英雄機ドランノーガ   作:兵庫人

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サイの決断

「飛べ! ドランノーガ!」

 

『………!』

 

 サイはドランノーガに命令を出して空へと飛ぶと、上空からモンスターの大群を見下ろした。

 

「マスター、あそこ」

 

「分かっている」

 

 ピオンが指差したのは街へと向かうモンスターの大群の先頭。サイがそこに意識を集中させると、前方の景色を映し出している壁に四角い枠が浮かび上がってモンスターの大群の先頭を囲む。

 

「【カロル・ディギトゥス】」

 

『………!』

 

 サイがドランノーガの武装の一つの名前を口にすると、ドランノーガの上半身の人型が両腕を前に伸ばす。人型の両腕には「手」の部分がなく、代わりにそれぞれ左右に五つの砲身があって、そこから無数の炎の玉が発射される。

 

『ーーーーー!?』

 

 人型の両腕から発射された炎の玉はモンスターの大群の先頭に命中し、上空から炎を浴びせられたモンスター達は悲鳴をあげる間も無く絶命して灰となった。更にそれだけには止まらず、平原の大地をも焼いて炎の壁を作り出してモンスターの大群の動きを鈍らせた。

 

「このまま続けて……え?」

 

「……うわ」

 

 続けてドランノーガの武装で攻撃しようとした時、モンスターの大群の一部で起こった親の腹部を破って子供のモンスターが産まれる自主繁殖の光景が目に入り、その悍ましい光景に思わずサイとピオンは顔をしかめた。

 

「ああやって数を増やしていたのか。でも何なんだ、あのモンスターは? あんなの聞いたことがないぞ」

 

 ドランノーガの武装で燃やしてもそれ以上の数を増やしていくモンスターの大群。そんなモンスターの大群を見ながら呟くサイにピオンが顔を向ける。

 

「そうなのですか、マスター?」

 

「ああ、そうだよ。あんなのいたら忘れる筈がないだろ。……ていうか、あんなモンスターが他にもいたら今頃人間は全てあのモンスターに食われているって」

 

 サイは自分で言いながら、あのモンスターの大群が数を増やしながら人間の国を全て食い荒らしていく光景を想像して顔を青くした。そしてその横では何かを考える顔をしたピオンが頷く。

 

「そうですか……。ではあの異常な繁殖力は以前より保持していた能力ではなく、ごく最近で獲得した能力ということですか。……全く、あの街の人達も災難でしたね」

 

「ピオン? あのモンスターについて何か知っているのか?」

 

 モンスターの大群を冷静に分析するピオンにサイが尋ねるが、ホムンクルスの少女は小さく首を横に振った。

 

「大体の予想はつきますが、正確な事は分かりません。それよりも今はモンスターの大群を退治する事が優先です」

 

「分かっているって。だから今もやっているだろう」

 

 ピオンの指摘にサイが答える。先程から会話をしながらもドランノーガの武装でモンスターの大群の一部を燃やしてはいるのだが、それでも数が減らないどころか徐々に増えているモンスターの大群を見て、サイは一つの決断を下す。

 

「このままじゃ駄目だ……。ピオン、ドランノーガの最大火力であのモンスターの大群を吹き飛ばす。モンスターの全てを攻撃範囲に捉えられて、街への被害が出ないようにする場所を探してくれ」

 

「そのお言葉をお待ちしていました♪ 【カロル・マーグヌム・コルヌ】発射地点の候補はすでに算出済みです」

 

 サイの発言はピオンが待ち望んでいたものらしく、ホムンクルスの少女は笑顔で答えると街の近くにあるいくつかの地点を指し示し、サイはその内の一つにドランノーガを移動させた。

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