悪いんだけど出来るなら・・『考えさせて』は無しの方向で。とりあえず明日からまた命賭けた仕事するから。はっきりしないまま任務出たら俺死ぬかも。気になって仕事手に付かないかも」

 

―に、逃げ場を抑えられた・・回り込まれた!ズルイ。ズルイよぅ。

 

「・・ごめん。どうやら俺も相当余裕無いみたいでさ。ズルイ手でホント・・ゴメン」

 

「・・・」

リッカはふぅと息を吐き、この日の為に整え、綺麗にセットしてもらった髪をくしゃりと右手で掴む。

視線を彼に向けて居られない。目線がひとりでに泳ぎ、下向く。

頭がぼうっとする。火照った頬からの蒸気で目頭が熱くなる。

 

覚悟を決めた。どうやら駆け引きは出来そうもない。そんな余裕、器量在るわけ無い。

間違いなく彼ははっきりとリッカ自身に好意を向け、言葉にまではっきりと出してくれた最初の少年だ。そんな少年とどう向き合えばいいのか解らない。

 

 

「エノハ」

「・・ん?」

「お話して」

「・・え?」

「私今は何も言えそうにないからさ。それぐらいはして・・?お願い」

「・・解った。そうさせてもらうよ」

 

―ずるいなぁ。なんだかんだ言っても・・覚悟完了して私の前に来てたって感じだね。

 

リッカは知る由も無いがエノハの「中」に居た存在―レンが最後に残した言葉の意味をエノハは考え続け、自覚し、時間をかけた結果ここに居る。

理不尽な覚悟の差が両者にはあった。

 

 

リッカは目を伏せ、両手を膝の上に置き、震わせた。

 

―怖いなぁ。怖いなぁ・・。なんだろうなぁ・・ホントこれ。

 

だけど赤く染まった耳だけを全身全霊かけてエノハの方向へ。

 

今のリッカはいつもと勝手の違う自分に戸惑っていた。。

いつもと違う綺麗な服を着て。お化粧して。髪を整えて。椅子に座らされた綺麗な人形みたいなもの。

現実感と非現実感、日常と非日常の合間を彷徨う定着しない人としての形。

今は誰かに命を吹き込まれるのを、吹き込んでもらう事をただひたすら待っている。

そうすることしかできない。

 

「それ」ぐらいは今のエノハがやるべき事。やらなければならない事。

 

 

 

「この前ね?・・『誰かが居なくなった事を嘆くだけの自分にはなるな』ってソーマが言ってたのを思い出した。俺達今は一緒にのほほんとしてるけど各々いずれ違う場所に行く日はきっと来る。こんなご時世でこんな仕事してるんだから。だからいざその時が来た時後悔だけはしたくないなって本当に思った。・・・じゃあまず何をすれば、俺はどうしたいんだ?って考えた時・・一番最初に浮かんだのはリッカ?・・君の事だった」

「・・・」

「いつも俺を支えてくれた。ずっと味方でいてくれた。傍にいてくれた。最初から最後まで。もしそんな君が居なくなった時俺はどうなるかなって考えると怖くてさ。」

 

「でも・・君は事実優秀で才能に溢れてる女の子で。君の知識を、技術を必要としてくれる場所はこれからきっとどんどん増える。おまけに君には・・あの『目標』がある」

 

「・・・!」

 

「続けてくつもりなんだろう?『あれ』」

 

「・・・」

 

「その為にまだまだ吸収すべき知識や技術を得る為にどんどん手を延ばそうとする向上心も君にはある。極東に居るだけでは得る事の出来ない知識、技術、・・出会いがあるかもしれない」

 

「・・・」

間違いない。・・「優秀で才能に溢れてる」かはともかくその通りだ。

私にはもっと知りたい事がある。やりたい事がある。「目標」がある。

エノハは・・よく自分を見てくれている。

 

「俺だって自分を必要としてくれる場所には出来るだけ行くつもりだ。でもそうなるといずれリッカに会えない日が来るかもしれない。そのまま会えなくなって、・・会わなくなって。それを受け入れるのか?それを許せるのか?このままでいいのかって考えた。で、あっさりすぐに結論は出た」

 

―『無理』『ありえない』って。

 

 

「・・・改めて言います。楠 リッカ・・さん?俺と一緒になってくれませんか?・・今までよりずっと近くに居させてくれませんか?俺こんなだけど、こんな仕事してこれまでもこれからも一杯心配させて、一杯迷惑かけるかもしれないけど・・・絶対君の元に帰るから」

 

「・・繋いでおきたいんだ。他でもない君と。それだけで充分。今の俺にとってこれ以上の事は無い」

 

 

 

 

 

「・・なんで私なの?」

「・・」

「私背低いよ?」

「・・・?」

「やせぎすで足も短いし、アリサやカノンちゃんやサクヤさんやアネットみたいにスタイルも・・胸もないしオシャレでも無い。ヒバリみたいに明るくて女の子っぽくも無い、ジーナさんみたいな大人っぽい色気も無い」

「・・・」

―おお~・・。

ぶっちゃけエノハは否定は出来ない。考えなくても解る。極東は相当の美人揃いである。

 

「機械バカで顔にオイルのシミがあってもお構いなし、化粧もしない。万年油まみれ・・。・・・・!」

 

ゴンっ!!

リッカは自分の額をテーブルに叩きつけた。当然エノハは驚く。

 

「・・・!!??リッカ!?大丈夫!?」

 

「ゴメン・・・自分で改めて言葉にするとヘコんだぁ・・・ちょっ・・ちょっと待って?立て直すから・・・」

 

自らのヘイトスピーチを上げ連ねたリッカはテーブルに沈んだ。

 

―・・・可愛いな。

 

そう思いながらエノハは心の底から笑う。

 

「・・・笑わないでよ」

ぶつけた額に手を当てたのか、それとも表情を見せない様に覆い隠しているのか曖昧な所作で顔を覆い、リッカはようやく恥ずかしそうにそう言った。

エノハを見なくともいつものあの顔で笑っている事が彼女は解っている。

―しかし

「今の俺の心が見える・・?解る?伝わる?リッカに」

「・・・?」

「すっごく可愛いと思ってる。どうしようもなく。今のリッカが」

両手で目を覆い隠しているリッカに少し悪戯な問いかけをエノハはした。

「・・・!」

 

―もうやめて・・!溶ける。本気で。

 

 

 

「・・・本当に」

 

「ん・・・?」

 

リッカは顔を両手で覆ったまま顔を上げ、ゆっくりと目の周りを真っ赤にさせた閉じた瞳を出し、ゆっくりと開く。今度は両手で鼻と口を覆い隠したままこう言った。

 

 

「本当に・・・私でいい?エノハ・・?」

 

「・・。う~うん」

意外にもエノハはそう言って首をおおげさにふるふると振った。まるで幼い子供みたいに。

 

「・・え?」

 

意外な返事にリッカは目を見開く。真っ赤な目を。まぁるい目を。

 

 

「リッカがいい。君しか・・いらない」

 

 

「・・・!っあ!」

 

呆気にとられてうっかり口元から離した両掌をしっかりとエノハに掴まれた。合掌するように包まれた両手をぐいと引かれる。その彼女の細く、白い指先にエノハの額が触れた。

 

祈る様にエノハは目を閉じていた。彼の長いまつ毛と浅い吐息の感触が両手に伝わる。とても温かい。

リッカはゆっくりとエノハのその頬に両手を這わす。目を閉じたまま気持ち良さそうにリッカの両手の甲に一回り大きな掌を添えながらエノハは目を開け、リッカの瞳をしっかりと見る。

 

「・・・仕方ないなぁ。本当にエノハは」

 

「・・・」

 

 

「・・・・いいよ。よろしくね」

 

 

「・・わっは!やった、やった・・!ありがとう!」

 

そう言って幼く笑うエノハを見てまたリッカは溜息を尽きつつ微笑んだ。

 

―ああ。

 

あー。そんなカオで笑わないで

 

・・・幸せだから。

 

そのまま少女は少年の体を抱き寄せ、ぐるりと腕を後頭部に回す。頬を少年の頭に乗せ深く息を吸う。

頬で撫でるように少年の髪の感触を感じながら目を閉じ、しっかりと抱きしめた。

 

とくんとくん

 

波打つ。いつもよりほんの少し早いペースで。

いつもよりほんの少し近い場所で。

 

―ねぇエノハ?今の私の心が見える?

 

解る?

 

伝わる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どちらかと言うとこのペアは現時点エノハ>リッカです。
やはり男の子が女の子を追っかける展開の方が健全でいいかな、と。・・かといってストーカーまで行くと「無い」が。
散々いつも一緒に居るレンに突っつかれてる描写が読み返しているとあったのではっきりとした自覚も早かったのではないかと考え、こんな感じにしています。


今回もお付き合いありがとうございました。
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