オレは彼女と出会って人生が変わった   作:チャキ

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どうもチャキです!第23話どうぞ!


第23話

八幡side

 

文化祭まで一月を切った校舎の中は慌ただしい。本日をもって、文化祭準備の為の教室残留が解禁される。他のクラスではめいめいに段ボールを運んできたり、絵の具を用意したり、気が早い奴らは差し入れと嘯いてお菓子だ飲み物だと落ち込んで騒ぎ始めている。そしてここ2のFも文化祭に向けて準備が進められていた。

 

八幡「なん…だと……!?」

 

そしてオレは黒板に書かれている文字を見て驚愕する。

 

ミュージカル:星の王子さま

 

王子さま:葉山

 

ぼく:比企谷

 

海老名「説明が必要かね?」

 

固まったままのオレと葉山の背後に現れたのは、葉山達と同じグループで、このミュージカルの監督、演出、脚本担当の海老名妃菜である。

 

八幡「あのさ、オレ文実だから無理だ」

 

海老名「え!?でも、葉山×ヒキタニは薄い本ならマストバイだよ!?ていうかマストゲイだよ!」

 

八幡「は?」

 

何言ってんのこの人?

 

海老名「やさぐれた感じの飛行士を王子さまが純新無垢な温かい言葉で巧みに攻める、それがこの作品の魅力じゃない!」

 

そんな作品だけ?フランスの人達怒るぞ。

 

八幡「オレは文実だから無理だ。他を当たれ」

 

葉山「そ、そうだな。ヒキタ…比企谷は文実やってもらってるわけだし、演劇だと稽古とかも必要になるからあんまり現実的じゃないよ」

 

ほぅ……まさかあの葉山からフォローを貰うとはな。でも、ナイスだぞ葉山。

 

海老名「そっか……」

 

葉山「そう、だからさ1度、全体的に考え直したほうがいいんじゃないか、……王子さま役とか」

 

んにゃろ〜、それが狙いか!そして数分悩んだ後、黒板に書かれた文字を消して、再度キャスティングする。その結果が…

 

王子さま:戸塚

 

ぼく:葉山

 

海老名「やさぐれ感はちょっと減るけどまぁこんなところかな…」

 

葉山「俺は、結局出なきゃいけないんだな…」

 

海老名「お、そのやさぐれてる感じ、いいね〜」

 

がくりと肩を落とす葉山にグッジョブとばかりに親指を立てる海老名さん。ざまぁねぇな葉山!フッハハハハ!けど当の本人である彩加はキョトンとしている。

 

彩加「これ、すごく難しそうだけど……、ぼくでいいの?」

 

八幡「まぁ、いいんじゃねえ?やってみればいいと思うぞ」

 

かおり「そうそう、やってみれば?」

 

千佳「私は合ってると思うよ」

 

彩加「そっか、分からないところだらけだからちゃんと調べないと…」

 

八幡「いやこの海老名さんが書いたのは大分脚色されてるから、勉強するなら原作読んだ方がいいと思うぞ。なんなら貸そうか?」

 

彩加「ホント!?ありがとう八幡!」

 

ぱぁっと花咲くような笑顔を向けてくれる彩加。 これは帆波と違った癒さだな。そんな事を思っていると彩加はキャスト打ち合わせに呼ばれる。

 

彩加「じゃあ行ってくるね八幡、折本さん、仲町さん」

 

八幡「おう」

 

かおり「いってら〜」

 

千佳「頑張ってね」

 

そう言ってオレらは彩加を見送る。さてとオレはどうしようかね。委員会までまだ少し時間はあるしな。

 

千佳「委員会までまだ時間あるけど、どうする?」

 

八幡「そだな。1度部室にでも行くかね。これからしばらく部活に出られないだろうしな」

 

千佳「そうだね。私も行こうかな」

 

かおり「じゃ、私も」

 

八幡「いいのか?サボタージュして」

 

かおり「いいの、私もクラスの事で出られないからそれを伝えようと思ってね」

 

八幡「なるほどな」

 

かおりもクラスの出し物の手伝いで出られないしな。オレと帆波と千佳と雪乃は文実。かおりはクラスの出し物の手伝いだから誰も部活には出られないらしい。

 

 

 

教室を出て廊下に出ると他のクラスからも賑やかな声が聞こえてくる。どこから聞こえてるのか分からないが、バンドの練習をしている音なども聞こえてくる。でもそんな賑やかな声は特別棟に来れば聞こえてはこなく静かだった。そして部室に到着し、扉を開けるとそこには帆波と雪乃がいた。

 

八幡「うす」

 

かおり「おいっす!」

 

千佳「こんにちは」

 

帆波「やっほー3人共」

 

雪乃「こんにちは」

 

そう挨拶を交しいつもの席に座る。

 

かおり「ねぇ、文化祭の準備期間中の部活はどうするの?」

 

八幡「多分中止だろうな」

 

雪乃「そうね。私と帆波さん、それに千佳さんに八幡君は文実だから来れないわね」

 

かおり「え?千佳と八幡は知ってたけど、まさか帆波と雪乃まで文実だったの?」

 

帆波「そうなんだ」

 

かおり「帆波はなんかわかる気がするけど、まさか雪乃まで文実とはね。なんだか意外だな」

 

雪乃「そうかしら?私としては八幡君が実行委員なのが意外だったけれど」

 

帆波「あ、それ私も思った〜」

 

八幡「いや、だからあれはくじ引きで当たってしまったんだよ」

 

かおり「ま、仕方ないよね」

 

そうだな。こればっかりは何も言えない。

 

八幡「じゃあ、文化祭が終わるまで中止と言うことで良いのか?」

 

雪乃「ええ、それでいいわ」

 

八幡「わかった」

 

帆波「あ、そろそろ時間だね。会議室に行こっか」

 

雪乃「ええ、そうね」

 

八幡「だな」

 

かおり「私も教室に戻ろ」

 

それぞれカバンを背負い部室を出て、オレと帆波と千佳と雪乃は会議室へ向かい、かおりは自分の教室へと戻っていく。はぁ…仕事するの嫌だけど、帆波との文化祭を過ごすために頑張りますかね。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから数日、何事もなく順調に進んでいた。帆波の的確な指示や統率もあって作業はスムーズに進んでいる。それにオレが所属している記録雑務の作業はオレと千佳が捌いている。それで少し遅れている仕事とかあれば手伝いをするという感じが続いている。後、ついでに副委員長も決まった。副委員長になったのは雪乃だ。帆波が雪乃にフォローして欲しいと頼まれ引き受けたという感じだ。帆波曰く委員長という立場は初めてで不安だから、頼りになる人にお願いしたらしい。雪乃はオレに頼めばいいのでは?と言ったけど、帆波は『確かに八幡には隣にいて欲しい気持ちはあるけど、私も成長する為には1度離れて作業した方が良いと』と言った。そんな真剣な帆波を見て雪乃はそのお願いを聞いたらしい。

 

そして何度目かの定例ミーティングを迎える。定刻通りの午後4時。会議室に集まった文実メンバーを見渡して、帆波が号令をかける。

 

帆波「それでは定例ミーティングを始めます」

 

よろしくお願いします、それぞれ唱和し一礼する。まずは各部署ごとの報告事項からだ。

 

帆波「では宣伝広報、お願いします」

 

担当部長が現在の進捗状況を報告すべく起立する。

 

「提示予定の7割を消化し、ポスター制作についても、だいたい半分終わってます」

 

帆波「少し遅れ気味ですね。まずは掲示物から終わらせてください。あとポスター協力の店舗への交渉を速めにスタートしてください」

 

「はい」

 

そういうと宣伝広報担当の人がメモをとる。

 

帆波「では次に有志統制、お願いします」

 

「はい。有志参加団体は現在10団体です」

 

帆波「地域賞のおかげで増えていますが、地域との繋がりという姿勢をしてるから参加団体の減少は避けたいところです。あとはステージの割り振り、集客の見込みや開演時のスタッフ内訳をタイムテーブルの一覧にまとめて提出してください」

 

「わかりました」

 

そう言って着席する有志統制担当の人。

 

帆波「では次、記録雑務お願いします」

 

「特にないです」

 

記録担当はごく簡潔に述べた。実際、記録雑務の仕事は文化祭当日の記録班が最大の仕事だから、今の段階では仕事内容は少ない。だから他の部署の手伝いなどしかない。それにしても帆波はすごいな。どんどん捌いていく。これも帆波と雪乃の立ち回りのおかげだろうな。2人で打ち合わせしたり、各部署の代表と話しているのを見かけたことがある。

 

この調子なら無事に文化祭を開催できるだろう。だが最後まで油断はしない方が良いだろう。

 

帆波「これで定例ミーティングは終わります。明日もよろしくお願いします。お疲れ様でした」

 

号令がかかると文実メンバーが口々にお疲れお疲れと言い合って席を離れていく。参った参ったや、疲れた疲れたや、超仕事したわとか聞こえてくる。

 

そんな中オレと千佳は帆波と雪乃の元へ向かう。

 

八幡「おつかれさん」

 

千佳「お疲れ〜」

 

帆波「あ、八幡、千佳、お疲れ様」

 

雪乃「お疲れ様」

 

千佳「それにしても2人はすごいね。どんどん捌いていくし」

 

帆波「そうかな?」

 

八幡「オレもすごいと思うぞ」

 

雪乃「私も同じ意見よ。さっきのミーティングもいい感じに進めてたじゃない」

 

帆波「そう?私は雪乃ちゃんが隣でフォローしてくれるから、安心して作業できるんだよ」

 

雪乃「そう…ありがとう。フォローできているか不安だったけれど、そう言って貰えると嬉しいわ」

 

帆波「うん、だからよろしくね雪乃ちゃん」

 

雪乃「ええ」

 

帆波「もちろん八幡と千佳もね」

 

八幡「おう、任せろ」

 

千佳「うん」

 

その後帰宅の用意をして会議室を出て、帰路に着いた。

 

 

 

そして帆波と一緒に帰っている途中

 

 

帆波「ふぅ…」

 

そう小さな一息が聞こえる。

 

八幡「大丈夫か?」

 

オレはそんな彼女の体調を心配し声をかける。

 

帆波「うん、大丈夫だよ。ありがとう」

 

そう言ってニコッと笑顔を見せてくる。

 

八幡「それなら良いんだがな。あんま無理するなよ。無理して倒れたら大変だからな」

 

帆波「うん、ありがとう」

 

八幡「だからオレにできる事があればなんでも言ってくれよ」

 

帆波「そう?…………じゃあ1つ頼んでも良い?」

 

八幡「おう、良いぞ?何すればいい?資料の作成か?確認か?整理か?」

 

帆波「ううん、違う」

 

八幡「じゃあ、なんだ?」

 

帆波「えっと………ハグして欲しいの」

 

八幡「え?ハグ?」

 

オレの予想外の事を言われて少し驚く。オレはてっきり文実に関する手伝いだと思ってた。だけど帆波の口から聞こえてきたのはハグだった。

 

八幡「な、なんでハグなんだ?」

 

帆波「えっとね。この前テレビで見たんだけど、ハグをするとね疲れやストレスなどがとれるらしいの」

 

八幡「そう…なのか?」

 

帆波「うん…」

 

知らなかったな。まさかハグをするだけで疲れたやストレスが取れるなんてな。ん?待てよ?ハグをすると疲れたなどが取れるという事は、相手は誰でも良いのか?今はオレが近くにいるけど、もし違う奴がいるとどうなるんだ?

 

帆波「安心して八幡。私がハグする相手はかおりに千佳、雪乃ちゃん。そして最後に八幡だけだから」

 

八幡「心読むなよ」

 

ホントこの子エスパーかなんかかよ。

 

帆波「八幡がわかりやすいだけだよ」

 

八幡「さいですか」

 

帆波「うん。……でも最大の理由は八幡とハグしたいからだよ」

 

八幡「そ、そうか」

 

急に言われると恥ずかしいな。

 

帆波「だから……んっ」

 

そう言って帆波はオレに向かって両手を広げる。オレはそんな帆波に近づき、抱きしめる。

 

帆波「はふぅ…」

 

八幡「おふぅ…」

 

初めてハグした時と同じで思わず声が漏れる。あの時よりもお互い身長は伸びたけど、オレの方が一回り大きい。そしてあの時と同じで柔らかく、小さかった。それに髪からはシャンプーなのかいい匂いしてくる。

 

帆波「ふふっ、テレビが言ってた事は本当みたいだね。ハグをすると疲れやストレスがとれるっていうのは」

 

八幡「そ、そうか」

 

帆波「でもさ、好きな人とするからかな?より一層疲れとかとれるよ」

 

そう言いながら、帆波はオレの背に回した腕に更に力を入れる。この前はオレが帆波に言われて力を入れたけど、今回は帆波自ら力を入れて来ている。

 

八幡「あの…帆波さん?いつまでこうしていればよろしいですかね?」

 

帆波「うーん、ずっと」

 

八幡「え?」

 

今なんて言った?ずっと?

 

帆波「と言いたいけど流石に家に帰らなきゃいけないからやめとくよ」

 

良かった……。確かにオレもずっとこうしていたいと思ったけど、流石に帆波もやめてくれた。

 

帆波「よしっ、疲れもとれたし、充電もできたしもう十分だよ」

 

そう言いながらハグをやめて離れる。

 

八幡「充電って、お前は機械かなんかかよ」

 

帆波「もー!そういうことじゃないよ〜!」

 

リスみたいに頬を膨らませる。そんな顔を見てオレはかわいいと思った。

 

帆波「ねぇ、八幡」

 

八幡「なんだ?」

 

帆波「また、こうして疲れた時にハグしてくれる?」

 

そう言いながら聞いてくる。そんな帆波にオレはこう答えた。

 

八幡「疲れた時じゃなくてもいつでも良いぞ。オレは」

 

帆波「っ!……そ、そっか。なら、またお願いしようかな」

 

八幡「ああ」

 

でも、帆波の疲れやストレスなどがとれて良かった。でないといつか倒れてしまうのではないかと思ってしまう。だからできるだけ助けたい。そう思った。

 

帆波「じゃあ、帰ろっか」

 

八幡「ああ」

 

そしてオレは帆波と横並びになり歩き出す。すると帆波は自分の手をオレの手を握る…いや、握るというより指を絡ませてくる。所謂恋人繋ぎというものだ。オレはあまりに急だったので身体がビクッとなってしまう。それで帆波もびっくりしてこちらを見てくる。

 

帆波「いやだった?」

 

と上目遣いでこちらを見てくる。

 

八幡「ち、ちげぇよ。急だったからちょっとびっくりしただけだ。だから嫌じゃねえよ」

 

そう言ってオレは絡められた手に少し力を入れる。

 

帆波「そっか…良かった」

 

そう言うと安心したような表情になる帆波。

 

八幡「ほら、家まで送るから帰るぞ」

 

帆波「うん、ありがとう八幡」

 

そして手に温もりを感じながら帆波を家まで送った後、帰路に着いた。

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまた会いましょう。

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