八幡side
じりじりと日差しが眩しく、肌が焼けるような暑さにやられながらも、総武高は夏休みを迎えました。やっと長い夏休みに入ったから家とかでダラダラしたり、帆波達と出かけたりしようかなと思っていると、奉仕部で泊りがけでボランティア活動をすることになったらしい。そういうメールを平塚先生から送られてきた。というかあの人メールだと人変わりすぎだろ。
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という事で待ち合わせ場所である駅に向かうともう平塚先生達がいた。
平塚「来たか比企谷」
八幡「うっす」
後ろにはワンボックスカーが止まっており、平塚先生の服装はたくし上げられ裾を結んだ黒いTシャツにデニムのホットパンツ、足もとは登山靴みたいなスニーカーだった。手には黒いサングラスを持っており、頭にはカーキー色のキャップを被っている。そして周りを見ると帆波達の姿が見えなかった。
八幡「あの、帆波達はまだなんですか?」
平塚「いや来てるぞ。今アソコのコンビニで何やら買っているらしい」
八幡「そうですか。あ、後それと小町も誘って頂きありがとうございます」
小町「ありがとうございます平塚先生」
平塚「なーに、気にすることないさ。こういうのは人数が多いと楽しいからな」
八幡「そうですね」
平塚「おや?君がそういう事を言うとは驚きだな」
八幡「自分でも驚いてますよ。多分オレは帆波達と出会ってなかったら、否定していたと思いますし」
平塚「そうか。一之瀬達が君を変えてくれたんだな」
八幡「ま、そんな感じです」
平塚「そうか。それは良い出会いだな」
八幡「はい」
そんな会話をしているとコンビニから帆波達が出てきた。
帆波「あ、八幡だ」
雪乃「あら、本当ね」
千佳「おはよう八幡君」
八幡「おう。おはよう帆波、雪乃、千佳、かおり、瑞希」
雪乃「ええ、おはよう」
帆波「おはよう」
かおり「おはよう」
瑞希「おはようございます」
と帆波達に挨拶をする。瑞希も小町と一緒で誘ってもらったらしい。ふとみんなの服装を見ると、みんな動きやすい服装を着ていた。そして帆波の手首にはオレが上げたシュシュを身につけていた。
小町「おはようございます皆さん」
帆波「おはよう小町ちゃん」
雪乃「おはよう小町さん」
かおり「おはよう。元気だね」
千佳「ふふっ、そうね。おはよう小町ちゃん」
瑞希「おはよう小町ちゃん!」
小町「瑞希ちゃんもおはよう!」
こいつらは元気だなホントに。
八幡「平塚先生、揃いましたけど」
平塚「まぁ、待てあと1人くる」
と平塚先生は答えた。え?もう1人来るの?誰ですか?オレはてっきりもう全員揃ったのかと思いましたよ。もう1人とは一体誰なんだ?そう思っていると…
「八幡!」
とオレを呼ぶ声がした。振り返らなくても声だけで誰だかわかってしまう。オレを八幡と呼ぶ同性は1人しかいない。念の為確かめてみると、やはり彩加だった。材木座?え?誰ですか?全然分かりません。そして彩加はオレ達の所へと駆け寄ってくる。
彩加「おはよう八幡」
八幡「おう、おはよう彩加」
と挨拶をかわす。
彩加「一之瀬さん達もおはよう」
帆波「おはよう戸塚君」
雪乃「戸塚君おはよう」
かおり「おっはよー戸塚君」
千佳「おはよう戸塚君」
小町「おはようございます戸塚さん」
瑞希「おはようございます」
彩加「おはようございます平塚先生」
平塚「うむ、おはよう戸塚。これで全員揃ったな。では、車に乗ってくれ」
と言うと平塚先生は運転席へと乗った。帆波達もそれに続いて車に乗り込んで行く。オレはどうしようかと思っていると…
平塚「比企谷、君は助手席に来なさい」
八幡「え?オレ?」
平塚「ああ、早くしろ」
八幡「ええ〜、なんでまた」
平塚「フッ、助手席は1番死亡率が高いからだ」
八幡「あんた人として最低だなおい!」
平塚「まぁ、それは冗談だ。長時間のドライブだからな。運転中は退屈しない方がいいだろ?それに君との会話はそれなりに楽しいからな」
八幡「さいですか」
そういう落ち着いた柔らかい笑顔をされたら、断れないじゃないですか。まぁ、そういうことなら大人しく助主席に乗りますかね。そして全員乗り込んだことを確認し、シートベルトを締める。
八幡「それで泊まりがけのボランティアと言ってましたけど、具体的には何するんですか?」
平塚「そういえば言ってなかったな。今から君たちは小学校の林間学校のサポートスタッフとして働いてもらうため、千葉村へ行く」
八幡「千葉村ですか。また遠い所へ行くんですね」
平塚「だから長時間のドライブになるんだ」
八幡「なるほど」
だから話し相手になってくれと言ってたんだな。それから他愛もない会話をしながら車に揺られていると、千葉村に着いたので全員車から降りる。
かおり「おお〜ホント山だ」
帆波「ホントだね」
千佳「なんだか空気がおいしいね」
まぁ、確かに都会とか、街の中だと味わえない空気かもしれないな。
平塚「さて、まずは荷物を下ろしておきたまえ」
そう言われてオレ達は車から荷物を下ろしていく。するともう1台のワンボックスカーがやって来た。ここはキャンプ場とかもあるから、多分一般客かなんかだろうな。人が降りるとそのまま来た道を引き返していく。どうやら送迎らしい。そしてその車から降りてきたのは若い男女5人組。ああ言う連中が川の中洲でバーベキューとかして取り残されてレスキュー呼んじゃうんだろうな。そんな事考えていたらその一団の1人がオレに向かって軽く手を挙げた。
葉山「や、ヒキタ…比企谷」
八幡「……葉山か」
コイツいまさっきオレの事ヒキタニと呼ぼうとしたけど、すぐに言い直しやがったな。それに後ろの方を見ると、やはりあの葉山グループのメンバーがそこにいた。もちろんあの由比ヶ浜もいるけどな。
雪乃「あの何故葉山君達までいるんでしょうか?」
平塚「ん?ああ、君たち以外にも募集をかけていてね。それで、こいつらが参加すると言ってきたんだ」
葉山「俺は、内申が加点されるって聞いたからなんだ」
ふむ、なるほど。所謂餌に釣られたというわけか。なんとも卑怯な誘い方だ。
平塚「では、荷物を本館に置き次第仕事だ」
そう言って平塚先生が先導する。オレ達はそれにつき従って歩き始める。本館に荷物を置くと、今度は集いの広場という所へ行かされた。そこで待っていたのは100人近い小学生の群れだった。見たところ小学6年なのだろうか、体格にもばらつきがかなりあり、雑然としていた。そしてここにいるほぼ全員が同時に喋っているからやかましいことこの上ない。その光景にオレ達は圧倒されてしまった。高校生ともなると、小学生の集団を間近で見るなんてことはほとんどない。綺麗に言うとパラフルだろうな。
帆波「す、すごいね」
と小さな声で帆波が話しかけてくる。
八幡「そうだな。これだとかおりの方がマシだな」
帆波「そうだね」
かおり「ちょっと!お二人さん!?ちょっと失礼過ぎない!?」
とかおりが言ってくる。だってそうだろ?まだかおりの方が静かでいいぞ。
千佳「確かにそうかもしれないね」
かおり「千佳まで〜!」
雪乃「確かにここは八幡君の言う通りね」
かおり「雪乃まで!?う〜…みんなしていじめる〜…」
八幡「ハハッ、冗談だ冗談」
帆波「ふふっ、かおりったら本気にしちゃった?」
かおり「当たり前だよ!」
千佳「ごめんねかおり」
雪乃「ごめんなさい。私も悪ノリしちゃったわ」
かおり「なんか謝られてる気がしないけど、まぁいいや」
あ、いいんだね。そんなやり取りをしてから数分後、徐々に静かになる。
「はい、みんなが静かになるまでに3分かかりました」
うわ〜でたよ。全校集会とか学級会とかでよく使われるよなあれ。まさか高校生にもなって聞くとは思ってなかったな。そしてその後はこれからの予定が発表される。一日目はオリエンテーリングだそうだ。
「では最後に、みなさんのお手伝いしてくれる、お兄さんお姉さんを紹介します。まずは挨拶をしましょう。よろしくお願いします」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
先生の後に続いて小学生達が同時に挨拶をする。そんな中葉山がすっと一歩前に出た。
葉山「これから3日間、みんなのお手伝いをします。何かあったらいつでもぼくたちに言ってください。この林間学校で素敵な思い出をたくさん作っていってください。よろしくお願いします」
と挨拶が終わると拍手が巻き起こる。小学生の女子はきゃーきゃー言ってる。あいつさては慣れてやがるな。なんの打ち合わせもないのにいきなりできるとはマジかあいつ。
「ではオリエンテーリング。スタート!」
男教師がそう言うと、生徒達は我先にとグループを作り始める。この合宿が始まる前から、班は決めていたっぽい。
それに、みんな明るい顔をしている。おそらく、スクールカーストなる物が確立されてないのだろう。そういうのが生まれるのは中学生くらいからだ。すると戸部いきなり口を開く。
戸部「いやー、小学生マジ若いわー。俺ら高校生とかもうおっさんじゃんじゃね」
三浦「ちょっと、戸部やめてくれない?あーしがババァみたいじゃん」
戸部「いや、マジ言ってねーから!ちげーから!」
三浦に威嚇されて戸部があわてて弁解する。その言葉にオレはババァじゃなかったらジジィかよと思ってしまう。と言うかそんな事よりもさ。
雪乃「それで私達は何をすればいいのでしょう」
と雪乃が代わりに言ってくれた。
平塚「君達はゴール地点で昼食の準備だ。生徒達への弁当と飲み物の配膳を頼む。私は車で先に行っているからな」
八幡「いや、それ俺らも車で行きませんか?」
平塚「そんなスペースはない。ああ、あと、小学生より早く着くようにな」
ええ…こんな森の中を小学生達よりも早く着けというのか。マジで言ってんのこの人。まぁ、言っても仕方ないさっさと行くか。そしてしばらく歩いていると度々小学生を見かける。すると葉山と三浦が「頑張れー」とか「ゴールで待ってるから」とか応援していた。葉山がするのはわかるが、あの三浦がしていることに驚きを隠せない。
三浦「ね、ね、隼人。あーし、意外と子供超好きなんだよねー。子供って超可愛くない?」
と三浦が葉山に対して言う。なるほど、この為に小学生達を応援していたのか。わかりやすいやつだ。あれは「可愛いって言ってるアタシ可愛いアピール」である。決して三浦を褒めるとかそんな事しない。ていうか何故しないといけないのか分からない。オレ達奉仕部と小町達はそんなの無視して歩き続ける。
雪乃「ねぇ、あの子達何してるのかしら」
雪乃の視線の先には、小学生数名がなんか溜まってる。
葉山「ちょっと見てくる」
と言って溜まっている小学生達の所へと向かっていく。すると雪乃はため息を着く。ホント雪乃と葉山の間に何があったんだろうか。けど、それを無理に聞き出すつもりは無い。
「お兄さん!チェックポイントってどこにあるの?」
葉山「うーんどこだろう」
「じゃあお兄さん手伝ってよ!」
葉山「仕方ないな、ここだけ手伝うけどみんなには秘密な」
さすがコミュ力が高い。けれど一見見てみれば普通の小学生グループと高校生の会話だが、基本このオリエンテーリングは5人一組の班で行動する。しかし葉山に群がるのは4人。もう一人は、少し離れてデジカメを握っている。葉山はその1人の少女に近づいていく。
葉山「チェックポイント、見つかった?」
「いいえ」
と困ったように笑って返事する。すると葉山はにこりと微笑み返す。
葉山「そっか、じゃあみんなで探そう。名前は?」
留美「鶴見、留美」
葉山「俺は葉山隼人、よろくしね。あっちのほうとか隠れてそうじゃない?」
そう言って葉山は少女、改めて鶴見を押して誘導していく。
八幡「すげぇなあいつ。ナチュラルに誘って、名前までも聞き出しやがった」
帆波「確かにすごいね」
かおり「八幡はあんなのできないでしょ」
八幡「まぁな」
とドヤ顔で言ったら帆波達に苦笑された。
千佳「いや、自慢のように言われても」
八幡「だよな…それよりあのやり方は…」
雪乃「ええ、あまりいいやり方とは言えないわね」
どうやら雪乃も同じ意見らしい。ふと葉山達の方を見ると、葉山が鶴見をあのグループに連れていくとほんの一瞬だけグループの空気が張り詰める。そして葉山が少し離れると他の4人は何事も無かったように談笑を続けながら進む。もちろんその一人を除いて。
帆波「小学生にもあんなのあるんだ」
雪乃「小学生も高校生も関係ないと思うわ。等しく同じ人間なのだから」
帆波「そうだね」
八幡「だな」
又もや雪乃と意見が合う。ちょっと簡単そうな感じだったが、それは難しそうだな。ハァ…帰りたいな〜。そして葉山の助けもあり小学生達はチェックポイントを見つける事ができたみたいだ。けどオレ達はそんなの無視して先にゴール地点へと向かった。
いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。