地球 某所
リボンズ・アルマークはユニオンの不審な動きを既に掴み情報を手に入れようと動いていたのである。
それはあの東京への武力介入...最優先目標たる人物排除ミッション完了に違和感を感じていたからであった。
たしかにターゲットの死亡確認は取れている...しかしそれが不自然でもあった。
あの混乱の中、粒子ビームの直撃を受け完全に肉体が消滅したはずの人物の死亡をあんな短時間で確認されるであろうか。
絹江・クロスロード、東京への武力介入における最優先目標。
あの人間の死亡確認に関するデータが意図的に改竄されていることなど直ぐに調べがついたのである。
そう...生存が確認された後、意図的にその個人データが改竄されたのである。
リボンズはユニオンが欺瞞作戦を展開していると判断したのだ。そしてそれこそ彼らが我々の存在に、ヴェーダの存在に感づいている証拠である。
絹江・クロスロードは生存している、そしてユニオンはそれを隠そうとしているのだ。それが意味することは明らかである。
悔しくも東京への武力介入は彼らが抱いていた疑念、そして絹江・クロスロードの疑念を確信に変えてしまったのかもしれない。
...これは連中を侮ることは危険かもしれないね。
でも、それさえ分かっているならやりようもある。そして何より、この僕の計画に気が付いたとしてもう止めることは出来ないのだから。
あの人間が生存していたとして、ユニオンがどこに隠そうとするのか...
いくらユニオンの情報セキュリティーが進歩しようが今現状ではそれは全体に施されているわけではない。
居場所の目星はついている...どのみちあのユニオンのコロニーへは介入を行う予定ではあったのだ。
再びスローネを宇宙へ上げる必要があるが...AEU軌道エレベーター、「ラ・トゥール」を用いる必要があるだろう。
ラ・トゥールは未だに未完成ではあるが...だからこそ機材に紛れ込ませスローネを打ち上げることは容易であると言えるのだ。
無論ヴェーダを用いれば天柱を用いることも可能ではあるが、計画の加速ということから鑑みてスローネにAEUに対して武力介入を行わせる必要もある。
ラ・トゥールへの道中、AEUに対して武力介入を行うのが効率的である。
AEU スペイン
ルイス・ハレヴィは虚空を見つめていた。
ママを疑う訳じゃない、だけれど沙慈は日本からスペインの病院に移されてからさらにどこかに転院したようで、その場所は...どこに行ったのか分からなくなってしまっていたのだ。
ママに聞いても大丈夫だとの返事が返ってくるだけであった...
沙慈はこの転院について最初明らかに遠慮をしていた...だけれど私とママが必死に説得したのである。
お姉さまの事もある...
だけれど私は、いやだからこそ私はもう何も失いたくはない。
大丈夫...もう暫くすればまた沙慈は私の前に戻ってくる。
私はそれを待とう、今はそれを信じようと思うのだ。
暗く考えてはいけない...しかしだからと言って、従兄の結婚式に参加する気には到底なれなかった。
だから私はパパとママや従兄には悪いとは思いつつも結婚式は欠席することにしたのだ。
結婚式のあの綺麗なチャペルの鐘の音...それは破滅への鐘が鳴り響く予兆。
それは運命のイタズラ...いや、違う。
この世界の何者かがこの2人を恨み、貶めようとしているわけではない...しかし絡み合う複数の思惑が2人を引き裂く。それは誰かが始めた終わりの見えないウォーゲーム。
今にして思えばここが分岐点だったのかもしれない...いや人生においてそんなもの存在するのだろうか?
人生の可能性、そんなものは後から過去を後悔するだけの感傷だ...そんなもの私は、だからこそ私は...何も成せないままの私の人生に終止符を打ったのだから。