日本 経済特区 東京 病院
ルイス・ハレヴィは果物ナイフを用いて黄色のリンゴの皮を剝いていた。
その時、自分の指に痛みが走る...慣れないことをしているから私はナイフで指を誤って切ってしまったのである...思えば刃物など今まで握った経験は殆ど無いのだ。
赤い血が指から流れ落ちる...しかしこんな痛みなど沙慈に比べれば...
ベッドに横になって眠っている沙慈の表情だけ見れば安らかで何も心配などする必要もないくらいであった...しかし...
たとえ人体の一部が欠損したとしても現代医学であれば再生医療を用いて回復することが出来るはずなのである...沙慈の左腕も通常であればそうなのだ。
数日前...医者から告げられた残酷な現実...沙慈の体を蝕む細胞異常により再生医療を施すことが不可能になってしまっていたのである。
ガンダムが放出する正体不明の粒子は人体に対して有害であると推察されており細胞異常を引き起こす原因であるらしいのだ。沙慈だけじゃない...あのテロの被害にあった多くの人々...もちろん私も少なからず謎の粒子の影響を受けており、細胞異常を引き起こしている可能性があるというのだ。
私は医者に泣きついた、お金なら、お金ならいくらでも払うから沙慈を元に戻して...
しかし医者は悲痛な表情で首を横に振るだけであった...
どうしてこんなことになってしまったのだろう...
その時、病室のドアが勢いよく開いたのであった。
「ルイス!!」
ついこの間スペインに帰国したばかりのママの姿がそこにあったのだ。
「無事でよかった...」
「ママ...?今は渡航規制がかかっているのにどうやって?」
「代議士の先生にお願いしたの...」
現在東京への渡航は規制がかけられており厳戒態勢が敷かれていたのである...
その時ママが沙慈の方へと視線を移す...既に今までの経緯は連絡してあるからママも事態の全ては把握済みであるのだが...
「沙慈君...ルイスを庇って...それにご姉弟まで...」
残酷な現実だ...沙慈の唯一の肉親である絹江・クロスロードの死亡確認の情報は既にもたらされていたのである。
「ルイス...スペインに帰りましょう。」
「何言ってるのママ!?沙慈をこのままにして帰れるわけ...」
当然だ...沙慈をこのまま一人残して私だけ帰国する事なんて出来るわけがない。
「ええ、もちろん分かっているわ...だから沙慈君も一緒によ。」
「えっ!?それってどういう...」
「治療を受けられるのよ!代議士の先生に紹介されて、細胞医学の権威のお医者様が特別に沙慈君を治療してくれるらしいのよ。」
一体どういうことなのだろう...私の頭は混乱していた。
何故その細胞医学の権威とやらは沙慈の事を知っているのだろう...ママが代議士の先生に相談していたとしても情報の伝達が速すぎる...
「確か、お医者様の名前はDr.パプテ...なんとかっていう名前だったかしらねぇ...」