地球 某所 モラリアでの武力介入後...
「無条件降伏信号確認、ミッション終了。各自撤退開始」
「ふう...」
モラリアへの武力介入は何とか成功を収めたがその内容は綱渡りのような危ない状況でもあった。想定外の事案と言うのは作戦にはつきものであるがまさか刹那がコックピットから出て敵のパイロットの前に姿を晒すなんて...一体何のためにそんなことを...
これ以上ガンダムマイスター同士の仲を険悪にはしてほしくないのだけれど今回の件でティエリアは刹那をガンダムから降ろすべきだと主張することは間違いないと思われた。そうでなくとも彼は完璧主義的な傾向があるように思われるのだ...
「お見事でした、スメラギ・李・ノリエガ。」
王留美から称賛の言葉をかけられたが今回はお見事と言うには程遠い作戦になってしまった、無論彼女の言葉には皮肉の要素が含まれているわけではないのだろうけど...
「とんでもないハプニングがあったけどね...」
「とはいえヴェーダの推測通りに計画が推移しているのは事実でしてよ...少なくとも今の段階では。」
「私としてはその推測から外れたいんだけどね...」
「...なぜです?」
「...撤収します、機材の処分お願いね。」
「かしこまりました。...もしや良心の呵責に苛まれているのでは?」
「...そうかもしれないわね。でもそれを分かった上で私はソレスタルビーイング入ったのよ。分かってはいる...」
「...業を背負い込む覚悟が無いのならおやめになるべきと言いたいところですが...私にはその権限はありませんわ。ただ一つ言わせていただきますが、ソレスタルビーイングが活動する以上血が流れるのは必然の事...もしあなたが続けるというのならそれ相応の覚悟が必要よ。...でなければ世界は変わらない、人類は血を流さずに変われるほどには進化していませんの。」
「...」
「ニュータイプ...そういう言葉、概念がありましてよ。人類はいつの日か誤解なく分かり合える存在になる...しかし私たちはまだオールド...少し前の痛みですら直ぐに忘れてしまいますの。」
「...ニュータイプ?ちょっと聞いたことが無いわね...」
「答えの出ない問題ですわ、私もその概念を完全に理解しているわけではなくてよ。」
「王留美...貴女一体...」
ユニオン MSWAD本部
モラリアの戦闘は想定よりも早期に終結しそれはガンダムの戦闘能力の高さを物語っているようでもあった。通常兵器ではやはりガンダムに対して有効打を与える方法はかなり限られてくるという事であろう。
現在ガンダムに対抗するための装備として検討されているのはチタン合金セラミック複合材製兵装、そしてパイロット及び機体の電装系にダメージを与えることを期待した高圧電流を流し込む海ヘビと呼ばれる兵装の開発も進められていた。ただしガンダムはそういった兵装に対する対抗策も当然考えていると想定されるためこの装備がどこまで有効かは実際に使用してみなければ不明であると言わざる負えない。あとは実弾兵器ではなくプラズマ兵器使用の検討も進められていた。しかしプラズマ関連技術はユニオンよりもAEUが一歩リードしており、その手の装備の開発は現在ビーム兵器の実用化に目途が付いたということもあって優先度はかなり低いであろう。実際のところプラズマキャノンと言った兵装はAEUの大型機に搭載されているという情報が存在するのだがそれらがガンダムにどれほど有効かはまだ判明していない。
「カタギリ、やはりAEUは賭けに負けたようだな。」
「それはどうかな、確かに20機以上のMSを失ったのは痛いけどこれでAEUは国民感情に後押しされて軍備増強路線を邁進することになると思うよ、モラリアにも貸しを作れたしね...」
「...しかしあれほどに大規模な戦力ですらガンダムを撃破することは叶わなかったわけだ。」
「やはりガンダムの性能...高い防御力もそうだけどビーム兵器の性能は圧倒的だね。しかし未知の粒子を利用していたとしてもビーム兵器、荷電粒子砲の一種であるとするなら...大気中で威力は多少減衰しているはずだね。」
「...というとガンダムと戦闘を行うとすれば宇宙より地上の方が多少はこちらに有利と言う事か。」
「いや、一概にはそうとは言い切れないよ。それに減衰していると言ってもご存じの通りMSを容易く撃破できる威力があることに変わりはない...むしろ対抗策を練れば宇宙で戦う方がこちらに有利かもしれないね。」
「どういうことだ?」
「ソレスタルビーイングのガンダムは現在確認できる限りの情報で判断するならば射撃兵装の殆どをビーム兵器に偏重している...とするならば今現在開発中のビーム撹乱幕で大幅に戦闘能力を削れるかもしれないのさ。」
「なんと!そのようなものが存在しているとは...」
「最もそのビーム撹乱幕ですらガンダムに有効かどうか分からないけどね...」
ビーム撹乱幕、ミサイルの弾頭に導電性の高い金属粒子を搭載して戦場に散布し敵の圧倒的な射程を封じ込めるという戦法...もしくはそれと同時にガス状の特殊な気体を散布して宇宙空間においてこちらが有利となる状況を作ることが可能なのであればガンダムの優位性の一つが崩れることになる。
「それに実体剣を装備しているガンダムが存在する事からもしかしたらソレスタルビーイングはそういった状況を想定しているのかもしれないしね...まあそちらの件はまた違う説もあるけどね。」