土佐さんは少々抜けている   作:さいどら

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お久しぶりです。中の人、論文に追われております。

後書きの方にちょっとしたお知らせのようなものがあるので是非。


土佐さん、体調管理にはうるさい

社会人たるもの、寝起きの瞬間からその日のコンディションは何となくわかる。

 

朝7時、煩わしい目覚まし時計を止めて布団から起き上がる。

 

(あー…やべぇ、体調最悪だ…)

 

今日は体が重い。

今は季節の変わり目ということで体調を崩しやすい時期で、土佐からも体調管理には気をつけろと言われているがこのザマである。

 

しかし、動けないことも無い。無理をすれば仕事も何とかこなせるだろうし、頑張ってみるかとリビングへと向かう。

 

リビングのテーブルにはパンとサラダが並んでおり、土佐は既に椅子について食べ始めている。

 

この狐、俺が仕事の日はこのように必ず早起きして朝食の準備をして待ってくれている。ポカはするが、俺より遅く起きてきたことはない。

 

「おはよー、土佐…いつも早くて助かるよホント」

 

「ふん、寝坊する貴様を叩き起さねばならん可能性もあるから当然だ。全く世話の焼け…貴様、顔色が悪いぞ?」

 

土佐のすました顔が少し歪んだようにも見える。

体調管理には抜かりない土佐なので、俺の顔色の悪さも見逃さないらしい。

 

「あー、実はあんまり体調良くなくてさ…仕事はできそうだし普段通り出社するつもりだ…うっ…」

 

急な立ちくらみで足元がおぼつかない。

寝起きすぐなのもあるからだろう、顔でも洗えば治るか…そんなことを考えながら洗面所に向かおうとすると、土佐に肩を掴まれる。

 

「…?どうした土佐?」

 

無言で俺の額に手を当ててくる土佐。

彼女は艦船だからか手はひんやりとしており、火照った顔には心地よく感じる。

 

「…凄い熱だ。こんな状態で仕事などと、弱者の貴様に務まるはずがないだろう!?」

 

語気を強める土佐。

弱者呼ばわりされることにはもうすっかり慣れたが、この状態だと仕事が全くできないような言われようである。

 

今までもこれぐらいの体調なら出社して仕事をこなして帰ってきているので、自分の中ではあまり心配していないのだが。

それよりも、会社を休むことで上司にグチグチ言われたり仕事が溜まってしまうことの方が、俺にとっては嫌なのだ。

 

「心配してくれるのは嬉しいけど、動けるなら出社しないといけないのがこっちの世界の労働者ってもんなのさ…理不尽なんだよ、『社会人』ってのは」

 

それに、と俺は続ける。

 

「休むとなると色々と面倒なんだ。上司に休みの連絡して文句を言われなきゃいけないし、次の出社日の業務が増える。結局ストレスが溜まるなら、多少無理してでも仕事した方がいいだろう?…そんなところだ、顔洗ってくる」

 

土佐に背を向け、再び洗面所へと歩き出そうとしたが、肩に置かれた土佐の手はそのままであった。それもとても力強い。

 

「手負いの戦艦が戦場へ赴くか?否だ。それと同じこと…今の貴様にとっての最優先事項は、休息をとって体調を万全にすることだ」

 

「いやしかしだな…」

 

「うるさい!でももしかしもあるかっ!!さっさと自室で寝ていろこの弱者が!!!体調管理には気をつけろとあれほど言っていたのにこの間抜け!!」

 

「うおっ!?」

 

「上官への連絡とその時の小言が面倒だと?手負いの者を働かせる上官など放っておけ!そんな奴は上官として相応しくない!!」

 

携帯電話を貸せ、とすごい剣幕で迫られる。

俺は鬼気迫る表情の土佐に何も言えず、ポケットに入っていたスマホを手渡すしか無かった。

 

何をするのかと思いきや、電話帳を開いて誰かの名前を探し始めた。俺の愚痴を聞いてもらっている時に上司の名前を口に出したことはあるが…まさか、土佐から上司に連絡するつもりなのか!?

 

「待て待て待て!!それはまずいって、俺がやるから!!」

 

「貴様は黙って寝室で寝ているがいい!!上官の小言で更に体調を崩されても困るからな?」

 

「おい土佐…!!落ち着…」

 

俺の静止も追いつかず、土佐は上司の電話番号を発見し、電話を発信してしまう。

 

プルルルル…プルルルル…プルルルル…

 

コール音だけ鳴り響く。上司よ、今は出なくていい…今電話に出たら土佐の罵声が飛んでくるぞ…とにかく今は出るんじゃないと俺は祈っていた。

 

更に数秒の沈黙の後…

 

『ただいま、電話に出ることができません。ピーっと鳴りましたら、お名前とご要件を…』

 

上司は電話には出なかった。

こんな朝っぱらである。重役出勤する上司なので、まだ寝ているのかもしれない。

 

俺はほっと胸を撫で下ろす。

土佐の罵声が上司の耳に入ってみろ、次の出勤の時を考えたく無くなる。それに、会社には土佐のことは黙っているので、色々とややこしい事にもなるし。

 

「あー、土佐…出なかったしほら…電話返してくれないか?仕事は休んで寝とくから、な?」

 

しかし、土佐はまだ止まらなかった。

留守電に、大声でメッセージを残す。

 

「端島海斗は体調不良で休みだ!!貴様は手負いの兵を戦場へ特攻させるような上官なのか!?上官に相応しい行動をよく考えておけ!!」

 

ツー…ツー…

 

やってしまった。

 

次の出社の時、会社にどんな顔を行けばいいのだろうか。

考えただけでもう目眩が………

 

体調不良と相まって、もう俺は立っていられなくなり、その場に倒れ込んでしまった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「うっ、頭痛ぇ…あれ、ベッド…そうか、土佐が…」

 

俺は丁寧にベッドに寝かされていた。

ベッドの傍にあるミニテーブルには皿に乗せられたリンゴがある。

 

すると、丁度いいタイミングで土佐が入ってくる。

流石にもう落ち着いたらしい。起き上がった俺を見ると軽く微笑んだ。

 

「起きたか…よく眠っていたな。ここ数日はあまり寝ていなかっただろう?寝不足もあったかもな」

 

ベッドに座ると、持ってきた刃物でリンゴの皮を剥いていく土佐。

彼女が果物の皮を剥くことはあまりないので、慣れない包丁さばきである。…ん?包丁…?

 

「土佐、それステーキとか食べる時に使うナイフじゃないか?包丁とかピーラーとか…もっと使いやすいの持ってくれば良かったのに…」

 

「う…うるさい!皮が剥ければ何でもいいだろう!?」

 

…なんというか、久しぶりに抜けた土佐を見た気がする。

 

たまには体調不良で土佐に看病してもらうのもいいかもしれない。

ここ最近の土佐はポカのない日々だったため、イレギュラーな自体でもないとこういった微笑ましい土佐は見られないのかも。

 

それと気になることがもう1つ。

 

「土佐、体調管理には人一倍気を使ってるというか…何か理由でもあるのか?」

 

正直、朝の土佐の剣幕は予想していなかった。

むしろ体調不良を理由に会社休もうとすれば、この程度で動けなくなるとは情けない…などと言われると考えていたからである。

 

土佐は普段から体調管理にはうるさいの理由が気になる。朝に体調管理できなかった俺は間抜け呼ばわりされたし。

 

「…天城さんだ」

 

「天城さん?」

 

「天城さんは優れた才を持っているが、体が弱くて本調子を出せない日々がずっと続いていた。そんなあの人をずっと見ていたら、体の調子には敏感にもなる。それに…」

 

「…それに?」

 

「私もこうして万全な体でいられることは…奇跡に近い。些細なことでこの万全な状態を崩したくない。今こうして動けていることを感謝している。無論、貴様もそう考えるべきだ。体は1つしかないのだから」

 

どこか含みを持たせる土佐。

 

「…お前も、天城さんみたいに体が弱かったのか?」

 

「ふん、私にも色々あるのさ。…剥き終わった、これを口に入れたらまた寝ていろ、いいな」

 

深いことを聞く前に、土佐は部屋を出ていった。

 

後日に海美から聞かされた話なのだが、歴史の中の戦艦・土佐はかなり不遇な立場であり、ろくに戦場に立つことすらできなかったそうだ。

 

艦船の力を持つ彼女は、そんな辛さを身をもって知っているからこそ、体調管理にはぬかりないのだろう。

 

明くる朝、体調も万全になった俺は思い出した。

土佐の留守電に対して、上司はどのようなリアクションを起こしているか…

 

ポジティブな結果は期待できないだろう。

びくびくしながら出社すると、珍しく俺より先に来ていた上司が、体調は大丈夫かと聞いてきた。

 

俺は本当にすみませんでしたと頭を下げたが、上司は「端島、パワーのある彼女さんがいるんだな」と苦笑いしながら去っていった。

 

この後、社内で『端島の彼女はパワー系』という噂が広まってしまった。

うーん、この…

 




お知らせというのは、今後に登場させるアズレンキャラ達についてです。

土佐さんとこのキャラの絡みが見てみたいな、というキャラがいれば、感想に書き込んで貰えるととても喜びます。
キャラ理解の疎さ、独自解釈が見受けられるとは思いますが、それでも良ければ今後登場させるかもしれません。どうぞお待ちしています。
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