中の人が就活中だったのですが、ようやく落ち着きました。
また、なにか思いついたら文字起こししていきますので、どうぞ宜しくお願いします。
「土佐がこっちに飛ばされた理由は、正直なところまだよくわかっていないにゃ…セイレーンの未知の技術が原因だとは思うけどにゃ」
土佐はどうやら単騎での戦闘を行っており、凄まじい轟音を聞きつけた仲間が集まった時には、土佐の姿はすでになかったという。
「私の妹は…そんなにヤワではないことは私が1番よく知っている。弱き者は淘汰される運命、しかし土佐は違う。やられたのではないか…という噂まで立っていたが、私は信じていた。どこかで必ず生きていると。そして、私たちに再び会おうとしていると」
加賀は真剣な眼差しで妹への信頼を語る。
姿が見えなくなっても生存を信じ続ける…この姉妹の絆はそうとう深いものだとわかる。
「対セイレーンについてはみんなの奮戦もあって今は落ち着いているにゃ。そこで、土佐の行方がわからなくなった地点にもう一度調査に言ったんだにゃ。そこで、武装の破片が見つかったんだにゃ!その破片を解析したら…土佐は生存はしてるけどこの世界にはいないってデータが出たんだにゃ!」
「破片1つからそこまで分かるのか…重桜、だっけ?それはもう凄い技術を持ってるんだな…」
「明石の技術の賜物にゃ!もっと褒めてもいいにゃ!!」
胸を張る明石。工作艦…って言ってたし見た目に反してメカニック担当の天才肌…なのだろう。多分。
「しかし、別世界となるとそこからの解析に時間がかかった。こちらの世界に別世界からやってきた連中の事例もあったが、こちらから別世界に赴いたことはなかったからな…数ヶ月も足踏みをしてしまったというわけだ」
加賀がバツが悪そうにこちらを見る。
時間がかかりすぎてしまった…とばかりである。
「いや、数ヶ月で別世界にたどり着く手段見つけただけでも相当なことだぞ!?」
こういうのは数年で成功すればめちゃくちゃスゲー!ってなるようなイメージなんだけど…
「…というわけだ。妹が世話になったな」
加賀が改めて俺に頭を下げる。
真っ白な狐耳も、ぺたりと倒れていた。
「顔を上げてくれ!そんな頭を下げられるようなことはしてないし…なんなら俺の方が土佐に助けられてた数ヶ月だったというか…」
仕事から帰ってきて誰かが待っていてくれる。
休日は常に遊びに行く相手がいる。
俺の何も変化のない生活に彩りを与えてくれる。
それが、俺にとっての加賀型戦艦二番艦・土佐だった。
支えられていたのは俺の方だったろうに。加賀に頭を下げられるようなことは俺はしていないのだ。
「全く、騒がしいな。まだ朝になっていないだろうに…」
突然寝室のドアが開かれ、グレーの狐が姿を現す。
土佐は寝起きのため髪も尻尾ボサボサである。
「…悪い、土佐。起こしちゃったか。でも喜べ、お前の仲間が…」
「土佐!!」
「あ…姉上!?」
加賀は一目散に土佐の元へ駆け寄る。
そして…最愛の妹を抱きしめた。
「良かった、私は信じていた…お前がセイレーンなどに負けるはずないと…!」
「あ、姉上!離して!!恥ずかし…」
寝起きでの突然のサプライズに土佐は動転しているらしい。
だが、数分すると赤らめた顔にも笑顔が浮かぶ。
「心配をかけてすまなかった、姉上…」
「本当に再会できてめでたしめでたし、にゃ!」
明石も2人の抱擁をニコニコしながら眺めている。
俺も2人の再会を喜びたい。土佐はやっと故郷に帰れるのだ…良かったじゃないか。
(これが…ベストだもんな…)
本当に良かった。しかし素直には喜べない…この複雑な感情をどうにかする術を、俺は持っていなかった。
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「そうか…対セイレーンは上手くいっているんだな。それで私を…」
着替えて髪も尻尾も整えた土佐は、加賀たちから改めてここまでの状況を聞かされていた。俺と違って、彼女はすんなりと状況を理解したらしい。
「そうだ。母港が…重桜がお前を待っている。帰ったら天城さんにも顔を見せてやらないとな」
「天城さんも変わりないのか?」
「もちろんだ。最近は体調がいいみたいで…」
狐の姉妹は久々の会話に花を咲かせている。
邪魔をするのは申し訳ない。俺は家の中を探検という名目で動き回っていた明石に声をかけた。
「なあ明石。お前らはその…重桜ってところに帰るんだよな。もう会えないのか?」
「土佐に会えなくなるのが寂しいのかにゃ?」
無垢な顔で、ストレートに言われてしまった。
…俺は言い返すこともできず、俯いて黙ってしまった。
「正直、なんとも言えないにゃ。今日ここに来れたのも上手く研究が進めれたからにゃ。マシンにも今は帰るためのエネルギーしか残ってないにゃ」
明るい明石も少し気まずそうに話す。
「で、でも!土佐と過ごした思い出とかは消えないにゃ!それは土佐も同じ、カイトと過ごした日々は大事なものになってるはずにゃ!!」
「…土佐が俺との日々を?」
「嘘じゃないにゃ!土佐、母港にいた時と変わったにゃ!どこか柔らかくなったというか…土佐は怖いイメージがあったけど、今はそんなことはないにゃ!カイトと生活して少し変わったんじゃないかにゃ?」
土佐は、母港にいた時から変わっていたのか。
…ここにきて良かったと、土佐が1つでも思ってくれていたら俺はそれで嬉しい。
「すまない、話し込んでしまった…そろそろ失礼するとしよう」
加賀が俺と明石の方へとやってくる。加賀の後ろには土佐が立っている。…こちらも少し気まずそうである。
「どうやって帰るんだ?なんかワープゾーン的な…」
「わーぷぞーん…はよく分からないけど、これを使うにゃ!」
明石が懐から取り出したのは、透き通った立方体。
「このキューブに、重桜の座標が登録されてるにゃ!」
すると、キューブと呼ばれた立方体が光出して加賀、明石、そして土佐を包み込む。
「…明石、少し時間はあるか?」
「あんまり時間はないけど、少しにゃら!!」
土佐が、光の中から俺の方へとやってくる。
「…世話になったな、カイト」
「こちらこそ世話になったよ、土佐」
「なんというか…こういう時に何を話せばいいのか分からないな」
「奇遇だな、実は俺もなんだよ」
俺と土佐は向かい合ったまま、何も言えずにいた。
この時間が、無限に続きそうな感覚…
「土佐!もう時間が無いにゃ!戻ってくるにゃ!!」
明石が土佐を呼ぶ。その声でお互いが我に返る。
「カイト!!」
「な、なんだ?」
「時間が無い、一言だけだ!“ありがとう“!!」
「…!俺も一言だ!“ありがとう“!!」
土佐は…俺に微笑むと、光の中へと駆けていく。
俺も笑顔で土佐を見送る。拳を前に突き出して。
そうして『重桜の艦船たち』は…光とともに消えていった。
再開後開幕シリアスめでしたね。
②は土佐さん視点の予定です。