五条悟の次に強いやつって言われたいじゃん 作:五条悟のディスク
お待たせしました。
ただいまやん
久々に帰ってきたぞ、東京都立呪術高専。
ビルの群れが並ぶ同じ東京にあるとは思えない古風な建物が連なるかつて見慣れた場所に俺は帰ってきていた。
気が付けばもう26歳。卒業してからこれまで、高専から直接任務を受けるのではなく機関を通して間接的に受けていたので高専に来るのも本当に卒業以来だ。
七海や灰原とは定期的にあっているものの、五条先輩とはこの前久々にあったな。
やっぱり雰囲気変わったわ。
お調子者というか、学生時代の俺様感がなくなった。やっぱり夏油先輩の影響なのだろうか。
「俺が考えてもしゃーないって結論出しただろ、まったく」
気が付けば一般的には職員室と呼ばれる部屋まで来ていた。というのも、高専では基本在中している専任の教師がいるわけではなくあくまでも呪術師が先生として教鞭を振るっているためだ。
教師の数も少ないのでどちらかというと待合室的なイメージのほうが強いかもしれない。
「や、先日ぶりだね円李」
その待合室の中でもパーテーションで区切られた対談室に五条先輩はいた。二人掛けのソファーの真ん中にドカリと座り気さくに手を上げる。
「お久しぶりです五条先輩」
「そうだね。この前会ったって言っても卒業からマジでほとんど会ってなかったもんね」
ま、とりあえずお茶でも飲みなよといってペットボトルを俺に放り投げる。
普通こういうのって給湯器とかでその場で淹れるもんなんじゃないか、と口には出さないものの不思議に思いペットボトルのキャップを開ける。
「さて、早速だけど生徒の話をしておこうかな」
そういって渡されたのは顔写真と経歴の載った4枚の書類。
ネックウォーマーで口まで隠した短髪の男子、見覚えのある容姿の女子、見知りのパンダに内気で自信のなさそうな顔をした男子。
「一枚目から呪言師に呪具使い、パンダに最後の彼が特級呪霊に憑りつかれた子。ちなみに死刑にされそうなところを僕が拾った」
なるほどとうなずき改めて経歴をよく見てみる。
呪言師の狗巻棘。血が薄まり近年では対象を縛るほどの効果を持たない呪言師しか生まれなかったところに生まれた正真正銘本物の呪言師。それゆえに幼少期から無意識に術式を発動していたようだ。自身の術式の
呪具使いの禪院真希。彼女とは昔にあったことがある。京都に寄った時に呼び出された禪院家であった。当主に「これと結婚しろ」って合わされたのが彼女。呪力がないため術式も使えない落ちこぼれだのひどい扱いを受けていたがまさか呪術高専に来ているとは思ってなかった。術式が使えない欠点を呪具で補っているということか。とんでもないガッツだ。妹のほうはどうなんだろうか?
「知り合い?」
書類を読む手が止まっていたからか、五条先輩に声を掛けられる。
「以前禪院家に呼び出されたことがあってその時にお見合いさせられました。ま、断りましたけど」
「...禪院の爺さんらしい」
大きくあくびをかますとソファーに全身を預けるようにしてだらける。
パンダ。こいつは知ってる。というのもパンダの作成に俺も一枚嚙んでいたからだ。パンダは突然変異呪骸という人形の体の中に呪いを宿す意思を持った無機物だ。夜蛾先生の最高傑作と言われるだけはあり対人でのコミュニケーションに優れ、戦闘面においても仕込まれたギミックで二級呪霊なら難なく、一級呪霊にでも殿は努められるくらいには強い。ちなみに俺と熊がパンダの作成を手伝っている。俺からは猫を作ったノウハウを、熊は呪いを宿す構造について。まさか高専に生徒として通っているとは思わなかったけど。
そして最後に
「ちなみに憂太なんだけどね、純粋な呪力量で言ったら僕たちより上かもしれない。里香ちゃんが持ってる呪力なのかもしれないけど、憂太が特級扱いされてるのは里香ちゃんだけのせいじゃないと思うよ」
「なるほど...」
術式を見抜く六眼を持つ五条先輩が言うんだ、ちゃんと教えてあげれば間違いなく呪術師として化けるだろう。
「ちなみにまだ全然制御できないから死刑にされかけたんだけどね。高専来る前なんか憂太に手を出そうとしたいじめっ子たちをロッカーに詰めてたよ」
「マジですか」
「もじどーり、しかも四人。掃除用のロッカーにだ」
「じゃまずは呪いを本人に慣れさせるところからですかね。なんかしらの呪具にちょっとずつ里香ちゃんの呪力を流して戦わせて慣れさせるとか」
「奇遇だね、僕もおんなじこと考えてた」
「あとそうだ、質問があったんですけど」
「なに、どしたの?」
生徒のことはわかった。ただずっと気になっていたことがあるのだ。
「五条先輩、人にもの教えるの上手だし特級のこの子が増えたところで俺いらないんじゃないかなって思って」
黒閃を教えてもらったことや、過去にいくつか教えてもらったことから五条先輩がもの教えがうまいということは知っていた。頭もキレる。なんでわざわざ俺を呼んだのかずっと気になっていたのだ。
「あーそゆこと。憂太、秘匿死刑だったじゃん?それに強引に割り込んだことがきっかけで腐れ上層部が怒っちゃってさー。なんか僕に向けていろいろ工作されそうだったから、少し離れようと思っててね。僕だけならいいんだけどまだまだ新米の少年少女を巻き込むわけにもいかないじゃん?下手に引っ張るよりここで一旦締めといたほうがほうがいいと思ったから」
なるほど。
御三家の一角である五条家の主力、しかも悪しき伝統をボコボコに破壊しようとしてる五条先輩は保守派の人からは邪魔でしょうがないというわけだ。呪術規定による秘匿死刑を撤回させたのなら面目もつぶれるしなにより、反対派のやつに好き勝手されておとなしくもできないと。
ん、待てよ。
「それって彼らの面倒俺が見るってことですか?」
「んーーー」
どこから取り出したのか、煎餅をバキリと音を立てて食べる。
「つまりそういうことだよね」
副担任というよりかは臨時で担任をすることが決定した、いや決定はしていたが確認した瞬間である。
「というわけで、五条先輩がしばらく自由に動けなくなったこともあって代わりに来ました。同じく特級呪術師の節円李、よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします~」
「すじこ」
ワンボックスカーに乗って今日行う呪術実習の現場に向かう最中、後ろの席に座る四人?に軽く挨拶をする。返事をくれたのは真希以外の三人。あるときに免許取っといたほうがいい気がして合宿制度でさっさと免許取ったのがここで役に立つとは。
ちなみにペーパーは怖いのでほぼ一日中車に乗るのを何日か繰り返し体にしみこませた。覚えのいい頭もあるので感覚的に操作は行えるようになっている。
後ろの席に生徒が座っており、二列目に憂太と真希、三列目に棘とパンダという並びで座っている。今日の実習のペア同士だ。
チラリとバックミラーを見る。
真希は窓際に肘をついて興味なさげに、憂太はずっとそわそわしっぱなし。棘はのど飴を転がしパンダだけ会話を返してくれた。
「パパ久しぶりだね」
「パパァ!?」
「昆布!?」
何を言い出すかと思えば、知らない人が聞いたら飛び上がるような呼び方をしてきて思わず車体がぶれる。幸いにも前後に車がいなかったので何の問題もなかったが不意の出来事に冷や汗を流す。
真希と棘が驚きの声を上げるのもしょうがない。憂太も想像ができないと口をパクパクさせている。
確かに共同制作を行ったのもあり見方によれば俺がパパと呼ばれるのは百歩譲って理解できるが、そこは主任の夜蛾先生じゃないだろうか。しかもなんでわざわざこのタイミングでパパ呼びしたのか。
まぁ世話焼きのパンダのことだ、なんか気まずい車内の空気を何とかしようと思った結果だろう。まったく無機物らしくないそれに苦笑する。
パンダの概要を開示してもいいものかと一瞬考えるが、概要くらいなら問題ないか。どうせパンダはパンダ程度の雑な紹介しかされてないだろうし。
「あーパンダの生みの親に協力したってだけ。パンダはパンダってしか紹介されてないでしょ?」
そういうとそれが聞きたかったといわんばかりに首を縦に振る憂太。
「まぁパンダはパンダなんだけどね」
感情がいったりきたりで面白いことになってた。優しい子なんだろうけどいじめられてそうだな憂太は。そのいじめっ子たちをロッカーに詰めたんだっけか?まあどちらにせよいい思い出ではないだろうし聞かなくてもいいか。
その後はパンダがうまい具合に会話をまわしてくれた。そうして今回の実習場所に到着。
今回の実習場所は某県のどこにでもあるような公立小学校。
「ここは?」
「君も通ったことがあるようなただの小学校さ」
憂太の問いに答えながら校門を抜ける。
「俺は五条先輩と違って教員免許も持ってないし、教師としてはまったくなので呪術師として状況を説明するよ。この小学校で呪いによるものと考えられる被害が発生している。児童が行方不明になっているんだ」
「行方不明ですか」
「神隠しだったり失踪事件は怪談としても有名だろう?そういうのは大概呪いによって攫われたケースがほとんどだ。ちなみに現在二人の生徒が行方不明」
学校や病院といった負の感情が集まりやすい場所では呪いが発生しやすい。負の感情と言ってもそのほとんどが『恥』だったり『後悔』だったり『嫌悪』といった日常的なものにとどまるため強大な呪いは発生しにくい。逆に『憎悪』や『殺意』がとどまりやすい、俺が経験した中では自殺の名所などはそれはもう面倒な呪いが生まれたりもする。
五条先輩曰く、今回の呪霊は今の生徒たちなら問題なく祓えると。偵察として猫も使う予定だし、最悪の場合俺の反転術式で生きているのであればどうとでもできる。
「君たちに課す実習課題、いや任務は呪いを祓い子供たちを救出すること。もし死んでいたら回収すること」
『闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え』
猫を作成するときに学んだ結界の知識、俺はある程度の結界術を取得していた。
「これは『帳』。外界とを区切る結界術の一つさ。内側で起こったことを外側の人間に感知させないためっていうのと、潜んでいる呪いを炙り出す効果もある」
早速呪霊が動き出したようだ。この学校の呪霊は随分と元気がいい。
「君たちのことを外から見てるよ。くれぐれも」
死なないようにね
そう言い残して帳の外に出る。去り際に猫を放っておいたので万が一があれば対応できる。
さて、同じ特級呪術師の乙骨憂太君はいったいどうするんだろうか。
轟音が鳴り響く。
中で起きたことが火種になりさらなる呪いの発生を防ぐためにある帳のおかげで直接は聞こえない中の様子を猫越しに観測する。
これが特級過呪怨霊『祈本里香』の姿。
しかもおそらくこれが本気じゃない。ただの強い呪霊が憑りついているだけで特級扱いはないだろうし。まだまだ隠された力が憂太にあるのかもしれないと考えると言葉にできない感情が俺を揺さぶる。
これは高揚なのだろうか。
あの気弱そうな少年がこのたった数十分でこんなにも変わるとは。
「立派な男だよ君は」
学校のほうを見ればちょうど帳が上がり、そこには行方不明だった児童二人と真希を抱えて地面に倒れこむ憂太の姿があった。
学校は二階から屋上にかけて吹き抜けのようになり校庭に瓦礫が散らばっていた。
「先生!みんなが呪いに!!」
児童二人はひどく衰弱しておりいつ死んでもおかしくない状態。真希については傷口に目玉のような文様が浮かび発熱状態の時のようにうなされている。
「お帰り、あとは俺に任せな」
傷口を媒介して発動する毒のような術式だろうか。なんにせよ、生きているならわざわざ病院に連れていく必要もない。
児童らが行方不明になったのは三日前。なので三日前の状態まで
術式反転によって巻き戻しを施し、時間のズレによって生まれる傷を反転術式の純粋な治癒で治す。術式反転と反転術式の組み合わせによって死んでいなければ健常状態に戻せる。時間のズレに対応できないことにより一定時間意識はないがそれもすぐに収まる。
真希についても呪いを受けていない状態まで
「こんなもんかな。みんな問題ない、今日の夜ご飯にまでには目を覚ますと思うよ。必要はないと思うけどいきなり家に送り返すのも誤解が生まれそうだからとりあえず病院に搬送しよう」
「そうですか...よかった」
全員呼吸も落ち着いた様子でただ寝ているよう、それを確認した憂太は大きく息を吐きひどく安心した様子だった。それと同時に自身の指を見て何かを考えているようにも見えた。
「なんか気になることでもあった?」
「......初めて自分から里香ちゃんを呼びました。それで少し思い出したんです、里香ちゃんが僕に呪いをかけたんじゃなくて、僕が里香ちゃんに呪いをかけていたのかもしれません」
「これは五条先輩が前に話してくれた言葉なんだけどね、愛ほど歪んだ呪いはないそうだよ」
憂太の言葉は言い切った形ではなかったが、半ば自分の中で確信するように言ったそれは真実のように思えた。拳を握り左薬指にはめた
「先生、僕は呪術高専で里香ちゃんの呪いを解きます」
そこにはもう自信のなさそうないじめられっ子はいなかった。
という感じでお送りしました。
ちょっと事情があって以前より更新がまばらになってしまってます。が、アニメをモチベに頑張っていこうと思ってます。
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では