五条悟の次に強いやつって言われたいじゃん 作:五条悟のディスク
モチベが生きているうちにどんどん書いていこうかと思います。
暗闇を宙に浮く灯篭の光が照らす。
『特級過呪怨霊祈本里香の422秒の完全顕現』
『このような事態を防ぐために乙骨を五条悟に預けた。しかしあのものはあろうことか任務を任されたのにもかかわらず第三者に放り投げたと』
『申し開きは許さんぞ。五条悟ともども、どう責任を取るつもりだ』
俺を取り囲むように淡く光る襖が円形に広がっており、その裏から声が聞こえる。
なんか既視感があると思ったらあれだ。エヴァンゲリオンに出てくる会議室がこんな感じだったな。暗闇の中に番号が記されたモノリスがあってそこから声が聞こえるみたいな。ゼーレとの会議用だったか?
「放り投げたも何も、あんたらがそうなるように仕向けたんでしょうが。五条悟への仕返しもできる、もし里香ちゃんが暴走したら正式に叩く理由もできる。どちらに転んでもよかったんでしょう?」
『何のことだかわからんな』
「さいですか」
あくまでも認めないか。まあそらそうだろうな。自分が指示しましたなんて言うわけもない。
『そんなことを言っている場合か!祈本里香が暴走していれば街一つ消えていたかもしれないのだぞ!!』
「仮に暴走したとしても私の術式で暴走前に巻き戻しますよ。被害についても同様に私が抑え込むつもりでした。現状私たちが知りえている情報は一つだけ、
祈本里香についての謎はそこだ。あれほどの膨大な呪力出力を持ち圧倒的な攻撃力を持つような呪いへと化けたのかがどうしても説明できない。呪術師の家系でもないただの一般家庭の少女があれ程に成ってしまったのか。
現在呪術高専関係者が総出で経歴をあさっているが、呪術的な儀式に参加したわけでも遠縁に呪術師がいたわけでもないということしかわかっていない。どこまでさかのぼっても、普通の少女でしかなかった。
「それに呪われている彼、乙骨君ですがね。呪術師として、いや人間として一歩前に進めそうなんですよ。なのでしばらく放っておいてほしいですね。里香ちゃんについてもなんもわかってないのに制御もクソもないでしょう?」
『成長だと?笑わせるな。制御を失う可能性と天秤にかけてみろ』
『左様。あくまでも乙骨の秘匿死刑が保留だということを忘れるな』
「ああそれですけどね。五条さんから伝言がありますよ。もしそうなれば乙骨側に付くそうです。当然私もあなた達みたいな過去にとらわれた人たちと共にする気はありませんからね」
『ハハハ、ずいぶんな言われようだな円李よ。どうだ、儂ならお前の後ろ盾になるが?当然条件はあるがな』
『おい、貴様!!』
「結構です、後ろ盾もクソも僕はあなた達を信頼も信用もしてないですから。もういいでしょう。では、これで失礼しますよ」
相変わらずここに来ると気分が悪くなる。特級になって以来、ごくたまに呼ばれることはあったが碌な思い出がない。
一瞬体が浮くような違和感。襲撃されることを恐れている彼らは集会の場所を異界化させた結界の中に隠している。そのためそこに行くためには呪術的な特別な方法を用いらなければならない。その特別な方法というのは簡単で呪術によって隠された門を通るといういたってシンプルなものだ。しかし、この門を通る瞬間に襲い掛かる感覚はいまだに慣れない。
気が付けば門の一つが隠されている墓場に立っていた。
「や、円李。迷惑かけるね」
「別に大丈夫です」
高専につながる通路の出口で待ち構えていたであろう五条先輩。
「...今日任務で遠出って言ってませんでしたっけ?」
「そんなことを言った気もするなぁ」
そう、今日の上層部への定期報告は五条先輩が行うはずだったのだ。しかし、当の五条先輩から任務で遠くにいるので代わりに出て欲しいと連絡が来たので代わりに出たのだが。やはり面倒ごとを押し付けられた形になったか。
「いやぁ先日引率してくれたの君だし、報告まで任せたほうがいいかなって思ってね。その様子じゃ、僕が伝えて欲しいことは伝えてくれたっぽいしね」
「そういうことなら嘘なんかつかなくても、普通に言ってくれたらよかったのに」
「ゴメンゴ」
「まあいいです。それでもろもろなんとかなったんですか?」
「うん。円李が少し代わってくれたおかげで全部片を付けて来たよ」
強引な横やりというか、五条先輩の我儘というか。好き放題やったせいでいろんな方面から目の上のたんこぶのような扱いを受けている。その中でも妨害に出てきた人がいたそうで、憂太とかに迷惑が掛からないようにいったん距離をとっていたというわけだが。片付いたようなら何よりである。
「で、今日は何ですか?」
「今回は棘ご指名の任務に憂太を一緒に行かせようと思っててね。引率を君に任せたい」
「監督補佐でもよくないですか?」
本物の呪言師であるとはいえ、まだ学生だし二級呪術師である棘ご指名の任務。五条先輩のフィルターもかかっているわけだしそこまで危険な任務であるとは思えない。通常であれば監督補佐が現場まで案内するものだが、俺がわざわざ出る必要はあるのだろうか。
「念のためってやつだね。先日の一件で里香ちゃんの存在も広く知れ渡っただろうし、もしもの時に守れる円李にお願いしたい」
「そういうことなら承知しました。お任せください」
なるほど、ただの可愛い生徒思いの良い先生というわけだ。
「詳しい話はその紙に書いてあるから」
そうして渡される書類。呪霊が確認されたのは都内郊外にあるシャッター街となったハピナ商店街、この商店街を解体してショッピングモールを誘致するための視察中に低級の呪いの群れが確認されたそうだ。音声が聞こえる範囲に一斉攻撃ができる呪言師の棘にもってこいの任務だといえる。低級であれば棘に返ってくるフィードバックも大きくはないだろう。
呪言師の姿を安全に憂太に見せるのにもいい機会になるだろう。とくに呪言は言葉で説明するよりも実際に見たほうが理解が早い。
そうして最後のほうに記載されている内容に引っかかる。そこに記された担当者の名前は伊地知とあったからだ。
「引率のところ、伊地知って書いてあるんですが」
「ああそれね。伊地知には僕から休暇をあげたよ、今頃絶叫マシーンを楽しんでる頃じゃないかな」
哀れ伊地知。顔見知りということもあって五条先輩に無理やり代わらされたんだろうな。それに伊地知みたいなタイプは絶対絶叫マシーンとか嫌いでしょうに。今度差し入れで胃にやさしいものでも持っていこう。
やられた!!
任務の間、時間つぶしのために入った喫茶店。小さく舌を打つとココアの代金を机に叩きつけるようにして置き、店から飛び出した。非呪術師から目視されない程度の認識疎外の結界を周囲に展開し、屋根を跳び最短で商店街に向かう。
久しぶりにどうしようも形容しがたい嫌な予感が奔ったため、棘と憂太の任務に猫を付けていたのだが今しがた俺のところに戻ってきた。
猫は影を媒体に呼び出す式神で、猫が俺の元に戻ってくるのは俺が呼び戻した時と
少なくとも今回二人が相手をすることとなる呪いが猫を潰せるなんてことはそれこそ万に一つあり得ない。
加えて戦闘を行った信号も感じなかった。これからわかることは特級である俺の式神を瞬殺できるレベルの呪霊、あと考えたくはないが呪詛師があの場にいるということだ。
「...帳!?俺が張ったやつじゃないぞ!?」
俺が張った帳ごとまとめて包むように別の帳が商店街に降りていた。それにこの呪力、間違えるはずがない。忘れるはずもない。
「夏油先輩ッ」
10年前。俺が東京都立呪術高専に通っていた時だ、それこそ毎日絡んでいた相手の呪力だ。絶対に間違えるわけがない。
呪術師から離反して呪詛師になって10年、痕跡は見つかっても行方をまったく掴ませなかった夏油先輩が今になって動き出した理由は何だ?なんで今なんだ。狙いは----
「憂太、それに里香ちゃんか!!」
夏油先輩の術式は呪霊操術。その真価はいかに強力な呪霊を従え、使役するかという点にある。特級に分類されるほど強力な呪霊である里香ちゃんを無視するわけがなく、可能であれば手中に収めたいと思うはずだ。夏油先輩のたくらむ選別のためにも火力は必要なわけで、圧倒的な力を持つ里香ちゃんはそれこそ喉から手が出るほど欲しいだろう。
そう考えれば、この場に夏油先輩が現れた理由にも納得がいく。
引率としてついてきたはずなのに、何という体たらく。想定していなかったなんて言い訳はできないぞ。
「とにかく中の状況を判断しないと...」
低級の呪霊を祓うには十分な時間が経っている。俺の張った帳は中にいる呪霊が消えれば解けるように設定しており、すでに呪霊を祓ったはずなのに二人の姿が見えないということはこの帳は内側から出ることができない帳だと考えることができる。ならば外側からなら簡単に壊すことができるはず。
単純に呪力を纏った拳で殴り壊す。振りかぶったその瞬間
「やぁ、久しぶりだね円李」
「本当にお久しぶりですよ、夏油先輩」
俺の背後、商店街に隣接した公園のベンチ。そこには腰を掛け手を振る黒の僧衣と袈裟を着た夏油先輩の姿があった。その姿はどこぞの僧にも見えるが今はそれどころじゃない。
「今いいところなんだ、邪魔するのはやめてもらっていいかな?」
「中に放った呪霊がそんなに気になりますか。そんなことより自分の心配をしたほうがいいんじゃないですか?」
術式行使のための範囲を定義する。周囲を取り囲むように呪力の線が奔り、いつでも術式が行使できる状態になってもなお夏油先輩は余裕を保ったままだ。
「何の備えもなしに私が特級呪術師の前に出ると思ったかい?それに君、結局体術じゃ私に勝てたことないじゃないか」
「......ここでひっ捕らえて連行します」
「そこで殺すって言えないところが円李の弱いところだよ」
あの頼もしい笑みではなく、自身の野望のためにはいかなる手段でも用いる呪詛師にふさわしい笑顔を浮かべ武器庫呪霊を袖から取り出す。四次元ポケットのようにほぼ無制限に体内にものをしまい込める特性を利用し、自身の体を飲み込む形で小さくなっていた呪霊を展開し戦闘態勢に入った。
四級呪霊『感想くれくれ』