ニシオニストによる聖杯戦争、あるいはただの蛇足   作:堂升

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因縁、あるいはただの顔見知り

 7,

 

 都合のいい現実などいらない。小気味がいい理想が欲しい。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 その男は奇妙な風体をしていた。

 ボロ布と言われても仕方のない衣服を諸肌で、上半身はほとんど裸―――身体は長身で、腕から胴から足まで、とにかく細いが―――しかし、華奢ではない。

 つくべきところには、つくべきだけの筋肉がついているという印象。

 髪はぼさぼさの総髪で、全体的に、野性味溢れる雰囲気が男にはあった。

 

 うーん、と男は首を傾げるように、辺りを見回した。

 そして、士郎に向き直ると

 

「こりゃ、いったいどういう状況なんだ? おい、ちょっとそこの坊主。説明してくれよ」

 

 困ったように尋ねる。

 男の言葉にしかし士郎は言葉も返せない。

 

 状況?

 むしろこっちが聞きたいぐらいである。

 いつもは魔術の鍛錬に使う土蔵に入ると―――正確には白斑の少年に叩きこまれたわけだが―――見知らぬ男が何処から現れた。

 それが士郎の認識であり、限界だった。

 

 疑問に答えられず、さながら酸素を求める金魚のように口をぱくぱくさせる士郎に、男は頭をひとつ欠いた。

 

「まぁ、それは後でもいいか。とりあえず、敵もいることだしな」

 

「―――て、敵?」

 

「うん?あすこにいるのは、持ち主の敵なんだろう?だとすれば、俺の敵でもある」

 

「あ、ああ、そうだけど………」

 

「それじゃ、ちゃちゃっと片付けて―――」

 

「あんた!」

 

「なんだよ、持ち主」

 

「俺は持ち主なんて名前じゃなくて士郎だ―――ってそうじゃなくて………………………名前、なんて言うんだ?」

 

「―――虚刀流七代目当主、鑢七花。この聖杯戦争に限って言うなら、セイバーっつう方が通りは良いけどな―――好きに呼べよ」

 

「セイ、バー………」

 

「ああ。とりあえず、そこで座ってみてな、しろう」

 

 ニッと笑いを見せると肩を回しながら男―――セイバーは土蔵の外に足を向ける。

 

 果たしてそこには臨戦態勢にある少年(マーダー)の姿があった。

 

「どうやら、待たせちまったみたいだな」

 

「―――かはは、気にすんなよ。召喚されたばかりの身だ―――マスターと話し合うこともあるだろ―――それが未熟な魔術師だとしてもな」

 

「ふぅん―――なんだ、お前以外に良いやつなのか」

 

「そういうあんたは随分と純朴だな」

 

「なんだよ、皮肉だったのか―――あいにく、田舎育ちの山猿だから―――そういうのはよくわからないんだよ」

 

 軽口を叩き合いながら、ジリッと互いに間合いを測る。まさしく達人同士の戦い。夜半屋上で見た仮面の男との戦いにも匹敵する緊張感が辺りを包み込む。

 それを土蔵の中から見ていた士郎は漏れ出るような感嘆の声を上げた。

 

「そういや、自己紹介がまだだったな―――俺はマーダーだ」

 

「俺はセイバーだ。つぅか、正規のサーヴァントじゃないのかよ―――聞いたことないぜ、そんなクラス」

 

「エクストラクラスってやつだ―――どうやら、俺に合うクラスが無かったらしいぜ」

 

「へえ―――そんなこともあるんだな」

 

 答えながら、足場を気にするように地を踏むセイバー。

 

 

「あんた、セイバーなんだろ?剣は出さなくていいのか」

 

 そんな彼にマーダー(少年)はふと思い立ったように問いかける。

 

「―――俺は刀なんて使えねえよ。振りかぶれば後ろに落とし、振り下ろせば前に零す―――この俺にかけらも剣術の才能はねえ」

 

「胸張って言うことでもないだろ。しっかし、なんでまたそんなやつが剣の英霊として召喚されたんだか………」

 

「―――それは戦ってみればわかると思うぜ。確かに剣術の才能はかけらも持ってないが―――刀は使えず武器といえるものはこの両の手しかないが―――しかし、俺はこの世で最強の剣客だ」

 

 嘯くようにセイバーは言う。しかし、その顔には誇りと自信に満ち溢れていた。

 

「―――そう、だな。戦えばわかることか。長話すんのもなんだし、とりあえず、殺りあうか」

「おう」

 

 気を負わずマーダーが言い―――気安くセイバーが答えた。

 

「今からあんたを―――殺して解して並べて揃えて晒してやんよ」

 

「いいぜ―――ただしその頃には、あんたは八つ裂きになっているだろうけどな」

 

 互いに口上の言い終えた瞬間―――その火蓋が切って落とされた。

 

 虚刀流、七の構え―――『杜若』。

 セイバーはクラウチングスタートのような構えをとったかと思うと、加速し一瞬でマーダーの懐の入り込む。

 地面が爆ぜたと錯覚するほどの爆発的な速度。

 しかし読んでいたのか、マーダーは両手に構えたナイフで(あぎと)のごとく挟み断とうとする。

 

 さきほどの戦いですら、マーダーにとって児戯に等しかったのだと容易に知れるナイフさばき。

 鋭い鋒がセイバーを襲う。

 だが、セイバーは短い呼気とともに、マーダーの両手を打ち払う。

 常人であれば骨が砕けるほどの一撃。

 それは見事命中し、その脅威を退ける。

 

「――――――ッ」

 

 否―――軽い。

 セイバーは掌に伝わる感触が予想していたものより一段軽いことに気が付き、己が直感を信じ、必殺の間合いからためらいもなく離脱し、距離をとった。

 

 瞬間、耳障りな音を立てて、空間が凝縮される。

 ―――いや、そのように感じただけだ。

 よくよく、目を細めてみれば、わずかな月光を反射し、ゆらりゆらりと細い鋼線が中空を漂っていた。

 

 鋼糸。

 鋼で編まれたそれは速度と力を持って、容易く人を割く凶器に転ずる。

 マーダーの指先から垂れるそれは間違いなく、一瞬前までセイバーがいたはずの空間を捉えていた。

 

「―――まさか、避けられるとは思って無かったぜ」

 

「糸にナイフ、って、あんた曲芸師かなにかか」

 

「かはは。曲絃じみたものって、意味なら違いねえな―――つっても、片手間に覚えたものだから、大した威力はないけどよ」

 

 それは、嘘だ。

 マーダーの扱う鋼糸はわずかに狙いが外れ、地面にも斬線を創っていたが、仮にその地が鋼鉄張りの戦場だったとしても、違わず同じように抉っていただろう。

 致命の一撃。

 まさしく、先ほどの攻撃を喰らっていたならば、ひとたまりもなかったはずだ。

 

「しまいには、火吹きでも見せてくれるのかよ」

 

「ご期待に添えず申し訳ないが、そういったビックリ人間ショーみたいな技には覚えがねえ」

 

「俺から見れば、その糸だって似たようなもんだ」

 

「こりゃ、れっきとした技術だ。そんなもんじゃない―――しかし、困ったな。できれば、この一撃であんたを仕留めたかったんだが、流石は最優のサーヴァント、セイバーってところか………。傷ひとつ負わせられないとは思いもしなかったぜ」

 

 言葉と裏腹にマーダーの言葉には悔恨の意が篭められていない。

 己の実力に対する自負ゆえか。

 それとも、先の邂逅でセイバーの力量を読みきったのか。

 傍から眺めている士郎にはわからない。

 

 しかし、セイバーには何がしかが理解できたようで、ふぅんとひとつ納得したように頷くと、半身で構え、先ほどは開いていた両手を貫手に変える。

 虚刀流、二の構え―――水仙。

 虚刀流の七つある奥義のうち、二の奥義『花鳥風月』に繋げられる構え。

 しかし、マーダーはそれをしらけた目で一瞥すると、ナイフをしまった。

 

「なんだ、戦わないのか」

 

「死ぬまで戦おうぜ―――と言いたいところなんだがな。しかし、どうにも気分が散る。気もそぞろってやつだ。そぞろがなんだか俺は知らねえんだけど………それに、流石にさきほど別れた相手と鉢合わせするほど気まずいことは無い」

 

「………あんたが何言ってるのか、俺にはかけらもわからねえんだけど、つまりそれはあれだ―――逃げるってことか?」

 

「まぁ、そういうことになるな」

 

 

 素直すぎて疑いたくなる言動。

 士郎は当然のごとく、自身の耳を疑った。

 あっけからんとしたマーダーの逃亡宣言に、しかしセイバーはなるほどなと頷くと顎で衛宮邸の入り口を指し示す。

 

「じゃあ、行けよ。別段、俺は折れ錆びるまで戦う気もないしな」

 

「そりゃ、ありがたいな。なら、お言葉に甘えて―――」

 

 と。

 二言三言言葉をかわすと、マーダーは人外じみた身体能力で衛宮邸を後にする。その去り様はいっそすがすがしいほど機敏なもので、傍から見ていた士郎には声をかける暇すら無かった。

 

「………………ハッ」

 

 やや、呆けた表情でマーダーの華麗な撤退を眺めていると、何がしか気がついたように士郎は再起動した。

 そして、身体の調子を確かめるように長い手足を動かすセイバーに近づく。

 

「おう、無事だったか、しろう―――」

「あ、あんたは一体なんなんだ!? なんでウチの土蔵にいたんだ!? というか、さっきの戦いはなんだ!? だいたい、セイバーって名前はおかしくないか!? 明らかにあんたは日本人じゃないか!? というか、どうしてさっきの敵を逃したんだよ!? あいつ、殺人鬼なんだぞ!? 人殺しなんだぞ!? 早く、捕まえないと大変なことに―――」

「あーッ、もう、うるせえ!」

 

 セイバーは切れた。ガン切れだった。キャラ崩壊してるまである。

 当然の結果とも言えた。

 

「とりあえず落ち着けよ、しろう。焦っていいことなんてないぜ。まだ、終わったわけじゃ無さそうだしな」

「え?」

 

 と。

 士郎がそう呟いた瞬間だった。

 目の前にいたはずのセイバーが、さきほど見せたマーダーの速度に勝るとも劣らない速度で衛宮宅の門を飛び越え、士郎の視界外に消える。

 

「―――ッ!」

 

 その後は痛む身体を引きずって士郎は必死で追いすがる。

 

 もしかしたら、そこには先ほどの少年のような強烈な悪がいるのかもしれない。

 そうであるなら、自分は―――。

 

 士郎は握りこぶしを作り、四肢に気力を充実させ、勢い良く外に飛び出した。

 ―――そして、巻き荒れる強い敵意に士郎は一瞬意識を失いそうになった。

 

「――――――ッ」

 

 そこはすでに戦場だった。

 街灯を頼りに距離を取って対峙するふたりの男。

 

 片方は言わずと知れたセイバー。さきほど、士郎を救った男である。

 

 そして、もうひとりにも士郎は見覚えがあった。

 

 ―――仮面の男。大小二刀を器用に扱う『不忍』の文字があしらわれた仮面を被る奇妙な男である。

 

 その両者の間を渦巻くような殺意が満ちていた。

 ギリリとセイバーから鳴る歯軋りの音を、士郎は確かに聞いた気がした。

 

「左右田、右衛門、左衛門―――ッ!」

 

不得禁(きんじえず)。………なんと、虚刀流か。まさか、このような場所で出会うとは………」

 

「とがめの仇ッ!あんたは、この俺が手ずから八裂きにしてやるッ」

 

 

 士郎は絶句する。

 ―――しかしそれは、温厚そうでさきほどの戦いでも怒りのかけらすら見せなかったセイバーに対して驚いたからではない。

 右衛門左衛門。

 そう呼ばれた男が守るように立つ、その後ろにいる少女が知り合いだったからだ。

 

「遠坂………!?」

「衛宮くん………!?」

 

 その思わぬ邂逅にマスターたちは驚くが、しかしサーヴァントである両者はそんなことお構いなしに話を進める。

 

「………ふむ。わからないな。私は確かにあの場で八裂きにされたはずだったが―――それでもなお足りぬということか」

 

「なにわけのわからないことを言っているんだ!あんたは俺が殺すと、あの時あの場所で俺の魂に誓った!」

 

 セイバーは啖呵を切ると、片方の拳を腰元に構え、体を捻りアーチャーに背を向けるほど身体を捻る。

 ―――虚刀流、四の構え『朝顔』。

 そこから繰り出される奥義『柳緑花紅』は命中させた物質の内部に衝撃を与え、その内から一気に破壊するというもの。

 しかし、『朝顔』から繰り出すことのできる奥義は『柳緑花紅』のみではない。

 

 ―――『七花八裂(改)』。

 合計七つある虚刀流の奥義を一度に放つ、セイバー自身が考え、さらに姉の助言により完成に至った最終奥義。

 そも、虚刀流の奥義とはそのひとつひとつが相手を一刀両断する威力がある技である。そんな奥義を七回繰り出すこの最終奥義は相手を容易に八裂きにしてしまう。

 ゆえに、七花八裂(改)。

 

不知(しらず)。貴様の事情など、わたしは知らんよ―――」

 

 一方、アーチャーはセイバーの動きに対応するように懐から二挺一対の『刀』を取り出した。

 ―――炎刀・銃。

 六連装の回転式拳銃と十一連装の自動拳銃。

 二挺を両手で保持し、狙いは付けずだらりと揺らせる。

 張り詰める緊張感。セイバーが発する敵意。

 激突の時はすぐそこだった。

 そして―――

 

「―――しかし、ただで殺されてやるつもりもない。再戦と行こうか、鑢七花」

 

「再戦じゃねえ。これが初戦で―――終戦だ!いくぜ、虚刀流最終奥義『七花八裂(かい―――」

 

「ちょっと待て、セイバー!」

「待ちなさい、アーチャー!」

 

 ふたりのマスターから発せられたその声が。

 ただの制止の声であったなら、両者は止まらず死戦は繰り広げられただろう。血で血を拭い、身体を削り、魂を喰らい、しかしそれでも目の前の敵を倒すために戦いは続けられただろう。

 しかし、それは回避された。

 

 ―――令呪。

 マスターに与えられた超常たるサーヴァントを律するための三画だけの強制執行の力。

 それを凛は意図して―――士郎は意図せず使った。

 魔力の塊でもあるそれは両者の腕から解けて、己がサーヴァントを縛る枷となる。

 今すぐにでも駆け出し、技を放とうとしていたセイバーは強張る身体につんのめり、顔から地面に突っ伏した。

 

「―――ッ!離せ、しろう!こいつは―――こいつだけは、俺が殺さないといけないんだ!」

 

 それでも、アーチャーを睨むのをやめない。

 士郎が先ほどまで抱えていた朴訥でおおらかなセイバーの印象とはまるっきり反対の凶暴性。

 まるで表裏入れ替わったような彼の変化に、士郎は薄ら寒いものを感じた。

 

「ま、待てよ、セイバー!落ち着いてくれ、こいつの後ろにいるやつは俺の級友なんだ!状況が掴めない、すこしだけ待ってくれ!」

「でも、だけどっ………」

 

 その瞳には変わらずに存在する殺意。

 アーチャーの肩越しにそれを認識し、根は深そうだと、凛は感じる。

 悔しげに拳を震わせるセイバーを説得する士郎を横目で眺め、とりあえずは落ち着くだろう判断した凛は己がサーヴァントに向き直った。

 

「さて、弁解する気はある?」

「………なんのことだか、さっぱり分からないが。ただ、わたしは戦闘を始めようとする敵サーヴァントに合わせて迎撃の構えをとっただけのこと。責められる謂れはない」

「―――そう、そんな言い訳でいいのね。じゃあ、なぜ貴方は真っ先に衛宮くんに銃を向けようとしたのかしら?」

「………………」

 

 凛の詰問にアーチャーは黙りこくった。

 

 あの瞬間。

 セイバーが何かの技を繰りだそうとしたその一瞬、アーチャーが握る拳銃の銃口がセイバーではなくそのマスターである士郎の方へスライドしたのを凛は見逃さなかった。

 それは、ともすれば気のせいと思ってしまうほど自然なもので。

 凛自身がマーダーというサーヴァントに狙われたという経験がなければ、気が付かなかったであろうほど巧妙なものだった―――こんなことであの狂人に感謝などしたくはなかったが。

 

 ともかく。

 

「なんで、衛宮くんを狙ったのかって聞いてんのよ、私は!」

「―――不答(こたえず)。ただ、マスターを狙ったほうが効果的と判断したまでのこと。別段、不思議ではあるまい」

「あんた、私がなんでここまで足を運んだかわかってるんでしょ!?それなのに、なんで―――」

「それこそ、不答(こたえず)だ、阿呆姫。そうしなければならないほどの相手だからだ。正面から戦えばわたしに勝ち目はない―――となれば、弱所を突くのは当然の戦略だろう?」

「弱所………」

「そうだ。だからこそ、わたしは―――」

「あーッ!やっぱり、納得いかねえ!」

 

 アーチャーの言葉を遮るように叫んだのはセイバーだった。

 令呪で縛られているはずのセイバーだったが、いったいどれほどの強い意志があるのか、立ち上がり再び構えを取る。

 

「セイバー!」

「………しろう。これは―――これだけは、誰にも止めさせやしない―――仮に今世の持ち主であるあんたでもだ」

 

 非難する士郎の声を振り切り、セイバーの四肢に充実する戦意。しかし、令呪で縛られているゆえか、その動きはややぎこちない。

 それでも、彼はアーチャーを睨みつける。

 なぜなら、そこに彼の持ち主だった女性を殺した仇敵がいるのだから―――

 

「行くぞ―――右衛門左衛門」

「だから待ちなさいってば!」

 

 そんなセイバーを止めたのは、凛の声。

 それにセイバーは初めて気がついたとばかりに眉をぴくりと動かした。

 

「………あんた、そいつのマスターか。なら、止める意味がないだろ。これは聖杯戦争で、俺らは敵同士なんだ―――殺しあうのは当然だ」

「ええ、そうね。確かに聖杯戦争でサーヴァントが殺しあうのは当然のことだわ―――だけど、その前にしなくちゃならないこともある―――衛宮くん!」

「な、なんだよ、遠坂」

 

 疑問符を浮かべるセイバーに凛は士郎に向き直った。

 

「あなた、魔術師だったのね」

「あ、あぁ………。未熟も未熟なものだけどな」

「そう………。この際、管理者である私に届け出を出してなかったことは不問にするわ―――それで、聖杯戦争ってなんだか、衛宮くんは知ってるの?」

「! いいや!全然知らない、これっぽっちだって知らないさ!」

 

 確信を持った凛の問いかけにこの場を収める方策があると感じたのか、士郎はそう断言する。

 

「そう………やっぱりね。おかしいと思ったのよ。魔力供給の十分でないサーヴァントに無防備に敵サーヴァントに殺されるマスターなんて」

「………それが、どうしたって言うんだ」

 

 己の予想が当たり満足気に笑みを深くする凛とは対照的に、セイバーの顔は険を帯びる。

 

「説明責任、とでも言うのかしらね―――聖杯に選ばれたマスターはその後の保護を保証する協会に一度顔を出さなければいけないの。わかる? 衛宮くんは―――あなたのマスターはそれを行っていない」

「………………」

「聖杯戦争は一般人の目に止まらなければ、いつどこで殺しあっても問題じゃない。だとすれば、衛宮くんに状況を把握してもらってからでも遅くはないんじゃないかしら?」

 

 凛の問いかけに、セイバーは構えを解かず、しかし迷うように士郎に目を向けた。

 

「………………本当なのか、しろう。聖杯戦争について知らないってのは」

「―――本当だ。だから、セイバー。時間をくれ」

「………………………………………………くそ」

 

 セイバーはアーチャーを睨むながら悪態をつくと、ようやく構えを解いた。

 

「しょうがない。まだ、戦う時期じゃないって言うんならな」

「セイバー………」

「勘違いするんじゃないぜ。俺はどんな障害があろうと、そいつを殺す。それが例え―――しろう。あんただったとしてもな」

「いずれ戦うというのには私も異論はないわ。好きにすればいい」

 

 凛の言葉にセイバーは無言で頷くと、背を向けた。

 

「セイバー!どこに行くんだ?」

「そいつと顔を合わせたら、また殺したくなっちまう。だから、すこし消えさせてもらう。その間にでも協会に顔を出すといいぜ―――あんたとの決着はその後だ、右衛門左衛門」

「しかり。覚えておこう」

 

 そう言い残すと闇夜に紛れ、セイバーは消えた。

 

「ではわたしも姿を消すとしよう。マスターを前にして、私だけ姿を見せていたら、虚刀流に殺されても文句は言えないからな」

 

 それを見送るとアーチャーも姿を消す。

 

 そして、暗い新都の闇に残されたのは凛と士郎、ふたりのマスターだけになった。

 

「………はぁ。助かったよ、遠坂。アーチャーを止めてくれて。俺だけじゃどうしようもなかった」

「勘違いしないで。私はただマスターに成りたての右も左も分からないあなたを狙うのは優雅じゃないと―――そう思っただけよ」

「―――それでも、ありがとう」

「………はぁ。とりあえず、協会に行くわよ。その道すがら、詳しいことを話してあげるわ」

 

 そんな正直に頭を下げる士郎に、凛は大きくため息を着いたのだった。

 

 




もし、原作サーヴァントがひとりだけ召喚されたら―――

アーチャー「俺はアーチャー!実は未来から召喚された主人公であるエミヤシロウその人で、記憶を無くしてなかったら、チート魔術に未来知識それに転成(正確には召喚)と、オリ主要素三重苦の英霊だ!
さぁて、いよいよセイバーとランサーが戦ってる場面だ、颯爽登場する私に、いったい彼女はどんな表情を見せてくれるのかーーーー」

殺人鬼「殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
虚刀流「八つ裂き八つ裂き八つ裂き八つ裂き」


アーチャー「えっ」

殺人鬼「殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
虚刀流「八つ裂き八つ裂き八つ裂き八つ裂き」

アーチャー「なにこれ、知らない」


召喚されたアーチャーの明日はどっちだ!?

完全悪ふざけですすいません
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