ニシオニストによる聖杯戦争、あるいはただの蛇足   作:堂升

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前座、あるいはただの真打ち

 33,

 

 ヒーローがかっこ良く見えるのは、自分が正しいと思うことをやっているからだ。そして、それは狂人の精神性と何ら変わりがない。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「――――斬り抉る戦神の剣(フラガラック)。私の切り札です――――貴方の負けだ、エミヤシロウ」

 

ドサリと。

大質量の物体が――衛宮士郎が倒れた音がした。

それをバゼットは敬意を持って最後まで見届ける。

 

「私にこれを使わせたのは誇っていいでしょう」

 

対魔術師戦闘に関して、バゼットは超一流である。

彼女が持つのは、神代の時代より継承されてきた、神秘が激減した現代における数少ない現存する『宝具』。

その能力は敵の切り札に対する任意のカウンター。『攻撃した』という事象を遡り、『攻撃する以前』の敵を倒すことにより『攻撃した』事象そのものを消し去る。

その特性上、切り札の打ち合いならば、バゼットが負ける余地はない。

 

が、それが彼女が超一流であることの証左ではない。

斬り抉る戦神の剣(フラガラック)は敵に切り札を切らせねば、使い道のないただの鉱石である。

ゆえに、強さの源泉は数少ない現存する『宝具』を所有していることではなく。

どんな敵だろうと――それこそ英霊だろうと、切り札を使わざる得ない状況に落としこむだけの純粋な戦闘能力にある。

 

そんな彼女をして、斬り抉る戦神の剣(フラガラック)を使わせた士郎は、十分に賞賛に値するだろう。

 

しかし、そんな彼でも立ち上がれない。

『順序の入れ替え』により、『零閃』を放つことができなくなるほどの傷を負った士郎が戦線に復帰することは敵うまい。

 

「――――――――けほ」

 

空気が混ざり泡のような吐血をした士郎を見て、バゼットは断じた。

彼女が放った斬り抉る戦神の剣(フラガラック)は心臓を少し逸れて肋骨と肺を貫いていたが、しかし手加減したというわけではなかった。

 

ただ単純に。

士郎の放つ技の思わぬ鋭さに、少しばかり驚いたからだった。

もしくは、準備が不足していた。

 

そもそも、彼女にとって斬り抉る戦神の剣(フラガラック)の使用は予想外だった。

万が一を想定して、というよりも戦いを挑む少年に対しての敬意を払う意味で準備していた切り札であり、使うことはないと思っていた。

 

しかし、使わされた。

目にも留まらぬ剣速で繰り出された居合。

彼女の切り札がなければ、致命傷は負わないまでも有効打ぐらいは入れられていただろう。

 

「少々、侮っていたのかもしれませんね」

 

見くびっていた。

自然と下に見ていた。

圧倒的強者に向かい来る士郎に一定の評価はしていた。しかし、心の何処かで彼が格下であると侮っていたのは事実だ。

倒れ伏したまま動かない士郎を見やり、バゼットはそう小さく呟いた。

 

そして、セイバーの到着を恐れたバゼットは死に体の士郎に背を向け、未だ初撃から立ち直れていない凛とライダーに向き直ったのだが――――しかし。

 

後々から考えれば、この行動は失策と読んでも差し支えないものだっただろう。

あるいは、ここでしっかりと衛宮士郎にとどめを刺していれば。

そうでなくとも、一部でも意識を向けていれば。

 

バゼットの勝利は間違いなかったはずだ。

 

しかし、いったい誰が彼女を責められよう?

 

目の前の少年を友人の女の子を助けるために場違いな戦争の場に上がってしまった分不相応な一般人と断じたことを――――そして、胸に穴を開け死にゆく彼に少しばかりの情けをかけたことを、いったい誰が責められよう?

 

ゆえに見逃した。

ゆえに見落とした。

 

そこには侮りも見くびりも存在してなかった。

 

バゼットは知らなかっただけなのだ。

理解してなかっただけなのだ。

 

衛宮士郎という存在を。

彼が掲げる信念を。

見知らぬ誰かのために、自分の命すら擲てるその精神性を。

 

衛宮士郎の()()()()()とは。

どこまでも利己的に、どこまでも無私的に、どこまでも狂信的に、ただ立ち上がり望み続けるものだと――――バゼットは知らなかった。

 

だから。

 

「――――――――――――」

 

気配を感じ背後を振り返った時、我が目を疑った。

呆けたのかと思った。

 

「――貴方は」

「――――――投影(トレース)開始(オン)

「まだ立ち上がるのですか、エミヤシロウ!!」

 

振り返ったその先には。

死に損ないの正義の味方が、瞳に闘志を燃やしていた。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

目の前の敵が何か話しているが、士郎の耳には届かなかった。

 

――鼓膜が破れてる。

いや、それだけではない。

視界が霞み、息苦しい。

四肢に至ってはピクリとも動かない。

 

――満身創痍。

生きていることすら不思議なくらいの重症。

 

けほりと口から吐血した。

吐き出した血は泡状になっている。

肺を損傷したのだろう。通りで息苦しいはずだ。

 

倒れ伏した士郎は思いの外冷静に状況を分析していた。

 

心臓の下、肋骨と肺を貫通する小さな穴が空いている。穴の縁には焼き切れたような跡があり、バゼットの放った何かが膨大な熱量を帯びていたことを物語っていた。このまま何も処置しなければ物言わぬ骸になるだろう。

 

あぁ、それもいいのかもしれない。

正義の味方を目指し、救いを求める誰かのために生きる。一部の余裕が無い生き方。

その結果がこれだと言うなら、諦め、認め、甘んじるほかないのだろう。

 

――ふざけるな。

 

そもそも土台無理な話だったのだ。士郎は決して、衛宮切嗣にはなれない。そして、あの男ですら正義の味方にはなれなかったと語った。模倣者である士郎には当然の結末だ。

 

――まだ、終わってない。

 

士郎とて自殺志願者ではない。彼の周りにいる人達には愛着があるし、愛おしいとすら思う。ただ、それよりも正義の味方になりたいと願う気持ちが強いだけなのだ。全てを擲っても叶えたい願いが、あるだけでなのだ。

 

――負けてたまるか。

 

正義の味方になることを諦め、ただ漫然と普通の人として生きる。そんな道があってもいいじゃないか。譲れぬ信念も見果てぬ夢もそこにはなく、ただ怠惰と平穏と甘受だけが彼を包み込み、やがて全てを忘れさせてくれる。あぁ、そんな夢も持っていたな。苦り切った笑みで若気の至りのように思い出しては照れる、そんな未来がそこにはあるはずで――――

 

――認められるかっ!

 

「――――――――っ」

 

瞬間、全身に血が通った気がした。

なぜ倒れ伏しているのか、疑問に感じる。

自分はまだ倒れていい場所にいないというのに。

 

視界が霞み、息苦しい。

四肢に至ってはピクリとも動かない。

正しく、満身創痍。生きていることすら不思議なくらいの重症。

 

だが、それがどうした。

その程度で諦められるものだったら、最初から正義の味方など目指してなどいない。

 

脚に力を入れる。人の肉体で立てないというなら、他の何かで代替しろ。

この身は剣。この程度で折れ曲がるような、柔な作りはしていない。

 

ギチギチと。

全身から刃と刃が削れる音がする。内側の筋肉は刃で埋め尽くされ、胸に開いた穴も這い出る刃の群れにとっくに飲まれた。

ほら、傷跡なんてどこにもない。

 

ならば、立て。

まだ、終わっていない。

へたり込んでいいわけがない。

身体を起こし、敵を見据える。

 

「――――――――――――――――」

 

とは言え、刀はもう握れまい。

全身の筋肉は断裂し、修復中の刃の群れでは柔軟な運動には耐え切れない。

 

だからといって、諦める理由にはならない。

刀を握れない?

大いに結構。

ならば、握らず攻撃する手段を編み出すまで。

 

ライダー戦。アサシン戦。そして、いつか夢で見た数々の戦い。

今まで見た戦いに多くのヒントが散りばめられている。

 

さぁ、思いだせ。

そして、模倣しろ。

複製と模造の先に真の芸術が存在するなら、強さもまた同じのはず。

かき集めた模倣で自分だけの技を組み上げろ。

目の前の敵を倒すのだ。

 

「――――――投影(トレース)開始(オン)

 

呪文を口にする。敵が叫びを上げてるが、彼には届かない。

 

「―――っごほ―――――ひ、憑依経験、共感終了」

 

イメージは既にある。後はそれに沿った武器を選び、魔力を通すだけ。

――あぁ、あれがいい。

いつか夢見た世界の話。

四季崎記紀が作りし完成形変体刀十二本がうちの一振り。

その刀は千本で一本。重さ硬さ持ちやすさ、その全てに至るまで全く同じ。

『多さ』に主眼が置かれた、いくらでも替えが利く、恐るべき消耗品としての刀。

 

「――――工程完了(ロールアウト)全投影(バレット)待機(クリア)

 

全身の魔術回路が悲鳴を上げている。投影し切れぬと暴発しそうだ。

それを無理やり抑えこみ、刀の生成に全てを叩き込む。

 

叫べ。

その刀の名は――――

 

「――――千刀『鎩』」

 

かくして、刀は投影された。

闇夜を照らす月が魅せるは、中空に浮かぶ数えることすら馬鹿らしい、数多(あまた)の刀剣。

それはある種の美しさを伴った光景だった。

総数、およそ五十二本。士郎の持つ現存する魔術回路の約二倍の数。

そのどれもが同質で同値。

寸分違わぬ、模造品。

 

「――――――――っ」

 

それを必至で維持する。生み出した刃が精製する魔力を余すところなく吸い取り続ける。

留めることすら、今の士郎には苦行だ。

 

ひとつ、大きく息を吸う。

大丈夫。自分ならできる。

眼前にいる敵を見やり――――そして、未だ倒れ伏してる遠坂とライダーを見る。

そして、士郎は笑った。

 

「最後の勝負だ」

「――――――――――!」

 

その言葉にバゼットが返答するが、鼓膜が破れている士郎には全く聞こえない。

だからこれはただの宣言だった。

自分の決意を舌にのせて、まわす。

それだけの作業。

会話なんて求めてない。理解してもらえるなんて思えない。

だけど――

 

「俺は負けない。負けれない。負けたくない。ここで折れてしまったら、きっと――――もう前を向けないと思うから。だから、最初に謝っておく…………ごめん」

 

その言葉はいったい誰に向けたものだったのか。

それは衛宮士郎の心のうちにしかない答えだが、言い終えた彼は満足そうにだった。

 

「――これでケリをつけるぜ、執行者」

 

準備はできた。覚悟も決まった。後は、雌雄を決するのみ。

 

「―――停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)………!!!」

 

最後の呪文を唱え終える。

瞬間、空が弾けた。

滞空していた大量の刀剣がバゼットに向け続々と射出される。雨あられのように続くそれは、用意した五十二本を放ち終えてもまだ終わらない。

 

「う、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」

 

開いた魔術回路を片っ端から酷使し、次から次へと投影し射出する。

先ほど士郎が使った、人類の英知と修練の極地が生み出した至言の一撃とは一線を画する、どこまでも無骨でどこまでも無粋な、数に物を言わせた物量攻撃。

 

だが、それでも届かない。

 

押しつぶさんばかりの刀剣の波に、しかしバゼットは倒れない。

三方から囲むように放たれる千刀『鎩』を、一本一本丁寧に処理していく様はまさしく芸術じみていて――

英霊。英雄。勇者。ヒーロー。

一個をして、その他大勢を圧倒する暴力的なまでの存在。

それらを幻視する。

 

「――――――――――――――っ」

 

 

どうあってもあれにはなれない。

バゼットの姿は士郎の目指す究極形のひとつであったが、しかしそれに届くことはないと知った。

あぁ、なんて剛気。あぁ、なんて華奢(かしゃ)

そんな華々しい存在に、自分はなれるだなんて思いもしない。

世界を間違えたとて、真似ることすらおこがましい。

 

だが、それでも。

負けたくないと、そう思った。

だから――

 

「――――投影、開始!!」

 

力の限りを尽くす。

元より、この身体は崩壊寸前。いまさら、砕け散ろうとも後悔はない。

持てる全てをこの瞬間に注ぎ込み、そして――

 

「――――――――――――あ」

 

ぷつりと。

糸が切れた。

重力に惹かれ、士郎は身体を投げ出した。

立ち上がることすらままならない。

 

辛うじて保った意識を総動員して、投影した刀剣だけはバゼットに放つ。

しかし、その数々も無残に砕かれるのみ。

悠々と立つバゼットに、息絶え絶えに倒れ伏す士郎。

 

士郎が投影した数はおよそ二百にも及んだが、その一本とてバゼットに触れることは叶わなかった。

 

わかっていたことだった。

現時点で最高峰の一撃だった、あの『零閃』が防がれた時点で悟っていた。

今の士郎ではバゼットに勝てないことなんて、明白すぎた。

 

だが、それでも士郎は立った。

負けたくないと、そう思ったから。

いや、それだけではない。

今なら、()()()と踏んだからだ。

 

「――――――――――ははは」

 

思わず、笑いがこみ上げた。

そんな士郎を不審そうに眺めるバゼット。

 

そうだ。

それでいい。

俺を見ろ。俺に注目しろ。

 

そのための大盤振る舞い。そのためのド派手な技。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ははは………………」

 

腕が上がらない。一歩も動けない。

しかし、士郎は笑う。

勝つのは俺だと――いや、()()()だと、そう言わんばかりに笑う。

 

彼は最初からひとりで戦う気なんてなかった。

周りの状況を利用し、有利な条件を付与し、そして――仲間を信じた。

 

士郎はまたひとつ、大きく笑い――

 

「――――――後は頼んだぞ、遠坂!!」

 

そう叫ぶと、深い意識の底に沈んでいった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「あのっ、バカっ…………!!」

 

バゼットの攻撃を受けて以来、倒れて隙を伺っていた凛は小さく悪態をついた。

視線の先には傷つき倒れ伏したはずの士郎が立ち上がる姿があった。

そして、驚愕に顔を染めるバゼットの姿も。

 

士郎がバゼットに対して一対一の戦いを仕向けた時、彼の思惑を凛はすぐに察した。

凛たちが背後を襲えるよう敵の意識を引きつけるつもりなのだ、とわかった。

そして事実、封印指定執行者であるバゼットが隙をつくった。

そこを突けば、有効打を入れることができるだろう。

しかしそのために、彼は死に体になる。

 

「何考えてるのよ、あいつは……っ」

 

この世を俯瞰し、盤上のゲームのように見るとしたら、士郎の行動は最も効率的に命を使う選択肢だということは疑いようもない。

しかし、それは人間には出来ない行動だ。

傍から見れば、美談に見えるかもしれない。全てを擲つその行動は、綺麗に見えるかもしれない。

しかし、自分の命を駒にするなんて――生きることより大事なものがあるなんて、人間として破綻している。

 

『衛宮士郎、お前は自分が異常だという自覚を持ったほうがいい』

 

二日前、士郎と行った冬木協会であの性悪神父はそう言った。

いまさらながらに、凛は言葉の意味を理解する。

衛宮士郎とは、そういう存在なのだと。

自分の価値が凄まじく低いと錯覚しているバカな少年なのだと。

 

「そんなわけないでしょ……っ」

 

それが、どうしようもなく凛には悲しかった。そして、苦しかった。

加え、そんな状況に士郎を追い込んだ自分の不甲斐なさに、心が痛い。

 

「――――――――――」

 

ならば。

と、凛は思う。

彼が自身の命を粗末に扱うなら、私が大事に扱おう。

見果てぬ理想を掲げるなら、私が地に足ついた現実を検分しよう。

意味を見出せないというのなら、私が見出そう。

 

決して、彼を台無しにはさせない。

 

その決意を胸に凛は策動する。

もう、時間は残されていない。

バゼットにバレぬよう、慎重にしかし可能な限り急いで準備を進める。

 

ややあって、限界を超えた士郎の攻撃は終わった。

無数に飛んでいた刀剣は、彼の生命を表すようにその全てが砕け、塵となる。

 

士郎はその光景を見て満足そうに笑い――――そして、凛と視線を合わせた。

 

そして、倒れる間際に

 

「――――――後は頼んだぞ、遠坂!!」

 

と、小さく叫んだ。

 

「――――っ。勝手なこと言ってんじゃないわよ、このバカ士郎っ!!」

 

その叫びにバゼットが弾かれたように振り向く。

だが、もう仕掛けは済んでいる。後は実行するだけ。

彼の行動を無駄にはしない。

 

「――――Sieben(七番)Acht(八番)……! Fixierung(狙え),EileSalve(一斉射撃)――――!」

 

飛び起きた凛の呪文に従い、指に持った特大の宝石が発光し膨大な光と熱量に変換される。

その一撃は今世における大魔術に等しい一撃であり、神代であっても褒め称えられるほどのものだったが、しかし。

もちろん、バゼットには効かないだろう。

 

封印指定執行者は、いわば核兵器だ。

それひとりで戦術単位の戦闘力を持つ対魔術師戦闘の化け物。

都市ひとつをまるごと壊滅させるような魔術師たちと渡り合ってきた彼女には、極東の一魔術師である凛の攻撃など隙を突いたとて歯牙にかけないだろう。

 

だから、それは囮。

この攻撃こそ本命なのだと錯覚させ、対応を鈍らせるための見せ金。

 

凛は己が起こした膨大な発光を横目で見つつ、同じく反撃しようとしていたライダーの側へと素早く移動した。

そして、ライダーの取り出した大太刀を手で制す。

 

「あんた、何を…………」

 

今のチャンスを活かすため、動き出そうとしていたライダーは怪訝そうに問うが、答えている暇はない。

代わりに、呪文を唱えてみせることでその解答とする。

 

「―――告げる!

汝の身は我の下に、我が命運は汝の剣に! 

聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら―――」

「――――っ、なるほど!」

「―――我に従え! ならばこの命運、汝が剣に預けよう……!」

「ライダーの名に懸け誓いを受けよう……!

 あんたを我が主として認める―――!」

 

瞬間、膨大な魔力が溢れた。

急激に魔力を失った凛は耐え切れず再び倒れ伏し、代わりに凛と再契約を果たしたライダーが立ち上がった。

 

一陣の風が吹く。

凛が放った攻撃で巻き上がった噴煙が流され、無傷のバゼットが姿を表した。

 

「…………なるほど。エミヤシロウが狙っていたのはこれですか」

「どうやら、そうらしいな。といっても、僕はちっとも見抜けなかったのだけど」

 

軽口を叩きつつも、ライダーは供給される魔力を喰い、宝具に変換する。

ただ、それだけでいい。

それで彼女が目覚める。

 

「――なんじゃ。もう儂の出番はないと眠っておったのじゃが」

 

そして、顕現した。

月明かりを反射し、星空のように輝く金髪。泰然自若としたその振る舞い。

風貌は幼子でありながらも、まき散らすは王者の風格。

この場において最も制限が多く――それでいて、最も強い彼女は…………

 

「取り敢えず、ミスド一年分じゃな」

「高い。まけろ、三日分だ」

「その程度で高貴な怪異の王である儂が動くと思うてか。一週間分じゃ」

「安い女だな、お前は!」

 

その名を、|忍野忍《キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード》と言った。

 

 

 

 




お気に入りの数が500を超えました。喜ばしいことです。と、同時にこんな作品を500人もの方が見てると考えると戦々恐々とします。

以下、士郎が投影した完成形変体刀の情報。

千刀・鎩(せんとうつるぎ)
   ランク:E
   種別:対人宝具  
   レンジ:1~2
   最大捕捉;1人


 四季崎記紀が作りし完成形変体刀が十二本のうち一振り。多さに主眼が置かれた、いくらでも替えが利く、恐るべき消耗品としての刀。重さや長さ、はては持ち安さまで全てが同じであり、刀を持ち替えた際にどんな達人でも生じる違和感を感じさせない。
 宝具だが、魔力をほとんど使わず使用可能。とはいえ、神秘性は薄く、耐久性も(宝具にしては)難あり。
 よくよく人を選ぶ刀であり、所有者はその特性の使い道に難儀することだろう。
 本来Dランクだが、士郎が投影したことによりランクダウンしている。
 
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