八幡side
長かったような短かったような楽しい夏休みは終了し、二学期が始まる。そしてその後テストが行われた。まぁ、どこの学校でもある事だよな。そのテストは普通にやったけど、かおりが苦戦したらしい。帆波や雪乃のおかげで学力が上がっているとはいえ苦戦したらしい。でもこればっかりはかおり自身の問題だしな。分からない所があればオレ達が教えれば良いしな。まぁ、そんな事よりも季節は秋になろうとしている。学生で秋といえばと聞かれたら文化祭。もうそういう時期なのかと思ってしまう。てなわけでウチのクラスでは文化祭の役割分担決めが行われた。先日のLHRでは課題までしか決めきれていなかった。この時間、より具体的な話し合いが進められる。
そして役割決めが始まったのだが誰も実行委員をやろうとしなかった。まぁ、そりゃあそうだろうなめんどくさい事は誰もしたくないだろうな。そして一向に決まらないため最終手段としてクジ引きで決めることになった。ジャンケンではなくクジ引きですか。これは運が必要となるな。そして男女別れてクジ引きをする。まずは男子からクジを引いていく。ほとんどが白紙だが1枚だけ丸が書かれておりそれを引いた人が実行委員になるという仕組みだ。そしてオレを含めた男子達がどんどんクジを引く。できればオレの前の人達の誰かが引いてくれてら良いのにと思っていたのだが、全然一向に引いてくれない。ほとんどの奴らが白紙を引いていきどんどんオレの番が近づいてくる。あれ?これなんかやばくね?そんな事思っているととうとうオレの番になってしまった。意をけしてクジを引き、そして折りたたまれた紙を広げる。そしてそこには大きな丸が書かれていた。
八幡「げ」
思わずそんな声が出てしまう。どうやらオレは文化祭文実委員選ばれたようだ。
平塚「では男子の文化祭実行委員は比企谷で決まりだな」
八幡「はい」
そして黒板にオレの名前が書き出される。まぁ、でも決まってしまった以上仕方ない。オレの運が無かったのだろう。やりたくないし、働きたくないけど仕方ない。その後、女子達のくじ引きが始まる。一体誰がオレと実行委員になるのやら。まぁ、やりたくない奴らばかりだろうな。そう思いながらも女子のくじ引きがどんどん進んでいく。そんな時1人の女子の声が聞こえた。
「あ…」
聞き覚えのある声だったので目を開けて前を見てみると、そこにはオレの友達千佳だった。まさか千佳がくじ引きで実行委員に選ばれたようだ。
平塚「ということで女子は仲町に決定した。今日から実行委員会があるから、2人とも頼むぞ」
千佳「はい」
八幡「…うす」
平塚「では解散 」
その声で皆めいめいに立ち上がり教室を後にした。そんな中、千佳オレの所に近づいてくる。
千佳「八幡君、一緒に頑張ろうね」
八幡「あ、ああ…そうだな」
千佳「元気ないね」
八幡「そりゃな。自分の運の無さを恨むわ」
千佳「あははは…」
そんな時かおりがオレと千佳の元に近づいてくる。
かおり「おっす、2人とも」
八幡「おう」
かおり「まさか2人が実行委員になっちゃうとはね」
千佳「決まったことだし仕方ないよ」
八幡「だな」
かおり「でも大変だね今日から実行委員会があるなんて」
八幡「そうだな」
かおり「じゃあ今日は一緒に帰れなさそうだね」
八幡「そうかもな」
かおり「まぁ、仕方ないよね。じゃあ今日は帰るよ。じゃあ2人とも頑張ってね」
八幡「…ああ」
千佳「うん」
そう言ってかおりは自分の荷物を持って教室から出ていった。さてとそろそろ会議室に行かねぇとな。
八幡「じゃあオレ達も行くか」
千佳「うん、そうだね」
そんな会話をしながらオレと千佳は委員会のミーティングが行われる会議室へと移動を開始した。会議室へと向かう人通りはちらほらとまばらだ。なかには男女連れだって雑談混じりに行く奴らもいる。オレと千佳も雑談混じりをしていると会議室着く。会議室は通常の教室2つ分ほどの広さがあり、椅子や机もなかなかに立派なものが用意されている。普段は職員会議なんかに使われているらしい。そして会議室に入ると半分集まっている中、オレと千佳がよく知る人物が2人いた。どうやらアイツらも実行委員になったらしい。でもなんで女子2人なんだ?普通は男女1人ずつのはずなのになんで女子2人なんだ?そんな事を思いながら2人が座っている席の近くまで行き、声をかける。
八幡「よお」
帆波「え?八幡?千佳?」
2人のうち1人はオレの彼女、一之瀬帆波である。そんな帆波は心底意外そうな表情をする。
雪乃「あら、ホントね。まさかあなたが参加するなんて、どういう風の吹き回しかしら?」
八幡「オレも参加したくて参加した訳じゃねぇよ。くじ引きで決まってしまったんだよ」
千佳「私も」
雪乃「なるほどね」
帆波「まぁ、そうだねよね。八幡が自分から進んで参加する訳ないよね」
八幡「まぁ、そういうことだ。それじゃあオレ達も座るか」
千佳「そうだね」
そう言ってオレと千佳は帆波と少し離れた場所に座る。その後も開始時刻に近づくにつれて、1人、また1人と人が増えていく。ドアが開くたび、みんなの視線はドアに向かうが、知り合いでないことを確認すると、すぐに視線は離れていく。あの視線、嫌なんだよな…。そんなことよりも他の奴ら喋りすぎてざわめきへと変わっていく。そんな中、オレと千佳は小さいながらも他愛もない話をする。そんなお喋りが開催されている中、時計の針はもう間もなく開始時刻になろうかといえところ。どやどやがやがやした会話とともに、また会議室のドアが開く。プリントを抱え、連帯感のある数人の、生徒達。続いて体育教師の厚木と平塚先生だった。そして数人の生徒達は会議室の前方に集まると、1人の女子生徒の顔を見る。すると、そのほんわか系の女生徒はうんと頷きを返した。それを合図に1年生と思しき2人の生徒が書類を各人に配布し始めた。それぞれに行き渡ったところを確認すると、女生徒はすっと立ち上がる。
「それでは、文化祭実行委員会を始めまーす」
肩まであるミディアムヘアーは前髪がピンで留められ、つるりとした綺麗なおでこがきらり手首に嵌められたカラフルなヘアゴムが可愛らしさを感じさせる。まぁ、帆波には敵わないけどな。その女生徒は優しげに細められた瞳で、にこやかに皆を見渡し、なんだかほんわかした号令をかけた。すると、みんなそれぞれ居住まいを正す。
城廻「えっと、生徒会長の城廻めぐりです。皆さんのご協力で今年もつつがなく文化祭が開催できるのが嬉しいです。…え、えっと、…み、みんなで頑張ろう!おー!」
城廻先輩が最後やっつけとも思える簡単な挨拶を終えると、すかさず生徒会メンバーがぱちぱちと拍手をする。それに釣られるようにして会議室中拍手が起きた。それにうんうんとほんわか頷き城廻先輩。
城廻「ありがとうございます〜。それじゃあさっそく実行委員長の選出に移りましょう」
すると、居合わせたメンバーがちょっとざわつく。まぁ、そうな。オレもてっきり生徒会長が実行委員長もやるもんだと思ってた。すると、城廻先輩は少し苦笑いする。
城廻「知っている人も多いと思うけど、例年、文化祭実行委員長は2年生がやることになってるんだ。私はほら、もう3年生だから」
はぁ、なるほどね。まぁ、3年の秋口のこういうことやってられないもんな。受験とかあるだろうし。
城廻「それじゃあ誰か立候補いますか?」
とは言うものの、手が挙がらない。そりゃあ誰もやりたくないだろうと思っていたその時。
「はい。私、実行委員長やりたいです!」
そう言って手を挙げていた人物は、八幡の彼女である一之瀬帆波だった。
あ、居たわ。帆波はこういうのに積極的で取り組むから、実行委員長にもなるわな。
城廻「ホント!?ありがとう!じゃあ自己紹介お願いしてもいいかな」
帆波「はい、わかりました」
そう答えた帆波は立ち上がり、その場で一礼してから自己紹介を始める。
帆波「2年J組の一之瀬帆波です。こういうイベントで人前に立つのは初めてですけど、楽しい文化祭にするために頑張りたいと思います。よろしくお願いします」
帆波の言葉に委員会のメンバーは暖かい拍手を送る。それに続くようにして他の人も拍手が打たれる。さすが帆波だな。帆波なら難なくこなせそうだがあんまり無茶はして欲しくはない。それで体調を崩してしまったら、文化祭を楽しめなくなってしまう。それだけは嫌だな。そして帆波は一礼をして席に着く。実行委員長が決まった事が嬉しかったのか、城廻先輩は書記からペンを奪って、【実行委員:一之瀬】と前にあったホワイトボードに書き出す。書記にぺいっとペンを投げ返すと、城廻先輩はスカートをひるがえしながらくるっとターンして振り返る。
城廻「さ、じゃああとは各役割を決めます。議事録に簡単な説明をつけておいたから読んでください。あと5分くらいで希望を取りますね」
言われた通り、オレは配布された議事録に目を通す。宣伝広報、有志統制、物品管理、保健衛生、会計監査、記録雑務…、なんか仰々しいな。とはいえ、高校生の文化祭、そこまで大変なこともあるまい。ざっと議事録に目を通す。
宣伝広報。まぁ説明書き読むまでもないわな。なんかコンビニにポスター貼りに行ったりするやつだろ。絵を描いたそのうえ貼って貰えるように交渉しないといかなさそう。哄笑される未来しかないからパスだな。
有志統制。有志団体、要はバンドやったりダンスやったりする連中のお相手。無理だ。どう考えてもトップカーストの相手をしなきゃいけない。融資団体相手ならやったんだが。
物品管理。各クラスで使う机の貸し出しとか機材の運搬管理か。運搬とか無理でしょ、超疲れる。だからスルーだな。
保健衛生。ああ、これあれだ、食品系の申請とか取り纏めないといけねぇやつだ。よし辞退だな。
会計監査。はいはい、お金関係の取り扱いね。いや、なんか問題起きたら責任取れないし、困るよな。だから固辞。
となると残るは記録雑務しかないな。そう結論づけて、んっと軽く伸びをした。ついでに周囲を見渡してみると、だいたいどの人も結論は出たのか、ぼーっとしてたり携帯を弄ったりしていた。横にいた千佳も決まったのか椅子の背もたれに体を預けていた。
八幡「決まったか?」
千佳「まぁね。八幡君は?」
八幡「決まったぞ。というか消去法してたら1つしか残らなかったからそれにした」
千佳「そっか。それにしても帆波が実行委員長になるとはね」
八幡「確かにな。でも半分は予想通りだけどな」
千佳「だね」
ふと帆波の方を見ると、帆波は雪乃と雑談していた。どうやら雪乃も決めたらしい。あ、そういえば部活はどうなるのだろうか。ここには奉仕部5人のうち4人が実行委員になっている。ということはかおりだけとなってしまう。部長である雪乃が実行委員になってしまっては部活は休みになってしまうだらろう。
城廻「そろそろいいかなー?」
城廻先輩の声は意外に聞き取りやすい。ほんわかというかふんわりというか、わんにゃかぱっぱゆんぱっぱしているが、そのせいか意識の端に引っかかりやすい。怒鳴りつけたりがなり立てる声の立て方とは違い、皆が自然と穏やかに先輩の方へ顔を向ける。
城廻「みんななんとなく決めたかな。それじゃ、一之瀬さん。ここからよろしくね」
帆波「はい、わかりました」
そう返事した帆波は立ち上がりホワイトボードの前へと座る。すると全員から視線を向けられるが、堂々としている。やはりこういうのは慣れているだろうな。
帆波「それでは各部署の配属決めをしたいと思います。まずは宣伝広報です。やりたい人」
その声に挙手する人はいない。特に一年生なんかは具体的にどの部署がどんな感じの仕事なのかなんて説明されないとわからないかもしれないし、当たり前っちゃ当たり前か。
帆波「宣伝広報だよ。宣伝はいろんなところに行けるよ。テレビとかラジオとか」
と帆波が補足の説明をするとちらほらと手が挙がり、人数と氏名が確認されると、次の役職決めへと移行していく。
帆波「次は有志統制」
有志は文化祭の花形のためか結構な勢いで手が挙がった。明らかに想定されている人数よりも多い。
帆波「んー、ちょっと多過ぎですね。後ろの方でじゃんけんして貰えますか?」
生徒会役員の人が挙手したやつら全員を後ろに集め、決まったメンバーをメモに書いていく。その後もどんどん手際よく配属決めが進んでいく。ちなみにオレは記録雑務にきちんとおさまりました。それにオレだけではなく千佳や雪乃も記録雑務となった。なんだ2人も同じなんだね。その後、各担当部な別れて顔合わせをした。そしてそれぞれクラスと氏名だけ言う自己紹介を終えると、皆さんお待ちかね、担当部の部長を決めるじゃんけんである。負けたヤツがすると、というどうにも後ろ向きなじゃんけんでさっきの有志部を決めた時はまるで意味合いが違う。そして自分達の方では3年生の先輩が担当部長に決まると、即時解散となった。そしてオレ達も帰ろうと思ったが、帆波は城廻先輩と平塚先生と一緒にいた。多分だが今後の話でもしているよだろう。そう思い会議室を後にする。
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会議室を後にしてオレは玄関で本を読みながら帆波が来るのを待っている。帆波には待っているとメールを送った。かおりは既に帰っていて、千佳と雪乃はこれから用事があるということで先に帰って行った。ということで待っているのはオレだけである。そして待つこと数分後、廊下を誰かが走る足音が聞こえてくる。音のした方を見ると帆波が走ってきた。急いで走ってきたのか少し息が上がっていた。
帆波「はぁ、はぁ、はぁ…おまたせ…八幡」
八幡「いや全然待ってないぞ。それとそんなに急がなくても大丈夫だぞ」
帆波「うん、そうなんだけど。やっぱり八幡を待たせてたから急いで行かなきゃと思って」
八幡「そうか。ありがとうな。じゃあ帰るか」
帆波「うん」
オレと帆波は一緒に昇降口を出る。その後、他愛もない会話をしながら歩く。
八幡「それにしてもまさか帆波が実行委員長になるとは」
帆波「意外だった?」
八幡「いや、予想通りというか」
帆波「えー、うそ〜」
八幡「いや、ホントだ。千佳も言ってたぞ」
帆波「そっか」
八幡「でも、実行委員長ってなんだか大変そうだな」
帆波「うん、そうかもしれない。でも1回やってみたかったんだよね」
八幡「そうか。まぁ、頑張ってな」
帆波「そりゃあ頑張るけど、八幡も頑張るんだよ」
八幡「わかってるよ。決まったもんはしょうがない。やれるだけやるよ」
帆波「うん。でも無理したらダメだよ」
八幡「帆波もな」
帆波「うん、わかってるよ。だから大丈夫」
八幡「そうか」
帆波がそう言うのなら大丈夫なのだろう。それでも心配してしまう。ヤダオレって帆波に対して過保護になってきてない?あまり度が過ぎるのもダメだ。こういう時こそ帆波を信じなくちゃダメだよな。それしかオレにできることはない。
今日はもう遅かったので帆波を家まで送った。
帆波「送ってくれてありがとう八幡」
八幡「どういたしまして」
帆波「じゃあ八幡。一緒に楽しい文化祭にしようね。そして楽しい思い出作ろうね」
八幡「ああ」
帆波「じゃあまた明日ね」
八幡「ああ、また明日な」
オレは帆波が家に入るのを見届けた後、帰路についた。
いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。