GOD EATER カスタマ   作:GREATWHITE

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バトルです。また長くなりそうですが・・良ければまたお付き合いください。


原初の螺旋

興味を示さず、巨体は歩を進める。

その巨体を待っていた「待ち人」は巨体には何ら意味もない存在だった。人間にとっての蟻―のようなもの。

赤い複数の眼の一つもそれに向けることなく、横を通り過ぎていく。

しかし・・わずかに待ち人が動く。まだ巨体は構わず歩を進める。

待ち人の視線―巨体は歩を止める。

待ち人の手に光る物が奏でる「声」に―

「敵」

ただ漠然と機械的にそう判断した。

赤い複眼とともに巨体の手足が光る。

 

竜巻と異常気象がもたらした静かな雨が降りしきる市街地跡、「止」の時間が動き出す二日前の神機整備室に時間は遡る―

 

「これはこれは・・エノハ第一部隊隊長殿・・わざわざこんなむさくるしい所にご足労いただいて真に有難うございます」

リッカは堅くそう言いながら滅多にしない敬礼をし、えへへと悪戯そうに笑った。彼女なりの気遣いなのだろう。

 

これよりもさらに前日、ヨハネスが特務―「ウロヴォロスの討伐」をエノハに任命した日のことである。

 

「もちろん一人で任務を行う以上、こちらも最大限のバックアップを惜しまないつもりだ。リッカ君には話を通してある。君の神機を今できる限りの最高の調整をするように、そしてウロヴォロスというアラガミに関しても彼女の知識が重要になるはずだ」

「・・リッカが?」

「君は前任のリンドウ君がウロヴォロスを討伐した際、そのコアや素材を解析、研究した人間を知っているかね?」

「あ・・!そういえばリッカの奴・・リンドウさんの任務の後「ウロヴォロスのコアってあんなに大きいんだ」とかなんとか・・」

「そう。特務に関わる情報、特務によって得られる物品に関われる人間、情報開示される関係者はごく一部に限られる。その一人がリッカ君だ。彼女は彼女の父親の代からこのフェンリルに最も奉仕してくれた人間の一人だ。信頼の証として特務に関する情報を一部開示していたとしても不思議ではあるまい?何せそのウロヴォロスを倒すためのリンドウ君の神機の調整をしたのは・・彼女だ」

「・・!知りませんでした」

「仕方のない話だ。話すことを禁じられていたわけだからね。でも今回君が特務にかかわることで同じ情報、秘密を共有できることは彼女にとっても嬉しいことだろう。もちろん君にとっても悪い話ではないはずだ」

「・・・」

「とはいえ・・彼女には重い役目を背負わせていることには本当にすまないと思っている・・」

「・・支部長」

「おっと・・。話が脱線してしまったな。とにかく彼女にはもう話は通してある。話を聞いたうえで任務を受けるか受けないかを判断してほしい。本来なら私が自ら話をしておきたいところだが・・忙しい身でね。申し訳ない。ではこれで失礼する。色よい返事がもらえる事を・・期待しているよ・・」

 

 

「・・・」

「・・・どうしたの?エノハ?」

「いや。悪い」

「調子狂うなぁ」

「調子狂わすために形式ばった挨拶したくせに・・」

「ははは。ゴメンゴメン。・・。それじゃ・・始めようか。まず神機・・今私ができる最高のチューニングをしてあるから」

リッカの語気が変わる。

 

「・・いつもながらすごいな。調整するたびに前より手に馴染む感覚がする」

エノハは自分の神機をサイコロのように形態変化を試す。非常に滑らかなことを確認すると、元の刀身に戻し、固定機に神機を戻す。

「刀身はいつも通り手数重視、攻撃力は大きく変わらないけど軽くはなっているはずだよ、砲身は一発重視をさらに先鋭化。特にアラガミバレットの威力を上昇させるよう調整してる。シールドは防御力よりも手返ししやすく、敵の攻撃をまともに受けるより受け流し、捌きやすい調整をしてあると思うんだけど・・どう?」

「いいね。文句なし」

「・・次はウロヴォロスの説明。この内容を聞いてもらってから任務の受諾かそれとも拒否かを判断して。受けるにしても話を聞いたうえで今回チューニングした神機に問題点、疑問、要望があれば遠慮なく言って?出来るだけ応えるから」

「了解。至れり尽くせりだね」

ウロヴォロス。

今確認されているアラガミの中で最も巨大な種のひとつであるが、それゆえか個体数は少なく、気性は無機質で機械的―見た目も習性も「虫」に近い。

人間を積極的に捕食することはなく、攻撃性もさほどない。おまけに個体数も少ないため、討伐対象になること自体珍しい・・が、その巨大さゆえ、彼らの進行方向にある物は人だろうと建物だろうと容赦なく破壊されてしまう。

個体数が少ないことで、彼らの偏食因子の素材も必然的に少なくなるため、彼らを遠ざけるアラガミ装甲壁の更新が出来ず、破壊されるのもネックである。

このアラガミ自体が直接引き起こす人的被害は比較的少ないのであるが、壊された壁から他のアラガミの侵入を許し、多大な二次的被害が生じるのだ。

 

「それゆえ出現した際は即対応が求められる。人気のない場所まで誘導するのか・・それとも討伐するのか・・のね」

「・・そっか。人間を積極的に襲うわけじゃないから誘導して被害を未然に防ぐということも可能ってことか。アラガミと言うより災害みたいだな」

「ところがそう単純でもないんだよね。誘導する場合も、討伐する場合も命がけには違いないし・・それに」

「・・それに?」

「いろんな意味で複雑な事情のあるアラガミなのよ。ウロヴォロスは。だから討伐は特務だけに限られている」

「・・・事情」

「順を追って説明するね」

 

「まずはこのアラガミの単純な戦闘能力を説明するよ?」

「まぁ一番知っておかなきゃならないことだな」

―・・引き受ける気満々なんだね。

という顔をリッカはした。

同時にリッカが端末を入力するとホログラフィ端末にアラガミ―ウロヴォロスの全体像が映し出される。

 

まずこのアラガミの巨体自体がネックだ。この大型の体を動かされるだけでGEの行動が制限されるのは想像に難くない。巨大な体の重量に任せた攻撃はどれも強力であり、まともに食らえばGEといえども一撃で行動不能に陥らせるほどの威力がある。

力任せな攻撃だけかと思えば伸縮性のある触手を器用に操る柔軟性と鞭のように叩きつけて攻撃する事もできる。おまけにその触手と大きな腹部に隠された後ろ足を使って結構な敏捷性を持ち、高速で走ることもある。

 

「・・結構器用なんだな・・ぬぼっとした見た目のくせに」

「そう。そしてこのアラガミのコア・・つまり弱点なんだけど・・」

「・・どう考えてもココ・・だろ」

ホログラフィに映し出されたウロヴォロスの複眼がびっしりと埋まっている頭部をエノハは指差す。

「そう。人間で言う脳の部分。ここに指令コアがある。ウロヴォロスが立っている状態ならGEのジャンプでようやく届くような高所にね」

 

「刀身で切りつける事も可能だけど空中じゃあな・・行動の制限が痛い。距離をとって銃モードを主にして戦うのが妥当か。でも俺はブラストだしな・・ここでアサルトかスナイプの銃身を試してみるべきなのかもな?幸い詳しく教えてくれる先輩がウチの部隊には両方いるし」

「いや・・それは止めておいた方がいいと思う・・」

「・・そうか?」

「うん。使い慣れない銃身をいきなりこんな強敵に試すこと自体リスキーだし・・それにその二つの銃身は逆にお勧めできない面もあるんだ」

「・・それは?」

「・・あんまり言いたくない話なんだけどね。今までウロヴォロスに特務で討伐任務を任された人間はキミを除いて私が知っている限りで十人いる」

「・・・うん」

「その中で生き残ったのはたった二人。そのうちの一人がリンドウさん」

「・・・」

「十人のうち七人は旧型―つまり銃形態のみで戦う人達だった。ウロヴォロスの高所にあるコアを射抜くなら剣より銃の方がアドバンテージが大きい―そう考えてね」

「・・まさか」

「ご推察の通り全滅。一人も生き残ってない。・・全員死体すら残らなかった」

「・・・。・・・!?死体すら?」

「そう」

「おかしくないか?それ?」

「・・・わかる?」

この大型のアラガミが人間を「捕食」するのであれば敗れたGEの死体の回収は確かに不可能だろう。しかし先程説明されたばかりだ。このアラガミは人間を自ら進んで襲うこともないし、こちらから攻撃しない限り、特に強い敵対意識もない。と。

リッカは何も言わず気が重そうに端末を操作し、ホログラフィを一つの画像に切り替える。

不鮮明な映像とともに映し出されたのは・・かなり遠距離から捉えられた今回の討伐対象―

ウロヴォロスの姿だった。

「・・・!」

「・・・」

不鮮明な映像とともに不明瞭な音声が聞こえてきた。この映像を撮っている者の声だろう。

『・・・伐対象アラガミの進行速度に変化なし。恐らく対応にあたったGEは死亡。観察、経過報告任務は終了。これより帰還する』

事務的で冷静。しかし何となく人間味の無い淡々とした報告を内心苦い思いでエノハは映像を見る。

しかし、映像の中でのろのろと動いていたウロヴォロスがぴたりと動きを止めた。

『・・?対象の動きが止まった。・・・!』

「・・・!」

「・・・」

映像の中の男の驚きの声とともに、エノハも息をのんだ。リッカは既に目を逸らしている。

カメラを赤く光るウロヴォロスの目がまっすぐに捉えたのだ。

『やばい!アイツ!こっちに気づいてる!!』

そしていきなり画面が昼のように光ったかと思うと映像がフェードアウトした。

 

「・・大丈夫。リッカ。もう再生は止めた」

そのエノハの声にリッカは遠慮がちにそして伏せ目がちに目を開ける。

「・・今のは・・なんだ?」

「・・ウロヴォロスは巨大な体と触手を使った近接攻撃と・・遠距離では今の映像のビーム砲を撃ってくる。まともに食らえば人間の体なんて一発で蒸発しちゃう一撃をね。盾を持たない旧型銃のGE達にはこの攻撃は・・防げなかった。誰一人として帰ってこれなかった」

「・・成程。遠距離近距離共にそつのない難攻不落の要塞ってわけね」

 

 

 




ちょっと長くなりそうなので一旦切ります。
よろしければ続きも見てください。
今回も見ていただいた方ありがとうございます!!
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