英雄機ドランノーガ   作:兵庫人

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未来予知

 ビアンカは表情を変えることなくサイとピオンの二人を殺害してドランノーガを奪取することを検討する。

 

 サイとピオンは同盟国のフランメ王国の貴族とその従者であり、この街の恩人である。それを害するのは同盟国との関係にヒビが入る可能性がある上に、人として最低なことであるのはビアンカも理解している。

 

 しかしそれでもその様な事を考えてしまうくらいにドランノーガは凶悪な魅力を持っているのだ。

 

(幸いフランメ王国はドランノーガの事を知らなくて、彼は無名な貧乏男爵家の嫡男でしかない。我が国で違法な取引を行なっていたとするなり、事故を装うなりいくらでもやりようがある。彼を始末したらフランメ王国から面倒な手続きや何らかの賠償を求められるだろうが、それであのドランノーガが手に入るなら安いものだ。……ん?)

 

「………」

 

 秘密裏にサイを始末してドランノーガを手に入れる方法を考えていたビアンカは、そこで今まで一言も話していないピオンが瞬き一つせず自分を凝視している事に気付いた。ホムンクルスの少女は自分の主人を害なす行動や考えを絶対に見逃すまいといった感じで、その眼の奥には強い警戒の光が見えた。

 

(ほぅ……。このサイの方は全く警戒心というものがなかったが、その分彼女が周囲を警戒して彼を補助しているのか。いい従者だな)

 

 ビアンカはピオンを見て僅かに感心すると少し冷静になった。

 

(そうだな。いきなりこの二人を殺すというのは性急すぎるな……。ここはいつも通りに『我が異能』にどうするのが最善か尋ねてみるか)

 

 そこまで考えるとビアンカは、サイとピオンに紅茶と菓子をすすめ(ただし紅茶と菓子に手をつけたのはサイだけ)その間に自分の異能を発動させた。

 

 ビアンカの異能の名は「解答」の異能。

 

 自分が取ろうとしている行動によって起こる未来をほんの少しだけ見る事が出来る未来予知の異能である。あまり遠くの未来は見えないのだがそれでも予測した未来は必ず起こるので、ビアンカはこの自分の異能を戦闘や政治の場で大いに活用していた。

 

(まずはサイを殺そうとした場合はどうなる?)

 

 ビアンカは自分に問いかけるようにサイを殺害しようとした場合の未来を予測する。

 

 すると主人の危険を察知したピオンの機転により、二人はドランノーガに乗ってこの国から脱出。しかもその時の反攻により街に決して小さくない被害も出るという未来が浮かび上がった。

 

(これは駄目だな。では先にピオンから殺そうとした場合はどうなる?)

 

 次にビアンカは先にピオンから殺害しようとした場合の未来を予測する。

 

 この未来だとビアンカはピオンをうまく殺害する事が出来て、続いてサイも殺害する事に成功していた。しかしその直後にドランノーガの操縦席から殺害した筈のピオンが現れて、怒り狂ったホムンクルスの少女はドランノーガを使ってこの街を破壊し、ビアンカもこの時に殺されてしまう。

 

 しかも殺される方法も普通ではなかった。未来のピオンはビアンカの四肢を切り裂いて行動を封じると、彼女の目の前で愛機のゴーレムトルーパーや生き残った街の住民をドランノーガの武装で灰にし、その後でビアンカの体を数え切れない程殴りつけて長い時間をかけて文字通りの「挽き肉」にするのだった。

 

(な、何だこの未来は……!?)

 

 異能の効果により脳裏に浮かんだ最悪の未来にビアンカは内心で冷や汗を流す。それでも表情を変えず、目の前のサイとピオンに動揺を悟らせないのは流石と言えた。

 

(どうやら彼らを殺してドランノーガを奪おうとするのは諦めた方が良さそうだな。……では最後に彼らの協力が得られ易くなるように友誼を結んだ場合はどうなる?)

 

 サイとピオンを殺害しようとした場合、最悪な未来しか見えなかった為、ビアンカは二人を殺害してドランノーガを奪取する事を諦めることにした。しかしドランノーガの力を諦めきれない彼女は、最後にサイ達と友好関係になった場合の未来を予測する。

 

 そうして三度目の未来予知で見た未来の光景は、先の二度の未来予知と大きく結果が異なっていた。

 

 三度目の未来ではサイが友好的にビアンカに接しており、ピオンは相変わらず警戒しているが今よりは警戒心が薄れているように見えた。そして未来のビアンカ本人はというと……。

 

 何やらひどく上機嫌、というか興奮していてサイとピオンをフランメ王国ではなくアックア公国に仕官しないかと口説いていた。

 

(一体私に何が起こった?)

 

 おそらく、この三度目の未来は今からそれほど時間が経っていない未来だろう。そんな短い時間で自分にどんな変化が起こったのかと、ビアンカは内心で首を傾げながら目の前のサイとピオンに向かって口を開いた。

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