「いない、、、」
集合場所、仮拠点と言うべきか。路地裏の奥にある廃墟になった事務所をそのまま使ってスラムとなったここらでの活動拠点にしている。いつもなら時間になると、何人かがわちゃわちゃやってるけど、時間になってもいないと言うことはきっと集合場所を変えたからなのか。連絡していないのだからしょうが無くはあるけれど。
「はぁ、骨折り損だぁ」
穴が空き綿が出ているソファに座る。どうやって会おうか、話そうか四苦八苦して考えていたのに。全部無駄になって良かったか、良くないか。でも、急いた結論を出さなくて良くなったのは良かったと思う。
持ってきたパンと飲み物を口にする。わざわざボス、今は違うけど、が音楽を聴きたいからってどっかから拾ってきた発電装置を動かし、レコードの電源を入れた。
(どれ聞こっかな)
いつもレコードだけはガラクタと同じくらい大量に常備している。何十枚もあるそれらは、題名が分からないことが多いが、ほとんどを既に聞いていて、聞き慣れた曲でもある。
記憶を頼りに聴きたい曲をかける。わざわざ、レコードを持ってきて曲を流す意味は分からなかったが、今ではなんとなく分かる気がする。
椅子にかかっていたブランケットを手に取り、くるまり、うつ伏せにソファに横たわる。それは、あの空間と同じ匂いがした。
何がしたいの?何をすればいいの?さっきの言葉が頭の中で反芻される。
確かに憧れではあった。私を助けてくれたあの背中をずっと見ていたいと思った。何もかもどうでもよさそうに振る舞うそれでさえも美徳にみえ、あの凪いだ心にずっと身を寄せていたかった。
灰は再び燃えることはない。分かっているのに何度も着火するのだ。結局動くことのないまま祈っている内に意識が微睡んでゆく。きっとこの涙は、眠いからだ。あくびをしたからだ。だからちっとも悲しくも辛くも思ってないんだ。
朝だ。と言っても大分日が高い。それほど疲れていたのか。まぁ堅いソファじゃ疲れを癒やせなかったのもあるけど。痛む体のあちこちを伸ばしてほぐす。これからどうしようか。今日は休日だし仕事もない。一日中暇だ。暇だったら暇だ。ここら辺を歩き回ろうか。いつか知っておく必要もあるだろうし。
しばらく歩くとわりかし人気のある場所にやってこれた。ここらでは見かけない人も多く、生活感溢れる様子であった。
(目立つな)
格好が格好だけにやたら目立ってしまう。汚れのないコートは置いてきたがサングラスにマスクに帽子などどうしたらいいのだ。只の不審者だ。別に顔を隠さなくってもいいが今はこれで行きたいのだ。活気を遠目に見ながら人気の無いところを様子見しながら歩いて行く。
やはりと言ってはあれだが鉱石病と見られる人々が多い。顔や襟元に現れている人々や、腕や足に包帯を巻いている女性が沢山見受けられたことからもはっきりと分かる。だけどここ全体が病んでいるということではない様に感じた。
そういえば、ロドスの方からも人が来てるんだっけ?診療所があるとか無いとか。顔を出してみようか。