原作死亡キャラに転生したので適能者として戦う! 作:火野ミライ
「キィィィーーーーー!!」
山道途中にある決して長くない小さなトンネル。その内部では暗闇に紛れた巨大な影が
「キャーーーーー!」「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
車の中には大学生ぐらいの男女三人が乗っており、揺れる車内に必死にしがみつきながら眼前に広がる異形の怪物に悲鳴を上げる。普段は人々の生活を支える車は彼らの命綱であると同時に棺桶と化していた…
「キィィィーーーーー!!」
怪物は腕から生える触手を巧みに使い腹部にある亀裂の中、人間で言う口の中へゆっくり誘う。
地面からすでに数十メートル離れているため窓から飛び降りる事ともできず、彼らは恐怖で表情を歪め、声にならない悲鳴を上げながら無慈悲にも食されていく。
「キィィィーーーーー!!」
影・スペースビーストの鳴き声が夜遅い山へと消えていくのだった…………
特異災害対策機動部一課作戦指令室。そこには一課のメンバーだけでなく自衛隊の戦闘機パイロット、更には響や翼が所属している二課の司令官・オペレーター・エージェント・科学者が集められていた。
空気は決して良くなく、指令室の外では今もたくさんの人達があわただしく動き、それぞれに与えられた仕事をテキパキとこなしていく。彼らの服装もまちまちで、急遽寄せ集められたことが伺える。
指令室の巨大モニターにはとある山と移動している複数の赤い点が大きく映し出されており、その周りにはとある周波数が観測されていた。
「ブロブタイプ【ペドレオン】は、このトンネルに集まっています。装者と出会った子供の言う通りなら、ここで奴は一つになるでしょう。空港自衛隊のイーグル隊は一つに集まった瞬間、トンネル出入り口でF-15、2機によるミサイル攻撃を行ってください」
巨大モニターの前で作戦をつたえる50代ぐらいの男性。この場に集まったすべての人が彼の言葉を聞き逃すまいと静かに耳を向ける。
「一課は通行規制と情報規制の徹底。二課は現場の状況を解析、いち早くイーグル隊へ伝えろ」
「まぁ、装者によるノイズ殲滅が主な
「ぼやかないの! リアルタイムの情報伝達が大事なのはよく知ってるでしょ!」
二課のオペレーター【藤尭朔也】が自分たちに与えられた役職に落胆の様子を見せる中、横に座るもう一人のオペレーター【友里あおい】が活を入れる。
「ですが正直、今回の作戦で装者のお二人を出撃させなくて良い事にはホッとしましよ」
彼らの会話に入り込んで来たのは二課の裏方担当、エージェントの【緒川慎次】。
「あぁ。 先の戦いでシンフォギアでは、スペースビーストに対して効果が薄い事が判明済みだからな」
更にガタイの良い男、二課の司令官であり風鳴翼の叔父【風鳴弦十郎】が会話の輪に入って来る。
(しかし、ビーストの情報をくれたあの少女は一体………)
まだまだ子供な装者が
モニター内に無数に浮かび上がる赤点。
それは全てナメクジの様なスペースビーストだ。1匹1匹の動きを2043の最新技術を用意て観測しており、トンネル内に集まるのを複数の大人たちが今か今かと見つめている。空軍基地からは3機のイーグル隊が現場に向けて飛び立つ。
現場では一課のエージェントの手によってトンネルに続く道が通行止めになっており、誘導灯の光が周辺を照らす。星や月と言った自然の光が彼らを見守る中、道外れのトンネルの入り口付近で鞘に納まった短剣の様な白いアイテムが鼓動音に合わせて光るのを静かに見つめるセレナ。
現地の警察官がペドレオンが潜むトンネル。すなわち作戦エリアよりも何回りもの範囲を封鎖する為に待機している。一方、ペドレオンはと言うと一匹、また一匹と吸収し力を高めその姿を大きくしていく。トンネル内でペドレオンが成長する中、出入り口に2機の戦闘機が到着した。
そこから約10メートル先には万が一に備え、大和町の境界線にて待機するF-15の姿が。各機が配置でついたことが無線で報告しあう中、F-15の排気音を聞きうねり声をあげるペドレオン。
『……作戦開始!』
無線から聞こえる作戦本部の命令を合図にトンネル入り口に待機する2機がほぼ同時にミサイルを放つ。やがてトンネル内が炎で包まれ、爆風が2機の戦闘機へと迫る。なんとか急上昇する事で爆風に飲み込まれずに済んだF-15。
現場から少し離れた場所では先程の爆発で大地が揺れ、心臓を締め付けられるかのような音に作戦の内容を詳しく聞かされていなかった警官達に緊張が走る。
「ターゲット……健在!?」
トンネルの出入り口へと戻ったF-15の熱源カメラに映し出されたのは無傷のペドレオンの姿。後部座席に座る男性隊員の報告を聞き、機内・作戦本部・二課にて動揺の声があちこちであがる。そんな彼らの様子など気にもしないペドレオンは頭部の触角を回す。
「熱源反応上昇!」
『いかん!すぐさま上昇しろっ!!』
続けての報告を聞いた弦十郎が声を荒げる。彼の声に従い急上昇した2機であったがペドレオンが頭部の触角から放った火球により1機が撃墜。残ったもう1機も追尾してくる火球に右翼をやられ、黒煙を上げながら撃墜した。
「キィィィーーーーー!!」
各オペレーターがパイロットへ生死の確認通信を行う中、トンネルの天井を突き破りペドレオンがそれへと飛び立つ。上空を飛び去ったペドレオンを目にした警官が名状しがたき恐怖で声を失う中、町中へと向け飛行し続ける。
だがペドレオンの進撃を止める意外な影があった。それは髪のように後頭部生えるブドウの様な物を上空に飛ばしペドレオンの周囲に爆発を起こす。次々と機雷の様に放たれるブドウを回避していたペドレオンであったがやがて回避しきれずに命中、森の中へと落下する。
「ヒィィーーーーー!」
自分達の近く墜ちてきたペドレオンに腰を抜かす警官。そんな彼を支えながら警官は遊撃した影の正体を見ようと後方に広がる暗闇を見つめる。
「ははは……。すまん、俺はお前たちの元へ帰れそうにないわ」
その警官の目に映るのはペドレオンと同じ50mほどの巨体を持つ紫の影。2本ずつある手足に人でいう胸部にあたいする部分には輝くディスプレイ。一見するとブドウの身を想起させる物体に身を包むは後に【セルノイズ】と呼ばれる超大型ノイズであった。
警官を挟むように睨み合うペドレオンとノイズ。そんな光景に懐から取り出した家族写真を手に虚無感に襲われる一人の警官。そばにいるふたりの警官は恐怖で震えている。
「キィィィーーーーー!!」
「________」
そんな小さな命をほったらかし、大地を震わせながら激突するペドレオンとノイズ。迫りくるブドウを火球で次々と打ち払い接近、拳を振るおうとするノイズ目掛けて触手を振るいなぎ倒す。転倒したノイズを他所に周囲に煙をばらまきながら再び空へと上がる。
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」
再び町へと向け飛行を開始したノイズ。迫りくる怪物の姿に錯乱したF-15のパイロットがミサイルをむやみやたらに放つ。ペドレオンは悠々と回避し火球による反撃。その一撃を機体を傾ける事で何とか回避して見せたF-15は再びミサイルを発射。
「キィィィーーーーー!!」
「よし!」
その一撃が命中しペドレオンが悲鳴を上げる。その事で正気を取り戻したパイロットが再び攻撃の一手を撃とうと操縦桿のトリガーを引いた。
「っな!」
しかしながら機体に積まれていたすべてのミサイルは既に発砲済み。攻撃手段を失ったF-15を喰らうと先程以上の速度接近するペドレオン。その姿に死期を感じたパイロットが視線をそらし目をつむる。
「__ッ!」
絶体絶命の中、地上ではセレナが鞘から短剣【エボルトラスター】を引き抜き天へ掲げる。刀身から放たれる神秘の輝きに包まれて、セレナの姿は銀色の超人へと変化、赤色に淡く輝く光球となり天高く舞い上がった。
「___銀色の…巨人……?」
いつまでも経っても来ない痛みにパイロットが恐る恐る視線を正面に戻すそこには、赤いオーラ【オーラミラージュ】を身に纏う巨人。ペドレオンは巨人に身体をぶつけ前進しようとするが、見えない壁がそこにあるかのように前に動く事が出来ない。
「ハァァ………… シュッア!」
腕を前方へと伸ばし見えない力でペドレオンを押し出すと、振り上げた右腕の手刀を頭部へと振り下ろす。ウルトラマンの一撃を受け、何度も身体を回転しながら地上へと叩きつけられたペドレオン。そのそばにはセルノイズの影もある。
セルノイズがペドレオンへと接近する中、両者の間に降り立つウルトラマン。ノイズが、ビーストが、ウルトラマンを警戒し吠える中で腕に装着されている【アームドネクサス】を胸の前へ。アームドネクサスに埋め込まれたクリスタルが輝くと同時に左腕を振り下ろす。
「ッフ! シュアッ!」
するとウルトラマンの身体を波打つ水面の様な光が覆いその姿を変えた。青色………いや水色と青緑色を基調とし、銀色のラインや装甲、引き締めるかのような黒色、そして胸部の赤いクリスタル上に青く発光するクリスタを備える。
先程までの銀色を基調とした【アンファンス】と呼ばれる姿から、
「フオォォォ………! ヘアッ!」
両腕のアームドネクサスを身体の左側で重ね合わせる。すると青白い輝きが右腕に宿ると光で弧を描きながら一度、右肩の前へ持っていきそのまま右腕を頭上へと伸ばす。ジュネッスBCへ二段変身した事によって変化したアームドネクサスから天高く光線が放たれる。
上空で花火の様に光が拡散しシャワーの様に地上に降り注ぐ。待機していたF-15の数メートル先の位置に金色のカーテンとなり光の向こう側、つまり内側では危機感を覚えたペドレオンが火球を放つも光はびくともしない。光の中に取り残されたセルノイズの足元から水泡の様な光が立ち昇る。
「__ッ! 消えた…………」
光の外から様子を見守っていたパイロットの眼前で光が晴れると、ペドレオンやセルノイズをおろかウルトラマンすらも最初からいなかったかの様に消えており、そこにはいつも通りの静かな山奥の景色が広がっていた。