英雄機ドランノーガ   作:兵庫人

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三年ぶりの実家

 フランメ王国辺境の地、リューラン領唯一の村であるイーノ村はサイが言う通り何も無い村である。

 

 元々この地は無人の未開地であったが、商人であったサイの曾祖父イーノ・リューランが商人を引退する時に何を考えたのか財産のほとんどを使ってこの辺り一帯の土地をフランメ王国から買い取り、それがきっかけでリューラン家は男爵の爵位を与えられて貴族の末席に加わることになった。そしてイーノ・リューランが買い取った領地を開拓していると、そこに故郷に居場所がない農家の三男四男等が集まり、そうしてできたのがイーノ村だった。

 

 イーノ村は総人口が百人少し。目立った特産品はなく、畑で採れた農作物や山や森で獲った獣の毛皮を売って生計を立てている小さな村。

 

 そんな村で一番大きな家(といっても王都の一般住宅より少し大きい程度)がサイの実家であり、そこでサイは三年ぶりに父親と母親、妹のサーシャと対面していた。

 

「久しぶりだな、サイ」

 

「本当に。三年ぶりね。立派になったわね」

 

 三年ぶりに会う両親は笑みを浮かべて迎えてくれて、サイもまた両親に向けて笑みを浮かべた。

 

「ありがとう。父さん、母さん。皆も元気だった?」

 

「ああ。幸いにも皆、風邪一つひかず……」

 

「ねー? それよりもお兄ちゃん、お土産はないの?」

 

 サイと父親の話を遮ってサーシャが口をはさんでくる。

 

 サーシャはサイより二つ年下で、兄と同じ黒髪を肩まで伸ばして少し生意気そうな顔をしており、間延びた声を出す口癖があった。

 

「ちょっとサーシャ」

 

「えー? 別にいいじゃん。それでお兄ちゃん? お土産はないの?」

 

 母親が注意するがサーシャは特に気にした様子もなく、サイは三年前と全く変わっていない妹の口癖を聞いて苦笑する。

 

「安心しろよ、サーシャ。お土産ならちゃんと買ってきてあるから。……ほら」

 

 サイはそう言うとサーシャに掌を上に向けた右手を差し出す。すると何も持ってなかったはずのサイの右の掌に髪飾りが現れた。

 

「あっ! ありがとうお兄ちゃん!」

 

「どういたしまして。それで父さんと母さんのお土産はこれね」

 

 喜ぶサーシャに髪飾りを渡したサイは次に両親に向けて両手を差し出す。すると今度は何も持っていない右手に酒の入った酒瓶が、左手にはサーシャに渡したのとは別のデザインの髪飾りが現れる。

 

「おお、すまないな」

 

「ありがとうね。サイ」

 

「んー。やっぱりお兄ちゃんの『異能』って便利だよね。あー、私もお兄ちゃんと同じ異能が欲しかったなー」

 

 お土産を渡されて礼を言う父親と母親を見ながらサーシャが羨ましそうに言う。

 

 異能。

 

 それは惑星イクスの人間ならば五歳から十歳の間に発現する超能力。

 

 遥か昔に滅んだ高度に発達していた前文明が人類に施した遺伝子調整によって一定の年齢になると脳に超能力を発現する器官が生まれ、それによって使えるようになる超能力が異能。使える異能はその人によって異なり、現在の惑星イクスの人々は異能を魔法のような力と認識して使用していた。

 

 そしてサイは生物以外ならどんな物でも自分だけの異空間に収納出来る「倉庫」の異能を使う事が出来た。

 

「そういえばさー、お兄ちゃん。軍学校はどうだったの? 楽しかったー?」

 

「軍学校か……。楽しかったというより疲れたな……」

 

 サーシャの言葉にサイは言葉通り疲れた表情となって答え、そんな兄の態度に妹が首を傾げる。

 

「えー? そうなの? 疲れたってどんな風に?」

 

「そうだな……。まず周りと話が合わなかったな。軍学校にいたのは家が貴族だったり親が偉い軍人の学生がほとんどで、俺が名前だけの男爵家だって分かるとあからさまに見下してきていたな」

 

「あー、確かに貴族の人ってそういう人が多そうだもんねー」

 

 男爵の爵位を持つ家の娘とはいえ、実際は平民と同じサーシャはサイの言葉に納得して頷く。

 

「それと俺の異能がな……」

 

「お兄ちゃんの異能がどうしたの?」

 

「軍学校では直接的な戦闘力がない異能は役立たず、ていう考えがあってな。俺は自分の異能は便利だと思っているんだけど、軍学校の皆からは役立たず扱いされて、そのせいもあって苛めとかは受けなかったけど三年間周りから使いっぱしり扱いされたよ……」

 

 軍学校での三年間は異能と家を理由に周囲から見下され、親しい友人もろくにできず、使いっぱしりにされてばかりだった。その時のことを思い出したのかサイが苦笑を浮かべると、そんな兄にサーシャが労るように話しかける。

 

「んー……。お兄ちゃん、苦労したんだねー……」

 

「ああ、そうだな……」

 

 サーシャの言葉にサイは苦笑を濃くして頷いた。

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