でないと話が一向に進まないので…
投稿は気まぐれですが、週2は守るつもりです
つもりです、ええ
2話
そもそもの出会いは幼稚園の頃。
家が遠くないのもあって親同士で仲良く、その延長で俺と透も一緒に遊ぶようになった。何せ名前が同じ「透」なのだ。妙な繋がりというか、きっかけとしては十分だった。
そのまま共に幼稚園を卒園、足並み揃えて小学校の入学式にも家族同士で向かった。
俺がバスケットボールにハマったのは小学二年生の頃だった。
いつも通り一緒に下校した後、透の家で遊ぼうとなって透が物置からバスケットボールを見つけてきた。そこで初めて浅倉のおばさんに「バスケットボール」というスポーツについて聞き、聞き様聞き真似で透と一緒にボールでドリブルをした。
そのオレンジの球は小学生用の5号球ではなかったので、当然あっちへ跳ねこっちへ飛び、とてもドリブルとは言えないものだった記憶が残っている。それでも当時の俺はこのボールに心を奪われ、リズミカルに手に跳ね返る感触に憑りつかれた。
一方の透はシュートを打つ方に興味を持ったらしく、近くにゴールがある公園を探しては、親たちが夕ご飯のために迎えに来るまで、俺となんちゃって1on1に打ち込んでいた。
そんな俺たちがミニバスケットボールの地域チームに入るのは当然の流れで、
中学で男バス女バスに分かれても、公園で一緒に練習出来ると思っていたのは、
─────私だけだった
透くんはバスケの強豪高校にエスカレーターで行ける私立中学へ進学した。
私よりもバスケに魅力を感じてたキミは、私たちの家に近い中学じゃ満足にバスケ出来ないって思ったのかな。
幼稚園で小糸ちゃんと仲良くなって、もともと樋口は家が隣だし、小学校で雛菜とも友達になって…私が暇なときは透くんも入れて五人で過ごすことが多かったね。
小学生の頃の小糸ちゃんは透くんの事、やけに気に入ってたっけ…
雛菜が外で遊ぶのが嫌だって言うから、樋口が一緒に日陰で過ごしてて、私は小糸ちゃんと透くんと走り回ってた…そうだ、みんなで遊ぶ時は雛菜のために日陰のある公園に集合してたんだ、ゴールないとこ。ゴールのある公園は日影なかったから。
あー、ゴールがある公園に透くんと樋口連れてったこともあったっけ。
一回だけ透くんと日陰のある公園に行ったこともあったけど、私たち2人でゴールの無い公園で遊んでもつまんなかったんだよね。つまんなすぎて近くのバス停にいた人を誘って、ジャングルジムでずっとダラダラしてたんだ、うん、覚えてる。
だってその人が今の私のプロデューサーなんだから、これってある意味運命、だよね。
中学でも私はバスケ部に入った。
普通にバスケ好きだったし、せっかく透くんと地域のミニバスで上手くなったから、やんなきゃもったいないかなって。
雛菜も私と一緒がいいって言ってたけど、汗かくし疲れるよって言ったら隣で練習見れて疲れないからって理由でバレー部に入った。練習中にこっちばっか見ててよく怒られてたけど、雛菜のお母さんは雛菜が運動してくれてるのを知って嬉しそうだった。
樋口は部活入ってなかったけど、いつも私と雛菜が練習終わるの外で待っててくれたんだ。マネージャーでもいいじゃんってバスケ部に誘ったけど「あんまり好きじゃない」って。
よくわかんないけど、なんか納得できた。
───ごめん、ちょっと嘘ついた
思ったんだ、バスケやってればまた会えるかなって。
家は近いけど透くんの学校って電車通学だし、私の中学も駅の反対だからさ、会わなかったんだ。試合会場とか、ほら、おっきな体育館だったら男子と女子まとめてやったりするじゃん?
ぜーんぜん。
マンガのバッタリって普通にありそうって思ってたけど、そうでもないんだね。
お母さんたちは一緒にご飯食べに行ったりしてて、たまにどう?って誘われたりもしたけど、なんか、そうじゃないんだよね、うん、それはなんか違う気する。
私たちが出会うなら道端でバッタリとか、会場でプレーしてるのをバッタリとか、
それでまた、どこまでも見通せる透き通った毎日が始まるかもって思ってたのは、
─────俺だけだった
俺にとって透との再会は、正直苦い思い出だ。
数か月前の冬に、都内の有名な体育館で関東の強豪高校が集まる交流試合が開催された。
去年は東京ベスト4の成績を残したうちも呼ばれていたし、全国大会やプロの大会も開かれるような会場だ。監督も「全国に行く予定のお前たちのいい経験になる」と言って参加の返事をしていたそう。けど、その目は俺たちと同じように、年甲斐という言い訳で隠し切れない輝きを放っていた。自分が為せなかったあの場所での試合に、指導者として想いを果たせるから…かもしれない、本当のところは分からないけど。やっぱり観客席から見ているのとコートに立つのとで、胸に沸き立つ血の色が違うのはきっと監督も同じなんだ。
大会ではないがそれなりの大舞台での練習試合に、俺はまだ当時1年生にも関わらずAチーム、一軍の1番…つまりガードポジションを任された。ボールを運び、味方に指示を出し、試合を動かす…ゲームメイクを担う重要なポジションだ。そもそもバスケは選手が5人しかいないから、重要じゃないポジションなんて無いけれど。
結果を残した3年生が引退して世代交代した時期だったのもあって、チームの編成を一新するために1年でも試合にガンガン出していく…ミーティングで監督がそう言ってはいたが、まさかいきなり自分が、あの滑り止めの効きが良い、多くのトッププレイヤーたちが跨いできた白線の内側でゲームを指揮することになるとは思わなかった。
それでも日本でバスケに魅了された者として、あの場所に憧れないわけがない。
いつもより少し緊張が増した程度で、俺のコンディションとしては万全だった。
前半、同じ関東の強豪チーム相手にも互角以上の展開で進み、俺のゲームメイクがハマって流れを取り返した場面もあった。日頃の努力というのは自分を劇的に変える物じゃなくて、こういう突然降ってきたチャンスを自分のものにするためにあるんだと信じてきたのが報われた気がした。
前半の立ち回りでいくらかの自信と心の余裕を持てた俺は、後半も1年としてもっと勝利に貢献しようと意気込んでいた。同じ学年の仲間たちにもいずれチャンスは回ってくる…まだ1年でも試合で活躍できるんだという姿勢を見せよう…と。今思えば、なんて傲慢な考えだったんだろう。
勝手に自分が先に一歩踏み出した気になっていた。
後半3分過ぎにシュートを決められ、今田さんからスローインをもらう。
ゾーンディフェンスを組むために素早く戻る相手選手たちを見つつ、ゆっくりとフロントコートへ向かいながらドリブルを衝く。
目に映る俺以外の9人のプレイヤーを見渡していたその時、他のチームが休憩していた観客席のさらに上、観覧席の入り口のところに立っている人物が目に入った。
いつもならそんなところに目をやることなんてない。
俺が見るべきものは9人のプレイヤーの動きと試合時間と24秒のショットクロック。
それ以外のものに注目するのは集中できていない証拠だ。
けど、最高の環境、高いコンディション、うちが掴み続けている試合の流れ…これだけ揃っていて俺が集中出来ていなかったなんて考えられない。
バスケさえしていれば幸せな俺に限ってそんなことがあるわけがなかったんだ。
今だからこそ分かる。
俺は自分で見たんじゃなくて、視線を惹き寄せられたんだ
圧倒的な存在感に、そのオーラに
それでいて、勝手に惹き寄せておきながら透明で
覗いても覗いても色が無くて
もっと奥まで覗き込もうとして
俺の手からバスケットボールが離れていた。
相手のゾーンの1番にカットされたんだと気が付いた瞬間、何も言わずに中村先輩と今田さんが相手の速攻阻止のために俺の横を駆け抜けて行った。
俺も戻ろうとした時には既に、中村先輩が自分のファールを使ってタイマーを止めていた。
思い出して急いで振り返った俺に浅倉透は何もせず
その半透明な瞳でじっと俺を見つめていた。
【在りし日のトランスペアレンツ】
浅倉「ねぇ、てっぺんのみえないジャングルジムのゆめ、みたんだ」
久我「…それで?」
浅倉「え、こわくないの?」
久我「それってのぼってもおわんないんだろ?」
浅倉「うん、ずっとおわんなくて」
久我「それならずっとのぼればいいじゃん」
浅倉「…そっか。じゃあさ、“とおるくん”もいっしょにのぼってよ」