オレは彼女と出会って人生が変わった   作:チャキ

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どうもチャキです!それから新年明けましておめでとうございます。今年もこの作品をよろしくお願いします。では第9話どうぞ。


第9話

八幡side

 

今日も何も無く放課後になった。いや、何も無いとは言ったがあったな…また由比ヶ浜がこっちを見ていたことだけだがな。未だに分からない…なんでこっちを見ていたのかも分からないし、昨日だってオレが帆波から弁当を受け取ったことについて質問してきたし、ホント訳分からん。それにあの事故の原因を作った本人でもあるしな。まぁ、そんな事よりオレは折本と仲町と一緒に部室に行くと、何故か帆波と雪ノ下が部室の中を覗いていた。何してんだ?

 

 

かおり「なにやってんの2人とも?」

 

帆波「あ、みんな…実は部室に不審者が」

 

千佳「え?不審者?」

 

八幡「おいおい、それやばいんじゃねぇの?で?どこ?」

 

雪乃「あそこよ」

 

雪ノ下が部室の中を指を指すので、オレは部室の中を見ると確かに誰かいる。

 

かおり「どうする?」

 

八幡「どうするって言われてもな」

 

雪乃「比企谷君。ちょっと見てきてちょうだい」

 

え〜、オレが行くの?まぁ、確かに帆波達も不安がってるし、無視は出来ないな。少し警戒しながら部室に入った。視界に広がったのは、床にちりばめられた大量の紙、そしてそこに佇む一人の男がいた。その男は、もうすぐ初夏だというのに汗をかきながらコートを羽織って指ぬきグローブはめてるし。

 

???「クククッ、まさかこんなとこで出会うとはな。…待ちわびたぞ。比企谷八幡」

 

八幡「……」

 

どう反応したらいいんだ?

 

帆波「八幡の知り合い?」

 

と帆波が聞いてくる。

 

八幡「いや、全然知らん。やっぱり不審者だろう。帆波、通報頼む」

 

???「まま、待て!?我だ、この相棒の顔を忘れるとは、見下げ果てたぞ、八幡」

 

かおり「相棒とか言ってるけど…」

 

うん、折本さん。そんな冷ややかな目で見ないでくれます。

 

???「そうだ相棒。貴様も覚えているだろう、あの地獄のような時間をともに駆け抜けた日々を…」

 

八幡「体育でペア組まされただけじゃねぇか」

 

千佳「あ、そうなんだ」

 

八幡「ああ」

 

マジでコイツのせいで帆波達に勘違いされたじゃねぇか。それよりも本題だ。

 

八幡「んで、何の用だ。材木座」

 

材木座「む?我が魂に刻まれし名を口にしたか。いかにも我が剣豪将軍・材木座義輝だ」

 

バサッとコートを力強く靡かせて、ぽっちゃりとした顔にきりりっとやたら男前な表情を浮かべる。ハァ…とりあえず。

 

八幡「コイツは材木座よしてる。まぁ、体育の時間一緒にペアを組んでいるやつだ」

 

かおり「へ〜、比企谷が人を覚えるなんて…」

 

八幡「おい、折本。それは一体どういう意味だ。いくらオレでもペア組んだら嫌でも覚えるわ」

 

かおり「もう冗談だって〜」

 

八幡「ハァ…お前な…」

 

千佳「あはは…」

 

帆波「ねぇ、八幡。さっきから気になってたんだけどあれ何?剣豪将軍とか言ってるんだけど」

 

八幡「ん?ああ、あれは厨二病というやつだ」

 

帆波「厨二病?……ああ、中学の時なんか変な事言ってる人達いたね」

 

かおり「ああ、いたね」

 

千佳「そういえばそうだったね」

 

そういえばいたな。いやぁ〜、懐かしいなぁ〜。

 

雪乃「ねぇ、さっきから気になってるんだけど。その厨二病って病気なの?」

 

八幡「別にマジで病気なわけじゃない。スラングみたいなもん… 中二病というのはアニメや漫画のキャラ、もしくは自分で作った設定に基づいて行動する奴のことを言う。例えば、主人公が持つ不思議な力に憧れを抱き、自分にもそうしたものがあるかのように振る舞う。そういう感じだ」

 

雪乃「ふぅん、つまりお芝居をしてるのね」

 

八幡「まぁ、そんなところだ。あいつは、室町幕府の十三代将軍・足利義輝を下敷きにしているみたいだ。名前が一緒だったからベースにしやすかったんだろう」

 

帆波「でもなんで八幡を仲間として見てるの?」

 

八幡「ん、ああそれは、八幡っつー名前から八幡大菩薩を引っ張ってるんじゃないか?清和源氏が武神として厚く信奉してたんだ。鶴岡八幡宮って知ってるだろ?」

 

帆波「あ〜、知ってる。なるほど、だから八幡を仲間として見てるんだね」

 

八幡「まぁ、オレにはそんな感情は一切無いけどな」

 

かおり「なかなか辛辣だね」

 

八幡「当たり前だ。仲間と思われたくないからな」

 

千佳「あはは…」

 

雪乃「それで、依頼というのはその病気を治すことでいいのかしら?」

 

材木座「……八幡よ。余は汝との契約の下、朕の願いを叶えんがためこの場に馳せ参じた。それは実に崇高なる気高き欲望にしてただ一つの希望だ」

 

雪ノ下から顔を背けて、材木座はオレの方を見た。一人称も二人称もブレブレだ。どんだけ混乱してんだよ。

 

雪乃「話しているのは私なのだけれど。人が話しているときはその人の方を向きなさい」

 

冷たい声音でそう言って雪ノ下が材木座の襟首をつかんで無理矢理正面を向けさせた。

 

材木座「……モ、モハハハ、これはしたり」

 

雪乃「そのしゃべり方やめて」

 

その後も、材木座は雪ノ下の質問攻めにあった。この時期にコートがどうとか、指ぬきグローブがどうとか。そのたびにしゃべり方を言われ、材木座は、声が小さくなっていった。その後、帆波達が止めに入り、何とかおさまった。

 

ハァ…仕方ない。

 

八幡「んで、何の用だ」

 

と聞くと目を輝かせていた。気持ち悪いなホント。

 

材木座「依頼というのはこれだっ!?とくと見よ」

 

そう言って材木座は床に散らばった紙を集めオレ達の前に差し出した。

 

かおり「これは?」

 

雪乃「原稿用紙ね。何か書かれているわ」

 

千佳「これって小説じゃない?」

 

八幡「ああ、そうだな。しかも見るからにラノベの類だ」

 

帆波「ああ、八幡がよく読んでいるやつだよね」

 

八幡「ああ」

 

そう、材木座が持っているのは自分で書いたであろう小説だった。

 

材木座「ご賢察痛み入る。如何にもそれはライトノベルの原稿だ。とある新人賞に応募しようと思っているのだが、友達がいないので感想が聞けぬ。読んでくれ」

 

雪乃「何か今とても悲しいことをさらりと言われた気がするわ…」

 

中二病を患ったものはラノベ作家を目指すようになるのはそこまで不思議じゃない。あこがれ続けたものを形にしたいという思いは実に正当な感情だ。加えて、妄想癖のある自分なら書けるっ!と考えたっておかしなことはない。さらに言うなら好きなことで食っていけるならそれはやはり幸せなのだろう。

 

けど、オレも危なかった。オレも厨二病になりかけた。けどその前に帆波達と出会ったから、厨二病になる事は無かった。

 

そんな事よりもなんでオレ達なんだよ。

 

八幡「投稿サイトとか投稿スレにでも載せたらいいじゃねぇか」

 

材木座「それは無理だ。彼奴らは容赦がないからな。酷評されたら我死ぬぞ」

 

うっわ…心弱ぇ…。

 

 

そして帰り道。

 

かおり「ねぇ、ホントにあれ読まなくちゃダメなの?」

 

帆波「そりゃそうだよ。受けた依頼はきちんとしないとダメだよ」

 

千佳「そうだよかおり。そうしないと約束を破ると同じだよそれでもいいの?」

 

かおり「よ、良くない…」

 

八幡「だったら読まないとな」

 

かおり「う…恋愛なら読んだけどな〜」

 

帆波「文句言わないの」

 

かおり「ハァ…もう諦めるよ」

 

千佳「最初っからそうしなよ」

 

八幡「でも、あの量だ。絶対に徹夜だよな…」

 

かおり「う、ウソ…」

 

千佳「かおり、寝落ちしないようにね」

 

かおり「しないよって言いたいけど、しちゃうかもしれない」

 

正直だな。確かに中学の時受験勉強している時だって、たまに寝落ちしてたな。今度もそうならないようにしてほしいな。

 

八幡「頑張って起きて読めよ」

 

かおり「うう…うん!頑張ってみる!」

 

千佳「おお!珍しくかおりがやる気だ!明日雪でも降るんじゃ…」

 

かおり「降らないよ!というかこの季節じゃないでしょ!」

 

八幡「だから降るんじゃないか?」

 

帆波「うん、確かに明日雪でも降るかもね」

 

かおり「皆してひどい!?ウケないよ!」

 

3人「「「あ、ウケないんだ」」」

 

ホント、毎回毎回ウケるとか言ってるのに、今回はウケないんだ。どういう基準でそうなってるか知らないけどな。いや、知りたくもないな。

 

帆波「でも、ホントすごい量だったね。あれはちょっと苦労しそうだね」

 

八幡「ああ、そうだな」

 

そしてオレ達は他愛もない会話して、それぞれの家に帰るために別れた。オレも家に帰るため帰り道を歩く。さて、今日の晩ご飯はなんだろうな。

 

帆波「今日の晩ご飯は麻婆豆腐だって小町ちゃんから連絡あったよ」

 

八幡「ほー、麻婆豆腐か。いいな」

 

帆波「でしょ?」

 

八幡「ああ…え?」

 

帆波「え?何?どうしたの?」

 

八幡「いやいや、なんで帆波がこっちの道歩いてるの?帆波の家あっちだよね?」

 

帆波「え?だって今日は八幡の家に泊まるんだよ」

 

八幡「は?オレの家に泊まる?オレそんなの聞いてないぞ」

 

帆波「え?だって昨日、小町ちゃんに泊まって良いって聞いたら良いって言われて」

 

八幡「いや、オレそんなの一言も聞いてないぞ。それに瑞希は良いのかよ」

 

帆波「ああ、瑞希も泊まるから」

 

八幡「はい?」

 

おいおい、どうなってんだよ。そんな事マジで一言も聞いてない。一体どうなってんだよ。

 

帆波「もしかして小町ちゃんから聞いてないの?」

 

八幡「ああ」

 

帆波「んもう〜。小町ちゃんったら…」

 

八幡「あ〜、何となく察したわ」

 

帆波「ハァ…そういう事」

 

八幡「よし、こうなったら小町にお仕置が必要なようだな」

 

帆波「うん、そうした方がいいよ」

 

八幡「ああ、そうだな」

 

帆波「でも程々にね」

 

八幡「わかってるよ」

 

帆波「でも、泊まるのはいいでしょ?」

 

八幡「ああ、もう決まってるしな。今度からオレにも言った方がいいかもな」

 

帆波「そうだね。ごめんね今度からそうする」

 

八幡「ああ」

 

そしてオレは帆波と一緒に家に帰る。

 

八幡「たでーま」

 

小町「おかえりお兄ちゃん、帆波お姉ちゃん」

 

瑞希「おかえりなさい八幡お兄ちゃん、お姉ちゃん」

 

八幡「おう、ただいま瑞希」

 

帆波「お邪魔します小町ちゃん」

 

小町「もう、帆波お姉ちゃん。そこはただいまでいいんですよ」

 

帆波「いや、それは…」

 

小町「いいんです。ねぇ!お兄ちゃん」

 

八幡「ああ…そうだな。いいかもな」

 

帆波「は、八幡?」

 

小町「ほら、お兄ちゃんもこう言ってますし。ね?1回だけでも言ってみません?」

 

何故かテンションが高い小町。何故か帆波にただいまと言わせたいらしい。そんなテンションの高い小町の頭の上に自分の手をのせる。

 

小町「ん?お兄ちゃん?どうしたの?」

 

八幡「どうしたの?じゃないよ小町ちゃん」

 

小町「え?ホントどうしたの?」

 

八幡「なんでこうされてるか、わかる?」

 

小町「い、いや…わかんないな〜」

 

どうやら誤魔化しているみたいだ。ホントはわかってる癖にな…仕方ない。

 

八幡「な〜んで帆波が泊まることオレに言わないの?」

 

小町「あ、いや〜…それは…その…あれだよ…あれ」

 

八幡「ん?どれだい?」

 

小町「…ご、ごめんなさい。忘れてました」

 

瑞希「小町ちゃん言わなかったの?」

 

小町「う…ごめん忘れてた」

 

瑞希「もう小町ちゃん」

 

小町「う…」

 

どうやらすごく反省しているようだ。けど、ちょっとやりすぎちゃったかな。

 

八幡「もういい。どうやら反省してるみたいだからな」

 

小町「ありがとうお兄ちゃん」

 

八幡「今度からはちゃんと伝えてくれよ」

 

小町「うん、わかった。帆波お姉ちゃんもごめんなさい」

 

帆波「うん、いいよ。次はちゃんと伝えないとダメだよ」

 

小町「はい。瑞希ちゃんもごめんね」

 

瑞希「うん、良いよ。でも次から気をつけないとね」

 

小町「うん」

 

よし、小町の反省も終わった。そしたらなんだか腹が減ってきたな。

 

八幡「よし、小町。腹が減ったら飯しようぜ」

 

小町「うん、わかった。じゃあ着替えてきて」

 

八幡「はいよって帆波と瑞希の着替えはどうするんだ?」

 

小町「ああ、それならあるよ。いつでも泊まれるように」

 

八幡「用意周到だな、おい。まぁ、あるのならいいや。じゃあ着替えてくるわ」

 

小町「はいはーい」

 

オレは着替えた後、晩飯を食って風呂にも入った後、帆波と小町と瑞希とオレでテレビを見ながら色んな話をしながら過ごした。もう時刻は10時になろうとしている。オレと帆波にはやる事がある。カバンから材木座が書いた原稿用紙の束を取り出し、リビングのソファに座る。隣には帆波もいる。時々、帆波が書かれている事について質問してくるので、説明をしたりした。

 

けどいくら帆波でも年頃の女子だからちょっと緊張するな。風呂入った後だからシャンプーのいい匂いが鼻に響く。というより湯冷めする前に読み終わりたいな。というか帆波さん、あなたなんでそんなに近いんですか?もうほとんど密着してるじゃん。あー、ダメだ。読むのに集中しなきゃな。

 

しばらく読んでいるとちょっと集中力が落ち眠たくなってきた。読者が眠くなるということはおそらくそこまで面白くないんだろう。けど、依頼である上に人が頑張って書いた物語だ。最後まで読むか。帆波もだんだん眠たくなってきているのか小さいあくびをしている。

 

八幡「大丈夫か?帆波」

 

帆波「うん、なんとかね。でも、後もう少しで終わるから頑張るよ」

 

八幡「そっか」

 

帆波が最後まで読むって言ってんだからオレも最後まで読まねぇとな。よし、オレも後少しだ。ラストスパートをかけて一気に読むか。

 

 

そしてオレと帆波が読み終わった時には、時刻はもう日をまたいでいた。

 

八幡「フゥ…終わった」

 

帆波「私も終わったよ…ふあぁぁ」

 

帆波があくびをする。もうどうやら帆波は限界のようだ。まぁ、オレも眠たい。もう寝るか…ん?ちょっと待てよ。帆波はどこで寝るんだ?さすがにこのソファはないよな。小町と瑞希はもう寝てるし…まさか…

 

八幡「なぁ、帆波。帆波はどこで寝るんだ?」

 

帆波「あれ?言ってなかったけ?私は八幡の部屋で寝るんだよ」

 

八幡「はい?」

 

帆波「だから八幡の部屋で寝るの」

 

八幡「い、いや、待て。それはさすがにさ…その…やばくないか?」

 

帆波「べ、別に…私は八幡と一緒に寝てもいいよ///」

 

八幡「なっ!///」

 

な、ななななんですと!?そんな事言われたら勘違いするでしょ?しかも顔を赤くして、モジモジしながら言わないでよ。そんな事されたら抱きつきたくなっちゃうでしょ。

 

八幡「じ、じゃあ、帆波はオレのベットを使ってくれ。オレはこのソファで寝るからさ」

 

よし、これで良い。帆波と一緒に寝るのはダメだ。そんな事してみろドキドキして寝れなくなっちゃうからな。

 

帆波「だ、ダメだよ。ここで寝たら風邪引いちゃうよ。だ、だからさ…一緒の部屋で寝よ」

 

八幡「い、いや…でもな…」

 

いくらなんでも、この歳で彼女と一緒に寝るのはさすがにダメだろう。色々と問題があるしさ。

 

帆波「だ、ダメ…」

 

八幡「うっ…」

 

上目遣いに涙目とは卑怯なコンボを使いますな帆波。そんなウルウルさせた目で見られるとなんか罪悪感というか、そういうのがでてくるからやめてよ。

 

八幡「わ、わかった…ここで寝ないから。自分の部屋で寝るからさ、その目はやめてくれ」

 

帆波「ホント?」

 

八幡「あ、ああ」

 

そう言うとパァと明るい顔になる帆波。おお、さっきの顔が嘘のようだ。

 

帆波「うん、じゃあ八幡の部屋に行こっか」

 

八幡「…ああ」

 

オレは帆波を自分の部屋に連れていき、一緒に同じベッドに入る。やばい…マジでドキドキしまくって寝れるかどうかわかんねぇ。持ってくれよオレの理性。

 

帆波「じゃ、おやすみ八幡」

 

八幡「おう…おやすみ帆波」

 

オレはドキドキしながら眠りについた。

 

 

 

翌日、起きたら小町と瑞希がニヤニヤしながら見ていた。小町に関してはスマホで写真を撮っていた。何故かと言うと帆波がオレの背中から抱きついているからだ。オレも一瞬ビックリしてしまったよ。そして帆波が起きてオレに抱きついているのを知るとものすごく顔を真っ赤にして、自分の顔を隠していた。オレもなんだか恥ずかしくなりそっぽをむく。

 

数分後

 

オレ達は着替えて、朝食も食って学校へ向かった。

 

小町「じゃあお兄ちゃん、帆波お姉ちゃん行ってくるであります」

 

瑞希「お姉ちゃん、八幡お兄ちゃん行ってきます」

 

八幡・帆波「「行ってらっしゃい」」

 

と小町と瑞希と別れて学校に向かう。その途中折本と仲町と合流する。案の定折本と仲町はなんだか眠たそうだった。

 

 

そして時間が経って放課後になる。授業はほとんど聞いてない。けどノートはしっかり取ってあった。

 

部室

 

八幡「うっす」

 

かおり「おいっす」

 

千佳「こんにちは」

 

部室に入ると雪ノ下は穏やかな顔で寝息を立てているのが目に入った。どうやら雪ノ下も徹夜したみたいだな。

 

千佳「雪乃ちゃんも徹夜したんだね」

 

八幡「みたいだな」

 

かおり「ホント、あれ読むの苦労したよ」

 

八幡「寝落ちしなかったのか?」

 

かおり「うん、大丈夫だったよ」

 

千佳「あ、帆波も寝てるね」

 

八幡「ああ、そうだな。起こさないように静かにするか」

 

千佳「うん、そうだね」

 

オレ達は帆波と雪ノ下を起こさないよう静かに過ごす。まぁ、起きなかったら材木座が来るまで寝かせとけばいいしな。でも、そうなれば早く来るだろう。アイツに喋る相手なんていないんだし。

 

けど、材木座が来る前に2人は目を覚ました。

 

雪乃「あら、来ていたの。ごめんなさい気づかなかったわ」

 

千佳「ううん、大丈夫だよ」

 

かおり「そうそう」

 

帆波「材木座君はまだ来てないの?」

 

八幡「ああ、でもそのうち来るだろう」

 

そう思うこと数分後

 

部室の戸が荒々しくたたかれる。

 

材木座「たのもう」

 

材木座が古風な呼ばわりとともに入ってきた。

 

材木座「では、感想を聞かせてもらおうか」

 

材木座は椅子にドカッと座り、その顔は自信に満ち溢れていた。対して正面に座る雪ノ下は珍しく申し訳なさそうな顔をしていた。

 

雪乃「ごめんなさい。私にはこういうのよくわからないのだけど」

 

材木座「構わぬ。凡俗の意見も聞きたいところだったのでな。好きに言ってくれたまえ」

 

そう、と短く返事をすると、雪ノ下は小さく息を吸って意を決した。

 

雪乃「つまらなかった。読むのが苦痛ですらあったわ。想像を絶するつまらなさ」

 

材木座「げふぅっ!?」

 

一刀のもとに切り捨てやがった。その後も雪ノ下のダメ出しが続くので近くにいた仲町が止めに入る。けど雪ノ下はまだ言い足りなさそうな顔していた。あれでまだ言いたいないのかよ容赦ねぇな。次は仲町だが

 

千佳「う〜ん、ごめんホントに面白くなかった」

 

材木座「うぎゃぎゃ!」

 

なんつー声だよ。次は折本の番。

 

かおり「一言言うとつまんなかった」

 

材木座「ひぎゃあ!?」

 

次は帆波の番。

 

帆波「え〜…っと…面白くなかった」

 

材木座「ぐふぅっっ!?」

 

おいおい大丈夫かよ。もう限界なんじゃねぇの?

 

帆波「じゃあ次は八幡」

 

とうとうオレの番になってしまったか。

 

材木座「ぐ、ぐぬぅ。は、八幡。お前なら理解できるな?我の描いた世界、ライトノベルの地平がお前にならわかるな?愚物どもでは誰一人理解することができぬ深遠なる物語が」

 

材木座の目が『お前を信じている』と告げていた。いや、オレにそんな目を向けられても困る。でも、言わなきゃ男が廃る。そう思いオブラートに包んで言ってやろう。

 

八幡「んで。あれはなんのパクリ?」

 

材木座「ぶふっ!?ぶ、ぶひ…ぶひひ」

 

材木座はごろごろと床をのたうち回り、壁に激突すると動きを止めて、そのままの姿勢でビクともしない。

 

帆波達は若干引いている様子の中材木座が立ち上がり、埃をぱんぱんとはたいてまっすぐオレを見る。

 

材木座「…また、読んでくれるか?」

 

オレは驚いた。あんだけ言われてなお書き続ける意思があるのか。むしろ死にたくなるぞあれは。

 

材木座「また、読んでくれるか?」

 

今度は雪ノ下達に向かって力強く言った。

 

八幡「お前…」

 

かおり「ドMなの?」

 

ちげぇよ。そうじゃねぇだろ。っかなんでそうなるんだよ。

 

八幡「お前、書き続けるのか?」

 

材木座「無論だ。確かに酷評はされた。もう死んじゃおっかなーと思った。むしろ、我以外死ねとも思った」

 

あ、やっぱりそう思うんだ。

 

材木座「だがそれでも嬉しかったのだ。自分が好きで書いたものを誰かに読んでもらえて、感想を言ってもらえるというのはいいものだな。この想いに何と名前を付ければいいのか判然とせぬのだが。……読んでもらえるとやっぱり嬉しいよ」

 

そう言って材木座は笑った。それは、剣豪将軍の笑顔ではなく、材木座義輝の笑顔。

 

なるほどな。こいつは中二病ってだけじゃない。もう立派な作家病に罹っているのだ。書きたいことが、誰かに伝えたいことがあるから書きたい。そして誰かの心を動かせたのならとても嬉しい。だから何度だって書きたくなる。たとえそれが認められなくても、書き続ける。それを作家病というのだろう。

 

八幡「ああ、読むよ。出来たらここに来い。楽しみにしてるぜ」

 

 

 

読まないわけがない。だって、これは材木座が中二病を突き詰めた結果たどり着いた境地なのだから。病気扱いされても白眼視されても無視されても笑いものにされても、それでも決して曲げることなく諦めることなく妄想を形にしようと足掻いた証だから。

 

材木座「また新作が書けたら持ってくる」

 

そう言って材木座は立ち去って行った。

 

かおり「なんか凄そうな人だったね」

 

千佳「そうだね」

 

帆波「うん」

 

確かにすごい奴だ。でもあの気持ち悪い部分を除けば。

 

 

その日以降オレは材木座と体育の時間で話すようになった。

 

 

 

 

 




いかがでしたか?ではまたお会いしましょう。

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