GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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今回もよろしくお願いします

続け。マツナガ。


カスタマ 短編集 9

エノハの部屋に三人のGEが集結していた。

「一体何の用だ・・大した用事でなければ帰るぞ俺は・・・」

「私に何か御用でしょうかエノハさん・・?」

「・・・。ソーマにカノンにこの俺・・このメンツはひょっとして」

「流石ブレンダンさん。勘がいいですね」

エノハは招き入れた三人に振り返りながら自分の腕輪を自室の端末からノルンに接続、メッセージボックスの欄に在る新着の一件を開き、後ろに居る他の三人に開示する。

「ん・・・?あ・・!!このアドレスは・・!!」

「カノンさんも解りましたか」

 

そのメッセージボックスのタイトルは

 

「親愛なる極東支部GE、エノハ君、カノン君、ソーマ君、ブレンダン君へ」

 

「・・ああ。あのオッサンからのメールか」

ソーマも気付いた。

 

「そ。マツナガさんからのメールだよ」

エノハはそう言いながら本文を開いた。

 

 

拝啓

親愛なるGEの戦友諸君。

エノハ君を始めとする君たちの活躍や健闘を耳にし、我々治安維持部隊の隊員達誰一人例外なく自分の事の様に嬉しく、また誇らしく思っている。

君達の獅子奮迅の活躍を聞く度に我々も君達に負けないように頑張らねばと身が引き締まる思いだ―

 

 

「ウフフ・・マツナガさんも元気そうなのが文章から伝わってきちゃいますね」

「全くだ」

 

 

―・・近況報告はこれぐらいにして本題に入ろうと思う。

君達にとっても他人事ではない・・「例の装置」の事だ。

 

 

「・・・」

カノンの表情が曇る。この中であの装置をはっきりと間近で見たのはこの中では彼女一人だ。あのちっぽけで一見何の変哲もない装置の潜在的脅威をまざまざと思い知ったのもまた彼女一人である。

あの悪意の塊の様な装置に戦慄し、また証拠隠滅の為の爆破で彼女はひどい目にあわされた。

 

 

―・・その場にカノン君が居るのであれば非常に不愉快な思いをさせるかもしれない。が、君達もあの場に居た当事者である以上、知っておいてもらいたいとの判断でこのメールを送らせて貰っている。

 

 

文面からにじみ出るマツナガの気遣いにカノンはしっかりと画面を見据えた。

それを横目で確認するとエノハは文面をスクロールしていく。

 

 

―結論から言うと残された破片、部品の分析から製造元、・・そして製造した個人を特定することにも成功した。現在製造に関わったと思われる容疑者は行方不明で各支部、サテライト拠点に至るまで指名手配を行っている段階だ。公にはしていないがね。

 

 

「わ。もうそんな所まで!」

「流石だなマツナガ大尉・・いや・・少佐か」

カノンとブレンダンは感心し、表情を綻ばせる。

 

 

―慎重かつ大規模に捜査を進めている。詳細は現段階では開示できないが君達が納得する結果を提示できるように最大限の努力を惜しまないつもりだ。まぁ待っていてくれ。

 

 

「・・マツナガさん」

「ヤダ惚れちゃいそう」・・みたいにカノンは両手を頬に置いて顔を赤らめた。

 

 

―・・あの装置の脅威は計り知れない。君達GEの頑張りを嘲笑うかのような在ってはならない、アラガミを利用して人を殺戮する為に人間が作ってしまった恥の様な装置だ。絶対にこのまま放置できない。してはいけない。

 

「・・・」

 

―君達GEは引き続き、人々の矛と盾であってくれ。私達は私達の仕事をする。アラガミと人。それぞれ対峙する者は違い、歩む道も違おうとも我々の志はいつも共に在る。それを忘れないでくれ。

・・それでは最後になるが君達のますますの活躍と健勝を及ばずながら願わせて貰う―

 

では元気で!戦友諸君!!

 

 

 

引き締めるように結んだ力強い最後の一文を四人は眺め、

「ふん。相変わらずカタくて暑苦しいおっさんだな・・」

ソーマも珍しく呆れたように優しく笑う。しかし同時に嬉しそうな表情を隠さない。

「マツナガさんらしいですね。・・きっとヨコヤさん・・・他の皆さんも頑張ってくれているんでしょう・・私達も負けていられませんね!」

カノンもつられて微笑む。

 

アナグラはアーク計画の件で幹部クラスがほぼ退任し、一部ペイラー・榊等の職員を除けば非常に平均年齢の若い組織である。

かつて居たマツナガ位の年代の幹部クラスの大概の連中が前支部長―ヨハネスの腰巾着であり、その中で権力抗争や既得権益を争っていがみ合い、机上で謀略や打算に明け暮れていた組織であった為、未だ現場の最前線で体を張って働き、アイデアを出し、自ら動く叩き上げのマツナガの様なナイスミドルが少ない。彼のような存在はアナグラに居るまだ若いGE連中にとっては結構新鮮なのである。

 

 

 

 

 

 

「ん・・・?」

マツナガからの激励ともとれるメールに発奮し、各自意気軒昂のまま自分達の仕事に戻ろうとしたソーマ、カノン、ブレンダンの三人をエノハのその怪訝な声が呼びとめる。

 

「どうかしましたか?エノハさん」

「・・いや・・どうやらまだ続きがあるみたい。ほら・・」

「・・・何?」

「・・・?」

 

エノハは先程の結びの文から大分間隔をあけた先に新しい文章があることを確認し、再び部下三人は画面を覗き込む。

 

 

―すまない。ここからはかなりプライベートな話をさせて貰う。先日我々が行ってしまったカノン君へのメールの誤送信についての事なのだが・・

 

 

「・・?何の話だ?」

ソーマ、ブレンダンは当然のことながら何の事か解らない。

「あ、あ、あ、ああああ!!!!!あの、その!!なんて言う、う、ですかね?そのあはっ!あはははははははっ!?」

―あわわわわあわわっわわ!!!

当然カノンは明確にキョドリだす。

マツナガを始めとする治安維持部隊のカノン親衛隊から何故か「リッカに送られてきた」カノン宛てへのメールは内容が内容であった。

そもそも自分のアドレスではなく、リッカのアドレスを彼らに教えるという一体どうやればそうなるのか解らない誤射をカノンがかました事を伝えるのは彼女にとって問題があり過ぎる。

恐らくソーマは本気で呆れ、「・・あえて何も言わねぇけど」的なカオをするだろう。

そしてブレンダンは「自ら誤射をするだけでなく、他人にまで誤射をさせるとは・・・流石だな・・カノン」などと、皮肉ではなく真顔で感心しながらそう言いかねない。

そうなったら本気でカノンは立ち直れない。

 

エノハも「しまった」という表情。

中々クリティカルな話題を結構にシリアスな報告内容のついでに入れてきてくれる。あの不良軍人。

 

しかし―

 

「不良軍人マツナガ」の本領はここからであった。

 

 

―件(くだん)のメールに関しては多大な迷惑をかけてしまった。特にワケの解らん連中からいきなりあのような文面のメールがいくつも届いた誤送信先のカノン君のご友人だという少女には非常に申し訳ない事をした。複雑な心中を察するに余りある。本当に申し訳ない。

 

 

「・・?話が見えてこねぇ・・一体何の話なんだ?エノハ・・」

「ごめん。ソーマ・・今は俺の複雑な心中を察してくれ・・」

 

「あの。だからですね!?その・・ダカラデスネ!?」

カノンは既にいっぱいいっぱいである。しかしブレンダンは・・

「カノンがここまで動揺しているとは・・話してみろ。少しは楽になるかもしれん・・」

 

―あ~メンドくせぇ!!この空気読めねぇ堅物ヤローが!!

カノンは内心思わず戦闘時のノリになる。最近銃器を持たない状態でもこの状態になれるようになってきた。凄まじく嬉しくない進歩である。

しかし、そんなカノンの葛藤空しく、マツナガからの文面は続いていく。

 

 

―そんな状況にもかかわらず、誤送信をした我々のメール一件一件に丁寧に返信対応してくれた彼女には本当に頭が下がる思いだ。良ければエノハ君、カノン君。君達からも改めて彼女に我々の謝罪を伝えておいてほしい。

 

 

うわ~ん・・御免なさい。ごめんなさい。ゴメンナサーイ・・・。

そもそもの「元凶」とはいえ、中々あんまりな仕打ちにカノンは打ちひしがれる。

 

 

カノンに対する仕打ちは酷いとはいえ、ここまではとりあえず「普通」であった。

 

しかし。

ここからだ。

 

―そして・・ここからが本題になるのだが・・。

 

「・・・?」

 

 

―よければカノン君のご友人だと言うその少女―楠 リッカ君という少女の事を私に・・紹介してくれないだろうか?

 

「・・・・!!!????」

 

 

―文面だけで解る。俺には解る。間違いなく彼女は美人だ。そして自分の魅力にまだまだ気付いていないダイヤモンドの原石だ。おまけに性格も頭も間違いなくいいことが文章の端々からにじみ出ていた。

 

「「・・・」」

流石によく事情を知らないブレンダン、ソーマ両名にもこの文章が意味する事が解る。思わずソーマはこう呟いた。

「・・。前言撤回だ。このオッサン。「カタく」なんかねェ。ゆるゆる、ガバガバだ・・・」

 

 

そして。

「・・・」

無言でメール画面をスクロールしていくエノハの後ろ姿がかつて無いぐらい他の三人は怖い。恐ろしい。

しかし、尚も続く。

火に油を。ジェット燃料を。核燃料をひたすら注ぎ続ける様な文面が。

 

―これは運命だ。フェイトだ。赤い糸だ。誤送信から始まったこの出会い、このときめきはまるで初めて恋に落ちた少年のような心象を私に抱かせる。この出会いを無碍にする事など在りえない。どうか協力してはくれないだろうか。

嗚呼・・。この文章を書いて居る今もまだ顔も見た事も無い少女の事で私の動悸は弾む。躍り出してしまうんだ・・。

 

な、なに言っちゃってんの・・・?この中年軍人・・・?

 

エノハの背後の三人は呆気にとられたまま、無意識のうちに体を寄せる。しゅおしゅおと発せられるエノハの後ろ姿からのオーラに身をすくませているのだ。

 

誰か・・このメールを届かなかった事にしてくれ。

 

そんな三人の切なる願いはかなわない。

この2070年代においても誤送信であろうと何であろうと一度送信してしまい、「既読」のついた文を受信者の記憶から完全に消す事はできない。

賽は投げられているのだ。送信ボタンを押したその瞬間から。

 

 

―どうか・・この動悸を。この胸の高鳴りを沈めてほしいのだ。

 

 

そう締めくくり、今度こそ完全にマツナガからのメールは終了した。

そしてエノハは即

 

カチっ

 

「返信」ボタンをおし、無言のままおもむろに返信メールを書き始める。静かに。しかし物凄いタイピング速度で。

 

カタカタカタカタ・・・

 

 

「「「・・・・・!!!!!!!」」」

ぎょぎょぎょっ!?

 

その内容に背後の部下三人は戦慄する。

 

 

 

―マツナガさん・・・お言葉ですが・・

 

 

ヒトの女に色目使ってんじゃあねぇぞ!!!ああん!???この不良節操無し軍人が!!???死ぬか!?今すぐ死ぬか!???今すぐに!!!心の高鳴りとやらと一緒に息の根も止めてやるよ!!!??

 

 

 

その勢いのまま即「送信ボタン」をクリックしようとする直前のエノハを

 

「落ちつけ!エノハ!!!」

「ひー!!!ダメですぅ!!!エノハさぁん!」

「・・・!?(とりあえず止めておかないとやべぇ気がする)」

 

と、ブレンダン、カノン、ソーマの三人がかりで羽交い絞めにする。

 

「離してください!離してくれぇ!!ちっくしょう!このクソ軍人!!光源氏にでもなったつもりか!!!何が運命だ。フェイトだ。赤い糸だ!!」

かつて無い興奮状態のエノハに

「おおお落ちついてぇ!!!と、とにかく一旦この文章消しましょう!!これ送ったらそれこそ極東支部と治安維持部隊に埋めがたい亀裂が出来ちゃいますよ!!!」

「ソーマと俺で押さえている!!カノン!消すんだ!!!早く!」

「は、はいいぃっ!!」

「離してください!ブレンダンさん!!!」

「お、おお・・!?エノハ。お、お前体格の割に凄いパワーだな・・!俺も負けて居られないな!!」

「・・(もう何が何だか解らねぇ・・)」

 

 

 

一時間後

 

極東支部

治安維持部隊仮説駐屯地―

 

「ふぅ・・。・・・む」

仕事が一段落し、休憩中のマツナガが自分の席のパソコン端末を立ち上げるとメールのランプが点灯している事に気付く。件数は一件。差出人は・・

 

「・・おお。エノハ君からか。返信が早いな・・」

 

マツナガは早速その届いたメールを開く。そしてほぼ時間差なくこう呟いた。

たった一言。

 

「・・ふむ・・残念だ」

 

その送られてきた文面もたった一行。

 

 

 

―マツナガさん。本当に申し訳ないのですが・・・・それだけは勘弁して下さい。

 

 

 

マツナガは自分のこめかみにとんとんと人差し指をあて、余裕の表情でもう一度文面を見返す。マツナガは昔から恋多き人間故に失恋には慣れている。

それより今は。

拙いそのシンプルなメールの一行―しかしその短い文章から全てが伝わってくる送信者―エノハの気持ちに想いを馳せる。

そして全てを理解した表情でこう言った。

 

「ふふん。エノハ君もなかなか隅に置けない」

上機嫌そうに。

 




今回も読了有難うございます。


Q.最近「新規投稿」のボタンを押す際、手が震えるんです。何故でしょう?何かの病気でしょうか。

A.本能の赴くまま、勢いのままに書いた物を投稿するのを止めたら治まるかもしれません。
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