五条悟の次に強いやつって言われたいじゃん 作:五条悟のディスク
木製の天井に時々点滅する蛍光灯。赤が窓の外に広がっていることから、だいぶ長い時間がたったのだろうと推測する。
「知らない天井だ」
「後輩君はアニメが好きなのかな?」
「一生のうちに一度は言ってみたいと思ってたので」
「面白い子だね...そうだ、痛みのほうはどうかな?治せる程度のものは全部直したと思うんだけど?」
痛む腹をさすりながら上体を起こす。
そういわれて、自身の体に意識を向ける。
五条さんから良い一撃をもらった場所はまだ鈍く痛む。しかし、永永無窮を使った後の基本の世界との時間のズレからくる全身へのダメージはほぼ消えていることに気が付く。
肌を見ても、健常な状態に遜色ない。
「大丈夫そうだね」
「ここまでしてもらってあれなんですが、どちら様で?」
きれいな黒髪のショートカットに、目元の泣きぼくろ。余りにも当たり前のようにそこにいるのだが、目の前にいる女性は完全に初対面のはずだ。
「自己紹介がまだだったね。家入硝子、
「節円李です。よろしくお願いします」
思い出した。家入さんは反転術式を他人に使える作中唯一のヒーラー的ポジションの人だ。この人も五条さんと同い年だったんだ。
若干響く痛みにもだいぶ慣れ、余裕が出てきたので今いる部屋を見渡す。
そこそこの広さの個室に、備え付けられた机と本棚。そして端に置いてあるのは、俺が森から持ってきた数少ない小物が詰め込まれたバックパックと風呂敷。
「なんかあったら、先生経由で呼んでよ」
そう言い残して部屋を出ていく家入さん。
一人の時間となり、いろいろとたまったものを吐き出すように大きく息を吐く。
そうだ。
あの五条悟と戦い、さらには一発入れることができたのだ。戦いが終わり、今更だが高揚感とともにやってやったのだという実感がわいてくる。まあ、全力の一撃はダメージを与えただけでダウンまで持ってくことはできなかったけど...。
でも、俺の術式が当たったのは意外だった。
五条さんの周りには、現実に持ってきた無限が展開されていて、あらゆる攻撃が通用しないはず。術式に関しても、無限に阻まれて五条さんまで届かないと思っていた。
しかし、実際に五条さんに膝をつかせることができた。
一応術式がはじかれる対策は考えていた。五条さんの立つ座標を定義して、その点を起点に術式を発動させるという作戦を採用したのだが、そのおかげか。それとも、まだ原作ほどの強さではなかったのだろうか。
たぶん後者。無限とかいうとんでもパワーをもってすれば、俺が定める座標を捻じ曲げるとかもできそう。それに、完全体の両面宿儺に対しても『勝つさ』と言い切る人間だ。通常の物差しで測っていい人間ではない。
やはり、まだ若いとはいえすでに最強たる素質はあったんだなって。
今後の目標としては、五条悟に一撃を加えることができる強さを目指す。
実際に戦ってみてその強さを実感することができた。自身が設定した物差しの調整もできたし、鍛錬の仕方とかも考えなくては。
......そうだ、あと性格!!!!
ニヒルな感じの五条悟にあこがれていたのだが、学生時代の五条さんはなんというか、むかつくというか精神を逆なでするというか...悪い人ではないんだろうけど、原作の五条さんとは違ったね。一人称も僕じゃなくて俺だったし。
まあ、あれはあれでかっこいいんだけど。
まだ十全な状態ではないけれど、ひとまず荷解きだけしておきたいのでベッドから降りて端に置かれた荷物を確認する。
最初の仕事でさっそく実戦投入した熊からもらった苦無。これじたい高い階級に区分けされる呪具らしく、四本のうち一本を呪術高専に預けている。
衣服なども少ないため、すぐに荷解きは終わった。
久々に、日記でも書くか。
○月○日
今日は初めての授業だった。といっても、一応通常の科目についてもやるみたい。
日記の保存方法についても本格的に考えなくてはならない。
ちなみに七海のことをななみんと呼ぶことにした。なんか呼びやすいし、数少ない同期なので親しみを込めてこのあだ名に決定した。
本人はすごい嫌そうな顔をしてたけど、本気の拒否はしてなかったのでこれで行くことにした。
(話をつづけるのが面倒だったとかじゃないよね?)
○月○日
同期が増えた。同じ非呪術師の家系出の灰原君だ。とにかく暑苦しいキャラというのが正しい評価だろうか。自己紹介の時点でその熱量に押されて、ななみんがすごい顔をしてたのが印象に残っている。
それと、結界術の授業があった。日記を隠す手段として使えると思うので頑張って習得したい。とりあえず、机に工作して引き出しの下板の穴から上蓋を開けないと中に仕込んである油に引火して日記が燃えるようにしておいた。最終的には俺以外が日記を開くとただのノートにしか見えないとかにしたい。こんなに厳重になっているだけでも怪しいからね。
○月○日
あの一戦以来、五条先輩にはよくしてもらっている。気に入られた、というのが正しいだろうか。夏油先輩と一緒に三人で出かけることが増えた。しかし、五条先輩と夏油先輩の間に入ってしまうのがなんか申し訳ない気がする。
あの二人は本当に仲がいい。お互いに相手のことを親友として認めている。将来はタッグでとんでもない戦力を誇る呪術師になるんじゃないだろうか。夏油先輩については、敵になるなんてマジで考えられないな。やっぱり双子とかそっくりさんなのだろうか?
でも、双子はいないって言ってた。どうなんだろ。
○月○日
一年の三人で取り掛かった仕事の帰り、嫌がるななみんを引きずって灰原と一緒にご飯を食べに行った。前に五条先輩と夏油先輩に連れてってもらったラーメン屋だ。王道を行く家系ラーメン。濃いスープが仕事終わりの体によくしみる。
ちなみに嫌がってたくせにななみんは替え玉も頼むし米と餃子も頼んでた。
○月○日
久しぶりに熊のところに遊びに行った。俺が過ごしていた野営地には小さな小屋が建っており、動物たちのたまり場のようになっていた。土産に持って行った調味料一式と新しい調理道具を渡した。家電は使えないと思ったので、登山用などの非電源で使い勝手がいいものを選んだ。
ただで帰るのももったいないので、術式についていろいろ教えてもらってから帰った。
あと、夜蛾先生の呪骸が転がっていた。どうやら夜蛾先生も定期的に来ているらしい。なんかやってるっぽいけど、何してるのかは教えてくれなかった。気になるが、楽しみにしておけと言われた。待とうと思う。
○月○日
とりあえず日記帳に呪術を仕込んでみた。ノートの存在を歪めて認識できなくなるというものだ。これは、熊が森に張っていた帳に用いられている技術を借りた。発案は俺だけど、ほとんど熊にやってもらった。ノートを視認したら術式が発動するので、閉じた状態ではそこまで大きな呪力を放たない。呪術師の手元にあるものとしてはごく普通の呪力しかないので特段怪しまれることはないだろう。
○月○日
二年生に気に入られたということもあり、定期的に指導をしてもらえるようになってしばらくたった。今日は夏油先輩に相手をしてもらったが、純粋な体術では全く歯が立たない。術式アリなら五分くらいで勝てるのだが、やはり潜り抜けてきた戦いの経験には勝てない。
夏油先輩いわく、体術は苦手なのかもねとのこと。戦い方を少し考えてみようと思う。
○月○日
夏油先輩風な戦闘スタイルをとることにした。近接格闘も練習するが、そこで足りない点を呪霊かなんかで補う。夏油先輩曰く、『式神使いとか近接が苦手な相手に対する勝ち筋って決まってるんだよね。近づけば勝てるって。だからこそ近接を鍛える。わかりやすい勝ち筋を作ってやると、簡単にノッてくるからね』と。
最悪術式でゴリ押してしまえば、そもそもそこまで追い込まれている時点でだいぶ負けてる。俺の得意とする中距離戦をより簡単に維持できるようにするための選択でもある。
まずは呪霊か式神を用意するところからだよね。
○月○日
残念なことに、俺は呪霊を従えて操れはしなかった。なので自分で作ることにした。記憶にあったゲームのキャラをモチーフにすることにする。たしかPS4にも移植されてたGRAVITY DAZEに出てくる猫。作中での一大ギミックである重力操作はこの猫、ダスティによるものである。重力を操れる俺にピッタリである。
さっそく夜蛾先生に相談した。目標としては、一級呪霊を瞬殺できる火力と呪力の補助タンク的な役割。あとは、よくある展開、俺がいないところで問題が発生した場合とかに現場にすぐ現れて対応できるように瞬間移動もしくは光速移動。これらを伝えた時に、すごい顔をされたが協力はしてくれるようだ。
○月○日
一年の実力向上のため、俺がななみんと灰原に稽古をつけることになった。現状、一年の中でも実力がだいぶずば抜けている俺が適任だったらしく、珍しくななみんからお願いしてきた。
数日前に、仕事で人を救えなかったことがだいぶ響いていたようだ。
今思ってみれば、初めてななみんに頼られたかもしれない。ぜひこの機会に強くなってもらいたい。
○月○日
式神作成の件を熊に持ち込んだところすごいノリ気だった。想定していた機能に関しても、俺の生得術式の応用ですべて実装できそうとのことで、かなり現実味が増した。
いけそうな気がする。
○月○日
式神が完成した。最近は徹夜続きで疲れたのでこんなもんで。
○月○日
五条先輩と夏油先輩と俺を指名した大きな任務があるらしい。式神を試験的に運用する機会としてもってこいだ。
とりあえず、明日話を聞いてからだな。
次回、星蔣体編。
戦闘スタイルは二番目に投票数が多かったものになりました。
熊がいたとはいえ、対人戦闘経験が圧倒的に少ないのにゴリゴリの近接戦闘マンは無理があるかなって思った。