ニシオニストによる聖杯戦争、あるいはただの蛇足   作:堂升

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聖杯戦争六日目
覚醒、あるいはただの混乱


38,

 

 人が空想できる全ての出来事は起こりうる現実である

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

士郎は夢を見ていた。

 

上下左右ごちゃまぜのどこか現実感のない空間で、夢を見ていた。

遠い遠い、昔の夢。あったかもしれない、世界のひとかけら。

 

登場人物は、ただひたすら刀として鍛えられた男と、未来に過去を奪われた女。

彼らは旅を続けていた。刀集めの旅を。刀探しの旅を。

 

彼らの道中を阻むものは多く、そして屈強だった。

世が世なら歴史に名を遺したかもしれないほどの傑物たち。

それぞれがそれぞれの力で貪欲に、無邪気に、無気力に、無為に、正道に、惰性に、目的のために、刀を守護していた。

 

例えば、それは海賊だった。

薩摩は濁音港を拠点とし、薩摩の海を牛耳る鎧海賊団の船長、校倉必。四季崎記紀がつくりし完成形変態刀が一本、賊刀『鎧』を着込み、『防御』においては追従するものなどいないと豪語した、強気な男。

 

例えば、それは子供だった。

蝦夷は踊山を住処とし、存在自体が災害と言われた凍空一賊の生き残り、凍空こなゆき。四季崎記紀がつくりし完成形変態刀が一本、双刀『鎚』を弄び、気を引くための玩具がわりに使った、寂しがりやな少女。

 

例えば、それは姉だった。

土佐は清涼院護剣寺を単独で虐殺し、空前絶後の才能と類稀な大病を持つ彼の実姉、鑢七実。四季崎記紀がつくりし完成形変態刀が一本、悪刀『鐚』を胸に差し、目的のために刀を利用した、儚き少女。

 

例えば、それは機械だった。

江戸は不要湖を一五〇年間守り続け、『がらくた女王』とまで呼ばれたからくり人形、日和号。四季崎記紀がつくりし完成形変態刀が一本、微刀『釵』そのものであり、意志も意義もなくただ命令に従い続けた、悲しき機械。

 

例えば、それは道場主だった。

出羽は将棋村に道場を構える心王一鞘流の十二代目当主、汽口慚愧。四季崎記紀がつくりし完成形変態刀が一本、王刀『鋸』を看板に掲げる、正道をひた走る真っ当すぎる女。

 

例えば、それは仙人だった。

奥州は陸奥の百刑場に住んでいた、齢三〇〇歳を超える人外、彼我木輪廻。四季崎記紀がつくりし完成形変態刀が一本、誠刀『銓』には目もくれず、ただ挑むものを試し続ける生きる屍のような仙人。

 

例えば、それは刀鍛冶だった。

伊賀は新・真庭の里を試し切りにて壊滅させた全ての元凶、四季崎記紀。自身がつくりし完成形変態刀が一本、毒刀『鍍』で所有者を乗っ取り、己が遺した成果を確かめるため蘇った拭い去れぬ過去の異人。

 

その全てを彼は撃破した。

ただいつものように、ただ刀のように、斬り倒し――そして刀を収集した。

 

その光景は依然となにも変わらぬもののようにも見えたが、しかし彼は確実に変わっていた。

幾度の戦いのなかで彼は様々なことを学んだ。

 

彼は嫉妬を覚えた。

彼は油断を見出した。

彼は家族を憶えた。

彼は心を知った。

彼は血筋に感づいた。

彼は弱さを心得た。

彼は歴史を見て取った。

 

そして、彼は変わった。

 

これまでの旅は、彼がただの刀でありつづけることを良しとしなかった。

自分は人間なのだと、刀であるだけではないのだと、そう知らされた。

 

どれもこれも、あの島に居続けたら知れなかったことに違いない。小さく閉じこもったままでは手に入れられなかったものばかりだった。

 

だから、彼は彼女に感謝していた。

これだけのものを与えてくれた彼女に。

言葉だけでなく、心のそこから惚れた彼女に。

 

それが恋であるかなんて、まだまだ分からないけれど。

ましてやそれが愛だなんて、口が裂けても言えないけれど。

それでも、彼女に全てを捧げてもいいと、本気で思えるぐらいに彼は惚れていた。

 

だから、彼はとても幸せで。

多分、彼は満ち足りていて。

 

ゆえに、そこで全てが終わってしまうだなんて、全てが手から零れ落ちていくなんて、欠片も想像しなかったのだろう。

 

想像できなかったに、違いないのだ。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

明るい。

目を覚ました士郎がまず先に知覚したのは、光だった。

それもぼんやりとしたものではない。

燦然と輝く自然光とも違う、適度に光量を抑えられた人工灯の明かり。

 

この状況にどこか既視感を覚えたが、しかしその光は暖かく心地いい。

自然と力が抜ける、そんな明かりだった。

 

状況を確認しようと、いつもより幾分か重く感じる頭を左右に巡らす。

未だ覚醒したとは言い切れない、ぼんやりとした士郎の脳は視覚情報からこの部屋が士郎の自室であると判断した。

 

――なんだか、悲しい夢をみていた。

 

ふいにそう思う。

楽しくて、嬉しくて、でも心が張り裂けそうなほど悲しい、そんな夢。

もう戻ることはない、きらきらと輝いた泡沫のごとき夢だった。

 

前もこんな夢を見た気がする。

 

――あれはきっとセイバーの夢だ。

 

記憶は定かではないけれど、士郎は確信した。

 

サーヴァントはマスターと魔術的につながっている。

それは魔力供給をするための一方的な経路に過ぎないはずだが、しかし魔術師として未熟な士郎のそれは双方向性のものだということなのだろうか。

 

もしくは、セイバーがそれほどまでに焦がれている光景だということなのか。

 

「……………………」

 

セイバー。剣を象徴するサーヴァント。本名、鑢七花。剣を一切使えない、最強の剣術である虚刀流七代目当主。

 

士郎の知る彼の情報はこれぐらいだった。

彼の好きなものも、好きなことも、過去何があったかも、どんな人生を歩んできたのかも、何一つ士郎は知らない。

知るには、何もかもが足りなさ過ぎた。

 

しかし、そんな士郎でも知っていることがひとつだけある。

 

「……セイバーは、刀だ」

 

それも、真っ直ぐ曲がらない最強の一振り。

 

その全才能を『剣』に振った士郎だからわかったのだろう。

士郎より優秀な他の誰だって――あの遠坂凛でさえも気が付いていないに違いない。

 

「……セイバーは、刀なんだ」

 

確認するように士郎は再度呟いた。

口にした言葉は実感を伴って、士郎の脳内を駆け回る。

 

そうだ。

前から疑問に思っていた。

 

どうして、セイバーは自分の言うことに従うのか、と。

未熟であるはずの自分の意見を全肯定するのか、と。

 

サーヴァントとマスターでは、後者の意見が通りやすいのは自明だろう。元より、上下関係があるのだ。そこを説明する必要はない。

 

しかし、それを加味しても、セイバーはやや従順過ぎる。

 

二日目、ライダーと戦った時もそうだ。

彼なら、学校に罠が仕掛けられていたことに気が付かないはずがないのだ。学校が危険であることなど、百も承知だったはずだ。

しかし、セイバーは士郎に従った。

 

三日目、桜を助けると決めた時もそうだ。

彼は聖杯を手に入れるためにこの戦いに臨んでいたはずだ。であるなら、出来るだけ負ける可能性のある戦いは厭うはず。なにより、関係のない少女を助けるためにセイバーが動く義理もない。

しかし、セイバーは士郎に従った。

 

おかしいと、薄々は気が付いていた。

もしかして、正義感が強い英霊なのかと思っていた。

忠誠心のあるサーヴァントなのかもと思い込んでいた。

 

しかし、それは違う。

セイバーはそんなものを持ってなどいない。

 

ただ彼にあるのは、刀であり続けることだけ。

主人が誰であろうと目の前の敵を斬ることだけ。

 

――刀は主人を選べない。斬る相手だけを選べる。

 

ふいに、士郎の頭に言葉が浮かんだ。

 

善悪なく、好悪なく、敵味方なく、主に選ばれ。

容赦なく、後悔なく、躊躇いなく、敵を斬る。

まさしく、一振りの刀。

正しく、完了しきった境地。

 

それは、セイバーの在り方を過不足なく表しているように思えた。

 

しかし――

 

「………………」

 

その考えは、士郎が見た夢での彼とやや相異している。

あの夢が本当にあったことならば、彼は確かに人間になれたはずだ。

刀であることが全てでないことを知ったはずなのだ。

 

それにもかかわらず、彼は未だ刀としてあり続けてる。

 

それは喉の奥に挟まった小骨のような違和感を士郎に覚えさせ――

 

「おう、しろう。起きたのか」

「…………あぁ」

 

水を張った洗面器を脇に抱え、部屋に入ってきたセイバーの安堵した笑みに、士郎はそんな歯切れ悪い言葉を返すことしかできなかった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「つまり、士郎。あなたは三日間も寝ていたのよ」

「ふぅん」

 

セイバーに促されるまま辿り着いたリビングで、ずばり、凛に告げられた言葉は十分士郎の度肝を抜くものだったが、しかし士郎に出来たのは気のない返事を返すことだけだった。

 

実感が無いというわけではない。

 

確かに三日も寝込んでいたという事実は、長い間身体を動かしていなかった弊害として士郎に現れていたし、起きた士郎を見たときにセイバーの反応はさながら重病の患者がようやく目を覚ましたというものにも似ていた。

 

そもそも、間桐宅で狐面の男に治療してもらったとは言え、それまでの士郎の状態はお世辞にも健康体とは言えないもの。むしろ、三日程度で動き回れるようになったことに対して、逆の意味で驚くことはあっても決して長いとは感じられなかった。

 

そんな風に士郎は思っていたわけだが、しかし凛としては彼の反応はやや当てが外れたものだったらしい。

 

「ふぅん、って…………。なんだか、気が抜けるわね。三日も目が覚めなかったのよ? なにか思うところはないの?」

「思うところって言われてもな…………」

 

少し不機嫌になった凛の言葉に、士郎は言葉を濁すほかなかった。

 

順当、あるいはいい方向に予想外。

 

士郎の心境を述べるならそんなところだろうが、それは凛が求めている言葉ではないのはいくら鈍かろうがわかる。誰だって火に油を注ぐ真似などしなくないし、火中の栗を拾うのは自分でない誰かであってほしい。

誰にも感謝されない『正義の味方』を目指す士郎にしても、その想いは同じだ。

 

ゆえに、凛の体面に座った士郎は湯呑を口に運びながら、どう答えたものかと考えた。

 

「だいたい、封印執行者相手に全力で戦ったんだ。その結果、三日寝込んだだけで動き回れるなら運がいいんじゃないか?」

 

結果、考えるのが面倒になった士郎は素直に自分の考えを告げることにした。

 

「運がいいって、貴方ねぇ…………だけどまぁ、そういう考えもあるか……」

 

中身のほとんど入っていない湯呑のふちをなぞりながら呆れる凛に後悔の念がもたげるが、意外と彼女は士郎の言葉をすんなりと受け入れた。

 

当たりというわけではないが、そこまで外した回答ではなかったということだろう。

 

なかなか自分も捨てたものじゃないな、だなんて士郎が心のうちで密かに自画自賛していると、背後の襖が開いた。

 

「あれ、衛宮。気が付いたのか」

 

入ってきたのはライダーだった。

意外な人物の登場に士郎は少しだけ驚くが、そういえばバゼットとの戦いで凛が再契約していたなと思い直す。

 

「体調はもういいのか?」

「あぁ。少し反応が鈍いけど、支障が出るほどじゃない」

「そうか、それは良かった」

 

席についたライダーは茶を注ごうとして急須の中身が入ってないと知ると、勝手知ったるとばかりに、茶葉を取り出しお茶を用意し、凛と士郎の湯呑にも茶を注ぐ。

 

ライダーのそんな行動も、士郎が三日間眠り続けていたことを示しているようで、士郎は少しだけその事実を実感した。

 

不意に会話が途切れた。

その沈黙を誤魔化すように、士郎は湯呑に口を付ける。

 

静かに凛とライダー、そしてセイバーを見てみると、ひとつ気が付くことがあった。

 

誰も彼もどこか落ち着いていない。

すぐさま動きだせるよう準備し、何かを待っているようなそんな雰囲気だった。

 

そんな彼らの光景に奇妙な違和感を覚えながらも、士郎はそれを指摘しなかった。

というよりも、そんなことより優先するべきことを思い出したからだ。

 

状況に流され、聞くタイミングを逃してしまったため、今の今まで尋ねることは出来なかったが、よく考えれば士郎が起き抜けに尋ねてもいいほど重要なことだった。

 

それはつまり――

 

「そういえば…………桜はどこにいる?」

 

間桐桜救出作戦の成否だった。

 

「それは…………」

 

神妙な顔で問う士郎に、凛は言葉を躊躇った。

ライダーも目線を下げ、悔恨を滲ませている。

唯一、変わらずにいるのはセイバーだったが、士郎の付き添いと言う形で助けに行った彼には他の者に比べて桜との関わりが存在しない。別段、おかしいことではないだろう。

 

「………………」

 

黙りこくる彼らに、士郎は問いを重ねることはしなかった。

しないでも、ある程度察せてしまったからだ。

ほんの少し、彼らの瞳の中に映った後悔の色を見て、理解してしまったからだ。

 

――多分、失敗した。そして、今も失敗し続けている。

 

激情に身を任せるまま再び桜救出を提案することも士郎には出来た。というより、するつもりだった。しかし、できなかった。

 

士郎の中で言い知れぬ違和感を覚えたからだ。

バゼットとの戦闘後、間桐邸宅内で狐面の男と邂逅したところまで士郎ははっきりと憶えていた。しかし、その後の記憶が覚束ない。

桜を助けに地下室に向かったことだけは確かだが、そこで何があったのか、そもそもその場所に辿り着けたのかすらあやふやだった。

 

しかし、それでも今の状況はどこかおかしいと士郎は感じる。

 

さながら、障害物のない障害物競争を見せられているかのような、もどかしい感覚。

 

『そんなの簡単な話だ。間桐臓硯はもう死んでいるからに決まっているだろう』

 

ふと、狐面の男が発した言葉を思い出す。

 

――そうだ、彼は間桐臓硯が死んだと言った。

 

それはつまり、桜を助ける上で最大の敵が無くなったということに他ならない。

だというのに、凛たちは桜を助けられていない。

ここで燻っている。

 

だとしたら。

もしかして、彼らは知らないのではないか。

だから、ここで足踏みしてるのではないか。

 

「遠坂」

「なに、士郎」

「間桐臓硯は、もう死んでるんだぞ」

「えぇ、知ってるわ」

 

理解という名の微かな希望は一瞬で打ち砕かれた。

沈痛な表情で答えた凛に、士郎は訳が分からなくなり、更に混乱する。

そして、行き場が分からなくなった感情が爆発した。

 

「じゃあ、なんで桜を助けに行かないんだ!? まだ桜は助けを待ってるかもしれないんだぞ!」

「…………」

 

士郎の激高に、皆一様に沈黙を貫いた。

士郎にはそれが許せなくて、言葉をさらに荒げた。

 

「遠坂。聖杯戦争における御三家、間桐の家系だと言う桜を助けるのに躊躇する気持ちはわかる。けれど、臓硯はもういないんだ! ライダーだって再契約しなおした! なんで助けに行ってあげないんだ!?」

「士郎…………」

「ライダーッ! お前、あの時俺に語った言葉は嘘だったのかよ、助けたいって気持ちは嘘だったのかよ! マスターが変わったからって、それでおしまいってことか!」

「衛宮…………」

「なんなんだよお前ら、俺が寝てる間に何をしてたんだよ!」

「おい、落ち着けよ、しろう」

「落ち着いてられるか!」

 

見かねて止めに入ったセイバーの手を士郎は振り払った。

荒くなった息を整えながら、セイバーを睨み付ける。

 

彼に非はない。

サーヴァントとして士郎を助け、彼の本分を全うした。

 

そう頭の冷静なところが士郎に告げるが、感情が抑えられない。

言葉を制御出来なかった。

 

「セイバー、お前もだ。俺の意を汲むのなら、なんで桜を助けに行かない。どうして、こんな場所で立ち止まってるんだ!」

「しろう…………。いろいろあったんだ。いろいろあったんだよ……」

「あぁ、そうか。そうだな、いろいろあったんだろ。だからなんだ、なんなんだ! それが言い訳になるとでもッ――――」

「八つ当たりはそれぐらいにして貰いたい」

 

士郎の糾弾は最後まで続かなかった。

静止の言葉が耳に入ったからではない。

 

感情のまま口を回す士郎を誰かが転倒させ、上から頭を机に抑えつけたからだ。

 

「くそっ」

 

その衝撃で机が揺れ、湯呑が割れた音がする。

身動きできない士郎は唯一自由な瞳を上に動かし――そこにいた人物に驚愕した。

 

「マーダー…………。どうして、お前が…………」

「かはは。久しぶりだな、『正義の味方』」

 

ゆっくりと力を抜き、士郎を解放したマーダーは凶悪に笑う。

変に捻られた腕を摩りながら、立ち上がった士郎の目の前にはもうひとり、ここにいるべきではない人物がいた。

 

「バゼット…………」

「その節はどうも、エミヤシロウ」

 

澄まし顔で答えるバゼットに、士郎は混乱した。

 

もう、わけがわからなかった。

ここに彼らがいるということだけでも異常事態であるはずなのに、そのことに凛たちは驚いた様子が欠片もない。

士郎が拘束された際も、誰も反応しなかった。

 

彼らが士郎を殺すわけないと知ってるかのように。

 

「なんでさ……訳が分からないことばかりだ……」

「そりゃ、お前が三日も寝込んでたからだろうよ」

 

不意に口から洩れた言葉をマーダーは拾う。

どういうことだ、と視線で問いかけるも彼はただ凶悪に笑うばかり。

 

「リン。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンを見つけました。冬木教会にいます」

 

代わりに、バゼットが告げた言葉は士郎の理解を超えていた。

対照的にその情報を待ってたとばかりに、凛は身を乗り出した。

 

「なるほど、協会か。盲点だったわ。それで、()()()は動き出してるの?」

「いえ、まだのようですが……しかし時間の問題でしょう」

「どうしたほうがいいかしら」

「私はイリヤスフィールの確保を提案します。手札は多ければ多いほうがいい」

「ふむ…………」

「それに――」

 

と、話についていけず困惑していた士郎をバゼットは見やった。

 

「彼が目を覚ました以上、セイバーも動かせるようになります。攻勢に出るなら今をおいて他にない」

「そうね……それで行きましょう」

「では、早く動きましょう。そろそろ、日が暮れる。時間が惜しい」

 

バゼットの言葉を受けて、この場にいる全員が動き出す。

 

「ちょっと待ってくれ、何が起きてるのか説明してくれないか」

 

それに待ったをかけたのは士郎だった。

バゼットはそれを一瞥すると

 

「言ったはずです、時間が惜しいと」

「バゼット! 士郎は今起きたばかりで状況が掴めてない。私が道すがら説明するわ」

「……なるほど。なんと間が悪い……。ではお願いします」

 

それだけ言うと、踵を返し先に行ってしまう。

もはや、混乱の極致にあると言っても過言ではない士郎に凛は向き直り、手を差し出した。

 

「士郎。そういうわけだから、道中で全部話すわ。貴方が眠ってる間何があったのか、なぜバゼットたちと行動を共にしてるか…………そして、なぜ私たちが間桐さんを助けに行かなかったのか。だから、今は脚を動かして」

「あ、あぁ…………」

 

理解できないながらも、凛の手を取る士郎。

この状況を説明してくれるならなんでもいい。

そんな心持だった。

 

「まぁ、説明する暇があればいいけどな。夜になれば、自ずと状況も掴める。そっちほうが早いかもしれないぜ」

 

と、最後に茶化すマーダーの笑みが少しだけ疲れたように見えたのは、士郎の気のせいだけではなかったはずだ。

 

 

 

 

 

 

 




遅れたのは、艦これって奴の仕業なんだ。
資源溶かしてE-6クリアできなかったのも、艦これって奴の仕業なんだ。
諦めて明石掘りしても金剛四姉妹しか出ないのも、艦これってやつの仕業なんだ。
どれもこれも、艦これってやつの仕業なんだ!!


…………はい、言い訳です
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