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ニュータイプ論...現在においての正式な名称は宇宙空間における空間認識能力の拡大及び人類の進化の可能性と名付けられた論文の世界の反応は様々であった。特に人革連における兵士の人体改造...超兵機関の存在が世界に明るみになるなどの事件が記憶に新しい現状にあってはユニオンに疑いの目を向ける者も一定数は存在していた。
しかしあくまでユニオンはこの宇宙空間に進出して適応進化した人類はあくまで自然発生的な物であり、人為的な手は全く介在していないと主張している...最も今現在のユニオンのスペースコロニー内部は軍事機密の塊でありその全てが開示されているわけではない...疑いの目を向ける者の心境も理解できるものではあったのだ。
ユニオンはこの進化したとされる人類をニュータイプと呼称...突如として発表されたこの存在についてソレスタルビーイングとは別の意味で世界を騒がせていたのだ。
絹江・クロスロードはモニター越しにこの論文の執筆したレイフ・エイフマン教授の関係者であり、本人もこのニュータイプ論の執筆にあたって協力していたというビリー・カタギリという人物にニュータイプ論の概要を簡単にではあるが説明を受け質問に移ろうとしていたのである。
「そのニュータイプとされる人物については個人情報及び軍事機密に関わる存在であるため公開することは出来ないとのことですが...カタギリ氏から見てそのニュータイプとされる人物の印象をお聞きすることは出来ますか?」
「そうだね...これは僕の私見と言うことになるけれど、その人物はある意味では普通の人間では考えられないような能力を発揮することもある...だけれど彼等も同じ人間であり恐れたりするような事はないと僕は思う。進化した人類と聞くと多くの人々は彼らに恐ろしい印象を抱くかもしれない...人間と言うのは理解できないものを恐れ攻撃し排除しようとする特性が少なからずあるからね。ニュータイプの能力というものは確かに特定の分野で力を発揮することがあるのは事実...だけれど彼らの能力の本質は相互理解...人と人とが分かり合う力だと僕は思っているよ。」
「人と人が分かり合う力...ですか?」
「彼らの能力は人間が地球と言うゆりかごから巣立ち、広大な宇宙空間においてコミュニケーションをとる為発達したもの...というのが今のところの有力な説なのだけれどこれが正しければまさにこの能力は相互理解のための進化という事になるね。」
ニュータイプ...今の説明を受け全てを理解できた訳ではないけれどもし彼らが実在のものであるならば本当に世界を変えていけるかもしれない...私はそう感じたのである。
そこで私の思考に一瞬の可能性が過った...もしかしたらイオリア・シュヘンベルグはこのニュータイプ、あるいはそれに類似した存在の出現を予想していたのではないか...と。
以前からのソレスタルビーイングに対する疑問が私の中に存在した...それは彼らの真の目的が紛争根絶以外に何かあるのではないか...
もしかしたらこのニュータイプにその疑問を解決するヒントが隠されているかもしれない...完全に私の思い付きではあるけれど彼らに対する情報収集は既存のものでは限界を迎えていたため手法を変えて別の方面から探る価値はあるだろう。
「なるほど、では最後にこのニュータイプ論はユニオンが宇宙開発の成果として公表されたものではありますが...その宇宙開発についてユニオンは宇宙にも軍事力を展開している都合上ソレスタルビーイングからの武力介入を受ける可能性についてどのように考えているのでしょうか?」
ある意味ではこの最後の質問こそが本命のものであると言ってもいい...ユニオンは現在ソレスタルビーイングに対して特に声明など発表を行っていない...たとえ国家のものではなく個人の発言であったとしても関係者から彼等への意見は貴重なものになるだろう。
「確かに最近になって現れた新型のガンダム3機は以前までの4機とは明らかに異なる武力介入を行っている、我々の陣営の宇宙施設に対して介入が行われないとは言い切れない。」
新型の3機のガンダムの映像は全世界に流出していた...彼らのある基地において発生した戦闘時の映像データは人革連の報道統制をすり抜け全世界に拡散していたのである。
「はい...恐らく彼等の内部で何かしらの変化が生じた可能性は高いと思うのですが...」
「一般論としては唯一彼らに対して対決姿勢を鮮明にしている人革連に対する懲罰攻撃...そういう見解が多くを占めているね。」
「確かにそういう意見は日本の報道関係者の中でも大多数を占める意見です...でも私には他に何か別の理由があるのではないかと考えているのですが...」
「この説は新型のガンダム3機が今のところ人革連に対してしか武力介入を行っていないことから考えての考察でしかないからね...しかし懲罰攻撃だったとするとあの3機の投入タイミングは少し妙ではある...」
「もしよろしければ、機密に接触しないレベルで構わないのであなたの個人的な見解をお聞かせ願えないでしょうか?」
「僕の意見であれば構わないけど...ただ僕の発言はあくまで個人のものでありユニオンの公式な見解ではないという事は先に注意しておくよ。それと仮に報道する場合は僕の名前やユニオン関係者からの発言であるとは明らかにしないように...」
「ありがとうございます!」
「まあ我々も今回のニュータイプ論の件でマスメディアに協力を仰いでいる立場だからね...多少はこちらも協力しないとね。」
「では、彼等ソレスタルビーイングの活動方針、いわゆる紛争根絶の為の武力介入についてなのですが...何か彼等には真の目的があるような気がしてならないのです。その事についてあなたの意見をお聞かせください!」
「確かに...彼らの主張通り紛争根絶が目的であるのだとしたら懲罰攻撃などというような行為はせず、全ての国家に対して人革連に対して行っているような過激な武力介入を最初から行ってもいいはずだね。彼らの目的は紛争根絶と同時に紛争の火種を抱えたまま宇宙へ進出する人類への警告と見る意見もあるのだけれど...」
その後、数回のやり取りを終えたのちインタビューは終了した...決定的なヒントが有った訳ではないのだけれど今回の件で何かしらの解決の糸口を私は掴めたような気がしたのである。
もし本当にイオリア・シュヘンベルグがニュータイプ、あるいは近しい存在の出現を預言していたとして...そして彼が火種を抱えたまま宇宙へ進出する人類を憂いていたとして...そして新しく出現した3機のガンダムの過激な武力介入...情報が少ないとはいえ人革連内部では反ソレスタルビーイングの機運が今まで以上に高まっているという。人革連だけではない、今まで各国代表による協議制を取っていたため自国の利益を優先して意見が中々纏まらないAEUにおいてもモラリア紛争の一件もあり、反ソレスタルビーイングという事柄においては協力体制を確固たるものとしている。
人は理解できないものを攻撃する...それは自らがその理解できない存在に攻撃あるいは排除されるのではないかとの恐怖心の裏返しとも取れる。そして人間が団結する要因の一つは外敵からの攻撃...
今のところあの3機は人革連を対象とした武力介入しか行っていないが...もし今後他の陣営にもそれが拡大するようであれば...まさか...
この瞬間、私の中にある仮説が浮かび上がったのだ...