「残念だったねぇ。私たちも主人公じゃなかったよ」
「ありえません……」
ありえない。そう、ありえない。私は主人公のはずだ。私こそが主人公だ。なのに最下位?うっそだぁ……。私が主人公じゃなかったら誰が主人公なんだよ。このモノローグは私のものだぞ!?つまり私が主人公!きっとポンコツ愛され系の主人公だったんだな。
「おい…みろよアレ」
「やばいな…」
「ぶっちぎりじゃないか」
ざわざわと、困惑に満ちたざわめきが私の耳に入る。振り返ると、ぶっちぎりの1位でゴールしようとする少女がいた。ポニーテールを風になびかせ、真剣にしかしどこか楽しそうに走る少女。そのままゴールすると周囲の者たちが彼女を取り囲む。
主人公だと思ってモブ共が集りはじめたな。哀れモブ。貴様らは彼女の親友ポジになることはないだろう…。おらどけっ!主人公の親友は私だぞ!?
「おめでとう、キリコくん。おらモブ生徒共寄るな散れ散れ」
「あっ、ありがとうございます先生。身動き取れなかったので助かりました」
「うむ。存分に感謝するがいい。崇め奉っても良いんだぞ。…まぁ、改めておめでとうキリコくん。君にいうことがある」
自らの生徒をモブ呼ばわりしたモブ教師は、一拍置くと周りにとって衝撃的な発言をした。
「しかし、残念ながら君は主人公ではない」
「あ、やっぱりですか?」
周りが『えぇぇぇ〜〜!?』と騒ぐ。うるせぇ。当たり前だろうが、主人公は私なんだから。
「純粋な走る技術の差だろうな。チートやステータス、スキルなどに頼るからどいつもこいつも不甲斐ない結果を残すことになるんだ」
なるほど。確かにこの世界に生まれてからステータスを上げたりスキルを使いこなす努力はしたが、純粋に技術を鍛える努力はしていないな。どうせモブ共も同じ状況だろう。
「今日はとりあえずこのまま全種目やるが、一月後またやるからな。せいぜい無駄な努力をすることだな」
やっぱ口悪いなこいつ。
その後の種目はキリコがぶっちぎりの1位になることはなく、1番になるのは趣味などの技術が活かされた奴らだった。
全種目が終了すると、ステータスの制限が解除される。荒くなっていた息も徐々に落ち着きを取り戻す。
「今日の授業は終了だ。家に帰って休むと良い。それと、先程も言ったが1月後にまたやるからな。以上解散」
先生はそう言い残すと残像を残して何処かへ消えた。それを見るとモブ共もそれぞれ談笑しながら教室へ戻っていく。
「私たちも戻ろっか。一緒に行く?」
「そうですね。お願いします」
カナメちゃんの手を握ると私たちはまだ誰もいない教室にいた。ちょうど良いので急いで着替え始めようとすると。
バンッ!と扉が開く。
男だったら殺そうと思いそちらに目を向けると、わなわなと震えるキリコがいた。
「1番じゃない!?」
小学生かよ