土佐さん、酒の席では苦労する①
「再会を祝しての晩酌…とな?」
「そうだ。久しくお前とも飲んでいないし、カイトとも色々な話をしてみたいと考えてな」
私が母港を離れて帰還し、再びこちらへと戻ってきて1週間が経った。
セイレーンとの戦いが落ち着いていることもあり、姉である加賀は結構な頻度でこちらの世界へとやってきていた。
姉上も私の家事を手伝ったり、私の案内で外を散歩したりしてこちらの世界の空気にも慣れてきたようである。
「姉上は知らないと思うが…奴は酒が入ると少々厄介だぞ?余計なこともよく喋る。それに…」
(それに姉上だって酒に関しては…)
母港でも、姉上の酒に付き合わされたことは少なくなかった。
しかし姉上の酒が入ってから、というと…
「姉上こそどうなるか読めないから心配だが?」
「安心しろ、私も弁えるさ。今回は「奴」もいないからな。それ以上に、話がより弾む場でカイトと話をしたいと思う」
「奴の何がそんなに気になるのだ?あのようなつまらん男のことなど…」
姉上はそうだな…と腕を組んで考えた後、真顔で「聞きたいこと」を答えた。
「そのつまらん男がどんな手段をもってお前に恩を返しきれていない、と言わせたか…なんていうのはどうだ?」
それを聞いて私のまた顔が熱くなった。
「その話はもういいだろう!!」
「とにかく、晩酌は了承してくれるな?いくらお前が変わったとはいえ、方向音痴までは治っていなかったからな…散歩に出てしばらく帰れなかった分のツケということで手を打ってくれ」
「あ…姉上がよりによって私の管轄外ばかりに行きたがるから…!!」
先日、姉上を連れて外を歩いた時に帰宅に時間をかけすぎてしまったことがあった。幸い、
「カイトからはこの周辺については全て伝えてあると聞いたが…?」
そこを突かれるともう何も言えなくなってしまう。
悪気を持たず、純粋無垢な顔で粗を付いてくるのは辞めて欲しい。
「くっ…奴にその事を伝えないことだけは了承しろ…姉上」
「承知した、夜が楽しみになってきたな」
急遽決まった晩酌。
奴はまだ仕事から帰ってきていないが、明日は休日のため間違いなく了承するだろう。
私は晩酌の要望を
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「ただいま〜、酒は買ってきたぞ!」
土佐から携帯電話にメッセージが入っており、酒を買ってこいとのことであった。
「カイト、帰ってきたか。前に言ったな?いつか共に1杯やりたいと。私も楽しみにしていた」
「なんだ、加賀のアイデアだったのか。土佐が自分から酒を買ってこいなんて言うことはなかったから驚いたけど、これで納得だな」
土佐の方を見やると、どうやらあまり嬉しくなさそうな表情であった。
「…なんだ土佐?表情が冴えないけど…体調でも悪いのか?」
「体調とな?これから起こることを予想すれば、良いとは言えない…かもな」
深くため息をつく土佐。加賀によれば、飲みを提案した時点からずっとこうらしい。
「気が乗らないなら今日はやめとくか?別に俺はいつでも…」
「いや、今日でなければ姉上の時間の都合に合わせることが難しくなるからな。それと、姉上に1つ貸しを作っているのもあ…」
土佐が慌てて口を抑える。どうやら失言だったらしい。
貸しを作ったというのは、まさかまた何かやったのかこの狐は。
「貸し?土佐、もしかしてまた何かしら…」
「カイト、もう辞めておけ。私は酒が飲みたいんだ。晩酌が中止になったら困る」
「はは…流石は土佐の姉貴だ、土佐のことをよく分かってる…そうだな。じゃあ…飲むか!!」
こうして、「加賀土佐姉妹再会を祝して!」」という題目の晩酌がスタートした。
俺はビールの缶、加賀と土佐は日本酒の入った湯呑みで乾杯し、酒を口に運ぶ。
「土佐が日本酒を飲んでたから加賀もそうかと思って日本酒にしたけど…他の方が良かったか?」
「いいや構わん。まあ、私は酒なら何でも飲むが…やはり日本酒が好きだな」
「それなら良かったよ。ビールとかが飲みたくなったらあるし、変えたくなったら言ってくれ」
酒の席の話題…
土佐と2人で飲む時はだいたい俺の仕事の愚痴になりがちだが、今日は3人である。どんな話題に発展するのか…正直俺にも予想がつかなかった。
加賀はどんな話題を振ってくるのか…そんなことを考えていたら、当人が口を開く。
「そうだな…カイトも土佐も、お互いのことをどう思っているのかを聞こう」
「いきなり直球だな!?」
「これを聞くために酒を飲んでいるようなものだからな」
加賀は酒の入った湯呑みをゆらゆらと揺らしながら笑う。
あまりぐびぐびと飲むタイプでは無いらしい。
「いきなりそんな質問が飛んでくるとは思わなかったから何とも…なあ土佐?」
土佐の方を見ると、無言で酒をぐびぐびと飲んでいる。彼女は酒が強く酔いつぶれることはないだろうが、こんなに勢いよく飲むタイプではない。どうやら加賀の質問に答える気は無いらしい。
聞かれたからには何かしら答えないといけない…がなんと答えればいいのやら。その時、聞いたことがない声がリビングへ響く。
「あら〜加賀?私がいないと酔ってなくても随分と饒舌じゃない?」
「…貴様、どこから沸いた?」
「夏の虫みたいに言わなくていいじゃない、重桜と鉄血の仲でしょう?」
声の主は、テーブルの後方にあるソファーに寝転びながら酒を飲んでいた(既に顔が赤い)。
銀を基調をした髪に赤のメッシュが見える。また、加賀や土佐のような獣耳といった特徴は見当たらなかった。
「…加賀の知り合いか?」
「あなたが噂の土佐の保護者さんね?話は聞いてるわ〜」
「誰が保護者だ!!こんな男など!!」
土佐の怒号が飛ぶ。どうやら土佐も彼女のことは知っているらしい。
「あー…悪いが自己紹介してくれ…ここ最近はこんなことばっかりで慣れてきたとはいえ、気づいたら家に入っててかつソファで酒を飲んでる奴は初めてだし…」
「プリンツ・オイゲン。加賀と土佐の再会を鉄血を代表してお祝いに来たのよ」
「鉄血…?重桜…とはまた違うのか?」
以前、土佐が重桜以外の勢力の存在についても軽く話していたのを思い出した。彼女はその別勢力出身ということだろうか。
「鉄血は重桜の同盟勢力だ。そして酒の入った彼女は…姉上の天敵だな」
土佐が俺の疑問に冷静に答える。
「その辺の説明は後回し!お酒を飲むんでしょ?加賀は…全然飲んでないじゃない!ほらほらもっと飲みなさいよ〜!」
「貴様、何がお祝いだ!!酒が飲みたいだけだろう!?それに無理に飲ませるのは辞めろと何度も…うぷっ…」
プリンツ・オイゲンと名乗った彼女は加賀に近づくと、酒の入った湯呑みを加賀の口にぐいっ、と押し付ける。
「おい!いくらなんでも無理やり飲ませるのは…」
「無駄だ。酒が入った
土佐はこういう場面には何度も出くわしているのか、ああまたか、といった表情で加賀とオイゲンを見つめる。
「しかし…オイゲン、どうやってここを知ったとな?転送技術の件も鉄血には伝わっていないはずだが?」
「お酒を飲みいったら加賀がいないじゃない。近くにあの子猫ちゃんがいたけど逃げちゃって。落し物のキューブを拾い上げたらここに着いたって訳」
(転送技術のセキュリティゆるすぎないか明石!?)
心の中で突っ込んだ俺だったが、土佐も同様だったはずである。
「そんなことより、姉妹の再会を祝いたいのは本・当。今日は楽しみましょう、夜はこれからよ?」
既にできあがっているオイゲンは、俺と土佐に向かってウインクした。
今後他の艦船を出すにあたってキャラクター理解が乏しい部分が散見されるかもしれませんが、独自解釈ということでどうかお許しを…
本小説は中の人が「あったらいいなぁ」と勝手に思ったことを文章化しているだけなので、ご理解頂けると幸いです。