機動戦士ガンダム00 A.R   作:NY15

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悪意の矛先

日本 経済特区 東京 病院

 

 

 ルイス・ハレヴィは朦朧としながらも意識を取り戻しつつあった。

 

 徐々にハッキリと回復していく意識と比例して体中の鈍い痛みと周囲の喧騒の声が自らの五感で感じ取れるようになったのだ。

 

 病院のロビーに簡易的に設置された沢山のベッドには比較的軽傷の人々が治療を受けておりルイスもその中の一人であったのだ。

 

 頭に違和感を覚え左手を持ち上げようとすると自らの腕に点滴がなされていることに気が付いた...頭には包帯もまかれてはいるようだが、どうやら私はそこまで大きな怪我を負っている訳ではないようだ。

 

 そうだ、あの時...いきなり東京に現れたガンダムが突如として攻撃を...

 

 

 沙慈!!

 

 あの時沙慈は私を庇って...

 

 

 沙慈はどうなって...

 

 

 私は左腕の点滴の注射針を引き抜き、急ぎ足で病院のあちこちを沙慈の姿を探すために歩き始めたのだ。

 

 幸い病院の中は混乱状態にあり、立ち上がったところで看護師たちに私の行動を静止されるということはなかったのだ。

 

 

 それにしてもこの状況...まるで野戦病院さながらという状態であったのだ。

 

 医師や看護師の大声がフロアに響き、負傷者の悲痛な声は絶え間なく聞こえ、そして子供たちの泣き声は止まることがなかったのである。

 

 

 30分ほど周囲をうろついた私はその状況に、目の前の現実に打ちのめされていたのだ。

 

 周囲を観察した状況から考えてこのフロアは軽症者が大勢を占めていたのだがそれでも中にはそうではない人達の姿も確認できたのである。

 

 人々の右手部分にはトリアージタッグと呼ばれる治療の優先度を決めるタグが取り付けられている...私の目に入る人々の多くは緑色であったのだが時折その色とは真逆の意味を持った色である黒のタグを取り付けられた患者がストレッチャーに乗せられどこかに移動させられているのが確認できた...

 

 

 ガンダム、ソレスタルビーイング...今までテレビの中の出来事でしかなかった現実が不意に私達の前に現れ日常を消し去ってしまったのである。しかしまだ私はその現実を直視することが出来なかった。

 

 

 現在社会において個人情報の保護は徹底されており、病院もそれは例外ではなかった。災害時、テロ発生時とはいえ、いやだからこそ第三者が入院患者の情報を手に入れることは困難であったのである。しかし方法が無いわけじゃない。

 

 この状況ではたとえ医師や看護師であっても特定個人の情報全てを把握しているわけではないのであろう。幸いこの混乱した病院内を多少歩き回ったところで不審に思われる危険性は低いことが不幸中の幸いと言えるかもしれなかった。

 

 ルイスは病院内のロビーに設置されている簡易ベッドや各フロアを少しづつゆっくりと確認し沙慈を探すことにしたのである。

 

 ポケットには沙慈にもらったペアリングが入っている...ペアリングは二人で身に着けなければ意味がない...

 

 病院の3階に足を踏み入れると随分と様子が様変わりしているように感じられたのだ...人数こそ先ほどまでのフロアより少ないもののさらに殺伐とした雰囲気に満ちていたのである。

 

 恐らくこのフロアより上の階層はより重症の患者が治療を受けているものと思われた...本来なら部外者が立ち入ることは出来ないのであろうが、少なくともこの状況においてそれは徹底することはされていなかった...いや出来ないと表現するほうが正しいかもしれない。

 

 それほどの状況...医療従事者のだれもが患者の治療に集中しており、普段なら徹底されている物理的なセキュリティーはその機能を失っていた...

 

 

 そして、ついにその時が訪れた...

 

 

 3階の最奥の部屋に、沙慈がベッドに横たわっているのが確認できた時、私は泣き出してしまいそうになった。

 

 私がベッドに駆け寄ると沙慈はゆっくりと起き上がり、いつものあの優しい表情で語りかけてきたのだ。

 

 「ルイス、無事だったんだね...ほんとよかった。」

 

 

 「沙慈!ごめん...探すのに時間がかかって...でも沙慈が無事でよかった。」

 

 

 私はポケットから沙慈に貰ったペアリングが入っているリングケースを取り出した。

 

 「沙慈...これ...ペアリングだから二人でしないと意味がないでしょ?」

 

 私はリングケースから片方のリングを取り出して沙慈に差し出したのだ。

 

 するとその刹那、沙慈は何やら悲しそうな表情を見せたのだ...だけれどその表情も直ぐにいつもの表情に戻り数秒の間をおいて返答が返ってきたのである。

 

 「...ごめんルイス。二人でその指輪をはめたかったけど、もうはめられないんだ...」

 

 

 「え...?」

 

 おもむろに沙慈が入院用のパジャマから隠していた左腕をあらわにしたのだ...

 

 

 包帯にくるまれた沙慈の腕は...左肘より先が存在しなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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