ユニオン MSWAD本部 グラハム・エーカー中尉、ガンダムエクシアと交戦後...
「AEU新鋭機視察のはずがとんでもないことになってしまったな。」
「あのような機体が存在しているとは想像もしていませんでした。」
「...研究する価値があると思いますが。」
「...上もそう思っているようだ。今回の件を受けてガンダムを目撃した君たち二人に転属命令が下りた。カタギリ技術顧問は既に承知していると思うがエーカー中尉にも例の件の情報が開示される。最も私はその例の情報に関しては断片的にしか把握しておらんがな。」
手渡されたファイルを手に取る...
「対ガンダム調査隊...ですか?」
「新設の部隊だ、正式名は追って司令部が付けてくれるだろう。」
「...やはりエイフマン教授が技術主任を担当するんですね...例の彼の方は?」
「彼は別件で手が離せないようだ...しかし彼もこの調査隊に招集されている。それだけ事態を重く見ているということだ。早急に対応しろ、例の彼の方も後程合流する予定だ。」
「はっ、グラハム・エーカー中尉、ビリー・カタギリ技術顧問。対ガンダム調査隊への転属受領致しました。」
MSWAD本部 MS格納庫
なるほど、やはり上層部はあのガンダムとやらに興味を持ったようだ...しかし全くの無知と言うわけでもなさそうだ。それに例の件...いや例の彼とは誰の事であろうか?
「カタギリ、例の件とは一体?」
「それについては君にも情報が開示されるから後程詳しい資料を読んでもらったほうがいいかもしれないね。ただ君も察している通り既に我々はガンダムと言う機体について把握していることがある。」
「やはりか、それで?」
「実はもう我々の手にあるんだよ、そのガンダムが。...と言ってもあのソレスタルビーイングのガンダムとは違うみたいだけどね。」
「なんだって!?」
「問題は我々の知るガンダムと向こうのガンダムがどう違うか...君のフラッグの受けた機体の衝撃度から見て彼らのガンダムの出力はフラッグの6倍はあるようだね...2年前の僕であれば驚いていただろうけど今は想定の範囲内さ。」
「...出力もそうだがあの機動性だ。つまり我が軍が把握しているガンダムは彼等のガンダムと比べても劣らないというわけか?」
「そういう事...最もこれは推測の数値だから正確なことは言えないけど恐らく機体出力はνのほうが上回っているよ...ただ向こうの機体は大気圏内を飛行できる強みがある...個々を比べればどちらにも強みがあると僕は思うね。」
「ν...それがガンダムの名前か...」
「それに君の戦闘データで確認した限り彼らのガンダムの機動性はあの光...特殊な粒子のようだね。ますます似てはいるが非なる存在...研究の価値はあるだろうね。」
「あの特殊粒子はステルス性の他に機体制御にも使われている。」
「だろうね...これは尚更ミノフスキー粒子散布下対応兵器の開発が急がれる。」
「ミノフスキー?」
その時だった、後方から聞き覚えのある声が響いたのは。
「ミノフスキー粒子、静止質量がほとんどゼロで、極めて強力な帯電性質を有する特殊粒子でありその濃度が高まればレーダーや電波を使用不能に陥れる極めて特殊な存在じゃ。その利用方法は多岐にわたる...」
「レイフ・エイフマン教授!」
「しかし恐ろしい男じゃ...200年以上も前にこの技術に匹敵しかねない理論を確立していたとは...レイ大尉がいなければイオリア・シュヘンベルグの思いのままになっていた可能性もある。...出来ることなら彼のガンダムを捕獲したいものじゃ。」
「同感です。そのためにもこの機体をチューンして頂きたい。」
「その必要はない、既にここにチューンしたフラッグを手配しておる。もうすぐ輸送機が到着するじゃろうて。」
「なんですって!?」
「私が彼のためにチューンしたフラッグだが...エーカー中尉ならば使いこなせるかもしれん。パイロットへの負担は一切考慮されておらんが...」
「...望むところだと言わせて頂こう。まだ機体を目にしたわけではありませんがプロフェッサーの腕は信用しています。それに私専用ではないとはいえそのほうが早くガンダムと戦えます。」
「エーカー中尉用に細部に調整を施すのに少々時間を貰うことにはなるが...1週間もあれば大丈夫じゃろう。」
その時所持していた端末からコール音が鳴り響いた。
「私だ...なに!?ガンダムが出た?場所は...タリビア!?」
タリビアならばここからでも十分間に合う場所である、まだチューンされたフラッグは無いがこのチャンスを逃すのは惜しい。
「やめておけ」
「なぜです?1機はタリビアです。ここからなら行ける...」
「...ワシは麻薬というものが心底嫌いでな、焼き払ってくれるというならガンダムを支持したい。」
「麻薬...」
「やつらは紛争の原因を断ち切る気じゃ。」
宇宙 ソレスタルビーイング輸送艦 プトレマイオス
地上から軌道エレベーターを使用して戻ってきたティエリアとヴァーチェの回収に成功しまたセイロン島、南アフリカとタリビアでのミッションも完了...スメラギ・李・ノリエガはティエリアに祝杯を辞退されたこと以外順調に進んでいる現状にひとまず安心していた。これはまだ計画の序章である...しかしであるからこそこれからのことを考えれば休めるときに休むことは重要でもある。
しかし再び世界に不穏な空気が流れていることも確かである...たった今麻薬畑を焼き払ったばかりである南アメリカにあるタリビア共和国で動きがあることを既にソレスタルビーイングは掴んでいた、そしてこれからのタリビアの行動予想の見解は私とヴェーダで一致していた。
タリビア共和国...ユニオン加盟国ではあるが内部では古くから反米意識が根強くそれが私たちが現れたことによって内部の反米派が勢いづいているということであろう。
もしそうなったとき私たちのとる行動...それは今回の麻薬畑を焼き払ったミッションとは異なり大掛かりなミッションになる。それにタリビアが動けばユニオンも軍を派遣することになるだろう。
ユニオン、正確に言えば米国の現在の動きはヴェーダにすらも不明な事案が多数存在していたのだ。結局米国の一部施設に対するハッキングは未だに困難であるままでありなぜいきなりネットワークセキュリティが飛躍的に進歩したのかそれすらも不明であるのだ...そしてそれは地上だけに限らなかった、いやむしろユニオンの宇宙関連施設はさらに強固なセキュリティで守られていたのである。
米国はここ近年他国より先んじていた宇宙開発をさらに加速させている兆候がある。そしてラグランジュ1に存在するユニオンのスペースコロニーに頻繁に人員や何かしらの物資が搬入されているのを確認はしていたのだがやはり内部で何が行われているのかは不明であった。そしてコロニー以外に月面にもユニオンの簡易的な拠点が建造されておりそこで鉱物資源を採掘しているようでもあったのだ。
それだけでは武力介入する理由にはならない。コロニー内部で何らかの軍事的な研究や開発が行われているとの情報が得られなければ介入は行うべきではない...いやもしそうだったとしても介入すべきかどうかは別問題である。月面の採掘事業はグレーゾーンであるかもしれない...一応月は宇宙条約によってどこの国の領有でも無いことになっているのだが月に存在する資源の採掘権に関する部分については曖昧な表現に留められているのだ...人革連が月でのユニオンの動きを批判する声明を出してはいたが結局それだけである。確かに人革連は強大な軍事力を保有しているが宇宙でユニオンと事を構えることなど無理のある話であろう。
結局ユニオンの宇宙開発計画については一般に公表されている情報に毛が生えた程度のものしかソレスタルビーイングは掴めていない、新情報としては恩師であるエイフマン教授がどうやらこの計画に関わっているらしいというくらいのものである。
これがただの平和的な宇宙開発ならいいのだけれど...
しかし私は妙に嫌な予感がしていた...何か取り返しのつかないような事態が進行しているのではないかとなぜか思えてしまっていたのだ。根拠などない...なのでこれは戦術予報士としての予想ではない。強いて言えば今までの経験と勘...
せめて月面でどういった種類の資源を採掘しているのか分かればまだ予想も立てられるのだけれど...後で王留美に協力を要請するのがいいかもしれない。彼女ならもしかしたら何かしらの情報を得られるかもしれない。