夢、あるいはただの現
13,
夢見ることは誰に止められない。儚く朧気で煌めきすぎるのだから。
◆◇◆◇◆
衛宮士郎は『正義の味方』である。正確に言うなら、正義の味方を志望といったほうが近い、さながらミュージシャンになりたいと足掻く青少年のごとき男だ。それはつまり、途方も無い夢の前に、多くのものが挫折し妥協し諦め、道を逸れていくような夢を、掲げる男だということに他ならない。
正義の味方。
そう一口に言っても、その形態には様々なものがある。
さながら悪の軍団と戦う改造人間のごとく、人類を守るため、はたまた改造された恨みを果たすため戦う正義の味方だっているし、もしくは五人五色で世界征服から近所を守る、地域密着型の正義の味方だって存在する。
その有り様に優劣は付けられず、あるとするならばあくまでも強弱という強さの指針だけだろう。
だが、正義の味方にとって強さなど。
どうでもいいことだ、ただ守りたいものが守れるだけの力があれば、それでおおよそ彼らの目的は達成されるのだから―――その存在を全うできるのだから。
閑話休題。
だがしかし、どんな正義の味方にもただひとつ共通する事柄がある。それは絶対普遍の真理にして、正義の味方が正義足りえる所以だ。
それすなわち。
敵対する悪の存在である。
正義の敵はまた別の正義だ、と言ったのは誰だったか。それは定かではないが、しかし正義に悪が必要なのは確かなことで、それはつまり、言ってしまえば正義の味方に相対するものは、それがどれだけ高潔なものでさえ、まごうことなき悪なのだ。それが例え、別の正義だったとしても。
悪がいるから正義足りえる。
ではない。
正義に対立するからこそ、須らく悪なのだ。
とまぁ、いささか暴論過ぎた論理の展開だが、しかしこと衛宮士郎に限って言えば、それはあながち外れではない。
もう一度言おう。
衛宮士郎は正義の味方である。正確に言うなら、正義の味方志望と言ったほうが近い、さながらミュージシャンになりたいと足掻く青少年のごとき男だ。
ただそれは、あくまで憧れたからということでしかない。
ただ、美しかっただけでしかない―――
綺麗で素敵で高潔で、淀みもなく濁りもなく歪みもない、ただひたすらに透き通っていて、ただひたすらに澄み渡っていて、揺るがず曲がらず劣らず、ただ一本の杭のように心根に突き刺さる、そんな
打ち倒すべき敵も見えず、悪の組織など欠片も表さない。
ただ美しかったからというだけで、ただ憧れたからというだけで、正義の味方になった衛宮士郎には、それに見合うだけの敵がいない。
誰かの思いを継ぐものは決して創始者には敵わず、誰かの願いを叶うものは間違いなく劣化した結果しか伴わない。
宙ぶらりんで中途半端。
座りが悪く、心地悪い。
所詮は、
真に迫ることはあろうとも、心を打つことはありえない。
しかしだからこそ、衛宮士郎は淀み濁り歪んでも、あるいは奇妙で滑稽で奇天烈だったとしても、その信念を貫き通す。
重ねて言おう。
衛宮士郎は
その動機は、理想への憧れと、体現者への尊敬で固められた酷く歪で捉えようもない不定形だ。
だが、しかし。
それは衛宮士郎の在り方が、薄汚れて気味の悪い、はたまた我欲に塗れて気色悪い何かであることではないことを意味しない。だからこそ、彼は届くべくもない縁を目指して走りだすのだ。
その理想は確かに綺麗で。
その信念は確かに素敵で。
その魂は確かに高潔だった。
だからこそ、己の丈に見合わぬとも確かに目指した彼の心根を、ただ単純に否定することは誰にも出来ないのかもしれない―――
と、いったところで。
聖杯戦争二日目。
およそ、序盤にかけての中盤戦。
はじまりはじまり。
◆◇◆◇◆
その夜、士郎は不思議な夢を見た。
遠い遠い、昔の夢。あったかもしれない、世界のひとかけら。
それは、そこに刀としてーーーそして、最後には人として生きた男の過去だった。
視界いっぱいに広がるのは、緑多き人一人いない無人島。住んでいるのは純粋培養された刀の二振りのみ。
それは士郎からみて酷くわびしいことのように思われたがーーーしかし、彼は気にしていないようだった。
姉とともにひっそりと暮らしていけばーーー死んでいければ、それで良かった。
と格好良く言ったものの外への興味がないわけではない。姉とを天秤にかけた際に、ただ姉の方に彼の心は傾くというだけの話だった。
たとえその結果、なんの名声も得られず、この島で朽ちて錆びていこうとも、彼のとっては後悔などなかった。
しかし、彼は出会う。
その身命を捧げていいと感じる最愛の人に。
そして、刀であった自分を人間へと変えてくれた人に。
彼女は刀集めに必要な武器を探してこの不承島に来た、と言う。
初対面同然の彼に「惚れてもいいぞ」などと宣う少し変な女だったが、しかし彼は彼女に惚れることにした。
―――もしかしたら、外に出たかったからの方便だったのかもしれない。
彼はこの島で朽ちて錆びて行くことに後悔などしない自信はあったが、しかし勿体無いと思う程度の執着はあった。
自分ほどの刀が朽ちていくのは損失だと、そう思うほどの確信があった。
―――もしかしたら、贖罪だったのかもしれない。
偶然聞いてしまった女の素生。大乱を起こした反逆者の娘という事実。それはつまり、大戦の英雄であり反逆者を討ち取った彼の父が、女にとって仇だということ。ともすれば、その息子である彼にもその憎悪は届くのかもしれない。それに対する贖罪だった可能性は否めないだろう。
しかし、一体どんな理由だったとしても彼は女に惚れることにした。
惚れて、彼女の刀になることにした。
―――そして、戦いは始まった。
不承島、彼の育った場所で初めて戦った忍者。
『頑丈さ』に主眼が置かれて作られた、世界の何よりも固き折れず曲がらず絶対の刀、絶刀『鉋』。
因幡国下酷城、砂漠に塗れたその場所でただひとり城主であり続けた浪人。
『切れ味』に主眼が置かれて作られた、ありとあらゆる存在を一刀両断にできる鋭利な刀、斬刀『鈍』。
出雲国三途神社、傷ついた女性を治すために四季崎記紀の刀を使った巫女。
『多さ』に主眼が置かれて作られた、いくらでも替えが利く恐るべき消耗品としての刀、千刀『鎩』。
周防巌流島、日本最強の剣士であり名誉のために裏切った堕剣士。
『脆弱さ』を主眼に置かれて作られた、羽毛のように軽く硝子細工のように脆い美しき刀、薄刀『針』。
その全ての所有者を殺し、四季崎記紀の刀を蒐集した。
そこに例外は無かった。
刀とは。
持ち主は選ぶが、切る相手を選ばない。
その言に違わず、彼女の指示通りに彼は刀を振るった。
切って、斬って、刃って。
裁断して、寸断して、斬殺して、惨殺した。
そうであるならば、きっと彼は。
その時はまだ、一振りの刀だったに違いない―――
◆◇◆◇◆
と。
士郎は眼を覚ました。
明けて、聖杯戦争二日目の朝である。
「なんだろう、何か大切なものを見ていた気が………」
士郎は眼を擦る。
その脳裏にあるのは、現代では考えられないような、奇怪奇妙奇天烈な刀の数々。
その全てが確かに、士郎の中に内包されているような―――否、取り込み昇華したような感覚を覚えた。
―――あれは確かに夢だった。
一生懸命頑張って、他のあらゆるすべてを犠牲にしてまで踏ん張って、それでも行為にがまったく結果に繋がらず、努力はまたく実を結ばず、理不尽に、あるいは不合理に、ただただ無残に、ただただ無様に、どうしようもなく後悔しながら死んでいった者達の―――あるいは彼女の―――そんな夢だった。
酷く物悲しい物語だと、士郎は感じる。
どうしようもなく、どうにもできない哀愁すら漂う物語だったと、士郎は思う。
しかし、そこにいた彼は思いの外満ち足りていて。
それが士郎には理解できず、頭を捻ったが
「まぁ、いいか」
と思い直した。
結局は人それぞれだと、そういうことだろう。
満足して逝けたかどうか、それが肝要なのだと、士郎は無理矢理に理解する。
そんな事よりも士郎には確かめねばならないことがあった。
過酷な殺し合いである聖杯戦争を生き残るためには。
もっと、自分の力を知らなければいけないのだ、と士郎は考えていた。
昨日。
士郎にとっては初めての聖杯戦争。
それに関わった時―――いや、わずかに触れただけでも自分の立てる土俵ではないと直感した。
力が足りない。技量が足りない。思考が足りない。
そして、なによりも―――
「俺には、決意が足りないのかもな………」
と、士郎はそう考えていた。
彼の養父であり、また魔術師としての師である衛宮切嗣に教えられたことは、魔術師にとって初歩の初歩であることは昨日の段階でわかっている。
士郎は今まで魔術を行使する際に一から魔術回路を入れなおすという、およそ命を削る行為をしてから発動していたのだ。
しかし、昨日は違った。
一から十を吹き飛ばし、結果だけを持ってくるような士郎にとっては暴挙とも言える強化。
それだけでなく、聞いたことすら使ったことすらない、投影という同等の物質を生成する魔術。
まるで己が中から零れ落ちたような、あって当然、使えて必然と言わんばかりの魔術。
その真偽を確かめる必要があると。
それこそが自身の唯一の武器だと考えていた。
でなくてはもっと知らなくてはいけない。
昨日の時点で都合六回。
無我夢中で実行したそれだが、しかし土壇場で投影できなかったりなど扱うにはいささか不満が残る。
最低でもそれを完全なものにしなければこのままセイバーにおんぶ抱っこのお荷物でしかない。
そのためにもまずは鍛錬だった。
士郎は布団をたたむと、中庭に出た。
魔術の行使に適している土壁に覆われた土蔵を目指して歩く。
と、その途中だった。
「?」
剣道場の方でなにやら掛け声が聞こえた。
未だ朝早く、藤ねえも桜も来ていないはずの衛宮宅で。
達人のような裂帛の気勢をあげられる人物をひとりしか、士郎は知らなかった。
士郎の足は自然と、剣道場の方へ向いていた。
◆◇◆◇◆
剣道場にいたのは、士郎の予想に違わずセイバーだった。
それなりの広さを持つ道場の真ん中でセイバーは構えていた。どうやら、技の確認をしているようである。
ゆっくりとしかし正確に振るわれる拳は勢いはないものの鋭さを感じる。ただ無心に繋げるように次々と技を繰り出すセイバーは無心であるらしかった。
唯一の入り口である引き戸はがたつき、士郎が入る際に大きな音たてたはずなのに気づいた様子もなく自身の世界に埋没している。
その姿はただただ美しかった。
完成された修練の極致が、そこにはあった。
邪魔してはいけないと思い、士郎は目に付かぬ端の方に腰を降ろした。
もはや土蔵まで行こうとは思わなかった。セイバーの舞踊じみた型の確認が気になったというのもある。
しかし、投影を行うにはこういう場所の方がやりやすいのではないかと、士郎は直感したのだ。
そも、戦闘中に使用することを想定しているのである。
土壁で囲まれ魔力の拡散しにくく、魔術が成功しやすい土蔵で成功したところで実践で成功しなければ梨の礫だ。
それならいっそ、解放的で難度の高いこの場所でやった方がいい―――
と、そこまで論理的に考えていたわけではなかったが、しかし士郎は剣道場で魔術の修練を行うことにした。
「投影、開始―――」
その言葉とともに目を閉じ、士郎の奥底に眠る力のかけらをたぐり寄せる。
イメージするのは昨日何度も投影したアーチャーが持っていた二振り。
大小二刀のどこにでもあるような数打ち。あくまで英霊であるアーチャーが持っていたゆえに神秘性を帯びているそれを士郎は記憶の底から掬い、引き上げる。
否、引き上げたはずだった。
「―――あれ?」
目を開けた士郎の手には何もなかった。
昨日まで当然のように出来ていたはずの投影。
それが上手く出来ない。
昨日までの感覚を忘れているわけではない。なぜだかわからないが、確かに士郎の内にはその刀の見本のようなものが存在している。
ただ、それに触れることができない。いや、できているはずなのだ。
己が内に感じる刀の形状。大きさ。重さ。手触り。
その全てを士郎は感じ取ることができていた。
なのに、外で出すことが叶わない。
「………………どうしろっていうんだよ」
士郎は頭を抱えた。
投影魔術。
それは魔術師として未熟な士郎が、血で血を洗うような苛烈な聖杯戦争で勝つための確かな武器になるはずだった。
少なくとも士郎はそう思っていた。
昨日は確かに出来ていたはずだ。無意識で無我夢中だったにせよ、六回も投影に成功しているのだ。あれだけの、一度限りのものでないことは、誰に言われるでもなく士郎が一番理解していた。
しかし、今はどこかにすり抜けていくように、その感覚が掴めない。
一流の魔術師でも及ぶべくもないサーヴァントという獅子の檻に放り込まれたような現状で、ただひとつ武器なりそうなものを取り上げられたような気がして、士郎は途方に暮れた。
と、その時である。
「どうしたんだよ、しろう? なんだ、魔術の鍛錬かなにかか?」
士郎の目の前にセイバーがいた。どうやら、型稽古の鍛錬はいつの間にか終わっていたらしい。
士郎はセイバーの問いに深くため息をすると頷いた。
「いや、まぁ、そんなところかな、といっても今しがた失敗したんだけど」
「失敗?」
「あぁ」
話してみろよ、と促すセイバーに士郎は滔々と語った。
昨夜士郎が無我夢中で使った投影魔術のこと。
それこそが自分の強みなのだと思ったこと。
しかし、それはあけなく失敗したこと。
余すところなく懇切丁寧にセイバーに語った。
それを終わるまでただ黙って聞いていたセイバーは
「ふぅん」
と納得したように呟く。そして
「いや、しろうの言ってることはよくわかんなかったけどさ」
「………………」
わかんなかったのかよ。あれだけ説明したのに。
というとっさに出そうになったツッコミは心の奥底に閉じ込める。
「だけど、それって当然のことだろ」
「当然………」
「あぁ」
繰り返すように呟く士郎に、セイバーはその隣へ豪快に腰を下ろすと言葉を続けた。
「ようにしろうが言いたいのはさ。思ってたことが感じていたことが、理想とは違ったってだけだろ」
「………………」
そう、なのだろうか。
「俺は語れるほど他者と絡んだことないから、そこんところはなんにも言えないけど、だけど鍛錬のことなら少しだけわかるぜ。一度完成したと思っていた技も繰り返していけば、その弱点もわかるもんだ。なおさらそれが昨日今日で出来た程度の技ならば、成すことだって難しいかもしれない―――だけど、そこで諦めちゃ前に進めないだろう」
セイバーは語る。
「違う方向で目的を目指すか、はたまた間違いとわかっていてもそれを貫き通すか、それはしろう次第だけど。しかし、そうして出来上がったものは確かに己が内にあるはずだぜ」
「貫き通す………」
「間違いだって構わない。歪んだって見放さない。実らなかったって諦めない。そんな在り方も別にいいんじゃないかって、俺は思うぜ」
「………………」
「まぁ、未来のない、次代には継なげない流派を、一生懸命努力して、一生費やし身につけた、俺が言うのも何だけどさ」
と、セイバーは締めくくった。
立ち上がり、袴に付いた埃を払うセイバーを見やる。
曲がらず錆びない一本筋の通った刀のような振る舞いで、セイバーは立つ。
その姿は高潔だった。あるいは自分の掲げる信念に真っ直ぐなだけなのかもしれない。
しかし、未だ会って間もない士郎にはセイバーの内面など知る由もない。
士郎は唐突に目の前の青年が昨日あった―――しかも日を跨いだ後だから実質一日も経ってないと言える―――ばかりであることを実感した。
自分はセイバーについてなにも知らない。好物から趣味、身長体重。どのような遍歴を持ち、いかにして生きたか。
かけらも、知らない。
そう考えているとと、士郎の中にセイバーを知りたいという欲求とふとした疑問が生まれた。
「なぁ、関係ない話なんだけど聞いていいか?」
「おう、なんでも聞けよ」
「セイバーは、なんで聖杯戦争に参加しようと思ったんだ」
聖杯戦争。
それは今世に形作られた、この世全ての願いを叶える万能の願望機を奪い合い戦う儀式の総称だ。
それは一見、マスターである魔術師が聖杯を望んでいるから戦いが起きるように感じられるが、しかしサーヴァントの側にも願いはある。そも、願いのないサーヴァントは聖杯戦争に呼ばれないのだ。ということはセイバーにはなにを賭けても叶えたい願いがあるはずで―――
もしかしたら、不躾だったか。聖杯に賭ける夢を聞くなどいきなり過ぎたのかもしれない。
そう考えるも、セイバーのことを知るなら、やはり抑えておくべき質問だろうと士郎は思っていた。
士郎の問いにセイバーは驚いたように一瞬間を開けるとすぐさま答えた。
「別に面白いもんじゃないぜ―――惚れた女とまた旅するためだ」
「旅?」
「あぁ、地図を作るんだ。日本各地を巡りながら、あーでもないこーでもないと頭を悩ませて」
「それは………」
なんというか、楽しそうな願いだ。のどかで幸せそうな夢だった。
ただ、それを聖杯に願うということはその希望は敵わなかったからここにいるということで―――
「………………」
士郎は思わず沈黙する。希望に満ち溢れた、ただひとつの夢を持つセイバーの末期を想像して、沈黙する。
「つっても、ここは俺の生きた世界とは違うようだし、当然のように日本地図も完成しちまってるんだろうけど―――俺が地図を作るまでもなく達成されているのだろうけど―――けれど、そんなの小さな問題だぜ」
「………………」
「勘違いするんじゃないぜ。俺は別の地図を作りたいんじゃないんだ、ただ―――あいつと一緒に旅がしたいだけなんだからな」
「………そうか」
「そういう士郎はどうして、聖杯戦争に参加することにしたんだ? 聞きかじった話じゃあ、魔術師として未熟なんだろ」
セイバーのざっくりとした物言いに士郎は苦笑した。
「そうだな、確かに俺は未熟だ―――魔術だって一つ使うだけに平時だったら三十分もかかるだろうし、使えたところで走査と強化が関の山、昨日きっかけを掴んだように見えた投影だって、今は使えぬ無用の長物だよ―――けど」
言葉を切り、士郎は無骨でささくれだった自分の手を握るさまを見る。
「―――そんな俺にだって譲れないものだってある」
「………そうか」
セイバーは短く答えると、道場の中心に歩き出した。その姿は適当に見えて、しかし完成された足運びで。その挙動だけでセイバーが武術の達人であることが容易に知れた。
その中央までたどり着くと、くるりと振り返りセイバーは言う。
「それじゃ、そんな譲れないもののための強さへのアプローチってことでひとつ―――稽古つけてやるぜ、しろう」
「………………」
「剣術ぐらい齧ったことあるんだろう。せっかくこんな道場があるんだ、錆落としのついでに―――俺の持ち主の実力、測ってやるよ」
そう言ってセイバーは構えた。
虚刀流一の構え、『鈴蘭』。
無手でありながら、剣術。人間でありながら、一振りの刀。
その有り様に士郎は
「いいぜ、俺の実力見せてやるよ」
そう言って、竹刀を手にするため、倉庫に足を運んだ。
その後。
玄関から衛宮邸中に桜と凛の怒声が響き渡るまで、都合三十分。士郎はセイバーとの試合をするわけだが―――その結果は語るまでもないだろう。
ただひとつ。
士郎のセイバーへの信頼がましたことだけは確かだった。
私の現在の夢は一週間に一度は必ず投稿することですね
それはつまり、儚く朧気なものということですが