土佐さんは少々抜けている   作:さいどら

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イベントに土佐さんの姿が…!
新規のロード絵も貰えた…!!
新しい着せ替えもきっと…!!

そして、お気に入り100人超えありがとうございますっ!
これからも頑張って自給自足していきたいと思います。


土佐さん、新たな来客を連れてくる②

「天城さん…ってのは土佐の話によく出てきた人で合ってるのか?」

 

「ふふ、土佐ったら私のいない所でどんな話をしていたのかしら?」

 

「あ、あなたに世話になった話を少ししただけだ!…もう済んだことはいいだろう貴様!?」

 

土佐にとって天城は尊敬すべき年長者…といったところだろうか。

天城から感じるオーラは圧があるのはわかるし、気品も感じられる。例えるならば頭がキレて、育ちも良い貴族のお嬢様といったところか。

 

今こうして笑顔の天城と対面している中でも、彼女はこちらをどのような人間か見極めているようにも見える。隙を見せたらやられそうな…(土佐風に言えば喰われる、といったところか)。

 

そんな空気もよそに1人で興奮しているのは海美であった。

 

「天城さん!私、重桜艦隊の戦艦は天城さんって決めてて、いつもお世話になってるの!!握手、してもらってもいいですか!?」

 

「握手は構いませんが…先程私のことを知っていたことといい、こちらで私が認知されているのはなぜでしょう…?」

 

握手に応じながらも疑問符を頭に浮かべる天城。

当然だろう。自分は何も知らない別世界にやって来れば自分の熱狂的ファンに握手を求められているのだから、状況はよく分からない構図だし。

 

「私たちの世界ではね、天城さんや土佐さん…もちろん赤城さんや加賀さんもゲームの世界で活躍してるの!」

 

困惑気味の天城にも海美は目を輝かせながら、この世界のことを伝える。

 

「奇妙な話だがそういうことらしい。この世界では私たちは空想の存在…といったところか。私もまだ完全に理解したわけではないのだが。…おい海美、今腰巾着の名も呼んだか?」

 

海美の説明に補足をする土佐。彼女も海美から「アズールレーン」というゲームについて聞かされた時には驚いていたが、ようやくこの感じにも慣れたようである。

 

まあ、別世界を何度も行来していればそうなるか。飛行機で別の国に行くような感覚なのかもしれない。最後の腰巾着というのはよく分からないが…

 

天城はとりあえず納得したと言った表情を浮かべた。やはり頭の回転が早いらしく、状況を掴む能力が高そうである。

 

その後、「腰巾着…」とため息をつく天城。

 

「はあ…土佐、赤城のことを悪く言わないでくださいと何度も…加賀にもあなたにも、赤城を頼みますと言ったではないですか」

 

今までの話から推測するに、土佐の言う「腰巾着」とは「赤城」という人物だろうか?海美なら赤城という人物のことも知っているだろうし、後で聞いておくか。

 

「ふん…概ね実力は認めているさ。だが、まだ重桜を背負うには早い。そのためにも姉上や私が努力せねばならん」

 

「ふふ、それなら良いのです。赤城と加賀、そして土佐…あなたにも、重桜を背負って立ってもらわねばなりません。だからこそ、ここ数ヶ月のあなたの変化は嬉しいのです」

 

「私は何も変わってなど…!」

 

別世界からの来訪者が口を揃えて言う土佐の変化と、指摘される度に赤面する土佐。

 

土佐の尊敬する人物である天城の口からもこれが聞けたということは、彼女の変化はとてつもなく大きいものかもしれない。それも、ポジティブな意味で。

 

「すみません海斗様、海美様。押しかけておいてこちらが話すばかりで…」

 

「いやいや、気にしないでくれ!あとは…丁度いいや。今から晩飯の予定なんだけど…天城さんもどうだ?」

 

「あら、本当ですか?軍議の後ですしお腹も空いて…それでは、お言葉に甘えましょうか」

 

「私たちの作ったご飯が天城さんに食べてもらえるの!?明日私…死んじゃう…?」

 

海美よ、死ぬんじゃないと心の中でツッコミを入れつつ、作りすぎた夕飯と来客が奇跡的なタイミングの噛み合ったことに安堵する。

4人で食べるにしても量は多いが、俺が多めに食べれば何とか食べ切れるだろう。

 

(よし、じゃあテーブルに…)

 

3人をテーブルに促そうと背後を振り向いたその時、ちょんちょんと肩を叩かれる。振り向くと、肩を叩いた主である土佐が苦笑いをしていた。

 

そして、俺の耳元に小声で呟く。

 

「…ないと思え」

 

「えっ?」

 

土佐はそのまま配膳の手伝いに行ってしまったため、最初の部分を聞き返すことができなかった。ないと思え…一体どういう意味なのだろうか?

 

モヤモヤしたまま配膳が終わり、4人がテーブルを囲んだ。

テーブルには山盛りのミートソースパスタと、取り皿が4人分。

 

「これはパスタ…でしたか?あまり重桜では出てきませんね」

 

天城は態度を少し軟化させ、目を輝かせていた。興奮しているのか耳もぴこぴこ動いていて可愛らしい。

重桜は聞いている感じ和食が主流っぽいし、ミートソースパスタはお目にかからないのかもしれない。別世界での食事ということで、ご当地グルメのような感覚で楽しんでもらえると嬉しい。

 

「でも見ての通り作りすぎちゃったから…まあ、みんな自分のペースで食べてくれ。各自好きな量をよそってくれたらいいし」

 

ここで、天城の視線が真っ直ぐとこちらを捉えた。

 

「海斗様…今好きな量をと、申されましたか?」

 

「えっ?そうだけど…この量だから無理しなくてもいいんだぞ?」

 

「無理?とんでもないですよ…それでは、頂きますね」

 

天城は2つあるトングの片方を手に取ると、いきなり大量のパスタをよそる。

もう片方のトングで少しずつパスタをよそっていた俺と、待っている海美の目が点になった。

 

「うん、美味しいですね…しかもこんなに食べられるなんて、私は幸せな(フネ)ですわ」

 

何とも上品に、美味しそうにパスタを頬張る天城。

それだけなら良いのだが、スピードが尋常ではない。凄まじいスピードで消えていくパスタを見て、彼女の口はブラックホールか何かかと錯覚してしまいそうである。

 

「…?海斗様も海美様も…食べないのでしょうか?もしかして体調が優れないとか…」

 

最初によそったパスタを速攻で食べ終えて次をよそおうとする天城が、固まった俺と海美を心配そうに見つめる。

 

「いや…天城さん、めちゃくちゃ食べるんだなってびっくりしちゃった、あはは…」

 

海美が、俺の気持ちも代弁してくれた。天城のことを知っていた海美も、彼女がよく食べることは知らなかったらしい。

 

「ふふ、海斗様と海美様のお料理の腕があってこそですわ。次、頂きますね」

 

パスタで山盛りだった皿は、瞬く間に綺麗になっていく。

俺も海美も食べはしたが、天城の食べっぷりに気を取られてまともに食べることができなかった。同志の暴走には慣れっこの土佐は、相変わらず済ました顔で適量を食べていた。…心の中では目が点になった俺と海美を見て笑っていたのかもしれないが。

 

そしてついに、真ん中の大皿が空っぽとなる。

 

「ふう、ご馳走様でした…こんなに素晴らしいお料理をたくさん頂けるなんて…これだけで、こちらに来た甲斐があったというものですわ」

 

パスタの4分の3は1人で食べたであろう天城だが、食べすぎたというような表情でもない。まだ腹八分目といった様子である。

 

「美味しく食べてもらえて良かったけど…天城さん、めちゃくちゃ食べるんだな…」

 

「ふふ、今日は演習もあって頭を使いましたからね。頭を使ったあとはこうやって食事で補うことは大切だと思いませんか、海斗様?」

 

土佐の尊敬する戦艦・天城。

完璧超人にも見える彼女だが、それを可能にしているのは大量に摂取している食事…なのかもしれない。

 

土佐が食事前に苦笑いをしながら呟いたが聞き取れなかった言葉…今なら推測できる。おそらくこうだったはずだ。

 

「カイト、今日の晩飯はないと思え」

 




天城さんはよく食べるタイプだと勝手に思っています。

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