「どうして私はこうも遊戯には勝てんのだ!!」
「まあまあ落ち着けって!慣れたらすぐできるようになるって!」
「囲碁でも将棋でも姉上には勝てん…私の何がいけないのだ…」
「な、涙目でこっちを見るな!お前は何でも覚えは早いし大丈夫だって!」
「うう…剣技の手合わせならば負けるはずは…」
「剣に手をかけるな!本物の剣なんか俺は振れねえよ!?」
どうしてこのような問答になっているかというと、先日土佐が商店街でデモプレイを見ていたゲームのことを思い出したからである。
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土佐に前に商店街で見てたゲーム、やってみるか?と声をかけると案の定乗ってきた。
「ふん、貴様がやりたいのなら付き合ってやるさ。やるからには負けんぞ?」
「付き合ってくれる割には尻尾はえらく嬉しそうだな」
「…斬られたいか?」
「悪かった悪かった!剣を抜くのはやめてくれ!」
彼女をからかうのは面白いが、切り刻まれるのは困る。
冷静沈着な堅物に見える彼女だが、割と熱くなりやすいのである。
ことある事に剣を抜かれそうになるが、顔を赤くした土佐は何とも面白くてついついからかってしまうものだ。
「この格闘ゲーム…だったよな?土佐はどのキャラを使うことになるやら…」
彼女が興味を示していたのは格闘ゲーム。
大手ゲーム会社の様々な作品のキャラクターが文字通り乱闘して、相手をぶっ飛ばすというアレである。
とりあえずコンセントを繋いで電源を入れ、キャラ選択画面まで進める。
「やっぱり戦ってたってだけあって格闘ゲームに惹かれるんだな土佐。仲間がやってた、みたいな話してたけどそれもこういう…」
「私は遠目で見かけただけだったからよく覚えてはいないな…陣営すら超えて複数人で盛り上がっていたことは覚えている」
「…まあ集団で盛り上がってる所に初心者が入れてくれー!って言いに行くのは難しいか」
「戦場以外だと、母港での私はそこまで多くの子と交流があった訳では無いからな…」
土佐がため息をつく。
確かに、俺から見ても第一印象は「近寄りづらそうだな」というのが正しい。
少し打ち解けてくると彼女がただの堅物ではなく、少し(?)抜けているところや年相応の女性らしさもあって可愛らしいところも分かって来るのだが、彼女の世界でもそこまで理解してくれている仲間はひと握りだったのかもしれない。
「逆に、土佐はプライベートは誰と過ごしてたんだ?」
「プライベート?姉上…もといその近くにはいつも天城さんがいたか」
「天城…って人も結構名前聞くな。さん付けって言葉年上か?」
「カンレキで言えば私より長いだろうな。姉上が目標にし続けている人で、尊敬できる人だ。怒らせると怖いが…」
「姉妹共々尊敬してる人か…で、その人やお姉さんといつも何を?」
「囲碁や将棋が多いな。姉上が天城さんに挑んでは負け挑んでは負け…私も少々呆れながら見ていたものだ」
(姉妹でやっぱり似てるのか、負けず嫌いなところ…)
「まあ、私は姉上の練習相手になることがほとんどだな」
「お、となると結構強いんだな。お姉さんよりも勝率いいとか?」
「ま…まあな。それより!この目の前のゲームのことを忘れていないか?やるならさっさとするがいい」
何か適当にはぐらかされた気がするが、ゲームの準備も整ったので土佐の言われた通りそっちに目を向ける。
「とりあえず好きなキャラを選んで…あ、操作わかるか?ここのパッドを操作してカーソルが合ったらAボタンで決定だ」
「それくらいわかる、当然だろう?そうだな…私と同じく剣を振るう者がいい」
土佐はオーソドックスな剣士キャラを選択。
俺は…最初だし同じキャラを使って動かし方を説明するか。
「よし、スタートだ。土佐、とりあえず適当に動かしてみたらどうだ?」
「そうだな…ここのボタンで攻撃、移動がこれで、ジャンプがこうとな…」
土佐は画面に夢中になっている。
時折尻尾が揺れており、微笑みも見せる土佐。楽しんで貰えているようで何よりだ。
「なかなか様になってるな…そろそろ殴りにいってもいいか?」
「ふん、いいだろう!どちらが上か思い知らせてやる!!」
こうして、対戦が始まり…何度か対戦した末に最初の問答に至ったのである。
結論から言うと…土佐はあまりゲームが上手くないらしい。
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「ガードも駆使したほうがいいぞ、ダメージ抑えられるし…」
「守備など私の性に合わん。守備の時間があるならその時間は攻めた方が効率的だろう?」
(結構脳筋思考だなこいつ!?)
おしとやかな見た目をしてなかなかイケイケである。
「攻撃は最大の防御…って気持ちは勿論分かるけど、このゲームはその駆け引きをひっくるめて戦うゲームなんだ。土佐が防御しないから、どうしても動きが単調で読みやすくなって…」
「単調…だと?この私が?」
ムッとした顔でこっちを見てくる土佐。
あー、これまた変なツボに触れてしまっただろうか…
「単調…はちょっと言いすぎたかも、悪かったって!でも、相手に攻撃を悟られないようにすることは何においても大切だと思うけどな」
「攻撃を悟られない…とな。ゲームとて戦場と何ら変わらないのだな」
「そっちの世界はよく分からないけど、戦ってきた土佐なら分かるんじゃないかな」
「…コツが掴めた気がする。もう1戦だ!次は負けん!」
「おっ、いい目になったな!じゃあ俺も気合い入れるとするか。キャラクター変えるぞ?」
「好きにするがいい。今の私なら何が出てきてま負けん!」
すぐに調子に乗るんだから…そういうところだぞ?
「対戦開始だ…!?貴様!銃ばかり撃ってこちらに接近してこないとは卑怯だぞ!!」
「これも作戦なのさ、まあせいぜい頑張ってその自慢の剣を当ててくれよ」
「貴様ぁーーー!!!」
その後も数戦の間狙撃キャラを使っていると、だんだん土佐が涙目になってきたので流石に使うのを辞めた。
土佐が落ち着いたら俺も近接キャラに変えてもう数戦。
近接同士の殴り合いでは俺と直ぐに五分になるあたり、やはり飲み込みは早いのである。これからに期待だ。