オレは彼女と出会って人生が変わった   作:チャキ

18 / 28
どうもチャキです!第18話どうぞ!


第18話

八幡side

 

そして集合場所へと着く。そこにはタバコを吸う平塚先生の姿があった。と言うか小学生がいるのにタバコなんて吸ったらダメでしょ。

 

平塚「おお、遅かったな」

 

平塚先生がワンボックスカーから降りてくる。オリエンテーリングのコースとは別に、山の車道がここに繋がっているのだろう。そして後ろのトランクを開けると、弁当とドリンク類が折り込みコンテナに入って山と積まれている。その後男手でえっさほいさとコンテナを運び出した。

 

平塚「それとデザートに梨が冷やしてある」

 

そう言って平塚先生が後方をくいと親指で指し示した。ちょろちょろと小川のせせらぎが聞こえる。どうやら流水に浸かっているらしい。

 

平塚「包丁類もあるから、皮むきとカット、よろしくな」

 

ぽんとカゴを叩く平塚先生。それには果物ナイフにミニまな板いくつかと、紙皿につまようじと果物取り分け用セットが詰まっていた。しかし、1学年分の梨を剥くとなると結構な労働量だ。加えて弁当類の配膳の準備もある。

 

葉山「手分けした方がよさそうだな」

 

ででんと積まれた仕事の山を見て葉山が言うと、三浦が自分のネイルをしげしげと見つめながら口を開いた。

 

三浦「あーし、料理パス」

 

戸部「俺も料理は無理だわー」

 

海老名「わたしはどっちでもいいかなー」

 

と葉山グループ共が続いて答える。そしてそれを聞いた葉山はしばし考える。

 

葉山「んー、どうするかな。配膳はそこまで人いらないだろうし…。じゃあ、俺たち5人で配膳やるか」

 

帆波「それじゃ、私達で梨を切ろっか」

 

八幡「そうだな」

 

ということで葉山グループは配膳係、オレ達は梨の皮むきとカット係という役割となった。まぁ、予想通りの結果になったな。由比ヶ浜がこっちの係になる可能性もあったしな。そんな事よりもさっさと取りかかるか。

 

オレ達はナイフやミニまな板などを受け取り、皮むきを始める。周りを見るとやはり帆波と雪乃は上手いな。スルスルと剥いていく。オレも剥いていくがそんなに早く剥けない。さすが日頃から料理してるだけあるな。

 

八幡「やっぱ上手いな帆波と雪乃は」

 

千佳「そうだね」

 

かおり「でも、八幡も上手いよ」

 

八幡「そうか?」

 

千佳「うん、私も上手いと思うよ」

 

雪乃「確かに男子にしては結構上手いわよ」

 

帆波「そうだよ八幡」

 

八幡「そうか?サンキュな」

 

いや、こうも真っ直ぐに褒められたのは初めてだな。なんだか嬉しいな。

 

かおり「でもどうしてそんなに上手いの?」

 

八幡「ん?ああ、多分それは小町が小さい時に飯作ってたからかな?」

 

小町「あー、確かに小町が小さい時良く作ってくれたもんね」

 

千佳「へー、そうなんだ」

 

八幡「ああ、包丁をまだ持たせる訳にはいかなかったからな」

 

小町「あー、お父さんとお母さんそんな事言ってたね」

 

八幡「ああ、小町に怪我させないためらしいがな」

 

小町「あ、そうだったんだ」

 

八幡「ま、ほとんど親父が決めたんだけどな」

 

小町「あ、なるほど」

 

となんとも素っ気ない返事をする小町。ホントこの子実の父親に対して中々辛辣だな。その後は他愛もない会話をしながら皮むきを続けていると、続々と小学生の軍団が到着する。オリエンテーリングが終わったばかりだというのに、ギャーギャーワーワーと元気にはしゃいでいる。高校生のオレ達と違って元気が有り余っているのだろう。その元気は一体どこから溢れ出しているのやら謎だな。それからオレ達は飢えた小学生達に弁当と梨を配布するだけの存在となった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

合宿の料理といえば?と聞かれたら大体はカレーと答えるだろう。いや、と言うよりカレーしか作ったことないかもしれないだろう。なんてたってカレーは万能料理だ。小学生でも、料理をしたことがない人でも説明通りに作ればある程度の味になる上に、とりあえず野菜とか肉とかを煮込んでカレールーをぶっ込めば、変なものを入れない限りある程度の味のカレーになる。つまり、この世のすべての食材はカレーの材料に成りうる可能性を秘めているということだ。

 

そんな事を考えながらオレはカレーを作るために、軍手を真っ黒にしながら竈の火を起こす。お手本として平塚先生がやっていたが、サラダ油ぶっかけて火をおこしていた。あんな危ない事できねぇだろう。男子達はオレと同じように火の準備をしていた。女子達はと言うとカレーに使う食材を取りに行っている。

 

彩加「熱そうだね…」

 

すると彩加はオレを気遣うように声をかけてくれた。

 

八幡「まぁな…」

 

いかに高原といえど、真夏。火のすぐ傍で動いていれば汗はだくだくと流れてくる。

 

彩加「そうだ。僕何か飲み物取ってくるよ。みんなの分も」

 

そう彩加が言ってその場を離れると、「みんなの分なら俺も手伝うわー」と戸部がついていく。存外いい奴なのかもしれないな。けどそうなると残されたのはオレと葉山だけとなる。いや〜、ここに海老名さんいなくて良かったと考えながら、パタパタパタと仰いでいると、右の頬に冷たい何かが当たる。右を向くと、飲み物を取りに行っていた彩加が戻って来たみたいだ。

 

彩加「はい、八幡。おまたせ」

 

八幡「おう、サンキュ」

 

そう言いながらオレの頬に当てた紙コップを渡してくる。中にはキンキンに冷えた麦茶が入っていた。いや〜、キンキンに冷えているな。

 

葉山「比企谷、代わるよ」

 

八幡「ん?そうか?じゃ頼むわ」

 

オレはそう言って葉山に団扇を渡す。そしてその団扇を受け取った葉山は炭火に向き直り、ぱたぱたと扇ぎ始めた。そして近くのベンチのようなものに腰掛けて麦茶を飲む。そこに女子が帰ってくると、葉山に向けての歓声が上がる。

 

三浦「隼人すごーい!」

 

海老名「葉山くんアウトドア似合うねー」

 

三浦と海老名が大絶賛する。そしてちらりとオレの方を見られた。あれは多分「なんでヒキタニはサボってんの?」みたいな意味だろうな。

 

葉山「比企谷がだいたいやってくれたからな」

 

とさりげなくフォローしてくれたが、「かばってあげてる隼人優しい」みたいな空気になってるんだが。まぁ、世の中そんなもんだろうな。

 

帆波「八幡お疲れ、はいこれ」

 

三浦達と帰ってきた帆波が洗顔ペーパーを渡してくる。

 

八幡「お、サンキュ帆波」

 

オレは軍手を外して、洗顔ペーパーを受け取り手を拭く。

 

彩加「八幡はほんと頑張ってたよ!ほんとにほんと」

 

彩加がぐっと拳を握って力説してくれた。確かに今の状態だけ見たらサボってるように見えるだろう。

 

かおり「そうだよね。八幡って変とこで真面目だもんね」

 

帆波「ふふっ、確かにそうだね。その証拠にほら顔も汚れてるよ。軍手で顔拭いたでしょ?」

 

帆波はそう言いながら違う洗顔ペーパーでオレの顔を拭いてくる。

 

八幡「お、おう…サンキュ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そして時間は過ぎて食材を全て鍋に入れて後は煮込むだけとなった。オレは鍋を見ていると平塚先生が

 

平塚「どうした?暇なら見回って手伝いでもするか?」

 

え〜、めんどくせぇな〜。

 

八幡「あ、自分鍋見ときますんで」

 

平塚「気にするな。私が見ておこう。小学生との交流も大事だろう」

 

帆波「そうだよ八幡。一緒に行こ!」

 

帆波も続けて言ってくる。帆波はこういう交流は大切にしているもんな。仕方ないな。

 

八幡「わかりました。ではお願いします」

 

平塚「うむ、任せておきたまえ」

 

そう言葉を交わしてオレは帆波と一緒に小学生達と交流する事にした。小学生達は高校生の登場をちょっとしたイベントのように捉えているのか、えらく歓迎された。オレも帆波も色々聞かれたよ。オレ達は恋人同士なのとか、喧嘩したことあるの?とかあれこれ聞かれたよ。主に女子小学生にな。なんで女の子はこういうの聞きたがるのかな。ホントにわからん。ふと視界にあのハブにされてる小学生鶴見留美の姿が入る。周りの子達はというと、何やらヒソヒソしている。ホントに何しているんだろうか。後それに葉山の奴も鶴見に近づいて何しようとしているんだ?

 

葉山「カレー好き?」

 

鶴見「………別に、カレーに興味ないし」

 

そう言って少し小高い所へと歩いて行った。なるほどな、戦略的撤退みたいな感じだな。好意的に返しても素っ気なく返しも同じ扱いされてしまう。オレは思わずため息をついてしまう。葉山は全くわかってないな。ぼっちに話しかける時はあくまで秘密裏に密かにやるべきだ。話しかけられたその事実だけでイジメの材料にさせられるから。鶴見が去ると葉山は少し重くなった空気を変えようと声をはる。

 

葉山「せっかくだから何か隠し味いれようか!なにか入れたいものある人!」

 

と言った瞬間、小学生達がガンガン案を提案する。確かにカレーに隠し味というと、家カレーが頭に浮かぶな。

 

八幡「なんか隠し味と聞くと家カレーを思い出すな。家に寄って個性とか色々出るよな」

 

帆波「あー、確かにそうだね」

 

かおり「あー、そういえばカレーにチョコレートとかインスタントコーヒーとか入れてるって聞いた事ある」

 

千佳「私は、はちみつとかりんごとか聞いた事あるよ」

 

八幡「へー、色々あるんだな」

 

帆波「そうだね」

 

いやー、色んな隠し味があるんだな。チョコレートとかインスタントコーヒーとか入れる人とかいるんだな。なんだかどんな味かちょっと気になってきたな。そんな事を思っていると、聞き覚えのある声の主が提案をする。

 

結衣「はい!あたしフルーツがいいと思う!桃とか!」

 

は?桃…だと?コイツまさか本気で言ってるのか?桃なんて入れるわけねぇだろう。というかどんな味になるんだよ、想像しただけでなんか気持ち悪いな。

 

八幡「何言ってんだか」

 

帆波「だね」

 

かおり「桃は…ないよね」

 

千佳「…うん」

 

オレらは由比ヶ浜達に聞こえないように小さい声で話す。聞こえたらかなりめんどくさい事になるからな。そしてオレは鶴見の方を見るとなんだか悲しそうな目をしていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

全員で夕食のカレーを食い終わり、小町の淹れてくれた紅茶で食後のティータイムを過ごしている。席順は雪乃、帆波、オレ、かおり、千佳、彩加、小町、瑞希という順で座っている。反対は…どうでもいいか。見事に奉仕部と葉山グループと別れたな。ま、当たり前か。

 

結衣「大丈夫、かな…」

 

と由比ヶ浜が少し心配そうな声で一言呟いた。誰も何が、と問おうとしない。100%鶴見留美の事だろう。ここにいる全員気づいている。由比ヶ浜の言葉に、席を離れて紫煙を燻らせている平塚先生が反応した。

 

平塚「何か心配事かね?」

 

葉山「ちょっと、孤立しちゃってる子がいて」

 

三浦「ねー、可哀想だよねー」

 

三浦は相槌のつもりなのか、当然の如く、その言葉を口にした。けど、その言葉に感情が一切込められていないようにも聞こえる。

 

八幡「違うな葉山。一人でいること自体は別にいいんだ。問題は、悪意によって孤立している事なんだよ」

 

三浦「は?意味わかんないんだけどなにが違うわけ?」

 

葉山に言ったはずなのに三浦から返ってきた。怖い。

 

葉山「好きで一人になっているのか、そうじゃないのかってことか?」

 

八幡「まぁ、そういう解釈でいい」

 

だから、解決すべきは彼女の孤立ではなく、彼女にそれを強いる環境の改善であるはずだ。

 

平塚「それで、君たちはどうしたい?」

 

葉山「それは…」

 

平塚先生に問われて、全員黙る。どうしたい?別にどうもしたくはない。ただその事について話してみたいだけだ。もちろん、問題意識をもって本気で取り組む人間はある、それは本当に素晴らしいことだし、尊敬も称賛もする。でも、オレ達は違う。オレも葉山も三浦も、本気で何かをする訳でも何かができるわけでもない。それを知っていながら、力がないことを言い訳にしながら、それでも自らに優しい心根があることを自覚したいのだ。自分たちには無関係なことだが、それでも見てしまった以上、知らなかったとは言えない。でも、どうにもすることができない。だからせめて憐れませてほしい、そういうことだ。

 

葉山「俺は…」

 

重々しく閉ざされた口を開いたのは葉山だった。

 

葉山「出来る範囲の事で、なんとかしてあげたいと思います」

 

雪乃「あなたでは無理よ。そうだったでしょう?」

 

雪乃の凜とした声が響く。絶対零度の声音と視線。理由の説明を求めようもないほど、確定した事実であるかように断言した。

 

葉山「そう、だったかもな。……でも、今は違う」

 

雪乃「どうかしらね」

 

葉山の答えに、肩を竦めるような仕草をして、雪乃は冷たくあしらった。予想していなかった2人のやりとりを目にして、それきり座には重い沈黙が垂れ込める。オレも黙ったまま2人の様子を窺う。そういえば雪乃は奉仕部に葉山が来た時に感じたが、雪乃が葉山に対してとる硬化した態度は普段とは違う。この2人の間に何かがあるのは明白。けどそれを無理やり聞き出そうとは思わない。前にも言ったが人には言いたくない過去がある。それを無理やり聞き出すのはどうかと思う。

 

平塚「雪ノ下、君はどうしたい?」

 

雪乃「一つお尋ねしますが、今回は奉仕部の合宿を兼ねていると聞いています。この案件も、奉仕部として取り扱っても?」

 

平塚「合宿中に起きたトラブルであるのならば、原理原則としては問題なかろう」

 

雪乃「ならば私は奉仕部として、助けを求められればそれに応えるだけです」

 

おお…雪乃がかっこよく見える。帆波もかおりも千佳も小町も瑞希も尊敬しているような眼差しで見ている。

 

平塚「で?実際助けは求められたのかね?」

 

雪乃「…それはわかりません」

 

確かに、オレ達は鶴見に何かをお願いされたわけではない。彼女の意志をはっきりとした形で認識したわけではないのだ。

 

帆波「多分、あの子は言いたくても言えないんじゃないかな」

 

八幡「なるほどな」

 

確かに言いたくても言えない時もある。言ったら言ったでまた何かされる可能性もある。どうすればいいのかわからなくなる。

 

平塚「さて、ここからは君たちでどうするか話し合ってみたまえ。私は寝る」

 

そう言って席を立った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後、オレ達は鶴見留美の孤独問題の対策の会議をすることが決まり、皆で話し合うことになった。最初に口火を切ったのは三浦である。

 

三浦「つーかさー、あの子、結構可愛いし、他の子とつるめばよくない?試しに話しかけてみんじゃん、で、仲良くなるじゃん。余裕じゃん」

 

戸部「それだわー。優美子冴えているわー」

 

三浦「ふっ、だしょ?」

 

うわぁ…コイツ楽観的だな。そんな事で上手くいくのなら鶴見も苦労したり、苦しんだりしていない。

 

結衣「それは優美子だからできるんだよ……」

 

さすがのあの由比ヶ浜でも賛同しない。葉山や三浦と一緒になってテニスの練習を邪魔していたのにな。

 

葉山「言葉は悪いけど、足がかりを作るって意味なら優美子の意見は一理ある。けど、結衣の言う通り、話しかけるのはハードルが高すぎるかもしれない」

 

葉山が即座に三浦の意見のフォローをする。適度にフォローしつつも、反対の意見を織り交ぜながら言うとは、流石は葉山と言ったところか。葉山の意見を聞いた縦ロールは少し不満げだったが「そっかー」と言って引き下がる。すると今度は海老名さんが自信満々の表情で挙手をした。

 

葉山「姫菜、言ってみて」

 

葉山が指名する。へ〜、海老名さんの下の名前姫菜と言うんだね。そして指名された海老名さんは立ち上がりメガネを輝かさせ

 

海老名「大丈夫。趣味に生きればいいんだよ。趣味に打ち込めば、いろんなイベントとかお店とかに行くでしょ?そこで同じ趣味の人と仲良くなっちゃえば、自分の居場所とかが見つかるんじゃないかな?学校だけがすべてじゃないって思えて、楽しくなると思うよ」

 

予想以上にまともな答えで正直驚いている。特に、学校だけがすべてじゃない、というのは実に正しいことだ。小学生、中学生くらいまでは自分の世界は学校と家庭しかない。だから、そこで否定されてしまうと、世界そのものに拒絶されたように感じてしまう。けれど、海老名さんはそうではないと、学校以外に自分が胸張って前を向ける場所を探せばいいと言っているのだ。そして海老名さんは更に続ける。

 

海老名「私はBLで友達ができました!ホモが嫌いな女子なんていません!だから、雪ノ下さん達もわたしと」

 

葉山「優美子、姫菜とお茶とってきて」

 

素早く葉山が打ち切ると、三浦が立ち上がって海老名さんの腕を取った。

 

三浦「おっけー、ほら、海老名行くよ」

 

海老名「ああっ!まだ布教の途中なのにっ!」

 

抵抗はしたものの、ばしっと頭を叩かれてずるずると引きずられるようにして海老名さんが消えていく。

 

雪乃「あの人、私に何を勧めようとしていたのかしら…」

 

八幡「それは知らなくてもいい事だ」

 

いや、ホント知らなくてもいい事だ。まさかこの状況で布教を始めるとは思わなかったな。その後もぽつぽつと意見は出るものの、現実的な妙案は出てこない。議論が活性化しないと自然と意見の数も減ってくるものだ。ソースはやる気のない学級会。シンと静まった空気の中、葉山が一言口にした。

 

葉山「…やっぱり、みんなで仲良くできる方法を考えなきゃダメか…」

 

それを聞いて思わず、ふっと乾いた笑いが漏れ出してしまう。じろっと葉山に視線を向けられ。こればかりは視線をそらす気もなければ、相槌を打つ気もない。オレは絶対の自信を持って真正面から葉山のアイデアを嘲笑する。

やはり、根本のところでこいつは理解していないのだ。みんな仲良く?素晴らしい。だがそれはただの理想に過ぎない。みんな仲良くという言葉自体が元凶なのに。それだったら中学の時、沢山友達ができるはずだ。それに人間なんて、どう頑張ったって嫌いな奴や性格が合わないやつは出てくる。そこで、「嫌いだ」とか正直に言えれば改善の余地や交渉の余地があるのかもしれない。問題は表面化しなければ問題にはならないという怠惰な欺瞞によって成り立った暗黙の了解だ。だから、オレは葉山の意見を全力で否定する。それは、オレだけではなかった。

 

雪乃「そんなことは有り得ないわ。絶対に」

 

雪乃の凛とした声音が、オレの嘲笑なんかよりよほど冷徹な言葉が、葉山の意見も視線も粉砕した。けどオレは雪乃と意見が合うな。

 

するとそれを聞いていた三浦が吠えてきた。

 

三浦「ちょっと、雪ノ下さん?あんた、何?」

 

雪乃「何が?」

 

三浦「その態度のこと。せっかくみんなで仲良くやろうってしてんのに、なんでそういうこと言ってるわけ?別にあーし、あんたのこと全然好きじゃないけだ、楽しい旅行だからって我慢してんじゃん」

 

結衣「ま、まあまあ、優美子」

 

怒涛の勢いで感情をぶつける三浦を由比ヶ浜が宥めようとする。が、一方の雪ノ下も納める気は全くないらしい。

 

雪乃「あら、意外とに好印象だったのね。私はあなたのこと嫌いだけど」

 

帆波「雪乃ちゃんも落ち着いて、ね」

 

隣に座っていた帆波が雪乃を宥めようとする。

 

小町「でも、ぱっと見た感じ、留美ちゃん結構性格きつそうですから小学生の女子グループの中だけだと溶け込むのは難しいかもですね。もう少し年齢上がってくると、派手な方向の人たちと仲良くなれると思いますよ?」

 

瑞希「あー、確かにちょっと冷たい、というより冷めてる感じもあるよね」

 

三浦「冷たいっつーか、舐めてるっていうか、超上から目線なだけなんじゃないの?周り見下したような態度とってっからハブられんでしょ。誰かさんみたいに」

 

三浦が挑発的に笑うと、雪ノ下は淡々と答える。

 

雪乃「あら、私にはもったいないくらい大切な友達がいるわ。それにそれはあなたの被害妄想よ。劣っているという自覚があるから見下されていると感じるだけではなくて?」

 

三浦「っ!あんさー、そういうこといってから」

 

葉山「優美k「はい、ストップ!」」

 

葉山が何か言おうとした時、帆波がそれを遮る。

 

帆波「これ以上言い合いしても意味無いでしょ。私達は今留美ちゃんの事で話し合いしてるんでしょ。だったら言い合いしてる場合じゃないんじゃないの?」

 

帆波が立ち上がり雪乃と三浦の間に入って言う。

 

帆波「雪乃ちゃんも熱くなりすぎ、一旦落ち着こう」

 

雪乃「そうね。少し熱くなりすぎたわね」

 

雪乃はそう言って椅子に座り直した。そして帆波は次に三浦に視線を向き。

 

帆波「三浦さんも」

 

三浦「……わかったし」

 

ちょっと渋々な感じで三浦も席に座り直した。それを見届けた帆波も席に座り直した。けど、その後話し合いという雰囲気ではなくなり、翌日に持ち越すことだけ決定した。というか高校生のオレらが仲良くできないのに、小学生たちにみんな仲良くなんつったって無理に決まっているだろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そしてその夜。

 

葉山「じゃあ消すぞー」

 

葉山がそう声をかけて、電気が消える。

 

戸部「ねーねー隼人くーん。こういう時は恋話するっしょ!」

 

葉山「……なんでそうなるんだよ」

 

まったくだ。なぜそうなるのか分からない。まったくリア充の考える事は分からないな。

 

戸部「俺も好きな人言うからー隼人くんも言ってくんねー?」

 

葉山「なんでそうなるんだよ」

 

戸部「いいじゃんいいじゃん!」

 

鬱陶しいなこいつ……。少しワイワイしてると、途端に戸部が静かになる。なんだ?寝たのか?

 

戸部「……俺さ、実は海老名さんのことちょっといいなって思ってんだ」

 

八幡「え?」

 

オレは思わずそんな声を漏らす。

 

戸部「あー言ってみると結構恥ずいわー!なーなー隼人くんも言ってよー!俺もいったんだしー!」

 

葉山「………えぇ」

 

戸部「じゃーイニシャルだけでも!」

 

葉山「…………………Y」

 

恐ろしい間の後にイニシャルだけ言った。Yと言ったらまず最初に思い出すのが、雪乃だな。その次は雪乃の姉の雪ノ下陽乃。他には由比ヶ浜や三浦の下の名前である優美子だな。まぁ、オレには関係ないけどな。

 

戸部「ヒキタニくんは一之瀬さんと付き合ってるんだよね」

 

どうやらもうバレているらしい。だったらもう隠す必要はないかもな。

 

八幡「…ああ、そうだけど」

 

戸部「べー、マジか〜。じゃ戸塚は?」

 

戸部は次に彩加に話を振った。ほう…彩加に好きな人か。いるのかちょっと気になってしまうけど、実際どうなんだろう。

 

彩加「僕は……いないかな」

 

いないのか。まぁ、そのうち現れるだろう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後も寝ようとしたが中々寝付けない。他の3人は静かに寝ていた。一旦外に出た。外は少し肌寒かった。少し歩いていると、林立する木々の間に長い髪を下ろした女の子が2人立っていた。その2人は帆波と雪乃だった。すると帆波がこっちを振り向いた。

 

帆波「あ、八幡」

 

なんで気づくんですかね?

 

雪乃「あら、本当ね」

 

八幡「よお、何してんだ?星でも見てたのか?」

 

帆波「ん〜、そういうわけじゃないんだけど」

 

ん?じゃあ一体なんだ?

 

雪乃「ちょっと三浦さんが突っかかってきてね……」

 

雪乃はしゅんと落ち込んだように顔を下に向ける。

 

帆波「私はそれを止めようとしていたら、今度は由比ヶ浜さんが私に突っかかってきて……」

 

なるほどな。それよりも三浦はまだ雪乃に突っかかって来るんだな。それと由比ヶ浜も突っかかって来るなんてな。もう、いいかんげんにしろよな。

 

雪乃「それで30分ほどかけて完全論破して泣かせてしまったわ、大人げないことをしてしまったわ…」

 

あんたマジでか。30分も論破したのかよ。

 

八幡「それでさすがに気まずくなって出てきたのか」

 

雪乃「ええ、まさか泣いてしまうと思っていなかったから…。とりあえず由比ヶ浜さんが宥めてるわ」

 

帆波「私も居たらまた突っかかれると思って雪乃ちゃんと出てきたの」

 

八幡「なるほどな」

 

雪乃「あの子のこと、…何とかしなければね」

 

帆波「そうだよね」

 

八幡「そうは言ってもな」

 

雪乃「それに葉山君もずっと気にしている」

 

八幡「葉山と何かあったのか?」

 

雪乃「小学校が同じなだけよ。うちの会社の顧問弁護士が彼の父親なの」

 

八幡「所謂幼なじみってやつか。大変だな」

 

雪乃「ええ、まぁね」

 

ホントに色々大変そうな感じだな。

 

帆波「雪乃ちゃんそろそろ戻ろっか」

 

雪乃「ええ、そうね」

 

八幡「じゃおやすみ帆波、雪乃」

 

帆波「うん、おやすみ八幡」

 

雪乃「ええ、おやすみ八幡君」

 

そう言葉を交わすと帆波、雪乃は自分達のバンガローへと戻って行った。さて、本当に鶴見留美の事どうすればいいのやら。下手に関われば明確なイジメに発展してしまうかも知れない。そんな事になり、鶴見がもし不登校や引きこもったりしたり、悪くて自殺なんてしてしまって、『ごめんなさい』で済まされないからな。はぁ…一体どうすれば……。その後オレは少しの間、夜空を見上げてからバンガローに戻り眠りについた。

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。