土佐さんは少々抜けている   作:さいどら

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土佐さん、外を散策する

「ずっと家にいても暇だし、少し外に出てみるか?」

 

「まあいいだろう。私も退屈してきたところだ」

 

彼女に家の周辺がどのようになっているのか知ってもらっておいた方がいい。俺も仕事でいない日があるわけだし。

 

「…と言ったものの、だ」

 

「何か問題でもあるのか?」

 

「土佐の格好、目立ちすぎてなぁ…」

 

「私の格好はそんなに目立つか?私の周りはもっと奇抜な格好をした輩が多かったから気にしたことはなかったが…」

 

「土佐より奇抜ってどんな輩だよ…」

 

それはさておき、俺が住んでいるのは普通の住宅街に立つマンションの一室だが、狐面に和服、帯刀までしている銀髪で狐耳の女性は明らかに浮きすぎている。

 

(女性の私服なんて持ってないし、俺の服を貸すことにするか…)

 

落ち着いたら服屋にでも一緒に行くか、なんてことも考える。

 

「ちょっと待っててくれ」

 

衣装ケースの服を漁る。とりあえず無難な長袖のシャツと長ズボンを引っ張り出す。今は春なので体感温度は大丈夫だろう。

 

「土佐、これに着替えられるか?あ、流石にここでは嫌だろうしあっちの部屋を使ってくれていいから」

 

寝室に土佐を入れてから俺はドアを閉めた。

土佐はかなり身長も高いし、細身なのでサイズは問題ないとは思うが…

 

ドアを背に向けて待っていると、寝室のドアが開かれる音が聞こえた。

 

「…少し大きい気がするが、これでいいか?」

 

無地のTシャツと長ズボンを着た土佐。

少しダボついてるけど和服で歩き回るよりは遥かにマシだろう。…胸がかなり膨らんでいるがそれはどうしようもない。

 

「悪いな、そんな服しかなくて。もう少し落ち着いたら一緒に服なんかも見に行けると…」

 

「貴様と…?ふん、服選びには自信があるんだろうな?私が1人で行った方がいいんじゃないのか?」

 

女性の服など選んだことはない。自信も何も無かった。

…まあ女性の服を選ぶにあたって最終手段がないこともないが、それはもう少ししてからでいいだろう。

 

「先の話先の話。あとは耳だな…そうだ、ちょうどいいのが…」

 

クローゼットから新品のニット帽を取り出す。

使おうと思って忘れており、ずっと眠っていたものだ。

 

試しに被ってもらうと、耳は綺麗に隠れていた。

 

「やれやれ、ようやく外に出れるのか。これだけでも一苦労だな。貴様、さっさと行くぞ」

 

やれやれなどといいながら結構嬉しそうで少しかわいい。

そんな土佐が俺の目の前を通り過ぎて玄関へと向かう。さあ俺も軽く準備を…

 

「っと待ったぁ!!」

 

「何だと?貴様!!まだ私の容姿に問題があるのか!?」

 

「尻尾!そのふさふさの尻尾を出したままはダメだ!!」

 

「はぁ?」

 

正面からしか見てなかったので全く気づかなかったが、ズボンから銀色の尻尾がゆらゆらと揺れていた。

 

(穴なんて空いてなかったはずなのにあの尻尾どうなってんだよ…)

 

「これもいけないのか。全く…この世界は艦には合わんかもな。どれ、これでいいか?」

 

そういうと、土佐の尻尾が消えていく。

狐だからなのか、尻尾の具現は変幻自在らしい。本来は9本あるのだとか。

 

「…変幻自在の尻尾、なかなか便利そうだな」

 

寝る時には抱き枕のようにしているのだろうか。太い尻尾は気持ちよさそうである。

 

「貴様の言うことはよく分からん…ほれ、さっさと行くぞ」

 

土佐はどうやら早く外に行きたくてたまらないらしい。

彼女は勝手にドアを開け、外に出てしまった。

 

俺も財布と携帯だけ持つと、玄関から外に出る。

ドアを開けると、柵から下を見下ろす土佐の姿があった。

 

「高いんだな、ここは」

 

「3階だからな。階段はこっちだ、とりあえず周辺をぶらぶらしてみるか」

 

土佐と二人で階段を下りて、適当に散策する。

 

俺の家の周辺は都会ではないが、生活に困るほど田舎な訳でもない。

騒がしくないこの環境を俺は割と気に入っていた。

今日は休日だったが、たまに人とすれ違う程度である。

 

「静かなんだな、貴様の家の周辺は」

 

「土佐の家の周辺はどうだったんだ?」

 

「重桜は…そうだな。活気溢れるところだった。ここと比べたら尚更な。駆逐艦の子達は走り回っていたし、団子なんかを食べながら姉上や天城さんとも談笑もしたものだ」

 

「姉上…土佐のお姉さんってどんな人なんだ?やっぱり狐耳と尻尾があるのか?」

 

「姉上の名は加賀…貴様、さっきから耳と尻尾ばかり気にしていないか?さっきも言ったが重桜だとこれが普通だ。姉上は難しい人だ…私なんかよりも、ずっとな」

 

「加賀、か。仲良かったのか?」

 

「仲か…よく分からんな。空母の姉上に関してはあの腰巾着とずっと一緒にいるから話すことすらないしな」

 

「なんだ、土佐は2人お姉さんがいるのか」

 

「いや、加賀の姉上は1人だ。ただ戦艦の姉上と空母の姉上がいて、私は戦艦の姉上の方をよく知っている。空母の姉上は一緒にいるやつが気に食わんから、まともに話すことがない」

 

.「ええ!?それって加賀お姉さんが2人いるってことか?ほんと土佐の世界は難しいな…」

 

「メンタルキューブというものが複雑で謎に満ちているから仕方ない。なんなら私だって…いや、この話はいいか。貴様がまた倒れられても困る」

 

「もう倒れるかよ!昨日は色々重なりすぎただけだって!…ん?どうしたんだ?」

 

土佐がいきなり立ち止まった。

彼女の目の前には自動販売機。彼女の世界にはなかったのだろうか?

 

「母港で見かけた気もするが…確か飲み物が出てくるんだったか」

 

「ちょうど喉も渇いてきたし何か飲むのはいいかもな、土佐、何が飲みたい?」

 

「恩に着る。そうだな…コーラとな?これにするか。母港でも酸素コーラというものを飲んだことがあるからな」

 

「酸素コーラ…洗剤と調理酒を間違えるのにコーラはわかるんだな。じゃあ俺もコーラでいいか。今財布を…」

 

「あ、あれは貴様が近くに置いていたから悪い!何度もしつこいぞ!」

 

普通間違えねーよ、と心で呟く。

コーラを二本買って片方を顔を赤くしている土佐に渡した。

土佐の世界は色々不思議なのにコーラは分かるあたり本当に変わっている。

 

「なんだ、こちらのものは刺激が足らんな。もっと派手にやっても構わんのだが…」

 

フフフ、と不敵に笑いながらこちらを見てくる土佐。

たかがコーラでマウントをとるんじゃない。ほんと、高飛車だけどどこか抜けている。

 

「…まあもうちょっと歩くか。この先に行ったら商店街があるし」

 

「商店街とな。重桜のものと比較するのも楽しみだな」

 

ゴクゴクとコーラを飲み干した土佐。外を歩くことを楽しんでいるようで、俺も一安心である。

 

(俺が仕事の間に1人で来ることも出てくるだろうし、商店街はゆっくり案内したいな)

 

まずどこから連れていこうか、などと考えながら俺と土佐は商店街へと足を進めて行った。

 

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