機動戦士ガンダム00 A.R   作:NY15

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蝶の羽ばたき

ユニオン 米国 大統領官邸

 

 三大国家群の一つユニオン、正式名称は太陽エネルギーと自由国家の連合 (Union of Solar Energy and Free Nations)はアメリカ合衆国を中心とした国家連合であり加盟国は主に北米、南米各国またはオセアニアとアジアでは日本も加盟している世界経済連合とも呼称される超巨大国家群である。

 

 三大勢力では最も早く軌道エレベーターの実用化に成功し宇宙開発も他の陣営より先んじておりまた良くも悪くも米国と言う強力な存在が中心となっているためか他陣営より経済や加盟国の状況は安定していると言えるだろう。(ただしそれはAEUや人革連と比較した場合の話であり紛争が全く存在しないわけではない。実際にユニオン加盟国においても内部に反米派が幅を利かせている国々も存在し彼らはこの状態を米国一国の独裁体制と批判しているようだ。)

 

 軌道エレベーターと宇宙太陽光発電システムは確かに人類にとって素晴らしいエネルギーである。しかし全くの欠陥が存在しないわけではないのだ。

 

 それは太陽光発電システムの欠陥と言うより軌道エレベーターの構造に起因する問題であろう。その人類史上最も巨大である建造物はその大きさに反してひどく脆い建造物であったのだ。そしてそれだけ巨大な構造物をどれだけ万全な警備をしたとしても全く穴が無いというわけにはいかない。もしこの構造物が攻撃対象になったとしたらその防衛は非常に困難であろう。

 

 そして今ユニオンにおいて太陽光発電システムに代わるエネルギー、核融合炉の建造が進められていた。それはこの太陽エネルギーに依存する状況を打破し大いなるゼロサムゲームに終止符を打ち人類最後のフロンティアである宇宙に進出するための計画が本格的に始動していたのだ。

 

 ユニオンは米国が太陽光エネルギー分配権を持っており繰り返しになるがその権力は絶対的である。極秘ではあるが例の核融合炉の量産が軌道に乗ればユニオン加盟国のエネルギー分配量を増大させる方針である。

 

 要するに懐柔策である。米国自らはもはや核融合炉さえ実用化されれば太陽光エネルギーなど不要なのだ、ならば自らに不要なもので他国に恩を売れればこれ以上の活用策はないというわけだ。

 

 それだけでユニオン内の紛争を根絶は出来ないだろうが少なくともエネルギー問題は完全に解消されるだろう。供給量を増やしてもなお彼らが考えを改めない場合には別プランも用意してある...そのプランを実行するような状況にならないことを祈るばかりである。しかし人間と言うのは実利よりも見栄を選択する場合もある生物なのだ...ユニオン内の反米派は現実を自らの身で知るときまで己の主張を曲げないかもしれない...

 

 しかしとにかく安定した状況で宇宙に進出することが出来る。その程度のことは瑣末事、最悪軌道エレベーターがテロ攻撃で破壊されてももはや問題はない。これも全て2年前の出会い...アムロ・レイという異なる世界からの訪問者のおかげであった。大統領は最初にその報告を受けたときまるでその話が信じられなかった...が現実としてこの世界に存在しない技術という証拠を見せられたのだ、自らの目で確かめたものが存在している以上いくら非現実的とはいえ信じざる負えない。それに衝撃的とはいえ良い知らせであるならば歓迎である。

 

 もっとも今現在彼の情報は最重要機密であり技術的な情報は大統領にさえ全て開示されているわけではない。大統領さえ知らされていない情報がまだ相当数存在しているのだ。しかし大統領はそれに対して気分を害してはいなかった。特にあのような連中が現れた今となってはそれが正解だと思っていたのである。

 

 完璧ではないにせよユニオン内部は安定、そして平和の道を進んでいくと思われた矢先例のソレスタルビーイングが現れたため大統領は何事も上手くいきすぎるということは無いのかと感じていた。

 

 「武力による戦争の根絶か...デビッド、彼らは我が国の代わりを務めてくれるらしい。」

 

 「大統領、彼らは本気なのでしょうか?何の見返りもなく...」

 

 「我々が他国の紛争に介入するのは国民の安全と国益を確保するためだ、決して慈善事業ではないよ。」

 

 「すぐにでも化けの皮が剥がれるでしょう。その時彼らを裁くのは我々の使命となります。」

 

 「そうだな...ところであの老人の正体はイオリア・シュヘンベルグで間違いないのか?」

 

 「はい、と言っても200年以上前の人間で血縁は彼の代で完全に途絶えており資産の行方も不明...名前程度の情報しか判明しておりません。」

 

 イオリア・シュヘンベルグ、太陽光発電システムの基礎理論を提唱した歴史上の人物であり間違いなく天才と呼ぶべき人間であった。

 

 もしかしたら我々は彼を裁くのではなく裁かれるのではないか...宇宙世紀の歴史を知る大統領はそう感じてしまっていた。

 

 世の中に絶望した人間や変革を目指す人間が本気になった時どのようなことを行うのか大統領は宇宙世紀の歴史から理解していた。

 

 シャア・アズナブルやギレン・ザビといった人物が行ったことをこのイオリア・シュヘンベルグが実行しないとは言い切れない。

 

 「経済が安定し宇宙進出に目途がついた矢先にこれか...」

 

 

 

 

 

 

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