終点まで後3駅というところか。正しくは終点ではないのだが、レユニオンが引き起こしたあの大事件、いや戦争の被害は深刻で、そこから先は通行止めだ。ここらでもようやく元の生活に戻れたが以前の活気はどこにもないように見えた。
そして、その駅から先は未だに復興の目処が立っておらず、第二のスラム街と成り果てている。どこからお金が出ているのかは知らないけど、きっとマフィアだの何だのからかも知れないけど、水道は生かされているし、勝手に土地を使っても何も言われない。きっとあえて放置しているんだろう。
しばらくぼうっとしていたら車内の人々はほとんどいなくなり、見知った人やも含め十名もいない。
「あ、あの、すいません。もしかしてテレビに出てる?」
誰もいなくなった車両で隣の女性が小さな声で聞いてきた。先ほどは気づかなかったが、どうやら学生さんらしい。
「あ、どうも。よく気づいたね」
小さな声でアイドルのソラで返す。人がいないせいかその声も大分響くように感じられた。
「あ、え、えっと、いつも見てますっ、あ、い、いつもじゃないけど、えっと、すきです!?」
慌てふためいているのを見ると年相応で微笑ましく思える。
「ふふっ、いつもありがとね」
「す、すこし、お話いいですか?」
「勿論だよ!」
それからしばらく少しだけ話すことになった。話すことと言っても彼女が見たことがある番組での話だけだったけど。最近のことには触れてはいけないと、きっとそれはこの空間を無くしてしまうだろうから。
だいぶ彼女の方も落ち着いてきたらしい。会話は和やかに進み、一旦の静寂は心地が良いかった。だけどもちっとも体が温まらないのはきっと、ふと横を見たときの彼女の表情は声とは全くかけ離れたものだったからか。
「そういえば、どうしてこんな辺鄙な場所に?といっても前まではここも賑やかでしたけど」
冗談ごとのように笑って彼女は窓の向こうを優しくみやる。喉に何回も詰まったが、なんとか笑顔で言葉が出せた。
「トランスポーターの仕事だよ、ペンギン急便の」
「そうなんですか。でも、やめたって話じゃ、、、」
「いや、、、」
次の言葉が出ない。初めて自分からトランスポーターになりたいと言うときと同じような、それでいて何の緊張も興奮もないような。。
「あ、挨拶ぐらいはしようと思ってね、仲のいい同僚もいるし」
やっとの思いで出た言葉は誰に対するでもない言い訳だった。嘘、ではない。挨拶に行くのも確かだし、でも、活動するわけでもない。意味も無く意味を求めて逃げてきたのだ。
「そうなんですか」
「うん、そうなんだ」
以降会話に花が咲くことはなかった。
もうすぐ終点は近い。