土佐さんは少々抜けている   作:さいどら

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土佐さんと一航戦①

もはや異世界からの来客が日常とかしている端島家。

奇抜な格好をした艦船の力を持つ女性たちが来訪しても、何度も来ている人物ならば「また来たか」で済むぐらいにはなってしまった。

 

リビングでくつろいでいると、玄関側から足音が聞こえる。また誰かが来たのか…今日は誰だろうか?新顔か、常連か。

 

「失礼する」

 

入ってきたのは白髪の狐…加賀であった。

 

「なんだ加賀か〜、新顔かと思ったよ。土佐なら今寝室にいるぞ…あれ?」

 

加賀の雰囲気がいつもと違う気がする。

見た目は加賀なのだが、普段よりも落ち着いた感じというか、激しさのような雰囲気をあまり感じない。

 

身にまとっている和服も若干違う気がする。イメチェンだろうか?

 

「加賀、なんというかいつもと雰囲気違うな…?」

 

しかし、この発言に対しての加賀の返答は予想していなかったものであった。

 

「私とお前は初対面のはずだが…なぜ異世界からの来訪者に対してそんなに冷静なのだ?」

 

「…はあ?」

 

素っ頓狂な声を出してしまった。

初対面?加賀は頭でも打ったのだろうか。あ、後者の異世界からの来訪者に慣れてる点に関しては自分でもよく分からない。

 

「…また来客か?誰だ?」

 

ちょうどいい所に、寝室から土佐が出てくる。

加賀の記憶がすっぽ抜けることが、実はよくあることだったりするかもしれない。…流石にないか。

 

「加賀が来たんだけどさ…なんかいつもと様子が違うくて。土佐、原因わかるか?」

 

「…!貴方は…」

 

「久しいな、土佐。母港に戻ってきたという話は聞いていたが…顔を出せなくて悪かった。公務の方が忙しくてな…」

 

久しい…?

土佐と加賀は俺の部屋で何度も会ってるし、母港に帰ってる時にも会ってるはずである。どこか話が噛み合わない。

 

そしてなんだこの気まずい空気は。

姉妹仲がこんなにも急に悪くなることあるか?

 

「…貴方がいるということは、奴も来ているのか?」

 

「ああ。赤城がこちらに興味を持ったらしいから視察だ。…そう嫌な顔をするな」

 

「そうそう、貴方がこの興味深い世界への扉を開いてくれたんじゃない、土佐?」

 

奥から聞いたことの無い声が響く。

妖艶な…そしてどこか厄介な気がする声。

 

「初めまして。カイト様、でしたわね?お話は聞いていますわ。この赤城、重桜を代表して、土佐がお世話になっていることのお礼申し上げますわ」

 

入ってきたのは、加賀とは対象的な黒の毛並みを持つ狐であった。

土佐はその黒狐を見て、複雑そうな表情を浮かべている。苦手な相手なのだろうか?

 

「お礼なんてそりゃどうも。しかし赤城ってどっかで聞いたような…確か、天城さんの話に出てきていた気が…」

 

「あら、天城姉様が私より先にこちらへ?私も呼んでくだされば良かったのに〜もう〜」

 

赤城が口をとがらせる。

天城姉様…というと、天城さんの妹か。

あの天城さんの妹だ。できた妹さんで間違いないだろう。

 

「天城さんの妹さん…赤城だな。加賀の様子がいつもと違う気がするんだけど、何かあったのか?」

 

「それはきっと、『違う加賀』ですわ。こちらの加賀は『空母』加賀…私、赤城と共に一航戦を名乗る重桜の顔、といってもいいかしら」

 

「『空母』加賀…そうか、いつも来てるのは『戦艦』だったか…?」

 

だいぶ前に土佐が「姉上が二人いる」とか言ってた時があったようななかったような。それの片割れ、ということか。

まさかここまで瓜二つとは思わなかったが。

 

「なるほど、お前は戦艦の私を知っていたのだな。ようやく話が繋がったぞ」

 

『空母』加賀も、状況を把握したらしい。

 

「俺も何となく事情はわかった。だが、もう一つだけ質問が…」

 

「あら、何ですの?」

 

赤城が興味深そうに距離を詰めてくる。顔が近い近い!

 

「そんな事よりもカイト様…想像していたよりも私の好みのヒト。一目惚れしてしまいましたわ…私とゆっくりお話しませんこと?」

 

接近してきた赤城に肩を掴まれ、さらに9本の尻尾に体を包まれる。

 

「ちょ…待ってくれ!まだ会って5分も経って…!?」

 

「運命の出会いに経過など必要ありませんもの…さあ、力を抜いて…」

 

あの天城さんの妹だということで無警戒になっていたが、何となく察した。

この黒狐、俗に言う『ヤバいやつ』かもしれない。

 

「そこまでにしろ、腰巾着!!」

 

「あら、いい所だったのに」

 

土佐が赤城をひっぺがしてくれた。…助かった、ありがとう土佐。

 

「姉さ…赤城、流石にいきなり抱きつくのはよせ。彼も困るだろう」

 

加賀も困った顔で赤城を見つめているが、止めに入る様子はなかった。

いや、注意するなら止めに入ってくれよ…

 

赤城の突然の暴挙で質問するタイミングを逃してしまった。

そんな俺の顔を見た土佐は、不機嫌そうに呟く。

 

「ふん…貴様が聞きたいのは、なぜ姉上が来ただけなのにこの場の空気がこんなにも悪いか、だろう!?」

 

「おー、大正解。流石土佐だ」

 

「簡単だ…私がこの『腰巾着』を嫌っているから、それに尽きる!」

 

土佐が指差したのは、赤城であった。

加賀の方は気まずそうにしている。土佐とも久しいとか言ってたし、おそらく彼女はこの赤城といる時間の方が長いのだろう。

 

何となくこの面子の関係性がわかってきた。

この加賀と土佐も紛れもなく姉妹だが、土佐の苦手(嫌い?)な赤城といつも一緒にいるものだから気まずくなっている…そんなところか?

 

1人で納得していると、ひっぺがされた赤城の鋭い目線が土佐を見据える。

 

「いつもは天城姉様に免じて許してあげてるけど…カイト様と至福の時間を邪魔しないでくれるかしら?」

 

至福っておいおい…

俺は心の中でツッコミを入れたが、土佐が赤城に反論する。

 

「至福だと!?初対面の人間とよく至福の時間を過ごせるものだ…それも一方的な!!」

 

「一方的ですって!?貴方だってずっとカイト様にべったりじゃない!!いつものお堅い土佐さんはどこに行ったのかしらねぇ?」

 

「べったりではない!ただ借りを返しているだけで貴様とは違うんだぞ腰巾着!!」

 

「さっきから言わせておけば腰巾着腰巾着って…あなたの方が腰巾着じゃないかしら?いつも天城さん天城さんって…いや、今はカイト様の腰巾着の方が正解かしら?」

 

「黙れ腰巾着!腰巾着は腰巾着だ!!無論、私は違うがな!」

 

「あーうるさいうるさい!!この灰色狐!!」

 

…口喧嘩が始まってしまった。

 

「喧嘩はやめろ!!ここ、マンションの一室なのわかってるか!?」

 

静止の一言も彼女たちには届いておらず、罵声の嵐は止まらない。

ふと加賀をみやると、ため息をつきながら戦況を見つめている。

 

「私も昔は、こうだったということか…」

 

1人でぶつぶつ言っているが、俺にはその発言の真意はわからない。

そんな事よりも、口喧嘩を止めることを手伝って欲しい。

 

「加賀、見てないで止めるの手伝ってくれないか?」

 

「悪いが無理だ。私に赤城を止める資格はないし、昔は当事者だったから土佐の気持ちも分かるからな。落ち着くまでやらせてやれ。…私は天城さんのようにゲンコツで止めることはしたくない」

 

天城さん、あの優しそうな顔でゲンコツしたりするのか…怒らせたら怖いタイプなんだろう。

…というか、加賀に止める気がないのは俺としては困るんだが。ゲンコツしたら口喧嘩は止まるのか?いや、俺もそんなことしたくないし。

 

そんな所へ、新たな人物が現れる。

口喧嘩で足音が聞こえなかったが、あれは…

 

「「「「天城さん!?」」」」

 

4人とも、突然現れた意外な人物に驚きを隠せない。

天城はこちらを一瞥もせず、赤城と土佐の所へ行き…

 

笑顔でグーを振り下ろした。

 




土佐と赤城は絶対仲悪い(偏見)
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