土佐さんは少々抜けている   作:さいどら

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タイトル少し変えました。
前のままだと堅い小説に見えてしまいがちかなと思ってのことです。


土佐さん、晩酌に付き合う

仕事が終わり、俺は帰宅した。

今日は色々あってフラフラである。

 

「ああ〜残業凄まじく疲れた…」

 

「帰ったか、今日はえらく遅かったな」

 

「貯まってた仕事をまとめて消化しないといけなくて…流石に今日はこれが無いとやってらんねー…」

 

リビングの机に、コンビニ袋を投げ捨てるように置く。

カランカラン、という音が部屋に響いた。

 

「…酒か?」

 

「明日は休みだからたまにはいいだろ。土佐も飲むか?…って土佐って未成年?そもそも飲めるのかどうか心配だけど…」

 

「…晩酌とな。愚痴なら聞いてやる、姉上の時もそうしていたからな」

 

「それは助かる…!俺より先に潰れたりするんじゃないぞ?」

 

「私は貴様の方が心配だがな」

 

「俺が先に潰れる?まさかぁ!?」

 

普段からドジを踏みまくっているこの堅物は、酒が入るとどうなるのだろうか?饒舌になるのか、全く喋らなくなり眠ってしまうのか。

 

愚痴を聞いてくれるのはありがたいが、俺より先にへばることが安易に予想できる。

 

「シャワーだけ先に済ませてくる、終わったら乾杯だ!袋の中の好きな酒を選んでいていいからな!」

 

「…承知した」

 

…この会話までが、疲れに疲れて帰ってきた俺に残っている記憶である。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「それでさー!じょーしが言ってくるわけよ!!お前が出すのもうちょい早ければ!!うるせーよ!!なぁ!?」

 

「…ああ、そうだな」

 

私の名は加賀型戦艦二番艦・土佐だ。

重桜の仲間と共にセイレーンと戦っていた身だが…今は訳あってここに居候している。

 

目の前にいるべろんべろんに酔っている男はここの家の主…端島 海斗(はしまかいと)という名だ。会って暫く経つが、名前で呼んだことはほとんどない。

 

なぜ目の前の男がこのような状態になっているのかというと、奴が仕事の愚痴を聞いて欲しいと晩酌をはじめたからだ。疲れていた奴が潰れるのは目に見えていた。

 

ちなみに私は酒だけは強く、誰かと酒を飲む時には酔った相手の話をひたすら聞くことがほとんどだ。

奴は「俺がお前より先に潰れる?まさかぁ!?」などと抜かしていたが、本当にため息しか出ない。

 

酔った相手の愚痴を聞くこの時間…「向こうの世界」のことを思い出す。

 

姉上も酒に弱く、酒が入ると奴のように話が止まらなかった。

あの腰巾着の愚痴、天城さんとの劣等感の悩み…よくもまあ普段は隠せていたものだ。

 

重桜の主力である姉上は常に強者であろうとしており、普段は周りに自分の弱さを見せることはない。しかし、姉上も心に何も抱えず生活している訳では無い。

 

たまりにたまったものを解放して気を少し楽にしてくれる…姉上にとっての酒はそういうものだったのかもしれない。

 

奴にとっての酒も、姉上と同じようなものなのだろうか?

そんなことを考えていると、顔が真っ赤になった奴がふと口走る。

 

「やっぱ、聞いてもらえる相手がいるのといないのではちげーわ…」

 

はっとする。そうだった、この男は…。

 

「…そうか、貴様は一人暮らしだったから貯まったものを吐き出す相手がいない、とな」

 

今までの奴の酒は、私が姉上と飲んでいた酒とは違っていたはずだ。

愚痴を発しても、それを受け止めてくれる者がいなかったのだ。

 

「土佐ぁ、ありがと…なー…」

 

奴が感謝の言葉を添えながら、テーブルに倒れ伏せる。

 

「なっ、貴様!!!潰れるなと言っておいて自分が…」

 

倒れ伏せた奴の口からはすう、すうという寝息が聞こえる。

どうやら眠っただけらしいが、こんなところで寝られては困る。

 

「普段は私に余計な口を聞いてばかりの癖に、全く世話の焼ける奴だ…」

 

飲み終わって空になった缶や、つまみの残飯を片付ける。

初日に散々馬鹿にされた洗い物も、もうミスをすることなど…

 

「…!やけにぬめりが取れんと思うったら洗剤ではなく油だと!?私はまた…」

 

油と洗剤を普通間違えるか!?これで何回目だよ土佐!ハハハ!!

 

そんな声が聞こえてきそうだったが、部屋は沈黙している。

 

(奴の余計な一言が無いのはいい事だが、本当に静かだな…)

 

今度は洗剤だとちゃんと確認し、黙々と洗い物を進める。

食器乾燥機に洗った皿やコップを入れてスイッチを押す。この食器乾燥機も最初は使い方が分からなくて笑われている。

 

(色々と言ってくる割には、こうして私が世話を焼いてやる必要があるのだから困ったものだ)

 

さて、あとはテーブルに突っ伏したこの男をどうするかだ。

このままにしておくのは流石に体にもよくない、ただでさえ疲れており、酒も入っているために尚更だ。

 

「何か体を温められるものは…布団をここまで持ってくるのも難しそうだが…」

 

少し考えると1つのアイデアが頭をよぎり、自分の背中を見る。

 

「…やむをえん、か」

 

私は自分の尻尾を彼の背中に包むように当ててやった。

重桜の子達は尻尾がある子も多いので、私が尻尾をこのような使い方をしたのは初めてであった。

 

(私がいつ向こうに戻るかはわからんが、せめてその時までは奴の愚痴ぐらいは聞いてやる。奴もまた、姉上のように貯め込んでいる。ここに居候している以上、それぐらいの世話は焼いてやろう)

 

奴は初対面の私にも臆せず接してくれ、生活する場所を提供してくれている。

そんな中でも、奴は上司や仕事…様々な苦難と戦っているのだ。

 

「弱者である貴様を、強者である私が。当然だろう?…()()()

 

…突如眠気がやってきた、私も少し酒が回ってきたのだろうか?

その後、私もテーブルに突っ伏して眠ってしまった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「…!まずい、酒飲んで寝落ち…」

 

俺が目覚めると既に朝になっていた。どうやら、布団にも入らず眠ってしまったらしい。

 

「なんでこんなに暖かい…尻尾…って土佐ぁ!?」

 

「…ん、朝になってしまったか。全く、昨日の貴様には手を焼いたぞ?」

 

寝起きのジト目で俺を見てくる土佐。俺に手を焼いた…?

 

「私より先に酔いつぶれてよく喋ってべろんべろんになって…ふん、情けない。私が洗い物もして尻尾で寝かしつけることになるとは思わんかったぞ?」

 

「う…嘘だろ!?俺がお前より先に潰れるなんて…」

 

「私は酒には強い。貴様が潰れていないなら誰が洗い物をしたとな?」

 

土佐が悪い笑みを浮かべて顔を近づけてくる。どうやら本当にやらかしてしまったらしい。

 

「弱者は己を弁えるのが道理だ…違うか?()()()

 

「名前で急に呼ぶな!こんな時に限って昨日の記憶が飛びやがって!くそおおおお!!」

 

…ドジでも酒は強い土佐。俺はしてやられてしまったようだ。

 




土佐さん視点も、たまには書いていきたいですね。
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